ゲームは1日1.5時間まで、中国政府が未成年に極めて厳しい「ゲーム規制」を施す。さらに侵食される中国国民の個人情報保護

中国の政府機関である国家新聞出版署が先週、「未成年者のインターネットゲーム依存を防止するための通知」(中国語:关于防止未成年人沉迷网络游戏的通知)を発表。実質的に、国家レベルでゲーム規制がかけられることが定まった。この通知によると、未成年のゲーム中毒を防ぐために、ゲームサービスを提供する企業が以下のことを守るように義務付けにしたようだ:

1.すべてのゲームで、実名を登録しなければならない。ここは概ね、中国国民が全員持っている国民IDナンバーを使って登録する必要があることを指している(ナンバーには生年月日の情報がある)。登録しないユーザーには、サービスを提供してはいけないと規定した。

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2.未成年に対して、ゲームをプレイする時間の規定を厳格に定めた。毎日22時から翌日8時までの間は、未成年相手にサービスを提供してはいけない、休日・祝日は一日3時間まで、平日は一日1.5時間までとも定められている。

3.未成年に対して、ゲーム内課金する金額の限度額を厳格に定めた。8歳未満の児童に対して課金を禁ずる。8歳から16歳は一回50元までしか課金できない(約777.79円)、16歳から18歳は一回100元までしか課金できない(約1555.58円)、月間の課金は累計400元(約6222.32円)までだ。

4.年齢によるレーティングシステムを模索し、導入する。しかしここでいうレーティングシステムは、18歳以上というレーティングが存在しない。

 

インターネットゲーム依存症を「治療」するという名目で、親が子供を施設に送り込み、子供が虐待を受け、死亡するケースが絶えない。(関連記事

この“通知”を発表した国家新聞出版署の前身「国家新聞出版広電総局」は、中国国内にて正式に販売されたすべての出版物を審査する機関である。中国でゲームをリリースするために獲得しなければならない「ゲームライセンス」もこの国家新聞出版署が審査し、発行する。

ちなみに、この通知はインターネットゲームを対象にしているが、中国政府の見解によると、事実上ほぼすべてのビデオゲームが「インターネットゲーム」に当てはまる。すでに廃止となった中国政府文化部が制定した「インターネットゲーム管理暫定措置」の解釈によると、インターネットに接続するだけで「インターネットゲーム」とみなされるのだ。つまり、ダウンロードする行為も含まれており、ダウンロードしたあとインターネットに接続しなくとも「インターネットゲーム」に分類される。

ここで注意すべきことは、この「インターネットゲーム管理暫定措置」と上記の通知は、両方とも法的な効果があるものの(政府、主には国家新聞出版署がこれらの規定に従って企業を管理し、規定に反した企業を罰することができる)、厳密的に言うと両方とも法律ではない。政府が一方的に決めて、執行するものである。実際、政府が“未成年者を守るために”ゲームに規制をかけるのは今回が初めてではないが、はっきりとゲーム時間、課金限度まで規定したのはこれが初めてである。

以前の記事でも触れたが、今回政府がゲーム時間を細かく規定する前に、中国ゲーム産業をリードするテンセントがすでに「未成年者を守るために」率先として自らゲーム内に規制をかけた(関連記事)。しかし今回は、政府から公式に発した布告のため、中国にいるゲーム会社すべてに当てはまることになるのだろう。

今回の制限の背後には、中国で近年ますます問題になっている「農村部の留守児童」が背景にあると思われる。上記の関連記事にも詳しく記述したが、都市部に出稼ぎに行っている親が、中国の戸籍制度によって子供を余儀なく田舎に残した。教育施設がほとんどない農村部(図書室すらない小学校も少なくない)では、子供の娯楽はスマホしかない。子供の遊び場を作ることなく、戸籍制度を変えず、子供を親のそばに居させるような施策を検討することなく、ゲームだけを取り締まることで、果たして子供のゲーム依存症は改善されるのか筆者は疑問だ。

留守児童たち Image Credit : Fsight

また、未成年を守るためだけに、すべてのユーザーに実名認証を課せることが非常に危険であると筆者は考えている。中国における国民IDナンバーはもっとも重要な個人情報であり、実際IDナンバー一つで銀行口座、融資、すべてのSNSの登録、電話番号などが開設できるし、変更することも可能だ。また、IDナンバーで個人を簡単に特定できるため、インターネット上の発言も警察の取締対象になることがしばしばある。中国のSNSでも、筆者のような懸念を抱く意見が散見される。しかし、実際中国で正式サービス中のほぼすべてのゲームにすでに実名認証が導入されている現在、中国のユーザーもまたこのシステムに慣れ始めている。実名認証はこれからもっと一般的になっていくのだろう。個人情報の保護がほぼゼロであるのが、今の中国の実態。そうした事実が、今回のゲーム規制からも垣間見えるだろう。

現地(中国)の“法律”を守る上では、海外ゲームも実名認証しないと課金できないシステムを導入せざるをえない。

しかし、今現在「実名認証」を把握する方法は国民IDナンバーしか存在しないことから、この通知によって、本当に未成年かどうかを特定できるのかはまだわからない。なぜなら、たとえ未成年だとしても、親か祖父母の国民IDナンバーを使えば、簡単にゲームをプレイすることができるのだ。また、インターネットを介して、他人の国民IDナンバーも簡単に検索できる(使えるナンバー数には限度があるが)。ゲームを禁ずることで未成年を守れるかどうかはともかく、ゲーム時間制限、課金制限がすべて国民IDナンバーに基づく今のこの規定では、果たして本当に未成年者を「守れる」のかは甚だ疑問だ。eスポーツが栄えつつある中国では、共産党政府のゲーム嫌いが緩和されることはあっても、絶えることはしばらくなさそうだ。

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