Behaviour Interactiveによる人気鬼ごっこ対戦ゲーム『Dead by Daylight』。同作においては日本国内にも多くのプレイヤーを抱えており、すでに日本をテーマとしたチャプターが2つ存在。殺人鬼と生存者あわせて3人の日本人キャラが存在している。そんな人気ゲームの影響で、今「飛騨市」が脚光を浴びているようだ。日本人キャラの新スキンである法被がきっかけであるという。岐阜新聞などが報じている。
木村結衣
『Dead by Daylight』の14番目のチャプターとなる「呪われた血統」。日本をテーマとした同チャプターでは、生存者として新たに木村結衣が登場している。いかにも和風な名前のこのキャラは、もちろん日本人という設定。キャラクターのルーツはこうだ。結衣は幼少期からスクーターを愛し運転技術を磨きながらも、バイクレーサーになるという夢を理解してもらえず、流れ者に。都市に拠点を移し違法なストリートレースに身を投じ成功することで富と名誉を得るようになったものの、今度はストーカー被害に遭ってしまう。ストーカーから身を守ることに成功するも、大怪我を負ってしまった結衣。しかし自身が立ち上げた女性限定バイク乗りチームのメンバーからの支援を得て、再びストリートレースの勝者となる。軌道に乗りつつあった結衣だが、ある日、違法なストリートレース中に霧の森に迷い込み、殺し合いへの参加を強いられてしまう。
他生存者/殺人鬼と同様に特濃の設定が詰め込まれた木村結衣の出身は、岐阜県飛騨市である。飛騨市にてスクーターと共に育ち、名古屋に出ながらも、思い描いていた名古屋での生活とのギャップに苦しみながら、ストリートレーサーとして成功する。岐阜で幼少期を過ごし、飛躍するべく名古屋に出ていくという絶妙な土地勘も盛り込まれているわけだ。同作には、各キャラの衣装を変えるゲーム内スキンが販売されているのだが、1月30日に販売開始された「おぞましい祭り」にて、結衣用のユニークな衣装が実装された。背中にデカデカと「飛騨市」の文字が記載されたこのスキンは、どうやら法被のようだ。背中の飛騨市の存在感が目を引くが、デザインはかなり凝らされており、結衣の魅力を引き出すスキンに仕上がっているだろう。このド派手なスキンはすぐさまSNSなどで話題を呼んだ。
「おぞましい祭りコレクション」ということで、ケイト・キムユイ・ナースの新スキンが登場!
まあほぼほぼ買います!#DeadbyDaylight#DbD#デッドバイデイライト pic.twitter.com/Tl4w6lfNrN— DbDつぶやき (@DBD_tsubuyaki) January 29, 2020
殺意渦巻くフィールドにて、颯爽と輝く強烈な「飛騨市」の文字。カナダで生まれたゲームの世界の中に落とし込まれた日本の地名のロゴからは、奇妙さと愛らしさを感じられるだろう。国内外プレイヤーの注目を集めたこの法被については、飛騨市観光協会公式Twitterアカウントも反応。既存の『Dead by Daylight』コミュニティだけでなく、飛騨市を巻き込んで盛り上がりを見せることとなった。そうして、冒頭に述べた岐阜新聞にまで取り上げられることとなったようだ。飛騨生まれ飛騨育ちの飛騨市市長である都竹 淳也氏もFacebookにて、以下のように反応している。
オンラインゲームの「デッドバイデイライト」のキャラクターが「飛騨市」と書かれた衣装を身につけているという話題についての岐阜新聞の記事です。稲木悠司記者がカナダの会社にまで取材して記事を書いてくれました。
大人気ゲームだそうで、若い人たちに聞くと知っている人が多いです。先日、大学生の長男に聞いたら、当然のように「知っとるよ」と言ってました。
意外な形で話題にのぼった飛騨市。「君の名は。」などで部分的にスポットライトを浴びたことのある土地であるが、対戦ゲームのスキンにて注目が集まるというのは、なかなかないケース。飛騨市の自治体はどのように今回の反響を受け止めているのだろうか。飛騨市に訊いてみた。
反響はあった
実際に『Dead by Daylight』による飛騨市の盛り上がりの影響は感じられるようで、飛騨市役所観光課の担当者によると、飛騨市観光協会の公式Facebookアカウントのフォロワーは、スキンが実装される前の12月24日と比べると、2月24時点で10%ほど増加したという。2か月という短期間で、なかなかの伸び。またTwitterリアルタイム検索などで飛騨市を検索すると、このキャラクターに関連したツイートが多くヒットする影響で、「飛騨市」の名前がそのまま法被についていることは、知名度向上につながっていると感じているとコメント。どのような入り口でも、名前が出てくることは知名度向上につながるのだろう。
この法被の存在は、いつ認識したのかと尋ねたところ、新スキンが紹介された1月9日の時点で気付いていたという。担当者が「飛騨市」で検索をしていたからこそ、気付けたようだ。飛騨市観光協会公式Twitterアカウントは新スキンのリリース時にも反応しており、フットワークの軽さの秘訣は、広くアンテナを張っているところにありそうだ。また職場でもゲームを知っているものはいたといい、ファンも多いとのことは聞いていたと言及している。1月30日から話題にのぼったのは、前述したとおりだ。
一方で、飛騨市役所観光課の担当者は、今回の盛り上がりに“便乗しすぎないよう”に努めているという。飛騨市は「君の名は。」でも認知度向上を成功させ、アニメファンから飛騨市ファンを生むことができたという。その理由として、過剰な便乗はせずファンの気持ちを優先した取り組みを行ったことが大きかったと担当者は考えているそうだ。それゆえに、もし機会があったとしても、なんでもありの便乗は考えず、ファンの方々が楽しめるような企画が考えられたらいいと冷静な分析をしている。なお、せっかくなので飛騨市の宣伝をしてほしいとお願いしたところ、以下のコメントをいただいた。
「飛騨市は飛騨地域にある下呂温泉(下呂市)、飛騨高山(高山市)、白川郷(白川村)と有名な観光地と同じエリアにありますが、観光地化していない静かな町です。人々の祭り文化からなるおもてなしの心が随所にありゆっくりお過ごしいただける場所です。四季ごとの美しい風景とともに地元ならではのグルメもおすすめです。」
参考:
飛騨市の観光サイト「飛騨の旅」https://www.hida-kankou.jp/
なお、今回の盛り上がりについては『Dead by Daylight』開発・販売元であるBehaviour Interactiveも喜んでおり、シニアPR・イベントマネージャーのMarie Claude Bernard氏は岐阜新聞に対して「結衣は自分だけでなく他人のためにも危機へ立ち向かう、勇気あふれる人物。実在のモデルはおらず、設定は日本のサブカルチャーなどを参考にした」「古里の要素を含んだ衣装が飛騨市の皆さんの目に留まり、とてもうれしい」とコメントを寄せている。なお飛騨市の使用については、Behaviour Interactiveは事前の許諾をとっていなかったようだが、前出の市長の都竹氏は「連絡はなかったのですが、市にとってはチャンスなので、特に何も言ってません。いいことだと思っています。」とコメントしている。
結衣はゲーム内では、あからさまに“飛騨節”を出しているわけではなく、飛騨要素はあくまで背景設定のひとつである。ただし背景設定を踏まえると、確かな郷土愛は感じられるだろう。新スキンの登場によって爆発した彼女の飛騨市の愛が、意外な形で現実の飛騨に影響を及ぼしているのかもしれない。またある意味では、それほど『Dead by Daylight』が人気タイトルになったという現れでもあるだろう。なおBehaviour Interactiveは以前にも殺人鬼として山岡凛という日本人キャラを登場させている。彼女の出身地は香川県。絶妙なチョイスだ。結衣の岐阜県飛騨市出身といい、チーム内に日本のローカル感にこだわりを持つスタッフがいるのかもしれない。
『Dead by Daylight』はPC/PS4/Nintendo Switch向けに発売中。今月2月13日には、今回紹介した木村結衣など日本テーマのコンテンツを収録したPS4パッケージ版『Dead by Daylight-山岡一族の物語り-公式日本版』が発売されている。既存ユーザーだけでなく、今回の盛り上がりを見て同作に興味を持った新規ユーザーは、パッケージ版を手にとってみるといいだろう。