Ubisoft UKが9月22日にTwitterへ投稿した動画が波紋を呼び、公式の謝罪をもたらす結果となった。同社は「The blade is back.(ブレードが戻ってくる)」と銘打ったツイートで、シリーズ伝統の暗器「アサシンブレード」にフォーカスした映像を公開した。手首からバネ仕掛けで飛び出す仕込み刀で、フランチャイズ原点の『アサシン クリード』より暗殺者のシンボルともいえる武器として表現されている。
ムービーでは、歴代主人公たちがアサシンブレードを使って敵を仕留めるシーンをトリビュート。ラストカットでは最新作のアサシン、エイヴォルが映し出され『アサシン クリード ヴァルハラ』でもブレードが象徴的な存在となることを示していた。シンボリックな武器を切り口とした印象的な映像集だが、動画からは“ある要素”が欠けているとされ議論を呼んだ。同じアサシンブレードを振るった女性キャラクターの存在が省かれていたのだ。
シリーズにおける女性主人公の歴史は古く、初の女性アサシンは2013年発売の外伝『アサシン クリードIII レディ リバティ』におけるアヴリーンだった。その後メインストーリーにも女性の暗殺者は出演し、『アサシン クリード シンジケート』では男女の双子ジェイコブ・エヴィーが主役に。『アサシン クリード オリジンズ』では主人公バエクの妻アヤを操作するパートが存在し、『アサシン クリード オデッセイ』ではとうとう男性主人公アレクシオスと女性主人公カサンドラを選択できるようになった。年々女性キャラクターの存在感が強まっていた中、あえて男性キャラクターのみで構成した動画が疑問を招いたようだ。
Ubisoft UKはユーザーの反感を受け、謝罪を投稿している。合わせて改めて公開した動画は編集が加えられ、前述した女性主人公らを含んだ映像として再構成されていた。男女とも同一人物として描かれる『アサシン クリード ヴァルハラ』のエイヴォルは画面分割で双方を映しているほか、アニメーション作品『アサシン クリード エンバース』の登場人物シャオ・ユンも取り上げられている。
騒動がここまで大きくなったのは、今年に入りUbisoftが一連の告発で揺れている状況が関係しているだろう。6月ごろから身体的/精神的暴力・人種差別・同性愛者嫌悪な職場文化が指摘されており、ハラスメントやそれを容認する社内人事・トップ層などが批判にさらされてきた。そんな中、7月にはBloombergの記者が新たな告発記事を掲載。Ubisoftの上層部内で「女性主人公のゲームは売れない」という考えが根付いていたため、シリーズにおける女性主人公の役割が制限されてきたことを明かした(関連記事)。
カウンターとして、ファンベースではシリーズの女性キャラクターを評価する動きが出てきている。「Assassin’s Creed Sisterhood」と称する運動がコミュニティから生じ、ゲーム制作に携わる女性を支援するチャリティなどを実施してきた。ユーザー間で“『アサシン クリード』シリーズにおける女性”への意識が高まっている最中だっただけに、今回のUbisoft UKの動きは見過ごせないものだったといえるだろう。
先述のとおり、最新作の『アサシン クリード ヴァルハラ』では主人公エイヴォルの性別をいつでも変更することができる(関連記事)。長寿シリーズであるだけに、ジェンダーにまつわる意識も時代の流れとともに変化することが求められているようだ。