米大統領候補バイデン氏陣営が『あつまれ どうぶつの森』で選挙活動。新たなオンライン活動として注目集めるも、規約違反の可能性も
米野党・民主党のジョー・バイデン氏の選挙キャンペーン事務所は9月1日、『あつまれ どうぶつの森』(以下、あつ森)にてユーザーが自由にダウンロードできるマイデザインを公開した。
今年初頭より新型コロナウイルスの感染拡大が続くアメリカでは、11月3日の大統領選に向けて例年とは異なる選挙活動が求められている。バイデン氏は対面での集会の代わりに、ライブストリームやオンラインでの募金活動を余儀なくされてきた。先月17日に開かれた民主党の全国大会はZoomなどのソフトを用い、参加者が配信でスピーチを行うかたちで実施されている。そうした中、バイデン氏/ハリス氏(副大統領候補)のキャンペーン事務所は『あつ森』にて複数のマイデザインをリリース。バイデン氏/ハリス氏公式ロゴ・LGBTQ支持を示すバイデン氏のロゴ・「チーム・ジョー」ロゴ・パイロットサングラスをモチーフにしたデザインの4種類がダウンロード可能で、デザインは今後も増える見通しだ。任天堂のスマホアプリでQRコードを読み取ることで、ゲーム内のスマホにデザインをインストールできる。
「『どうぶつの森』は世界中でコミュニティをひとつにする力をもち、活発で、多様性があり、パワフルなプラットフォームです。我々のキャンペーンにとって、島づくりやデコレーションを通してバイデン・ハリス支持者をつなげ、結びつけることのできる、刺激的で新しい機会です」。バイデン氏キャンペーン事務所でデジタルパートナーシップ・ディレクターを務めるクリスチャン・トム氏は、海外メディアThe Vergeにこのような声明を伝えている。ロゴを有権者に広める計画の一環として、チームはデザインをごく一部のゲーム系インフルエンサーに配布することも進めているそうだ。「これは11月に先駆けて、プレイヤーと結びつくために計画していることの始まりに過ぎません。すでに『どうぶつの森』や他のプラットフォームにおいて、より多くのデジタルな装飾・有権者教育ツール・進行中の取り組みを発信する準備が進んでいます」。
新型コロナウイルスの流行と『あつ森』の発売時期が重なったこともあり、同作を利用して現実のイベントやキャンペーンを行う動きは早くから浸透していた。ユーザーレベルでは誕生会や結婚式などをマルチプレイで実施し、パブリックな例では美術館が所蔵品をマイデザイン化して配布する試みが注目を集めた。官民合わせてオンライン上のフリースペースを活用する流れの中で、バイデン氏による選挙活動の持ち込みはパブリックな『あつ森』使用例の最たるものとして数えられるかもしれない。
一方で、今回の取り組みは任天堂の規約上グレーゾーンとなっているおそれがある。日本国内のニンテンドーアカウント利用規約「8. 禁止事項」において、政治的または宗教的な主張を含むものに該当するユーザーコンテンツの共有または送受信を認めないことが記載されており、選挙活動における『あつ森』の活動はこれに抵触する可能性が高いといえるだろう(ただし、任天堂が特別に許可したものはこれに当たらないという)。一方で米国規約においては明確に政治的活動を禁止する条項はなく、米大統領選における利用が違反であると断言できない。
【UPDATE 2020/9/2 18:03】
規約違反箇所について追記
バイデン氏の支持者からも今回の運動に対し違和感を抱く声があり、「学生の負債や連邦最低賃金など、若者の関心に対応していない候補者としてバイデン氏が認識されているのに対し、(キャンペーン事務所が)不器用に若い層の支持を集めようとしているように思える」とThe Guardianの取材に答える青年もいる。11月に向けて活性化すると見られるバイデン氏陣営の動向を注意して見守る必要がありそうだ。