Devolver Digitalの奇天烈ゲームイベント「Devolver Direct 2020」ストーリーまとめ。オンラインイベント飽和状態のゲーム業界を皮肉る、アナーキーな風刺ドラマ

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【UPDATE 2020/07/13 2:55】
記事タイトルに「Devolver Digitalの」を追加

【原文 2020/07/12 14:44】
パブリッシャーのDevolver Digitalは7月12日、オンラインイベント「D3: Devolver Digital Direct 2020(以下、Devolver Direct)」を開催した。Devolver Digitalは2017年以降、E3シーズンにあわせて毎年オンラインイベントを開催している。普通のオンラインイベントではなく、ゲームを紹介しつつ、ゲーム業界やゲームイベントの有様を皮肉る、オンラインイベント形式の風刺ドラマだ。4回目となる今年も、女優Mahria Zook氏がDevolver DigitalのCEOニーナを熱演。ただし今年は、これまで風刺の主な対象となってきたE3が中止となったことで、E3ではなく「オンラインイベントの乱立」により浮上した問題を皮肉る内容へと趣を変えている。

昨年までのおさらい

本稿画像は「Devolver Direct 2020」よりキャプチャー

まずは昨年までのおさらいから。Devolver Digitalの風刺ドラマは、2017年~2018年の「Big Fancy Press Conference」(現地イベント編)と、2019~2020年の「Devolver Direct」(オンラインイベント編)。この前後編に分けられる。2017~2018年の現地イベント編では、ゲーム紹介がほとんどなく、大手企業のカンファレンスで起きがちな「あるあるネタ」や、業界のビジネスモデルを誇張して描くことでアナーキーさを発揮していた。

画面に札束を投げるだけで課金できる「Devolver Digital Screen Pay」、どれだけ未完成のコンテンツでも売り出せる「Devolver Digital’s Earliest Access」。匿名フォーラムに書き込まれた“仕様を変えろ”“俺ならこうする”といった苦情をリアルタイムでゲームに反映する「Devolver Comment Created Content」、ルートボックスと仮想通貨を組み合わせた「ルートボックスコイン」など、ぶっ飛んだ発明品の数々が披露されていった。

だが2018年の最後、ニーナは客席からガトリングガンを撃ち込まれ蜂の巣に。全身義体化手術を受けるも意識が回復せず。このままでは現地カンファレンスをひらけないということで、「再起不能なら、彼女の頭の中で放送すればいいじゃない」という悪女リンダの提案により、2019年、ニーナの脳内から映像を配信する「Devolver Direct」が始まった。現実世界では植物状態のまま身動き取れず、悪女リンダの思うがままに脳内イベントを開催させられるニーナ。Devolver Digitalの実権者となったリンダは、もはやE3という期間にこだわる必要なく、年中いつでもニーナをこき使い、ゲーム情報を発信できるようになったのだ。

2019年、そのまま鬱エンドを迎えると思いきや、ニーナの助手マーガレットが銃を抱え、血まみれの状態でニーナのもとに駆けつける。植物状態のニーナに「生きたかったら、私と一緒にきて」と手を差し伸べるところで画面が暗転。続編へと繋げるクリフハンガーでエンディングを迎えた。

過去のDevolver Digitalイベント まとめ記事:
2017年「Big Fancy Press Conference 2017」
2018年「Big Fancy Press Conference 2018」
2019年「Devolver Direct 2019」

主な登場人物:

Devolver Digitalの顔、ニーナ
左:中間管理職のゼイン、右:ニーナの元助手マーガレット
Devolver Digitalの新たな実権者へと登りつめた悪女リンダ


オンラインイベント乱立時代へ

2020年、ニーナはいまだ植物状態から脱することができずにいた。そんな彼女を救うべく、元助手のマーガレットと、「グレーマーケット流通部門のヴァイス・プレジデント」から「面汚しの中間管理職」へと肩書きが変わったゼインが、秘密裏にニーナ救出作戦を決行する。

なお2019年の最後で描かれた、「ターミネーター」的な終末世界を予期させるクリフハンガーについては、このままリンダの独裁が続くとたどり着きうる世界線「未来の未来の未来(Future’s Future Future)」の展開であり、現在物語が進行している世界線「未来の未来(Future’s Future)」とは別であると、冒頭で説明されている。

Devolver Digitalを掌握した悪女リンダは、今年もニーナの脳内システムファイルにログインし、「Devolver Direct」を開始。ニーナは脳内シミュレーションにとらわれていることに気づくことなく、真面目に『Shadow Warrior 3』のゲームプレイ映像を紹介しはじめる。


脳内放送の順調な運びように「これぞデジタルショウケースの始め方よ」とご満悦のリンダ。内容はなんでもいいのでとりあえず社員に何か喋らせて、ゲームプレイの披露を約束。そして「約束どおりにゲームプレイを見せ、クリック数を稼ぐための味付けとして過度な暴力描写を加えて消費者にお届けする」。パーフェクトだ。ご機嫌のリンダは、「面汚し中間管理職」のゼインを呼び出し、「この後の放送内容はどんな感じ?たくさんの人が見てくれているし、ケツの穴から購買欲が漏れちゃうくらい、彼らの頭蓋骨の中に過剰宣伝を叩き込んでやりたいの」と邪悪な意欲を見せる。

「史上最高のE3になるわよ」と微笑むリンダに、「E3は中止になりましたよ」と返すゼイン。E3不在の中、各社がポジションを確立しようと争う、醜い様相を呈していると続ける。オンラインイベントが量産されたことで、「Devolver Direct」はもはや「マーケティングの最先端」ではなくなってしまった。社会動向に疎いのか、リンダはそうした事情を把握していなかった様子。「直近数時間の間だけでも、デジタルショウケースが5つも開催されました。200~350本もゲームがアナウンスされて、誰もついていけない状態です。完全に市場が飽和状態に陥っています」。誇張気味ではあるが、実際、6月には1日に複数のデジタルショウケースが開かれ、50~100本のゲームが紹介される事態が起きていた。


「ゼインったら、消費者はマーケティングが大好きなのよ。多ければ多いほどいいの。今や世界はハイプで動いているわ。宣伝による過剰な盛り上がり。それさえあればいいの。消費者がゲームを実際に遊ぶことを、いまだに楽しんでいると思っているの?違うわ。彼らはコルクを濡らす程度のちびちびとしたティザーやトレイラー、初披露、お披露目映像を消費・考察して楽しんでいるの。宣伝キャンペーン自体を楽しんでいるのよ。(中略)ゲームそのものは副産物でしかないの。雑務とすら言えるわ。2年間待ちに待ったゲームを、まるで冷凍ピザを食らうように、味わうことなく一気に咀嚼しちゃうのよ」。そうまくし立てるリンダの表情はどこか悲しげである。

「そうかもしれませんが、デジタルショウケースの数は手に負えないほど増えつつあります。企業の重役が自宅から配信する時代なんです。もはや何が起きているのかわかりません。発表に次ぐ発表。発表するために発表しているようなものです」「コナミが『メタルギア』の新作4本を2時間かけてアナウンスし、同じライブストリームの最中に4本中3本の開発中止を臨時発表するなんてのも見ましたよ。狂気の沙汰です」。コナミのくだりはもちろんフィクションであるが、各社が「発表するために発表している」感覚というのは、どこか頷ける部分がある。6月のイベントラッシュ時には「ワールドプレミア」「独占情報」「初披露」と銘打ちながらも、定義が曖昧で、かつ新情報がほとんどない発表も生み出されていた。この混沌とした状況の元凶は、「Devolver Direct」でイベントのオンライン化を広めたリンダであると、ゼインは指摘する。

SIEの吉田修平氏とマイクロソフトのPhil Spencer氏がゲスト出演


リンダに意見を一蹴され、ぼやいていたゼインのもとに、マーガレットからの通信が入る。「未来の未来の未来を止める方法がわかったの」。マーガレットいわく、ニーナは植物状態になる前、不測の事態に備えて挽回策を残していった。“アーキテクト”なる人物がニーナを救う情報を持っており、その情報をニーナの脳内放送中に発信することで、脳内シミュレーション世界がシャットダウン。彼女を植物状態から復活させることができるという。

謎のアーキテクト。その正体は一体誰なのか。さっそくビデオ会議でアーキテクトを呼び出すと、The Game Awardsといったゲームイベントの司会でおなじみGeoff Keighley氏が姿を現した。おそらくカメラ下の机に台本を置いているのだろう、チラチラと目線を下に向けながら演技するKeighley氏。ちゃっかり自分が主催しているSummer Game Festの宣伝を挟みながら、ニーナを救うためのデータファイルをアップロードするよと伝えて去っていった。あとはニーナの脳内放送中にデータファイルを呼び出すだけだ。

怪物Carrionのゲップのような叫び声にリアクションするSpencer氏

そうこうしているうちにも、リンダ主導の発表会は継続。ここでなんとSIEワールドワイド・スタジオの吉田修平氏がサプライズ出演(本物)。シュールな笑いを挟みつつ、ビデオ会議形式で『Fall Guys: Ultimate Knockout』の新映像を紹介した。サプライズゲストは一人ではない。続いて逆ホラーアクション『Carrion』の紹介役として、マイクロソフトのXbox事業責任者Phil Spencer氏が登場した。2017年の「Big Fancy Press Conference」放送時には、かなりの色物扱いであったDevolver Digitalのオンラインイベントであるが、恒例化したことで大手企業からも認められつつあるのだろう。

存在しないゲームで発表数のかさ増し


このまま順調にイベントが進行すると思いきや、なんとここでネタ切れを起こす。著名インディーパブリッシャーと言えど、新作情報を無尽蔵に発信できるわけではない。だからといってここで止めるわけにもいかず。存在しない、作る気もないゲームを続々と発表することになった。これこそがビデオゲームマーケティングの次なる一歩。「ゲームそのものは重要ではないの。アナウンスすること自体が大切なのよ」と、リンダは語る。

そうして無理矢理引っ張りだされたのは、『Getting Over It with Bennett Foddy』の作者Bennett Foddy氏。半ば脅される形で、『Getting Down with Bennett Foddy』というフェイク作品を発表した。Foddy氏の楽曲をフィーチャーした官能的リズムダンスゲームだという。対応プラットフォームはDEVOLVERGRAFX-16。もちろんそのような作品は開発されていない。

続いて呼び出されたのは、カナダのゲームスタジオBeans Teamのスタッフ。何も発表することがなくてあたふたする中、「Devolver Digitalと一緒に何かを作っています。多分ゲームです。きっと来年お見せします」と、あやふやな情報を絞り出す。現在は人材募集中のようで、おそろしくレトロな公式サイトに募集要綱が掲載されている。

一瞬だけ、Iron GalaxyのDave Lang氏と思わしき人物が映る(画面上部)。同氏は2017年の初回放送時に故人扱いされ、以降遺影写真としてプチ出演してきた(実際には存命)。今回も脈略なく再出演を果たしたようだ。


その後もフェイクアナウンスメントは続く。SonicFoxとして知られるプロゲーマーのDominique McLean氏が呆れ気味にビデオ出演。『Sonic Fox’s Furry Fighters 4』を発表した。対応プラットフォームはDevolvercast。もちろん1~3作目があるわけでもなく、『Sonic Fox’s Furry Fighters 4』もフェイクである。


続いてゲスト出演したのは、リヴィアのゲラルトさん(大人の事情で本人の映像はなし。音声と風呂釜映像での出演となった)。「無名パブリッシャーのデジタルショウケースなんかのために入浴シーンはやらないぞ。またミームにされるのはごめんだからな」。残念ながら、ゲラルトさんの入浴シーン再現は叶わなかった。

「任天堂で働いている叔父さん」登場

本物の任天堂勤務者ではなく、声優/フィルムプロデューサーのAndy Dopieralski氏が演じているキャラクターだ

ゲラルトの入浴プッシュはさすがにやり過ぎた。裏目に出てしまったことでリンダの表情が曇る。しかもフェイクアナウンスのネタすらも尽きた様子。それでも引き下がりたくないリンダは、さらなる業界セレブのゲスト出演を部下に要求する。困ったモヒカン頭の部下は「そういえば、伯父が任天堂で働いています」と閃き、急遽呼び出すことに。SIEの吉田修平氏、マイクロソフトのPhil Spencer氏とビッグネームが続いたこともあって、任天堂からも大物がゲスト出演するのではないかと期待が高まったが、残念ながら画面に現れたのは、見たことのないロン毛のおじさんだった。

「任天堂で働いている叔父さん」が『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』のデタラメ情報やヨッシーの陰謀論をベラベラ喋るシュールな一幕。「毎年出てもらいたいですね」と語るニーナに対し、「それは無理な話だ。この動画は削除勧告を食らうからな。もう二度と会うことはないよ。というより、この会話は起きなかったことになるんだよ」と言って姿を消していった。ただ手ぶらで帰ったわけではなく、叔父さんの置き土産として、Nintendo Switch向けにも発売されるドット絵アジアン・アクション『Olija』の映像が公開。こちらに関しては、本当にリリースされるゲームの情報となっている。『Olija』に続いて、『Serious Sam 4』の最新映像も公開された。

【追記 2020/07/12 16:08】
「任天堂で働いている叔父さん」は、任天堂タイトルの噂情報を広める上で多く使われてきたフレーズ(「任天堂で働いている叔父さんから聞いたんだけど〜」と言った使い道)。常套句のように浸透したことから、今では話す内容が嘘であると示す際に冗談的に使われている(Know Your Meme)。

ニーナの覚醒と新たな「未来」


なんとかネタ切れの危機を乗り越えたリンダたち。最後の締めとしてどデカイ発表を求めるも、さすがにもう何も残っていないと返すモヒカン部下。「インディーゲームでイベントを締められるわけないでしょ!汚い伯父の姿で終わらせるわけにはいかないの!」と絶叫&発狂気味のリンダ。ここでついに、ニーナを救うためのプロトコルが発動する。

植物状態から覚醒したニーナが発表したのは、『Devolverland Expo』。Devolver Digitalタイトルのブースが出展された仮想ゲームイベント会場に向かい、最新トレイラーを見てまわるというマーケティングシミュレーションゲームだ(Steamで実際に無料配信されている)。「マーケティングによる不毛なハイプを欲すのならば、体験させてあげますよ。実際に遊べるビデオゲームとして。大事なのはビデオゲームそのもののはずなのですから」。


発表のための発表から、実際に体験できるゲームへの回帰。この予想外の発表にリンダの化粧は大崩れ。絶叫しながら身体が炸裂。血溜まりを残して消滅した。こうしてリンダによる行き過ぎたデジタルショウケースに終止符が打たれ、脳内世界から解放されたニーナはマーガレットとゼインと抱き合い、祝福。スタッフロールが流れる。過去3年間のイベントはクリフハンガー状態で終わりを迎えたが、4回目にして初めてのハッピーエンド。エスカレートし続けてきた一連の物語にひとつの区切りがついた。

なおTwitchでの配信時には、スタッフロール中の映像でSUDA51/須田剛一氏が登場し、『ノーモア ヒーローズ 3』と思わしき映像をチラ見せしていた(YouTube動画では差し替えられている)。

豪華ゲスト陣を呼び、これまで脇役であったマーガレットやゼインに多くの時間を割き、ドラマ世界を拡張した「Devolver Direct 2020」。E3中止およびデジタルショウケースの乱立という世相を切りつつも、例年のようなダークな終わり方ではなく、希望を覗かせるようなエンディングを迎えた。

スタッフロール後、復活を遂げたニーナに「この先、何が待っているの?」と問うマーガレット。それに対しニーナは「未来よ」と、カメラを向かって語りかける。これは物語の設定上、リンダがDevolverの未来を牛耳る世界線「未来の未来(Future’s Future)」からの脱却に成功したことも意味する。果たしてニーナが思い描く新しい「未来」は、どのようなものなのか。2021年の続編に期待したい。

過去イベント時には、ゲーム業界の未来を語る際、苦悶の表情を浮かべていたニーナだが、今回は闇を感じさせない実直な表情で終えた
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