『スカルガールズ』開発元Lab Zero Gamesの主要スタッフが一斉に辞職。オーナーがハラスメント告発に対し圧力をかけたとの、二重の告発

インディースタジオLab Zero Gamesにて、主要スタッフが相次いで辞職する事態となっているようだ。理由は、スタジオの顔としても知られるMike ZことMike Zaimont氏にまつわるスキャンダルだ。

対戦格闘ゲーム『スカルガールズ』やアクションRPG『インディヴィジブル 闇を祓う魂たち』を手がけたことで知られるインディースタジオLab Zero Gamesにて、主要スタッフが相次いで辞職する事態となっているようだ。

これまでに、CEOを務めたFrancesca Esquenazi氏や、アートプロデューサーのBrian Jun氏、シニアアーティストJessica Allen氏、シニアアニメーターJonathan Kim氏、そしてクリエイティブ・ディレクターのMariel Cartwright氏などが、それぞれのTwitterアカウントを通じて同スタジオを去ることを、8月24日から25日にかけて明らかにしている。

スタッフらの辞職のきっかけとなったのは、リードデザイナー・プログラマーとしてLab Zero Gamesのすべてのプロジェクトを指揮し、同スタジオの顔としても知られるMike ZことMike Zaimont氏にまつわるスキャンダルだ。

今年6月、人気TwitchストリーマーのBUNNY氏が、著名なクリエイターからハラスメントを受け大きなショックを受けたため、格闘ゲームコミュニティから距離を置くことを表明。この時点では、そのクリエイターが誰なのかは明かしていなかったが、のちにZaimont氏とのメッセージのやりとりを公開した。その内容は、『スカルガールズ』のキャラクター描写についてBUNNY氏がZaimont氏の判断を賞賛するもの。それに対してZaimont氏は、最初はその制作背景などについて語っていたが、次第にBUNNY氏の個人的な話題へと移し、セクハラとも受け取れる言葉を使って彼女の現在、あるいは過去の仕事について言及。BUNNY氏は、不快で屈辱的だったと振り返っている(Kotaku)。

その後、Zaimont氏はBUNNY氏に謝罪したようだが、この告発をきっかけに、コスプレイヤーのCarbon Grey氏がZaimont氏からイベント会場にてセクハラを受けたことがあると暴露。また、『インディヴィジブル』に携わったアーティストBeezul氏も、Zaimont氏が同僚にセクハラ行為をおこなっていたことを知っているとした上で、自らも人種差別的な言葉を3度も浴びせられたことを明かしている。

Mike Zaimont氏によるハラスメント行為に対する告発が相次いだことを受け、『スカルガールズ』のコミュニティはイベントへの同氏の関与を今後拒否する声明を発表。さらに、格闘ゲームイベント「Combo Breaker」も同氏を排除する方針を明らかにした。Lab Zero Gamesは7月4日に、Zaimont氏に対する告発について認識しており近く声明を発表するとしたが、それから2か月弱経った現在まで公式Twitterの更新が止まっている。

https://twitter.com/kinucakes/status/1297985084604129280

Lab Zero Gamesにてアートプロデューサーを務めたEU03ことBrian Jun氏は8月24日、この数週間のあいだ問題解決に向けて取り組んできたが、同スタジオを辞めることを決断したと表明。スタジオ内で聞き取り調査などをおこなう中では、Mike Zaimont氏が自身の権力を利用して、同僚を非常に不快な状況に追い込むなどしていたことが明らかになったそうだ。

しかしZaimont氏はそうした報告を受け入れず、態度を改めることも拒否したとのこと。そこで同スタジオの役員は、職場環境を正常に戻すためにはZaimont氏に去ってもらうしかないと考えたものの、実質的なオーナーはZaimont氏であるため容易ではなかった。そして同氏は辞職を拒否したうえ、逆に役員全員を辞任させてしまったという。

クリエイティブ・ディレクターを担当していたMariel Cartwright氏によると、Lab Zero Gamesからの声明が一向に出されないのは、スタジオをコントロールするZaimont氏がストップをかけているためとのこと。また、自身もZaimont氏からセクハラ被害を受けていたことを告白している。さらにシニアアニメーターのJonathan Kim氏は、Zaimont氏はスタッフ全員に対して、不満があるなら8月31日までにスタジオを辞めるよう通告していたことを明らかにし、今回主要スタッフが一斉に辞職を報告した背景を説明した。

近年は、いわゆる“MeeToo”ムーブメントによりハラスメント被害の告発が相次いでいる。これはゲーム業界も例外ではなく、最近ではUbisoftの複数の著名クリエイターが告発を受けたのちに辞職(関連記事)。一年前には、『The Elder Scrolls V: Skyrim』などに携わったコンポーザーJeremy Soule氏や、『ナイト・イン・ザ・ウッズ』を手がけたAlec Holowka氏などに対する告発も見られた(関連記事)。

今回の一件では、告発を受けたMike Zaimont氏がスタジオを所有していることから、周囲のスタッフが代わりに去っていった図式。Lab Zero Gamesに関係するタイトルとしては、『スカルガールズ』のモバイル版『Skullgirls: 対戦型RPG』向けに新キャラクターAnnieが発表されたばかり。同作は別のデベロッパーが開発を担当しているが、2021年には『スカルガールズ 2ndアンコール』向けにも追加予定とのこと。その開発や、『インディヴィジブル』のサポートに影響を与える可能性がありそうだ。いずれにせよ、一連の告発やスタッフ辞職などについて、Zaimont氏はどういった意見あるいは反論があるのか、またLab Zero Gamesとしての公式な声明が待たれる。

【UPDATE 2020/8/26 10:10】

『スカルガールズ』の権利を保有するパブリッシャーAutumn Gamesと、モバイル版『スカルガールズ』を手がけるHidden Variable Studiosは8月25日、今回の一件について連名で声明を発表。Lab Zero GamesおよびMike Zaimont氏との関係を直ちに終了し、そして今回Lab Zero Gamesを辞職したスタッフをフルサポートすることを明らかにした。

また、『スカルガールズ』シリーズについては投資を続けるが、Lab Zero GamesとZaimont氏は今後関与することはないと明言。先述した新キャラクターAnnieの開発作業は、Lab Zero Gamesを辞職した多数のスタッフと協力しておこなうとのこと。また、Annie以降も新たなコンテンツを制作していく意向を示し、『スカルガールズ』開発の次なるフェーズのスタートを切ると表明した。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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