今年もっともKickstarterで支援を集めたデジタルゲームは『百英雄伝』。数億円規模のドリームプロジェクトが2020年も目白押し

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今年もっともKickstarterで支援を集めたデジタルゲームは、日本のクリエイター村山吉隆氏による『百英雄伝』だという。同作のもとに集まった支援金額は4億8000万円以上。一方、続く2位のゲームも国内発のタイトルが並んでいる。

ゲーム開発において、クラウドファンディングで資金を調達することはオーソドックスな手法となってきた。開発規模の小さいインディースタジオにとっては、スタートアップの費用を補うためにも有効な手段だ。一方、近年は著名なクリエイターやパブリッシャーが野心的なプロジェクトに着手する資本のひとつとして活用するケースも見られる。そういった場合、クリエイター自身やその作品のファンからのサポートが集まり、大規模の基金に膨れ上がることも少なくない。これまで『Mighty No.9』『Bloodstained Ritual of the Night』『シェンムー3』など、日本の大型クリエイターたちが数多くプロジェクトを成立させてきた実績がある。

今年立ち上がったプロジェクトでも突出して目立っているのが、今年7月に目標金額をスピード達成した『百英雄伝』だ(関連記事)。本作は『幻想水滸伝』シリーズでディレクター・シナリオライターを務めた村山吉隆氏が率いるRabbit & Bear StudiosによるJRPG。2022年秋頃のリリースを予定しており、対応プラットフォームはPC/Xbox One/Xbox Series X/PS4/PS5、そして任天堂の次世代機とされている。
 

 
当時、本作のクラウドファンディング開始後にはKickstarterのサーバーが一時ダウンするほどの活況を見せた。早々に50万ドルもの出資が集まり、最小目標金額は約2時間で達成。その後も勢いはとどまることを知らず、最大ストレッチゴールの450万ドルも突破。終了までには4万6000人以上のバッカーを集める結果となった。本プロジェクトについては今月10日にも近況がアップデートされており、村山氏がメインストーリーのプロット作りに取りかかっていることなどを報告。多くの人の期待を受け、順調に進行している様子がうかがえた。

『百英雄伝』の次に多く支援金を集めたのが、プラチナゲームズがパブリッシングを手がけるタイトル『The Wonderful 101: Remastered』だ(関連記事)。原作は2013年にWii U専用ソフトとして発売された、ディレクター神谷英樹氏によるアメコミ風アクションゲーム。発売当時は売上が奮わず、海外メディアVGCが伝えるところでは初週売上5000本程度。ところがクラウドファンディングが俎上に乗るとたちまち話題を呼び、1時間半で6000人以上からの支援を獲得した。最終的なバッカーは3万3000人、支援金は総額2億3000万円以上が集まった。本作は今年6月、PC/PS4/Nintendo Switch向けに無事リリースを果たしている。
 

 
Kickstarterが日本に上陸したのは2017年のこと。国内の銀行口座と身分証でプロジェクトを発足可能となり、目標金額も日本円で設定できるようになるなど、その浸透度を高めている。Polygonの取材によると、Kickstarterにてゲーム関連のヘッドを務めるLuke Crane氏は日本での活動拡大の意向を示している。クリエイティブな企画における資金集めにおいて、欧米と日本では大きな文化の違いが見られるという。今後はよりいっそう、国内からの立案者がプロジェクトを発起しやすい環境を整えていきたいとのこと。

ほか、支援金額ランキングには著名TRPGのデジタルゲーム化『Pathfinder: Wrath of the Righteous』などが約2億1000万円で並ぶ。また、実はKickstarterではデジタルゲームよりも圧倒的にアナログゲームのプロジェクトが強い。2020年には成功したプロジェクトのうち、デジタルゲームが集めた支援金総額が2290万ドル(約23億7000万円)だったのに対し、アナログゲームは2億3380万ドル(約242億1000万円)と桁違いの結果が示されている。
 

Image Credit : Infogram

 
直近のゲーム関連クラウドファンディングで話題のプロジェクトといえば、Nintendo Switchなどの映像・音声をPCに出力できるデバイス「ShadowCast」(関連記事)が発足からわずか1日で約4265万円と、目標からおよそ13倍の支援金額を達成。また国内では別のクラウドファンディングサービスCAMPFIREにて、今月より募集が始まった『ガラージュ:完全版 for Mobile』制作プロジェクトや、まもなく締め切りを迎える『クーロンズリゾーム』制作プロジェクトが注目を集めている。

ユーザーからすれば、数ある挑戦的なプロジェクトを眺めていると、思わず願をかけたくなるというもの。一方、クラウドファンディングにはリスクもつきものであることも把握しておかなくてはならない。18万ドルの支援を集めながら開発中止が告知されたケース(関連記事)や、最悪の場合は何の報せもないまま開発チームが雲隠れしてしまう例も存在(関連記事)。かつては全面的にゲーム開発資金をクラウドファンディングに頼るケースも散見されたが、数々の失敗例も礎に、現在では部分的サポートとして活用するプロジェクトが増えてきている。来年はどんな野望が飛び出してくるのか、期待と不安を胸に見守りたいところだ。

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