『あつまれ どうぶつの森』で「便所コーデ」が熱い。トイレにひのき風呂、あるいは殺人現場

 
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『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』プレイヤーはトイレが好きだ。トイレに座ると「スッキリする」というギミックが話題になったが(関連記事)、本作のトイレは単なる小ネタにとどまらず、ハウジングの重要な一要素となっている。家具として便器の種類がやたら多いのだ。トイレの多様性はプレイヤーに無限のカスタムの可能性を与えており、ネットではオリジナリティあふれるトイレ自慢が盛んだ。なかにはトイレの域を超えたインフレ・ユニットバスも登場しており、混沌の様を呈している。

 

暮らしてみたい!トイレたち

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こちらのトイレはロイヤルブルーのタイルが眩しい一室。タオルのストックや掃除用品など必要最低限のものが備えつけられミニマルな印象だ。しかし決して無骨というわけではない。さりげなくしつらえられたアロマスティックや苔玉が、細かな部分に気配りのできる暮らしのゆとりを感じさせる。ピンクのラジオが遊び心を加え、ついつい長居したくなる空間を演出している。シンプルながら「無駄がある」という隙のなさ。この計算されたトイレルームを生み出すには30時間以上が費やされたという。まさに洗練、という一言がふさわしいトイレだ。

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この住民のトイレはユニットバス。以降に紹介する例もそうだが、海外ユーザーのトイレは便器・浴槽がセットの場合が圧倒的多数を占める。添えられた「うちよりカワイイトイレがあったら見せてみな」との挑発的なコメントを裏切らず、まるで小さな洋菓子店と見まごう仕上がりの一室だ。ピンクの壁紙がスイートさを演出する一方、インテリア点数としてはむしろ少なめで引き算の美学を感じさせる。可愛らしくも慎ましい、フレンチガールのひとり住まいのようなトイレといえるだろう。

 

ありえない!? ゴージャストイレ

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今度のトイレは一気にラグジュアリー路線だ。便器は左下にあるので見逃さないように。窯変の味わいを感じさせるハニカムタイルが高級感を演出。そして『あつ森』人気家具の1つ「ひのきぶろ」がユニットバスのランクをはね上がらせている。要所に飾られたグリーンやスワッグ、そしてしれっと準備されたティーセットから、家主がいかにこの一室でのひとときを重視しているかがうかがえる。さらに、あまりに堂々と置かれているのがピザ窯である。コメント欄では「風呂でくつろぎながらピザ食いてえなあ」といった羨望の声があり、うなづける……かもしれない。しかし、どうやらこの窯は風呂の炉をイメージして置かれているようだ。別のコメントからは「サウナストーブがうちにあるから、あげようか?」との申し出がある。これに対し主人は「それなら持ってるんだけど、部屋に合わなくて」と返答。確かに『あつ森』に登場する「サウナストーブ」はゴツゴツした焼け石が目立つデザインで、この部屋の雰囲気にそぐわないだろう。開かなければピザ窯とはわからないインテリアを代用とするのは、理解できるコーディネイトだ。部屋の主が同コメントに続けて曰く、「日本のプレイヤーがレンガのオーブンの用途を無視して、何にでもくっつけてたからマネしてみたよ」。

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これは、豪華なトイレといえるのだろうか。リッチな空間を演出するのに緑を取り入れるのは常套手段だ。日本のとある料亭は手洗いを和風庭園のように仕立てているという。だからトイレが庭と化すのはリュクスな方向性として間違っていないのかもしれない。それにしてもこのトイレは苔むしている。庭園というよりは遺跡のそれだし、どうぶつの森というよりもののけの姫を思わせる。ほぼ壁と同化している便器が右方の壁に備えつけられているが、水質がいささか心配になる仕上がりのトイレだ。

 

近寄りがたい、電波系トイレ

トイレや風呂場は癒しの空間であるだけではない。古くは「サイコ」がそうであったように、身近な密室は時に惨劇の舞台となりうる。そんなホラーな可能性を示して見せたのがこちらの作品だ。薄暗い部屋にしつらえられた簡素な便器と浴槽が、フロアに滴る赤黒い血の跡を嫌でも際立たせる。無論こちらの床は『あつ森』に登場するじゅうたんではなく、マイデザインで作られた代物。立ち入り禁止の看板が無機質な凄惨さを演出する一方、部屋にたたずむ住民の出で立ちも不気味だ。着物に黒子頭巾というファッションで、やや和製の耽美さも感じさせる。否応なく記憶に残る、具合が悪い日の夢のようなトイレだ。

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こちらは別種の恐怖である。絶対プライベートの聖域であるはずのトイレにあろうことか監視カメラが取り付けられているのだ。何より胸を悪くするのは壁に貼られたマイデザイン。4枚のデザインで表現されているのは、こちらを見つめる何者かの巨大な顔である。自由な生活を求めて無人島にやってきたはずが、いつの間にか強大な権力に監視されるディストピアになってしまったようだ。ついでに、洋式便器が仕切りもなく並べられているのも地味に嫌なポイント。

シンプルだ。洋式トイレがふたつ。しかし作り手の心境を想像するに、もっとも肝が冷えるトイレはこの部屋ではなかろうか。なぜ便器を向かい合わせたのか。背後にきっちりシャワーが備えられていることから、適当に家具を散りばめたわけではなく、ユニットバスとして成立させようとした意図は明らかだ。しかしこのトイレからはどこか決定的な「共感性の欠如」が感じられる。陰惨な殺人や監視社会よりも、もっとも背筋を凍らせるのはこうしたトイレを作ってしまう人間という存在ではないだろうか。

トイレのコーディネイトは圧倒的に海外・欧米圏で盛んな印象だ。洋の向こうのトイレルームがこれほどまでに多様なのは、トイレを意味する単語の1つ“bathroom”の概念が日本とずれていることに原因があるだろう。“bathroom”は多くの場合「風呂」と「トイレ」の双方を含んだユニットバスのような形を示す。湯船に浸かる習慣があまりない欧米では、便器や浴槽、洗面台といった水回りがひとまとめにされている場合が多いのだ。「多数の要素が複合した一室」という側面があるからこそ、バリエーション豊かなトイレ/浴室が生まれていると思われる。もっとも、部屋数が限られる邸宅にわざわざ“bathroom”を作らせてしまう不思議な魔力は『あつ森』独特のエネルギーといえるだろう。

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なおトイレの多様性を重視する本作においては当然「和式トイレ」も存在する。果敢にもこのオリエンタルなインテリアに挑戦する粋なプレイヤーも存在し、『あつ森』トイレの可能性はまだまだ広がりそうな見込みである。