『ポケットモンスター ソード・シールド』発売前にゲーム内容をリークした人物がついに特定される。出所は“ファンサイト”だった

『ポケットモンスター ソード・シールド』においては、発売前にゲーム内容が流出するという事件が発生していた。その犯人が特定されたのだという。なんとファンサイトのレビュアーだったようだ。

『ポケットモンスター ソード・シールド』においては、発売前にゲーム内容が流出するという事件が発生していた。11月15日にゲームの発売を控えた11月頭より、新キャラや新ポケモン、そのほか過去作から登場する旧ポケモンなど、多岐にわたる情報が突如インターネットに流れ出した。そうした内容については、賛否両論が巻き起こっていた。株式会社ポケモンインターナショナルは、この情報流出について、サプライズを奪う行為であると訴訟を起こし、流出させた相手の特定を進めていた(関連記事)。そして今年2月に入り、どうやら流出させた人物が特定されたようだ。その人物はなんと、任天堂を応援し続けていたファンサイトのライターなのだという。任天堂から声明を受け取ったVG247などが詳細を伝えている。

情報流出の手段となったのは、公式ガイドブック。株式会社ポケモンは公式ガイドブック「Pokémon Sword & Pokémon Shield: The Official Galar Region Strategy Guide」なるものを作成しており、そのガイドブックに掲載された新ポケモンやポケモンのキョダイマックスの写真が、11月頭に特定のDiscordチャンネルに掲載。その後写真はredditや4chanなどでも拡散され、今回のリークへと発展していた。

そうした情報の出所は、ポルトガルにある任天堂ファンサイトのFNintendoなのだという。2008年に設立され、Wii Uの頃から任天堂を応援し続けてきたメディア。任天堂一筋で、扱うコンテンツも任天堂プラットフォームのみという徹底ぶり。同サイトは任天堂からも信頼が寄せられており、たとえば『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・イーブイ』でも発売の3日前にレビューを公開している。信頼関係があり、発売前にゲームROMをもらうような仲だった。

今回も任天堂はレビューを目的とし、FNintendoにゲームROMを提供していたのだという。任天堂とメディア間では、解禁日におけるガイドラインにおける合意が結ばれ、FNintendoはレビュアーにゲームROMとそれにまつわる素材、つまりガイドブックを送っていた。そこで悲劇は生まれてしまったようだ。そのレビュアーが、ガイドブックページのリークをおこなったのである。なお現在掲載されたであろうレビュー記事については消去されており、筆者について特定できない状況だ。

株式会社ポケモンは情報流出に特に気をつけており、ゲームコンテンツはセキュリティ度の高いコンピューターに保存。限られた人のみアクセスできる仕様にし、データ転送も暗号化。ファイルを開く際にも、情報開示における承諾をさせるつくりであったという。またオフィス自体も、キーカードによって厳しく入室が制限されていたとも。一連の情報が掲載されたストラテジーガイドについても、同様に厳密に保管されていたとも話していた。作成する業者とも秘密保持契約を結んでおり、保管場所への携帯電話やカメラの持ち込みは禁止されていた。厳重の体制をしていたが、信頼するメディアのレビュアーの裏切りによって、情報流出が発生する事態となった。

今回の騒動によって、任天堂がFNintendoとの協力関係を解消することも発表されている。FNintendoも本件における声明をサイトに出しており、「任天堂の信頼を裏切ってしまい申し訳なかった」と謝罪している。メディアの編集部は情報流出について注意していたものの、レビュー素材について正しく管理できなかったと懺悔。信頼関係を壊した自分たちとの関係を解消する任天堂の決断を、全面的に尊重するとコメント。今後は任天堂から製品を受け取ることも、イベントに招かれることもないと声明。最後に、任天堂や株式会社ポケモン、そして落胆した読者に対して深くお詫びし、謝罪文を締めている。

FNintendoより

FNintendoは、前述したように秘密保持契約が結ばれていたにもかかわらず、情報流出が発生したことについて、メディアとしての責任を問われたわけだ。任天堂とメディアの間では、関係解消というところで決着がついたようだが、任天堂とそのレビュアーについてはまた別だろう。一般的に発売前の製品をプレイする際には、秘密保持契約が結ばれる。それはメディア単位でも結ばれるが、個に対してもメディアを介して結ばれることが多い。情報を流出させたレビュアーは、そうした秘密保持契約を破ったことだけでなく、前述した訴訟でも被告として呼ばれることになるだろう。個人が特定されたこともあり、訴訟についても進展し、今後続報が伝えられていくと予想される。

任天堂は以前にもメディア/YouTuber向けの貸し出しROMがネットで流出させられた(だろう)といった憂き目に遭っている。そもそも任天堂はマガジン的なメディアとやや距離を置いており、独自の体制で新情報を伝えるNintendo Directが成功中。マガジン系という括りでいうなら、メディア依存が低い企業である。とはいえ、新作の発売前に各所メディアにROMを配り発売日にレビューを掲載させる行為は、やはり盛り上がり感があるのか、現在でも続けられている。株式会社ポケモンはさまざまなメディアを巻き込んで話題づくりをおこなっているものの、今回のようなケースが出てくれば、任天堂や株式会社ポケモンは今後マガジン系のメディアとの付き合い方を改めて考えることになりそうだ。
【UPDATE 2020/2/12 9:30】
レビュアーに渡していた素材について追記。また「老舗」という表現が適切ではなかったため、タイトルおよび本文から削除。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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