香川県がゲーム規制に対する意見を求める。対象は、香川県居住者もしくはネット・ゲーム業界関係者

香川県は1月23日、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案」について、パブリックコメントの募集をスタートした。意見提出の対象となっているのは、香川県内に住所を有する方と、第11条に規定する事業者。第11条に規定する事業者とは、「インターネットを利用して情報を閲覧(視聴を含む。)に供する事業又はコンピュータゲームのソフトウエアの開発、製造、提供等の事業を行う者」のことであり、通信事業者やゲーム関連事業者などが対象となっている。パブリックコメントの受付期間は、1月23日から2020年2月6日まで。タイトルに「パブリックコメントのコメントへの意見」と明記の上、必要事項を記入し、郵送・持参・FAX・電子メールで意見が募られている。寄せられた意見の概要及び、対する県議会の考え方は2020年2月下旬に公開される予定だ。

香川県議会HPのスクリーンショット

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案」は、インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用により、子供の学力・体力の低下に加え、ひきこもり、睡眠障害、視力障害などの身体的問題も引き起こしているという指摘を根拠に、利用時間制限や保護者への責務、ゲーム関連事業者への協力が盛り込まれたもの。具体的には、子供のネット・ゲーム依存症対策として、18歳未満の子供に対し、1日あたりのコンピューターゲーム利用時間を60分(休日は90分)までに制限し、スマートフォンなどの使用についても中学生以下21時、高校生は22時までと定める。ゲーム関連事業者などは、自主的な規制や香川県民がネット・ゲーム依存症に陥らないために必要な対策を実施することになる。

平日60分の利用時間制限については、当初は「子どものネット・ゲーム依存症につながるようなスマートフォンなどの使用」を対象に利用時間の制限を定める内容だったが、1月20日にコンピューターゲームを対象とした内容へ変更。罰則は定められていないものの、2020年4月1日の施行を目指し、2月に開催される定例議会に条例案が提出予定だ(ITmadia NEWS)。本条例について、香川県議会委員長の大山一郎氏は「ギャンブルやアルコール依存などと同じように国レベルで法制化する必要があるが、議論が進んでいない。現場の我々としては、ネットやゲーム依存が相当進んでいると肌で感じており、法制化を待っていられない」と昨年10月に語っている(朝日新聞デジタル)。

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昨年10月実施の第2回検討委員会に提出された「ゲーム、インターネット依存に関する条例に盛り込むべき内容(案)」によると、条例の目的はゲーム・インターネット依存症の危険性についての理解を広く共有し、子供や若い世代を同依存症の危険から守る予防的取組を推進し、同依存症によってすでに影響が出ている場合のサポート体制を関連企業の協力も含め整備することにあるという。背景としては、WHOがゲーム障害を正式な疾患として認定したこと、アジア各国において規制の強化などがすでに展開されていること、同依存症により学業や社会生活に深刻な支障が生じているケースが増加していることが挙げられている。

田口隆介氏の投稿のスクリーンショット

「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案」に対し、ネット上には数々の意見も表明されている。香川県庁健康福祉部の職員である田口隆介氏は、Facebookに実名で投稿した記事内において、個人的な意見だと前置きした上で、ネット・ゲームの規制ありきで一方的に進められており、強い危機感を覚えたことから条例制定に反対。親子間の主体的な調整や納得を得られないまま、一方的に時間制限を押し付けることにより「子供が納得できる約束を自発的に結び、守る機会を奪う」「親にとっても家庭のルールを第三者によって一方的に決められ、家庭教育の主体性・自己決定権の侵害を受ける」など、各家庭で決めるべき事項に介入しており、自己決定権を侵害しているなど、いくつかの問題点を指摘し、香川県の衰退も招きかねないことも挙げつつ真っ向から反対している。スマートフォン利用時間と学力の因果関係への疑問や、使用を一律規制することの短絡さ、中国・韓国の規制によりゲーム規制の実効性が薄い見方も示す。

同氏のように、家庭に干渉することになり、権利を侵害しているという意見は散見されるが、change.org上では同様の見解を示した上でネット・ゲーム依存症対策条例案の撤回を求める署名活動が展開されており、記事執筆時点で800人以上の賛同者が集まっている。

change.orgのスクリーンショット

大田区議会議員おぎの稔氏を含めた東京都内の地方議員5名による「オタク議員集団」も、同氏の公式HP内で意見表明を行っている。オタク議員集団は、香川県議会が子供たちの健全な発達を願い、条例を制定しようとする努力に敬意を示す一方、ゲームを含む多様なコンテンツは貴重な日本の文化であり、スマホ・ゲームなどによるインターネット利用は楽しむだけでなく、学習端末や記録・生活ツールとして、生活になくてはならないものだと主張。コンテンツ文化とインターネット利用の健全な発達のため、条例による規制が必要かつ最小限となるよう求めている。

投稿内では、18条(利用時間制限などを盛り込んだ箇所) に対して、ルールは家庭で決めるべきことであり条例になじまないのではないかとの指摘や、インターネットがすでに生活の一部であることから、根拠に乏しい時間規制を避けるべきであるという見解。第6条(保護者の責務)に対し、子供と向き合う時間や愛情が依存に繋がると書かれていることについて、因果関係が明らかとなっていないこと。ゲーム依存に対して、定義がはっきりしていないことや、オンラインゲームの射幸性が高いとの記述について、オンラインゲーム全体を射幸性が高いと捉えるのは実態に即していないとコメント。また、条約全体に対し、ネット・ゲーム依存症については不明なことが多く、依存症を防止するための規制を検討する材料が揃っているとは言い難く、条約内で原因とされている親子関係についても科学的根拠に欠けると指摘している。

大田区議会議員おぎの稔氏のサイト内より

同様に、インターネット依存やゲーム疾患について懐疑的な見解もある。東洋英和女学院大学の准教授である小寺敦之氏は、2013年に公開された「インターネット依存」研究の展開とその問題点」内において、インターネット依存の学術的検討がほとんど行われていないこと、インターネット依存が共依存である可能性などを示し、数々の問題点を指摘。また、2018年2月には、オックスフォード・インターネット研究所研究責任者のアンドリュー・プシビルスキ氏が、英ガーディアン紙内の記事内において、ゲーム障害を疾患と見做すWHOの試験的な動きは時期尚早であり、既存の研究に方法論的誤りがあると指摘している(ニューズウィーク日本版)。

Twitterを代表としたSNSでも、曖昧な根拠に基づいた香川県への取り組みに疑問を呈する声が連日寄せられている。そうしたフィードバックを受けて、インターネットからゲームを対象に変更されたのかもしれない。ただし冒頭に述べたように、意見提出の対象となっているのは、香川県居住者もしくは通信もしくはゲーム業界に従事する関係者のみとなっている。

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