『アサシン クリード オデッセイ』の主人公は、当初カサンドラのみの予定だった。「女性主人公だと売れない」との考えから生まれた、性別選択システムという妥協案

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Ubisoft幹部を対象としたハラスメント告発が、今年6月に入ってから相次いでいる。ハラスメントの横行そのものだけでなく、社内人事が従業員からのハラスメント報告をことごとく封じてきたことや、これまでトップ層が知らぬ存ぜぬを突き通してきたことまでもが、告発・批判の対象に。そして7月21日、BloombergのJason Schreier記者が、Ubisoftの現従業員・元従業員、合計40名以上を対象とした取材にもとづき、新たな告発記事を掲載した。その中で、Ubisoftの上層部内で「女性主人公のゲームは売れない」という考えが根付いており、『アサシン クリード』シリーズの開発に影響を与えてきたことが明かされている。

『アサシン クリード オデッセイ』では、男性主人公のアレクシオスと女性主人公のカサンドラ。どちらかを選択して遊べるようになっている。今回の報道によると、そうした性別選択オプションは、妥協案として生まれたものだという。開発チームは当初、カサンドラを主人公とする物語を構想していたが、チーフ・クリエイティブ・オフィサーのSerge Hascoët氏(一連の告発を受けて退職済み)およびマーケティングチームの介入を受けることに。女性主人公のゲームは売れないとして、却下されたとのこと。そこから妥協案として、アレクシオスという男性オプションが誕生した。


主人公は男性でなければならないという考えは古くから存在していた様子。『アサシン クリード オリジンズ』では当初、主人公バエクが早い段階で離脱し、妻のアヤにもっと多くの出番が与えられる予定だったという。『アサシン クリード シンジケート』では、主人公がジェイコブとエヴィーの双子2人になっているが、エヴィーの出番はジェイコブに比べて少なめ。こちらも当初の予定では、両者に等しく出番が与えられるはずだったとのこと。主人公は男性であるべきという考えによって、開発チームは一定の妥協を余儀なくされていたようだ。

こうしたSchreier氏の報道には、Ubisoftの元従業員からも反応が寄せられている。元Ubisoft勤務(現Bethesda勤務)のUI/UXデザイナーMarie Jasmin氏は、Ubisoft在籍時に『アサシン クリード II』から『アサシン クリード オリジンズ』まで複数のシリーズ作品に関わってきた。その期間中、Ubisoftの重役から「女性主人公だと売れない」と繰り返し伝えられたと証言している。エヴィーやカサンドラといった女性主人公が生まれたのは、開発スタッフが社内で戦い抜いてくれたおかげだと伝えつつ、そうした女性主人公が誕生する前には、幾度となく社内での戦に敗れてきた背景があるのだと述べている。


また『アサシン クリード シンジケート』『アサシン クリード IV ブラック フラッグ』『アサシン クリード リベレーション』などにライターとして関わっていた元UbisoftのJill Murray氏も、監修チームから「主人公はストレート(ヘテロセクシュアル)でリーダータイプの白人男性でなくてはならない」と、赤マーカーの下線付きで強調されてフィードバックを返されたことがあるとツイート。そのやりとりがMurray氏の降格および退職につながったと伝えている。なおMurray氏はUbisoft退職後、『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』のリードライターなどを担当。現在もゲーム業界内で活躍中である。

かつて海外メディアGame Informerのシニア・エディターとしてUbisoftの動向を追っていたImran Khan氏は、同社が女性キャラクターを主人公とすることに消極的であるのは、まったく驚きではないと「Kinda Funny Games Daily」にてコメント。Khan氏が過去におこなったUbisoftへのインタビューおよびそこでのPR担当の言動も例として出しつつ、Ubisoftのゲームを追ってきた人であれば、言われなくても分かっていたことだろうと述べている(動画リンク)。


近年では『Horizon Zero Dawn』『The Last of Us Part II』『Half-Life: Alyx』など、海外のAAA級タイトルでも女性キャラクターを主人公とするケースは増えてきている。今回Ubisoftの社内方針が大々的に報じられたことや、長らく決定権を握ってきたHascoët氏が退職したことを受け、Ubisoftがどのような変化を見せるのか、今後注目されていくことだろう。ちなみに『アサシン クリード』シリーズの最新作『アサシン クリード ヴァルハラ』に関して言うと、主人公エイヴォルの性別をいつでも変更可能であることが判明している(関連記事)。

なお、Ubisoft幹部を対象とした一連の告発を受けて、先述したチーフ・クリエイティブ・オフィサーSerge Hascoët氏や、Ubisoftカナダのマネージング・ディレクターYannis Mallat氏、新規IPの監修ディレクターTommy François氏などが退職済み。Ubisoft Torontoの共同設立者であり、監修チームのヴァイス・プレジデントであったMaxime Béland氏も、女性スタッフの首絞めを含む、多数の暴力・ハラスメント告発を受けて退職(Kotaku)。『アサシン クリード ヴァルハラ』のクリエイティブ・ディレクターであったAshraf Ismail氏は、ファンとの不倫が発覚し6月下旬に降板。これまでハラスメント案件に対処してこなかったと指摘されたHR部門のトップCécile Cornet氏は、自主的に退職している。

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