『俺の屍を越えてゆけ』『リンダキューブ』などのPC/モバイル向け移植の難しさについて、桝田省治氏がSNS上で言及

ゲームデザイナーの桝田省治氏は、『リンダキューブ』『俺の屍を越えてゆけ(以下俺屍)』『高機動幻想ガンパレード・マーチ(以下ガンパレ)』の、PC/モバイル向け移植の可能性について Twitter上で語った。

ゲームデザイナーの桝田省治氏は、『リンダキューブ(以下リンダ)』『俺の屍を越えてゆけ(以下俺屍)』『高機動幻想ガンパレード・マーチ(以下ガンパレ)』の、PC/モバイル向け移植の可能性についてTwitter上で語った。『リンダ』『俺屍』は桝田氏がゲームデザイン手がけた作品であり、『ガンパレ』は桝田氏と関係が深いアルファ・システムの人気作である。
【UPDATE 2021/4/22 13:38】
本文の内容を適切に反映させるため、タイトルの「PC/モバイル向け移植の可能性」としていた箇所を「PC/モバイル向け移植の難しさ」へと変更。

発端は「ゲームアーカイブス終了の危機」

今回のツイートの背景には、以前に桝田氏がTwitter上でおこなったアンケートがある。『リンダ』『俺屍』『ガンパレ』の3作は現在、PS Storeのゲームアーカイブスにて販売されている。3作のダウンロード版を遊べる貴重な手段だ。

しかし、今年3月末にソニー・インタラクティブエンタテインメントよりPS3/PSP/PS Vita向けのPS Storeサービスが終了するという発表がなされた。これは、PS Storeで提供されているゲームアーカイブスからの新規購入が不可能になる事を意味していた。

4月20日になり、PS3/PS Vita向けのPS Storeサービス終了については撤回。継続が決定されたものの(関連記事)、当時この報道はゲームアーカイブスと縁のある関係者には重く受け止められた。

ファンの希望を探る桝田氏

PS Storeサービス終了の報を受けた桝田氏は、先月3月27日にTwitter上でアンケートを実施した。内容は『リンダ』『俺屍』『ガンパレ』のうち、PC/モバイル向けにそのまま移植するならどれを望むかと問うものだ。

最終的にアンケートは17,282票を集め、『ガンパレ』が最多の40.6%を締める結果となった。続いて『俺屍』が約32.9%、『リンダ』が26.5%となっている。ほかにもファンから多くの希望がリプライとして寄せられており、3作の人気の根強さを示している。

また、桝田氏は「移植の依頼なんて実質アルファ(アルファ・システム)以外には任せられない」として、1作以上の移植は金銭的にも人員的にも現実的ではないとしている。つまりアンケートには、移植に動くとしても1作のみという制限がある中で、もっとも多くのファンが望むタイトルを探ろうとする意図があったようだ。

このアンケートの様子は、一部のメディアに取り上げられていった。桝田氏は一部メディアの報道をあげ、投票に偏りが出てしまい参考にならなくなるとの見解をツイートしていた。報道によるバイアスがかからないファンの意見を求めていたのだろう。実際に一部メディアの記事には、最終的に多く票を集めた『ガンパレ』『俺屍』の画像が目立つものがあった。報道が実際アンケートに与えた影響は測りかねるが、桝田氏にとって不本意なかたちの投票となってしまったようだ。



動き出した桝田氏と、移植を阻む課題

今月4月21日、桝田氏はアンケートであげた『リンダ』『俺屍』『ガンパレ』のPC/モバイル版移植についてツイート。移植にあたって乗り越えなければならない金銭的、技術的な課題がうかがえる内容となっている。


一連のツイートで桝田氏は、『俺屍』についてはDL販売(ゲームアーカイブス)の中止が前提であったため、移植費用の回収が難しく、見送ることになると述べている。察するに、PS3/PS Vita向けのPS Storeサービス終了が撤回されたため、事情が変わったのだろう。ゲーマーとしては新規開発にくらべて簡単にとらえがちな「移植」が、実際は多額の資金が必要になる事業であることがうかがえる。


『リンダ』については“今どきのグラフィックなら”というリクエストが多かったようで、桝田氏は「モンスターの3D化1体が1千万円として20億円か。無理だw」と伝えている。ファンにとって3Dの『リンダ』は非常に夢のある話だが、リメイクするにあたって越えなければいけない金銭的ハードルは相当高いようだ。


『ガンパレ』の移植について桝田氏は、開発元のアルファ・システムに「バグなしバージョン」が残っていれば移植を成功させられる可能性はあるのではとコメント。メディアミックスを含めてビジネスとして十分成立するとの考えを示しつつ、あくまで他社が保有するコンテンツであるため、「僕が積極的に進めるのも筋が違う気がする」とツイートしている。

また「バグチェックを終えた登場人物全員を操作可能なバージョン」についても触れている。これは原作に存在した、非公式でサポート外ながら、主人公以外をプレイヤーキャラクターにできるモードの事を指していると思われる。


桝田氏は『ガンパレ』の開発に直接は関わっていないものの、『ガンパレ』を高く評価しており愛着も強いようだ。桝田氏は『ガンパレ』主要開発者の芝村裕吏氏について、アルファ・システムによるインタビューで、「僕にとってはある意味、優秀な外弟子の一人」とのべている。

また、一連のツイート中で同作の移植を推進する理由を「動いている壬生屋がもう一度見たいから!」と、キャラクターのひとりを挙げて表明。昨年にも『ガンパレ』についてのアイデアをツイートし、『ガンパレ』への愛を示していた。


今回あげられた3作は、いずれも非常にユニークな作品としてファンの心に残り続けているタイトルだ。移植の前に立ちはだかる壁は高いようだが、ビジネス的な折衝点が見つかり、気軽に手に取る方法が維持されることを祈りつつ、今後の展開を見守りたい。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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