『PAYDAY』販売元Starbreeze、資金不足により会社存続の危機。残された時間はあと僅か


『PAYDAY』シリーズなどで知られるパブリッシャー/デベロッパーのStarbreezeは5月7日、2019年第1四半期の決算を発表した。この中で同社は、今後12か月の運営をおこなうための十分な資金がなく、仮に追加資金を調達できなければ、2019年中頃までには流動資産が不足する事態に陥るだろうとし、会社存続の危機に直面していることを明かしている。

Starbreezeは昨年11月、傘下のOVERKILL Softwareが開発を担当した、Robert Kirkman氏の人気コミック「The Walking Dead(ウォーキング・デッド)」をベースにした4人協力プレイ対応FPS『OVERKILL’s The Walking Dead』をPC向けにリリース。同社にとって『PAYDAY 2』以来最大のタイトルであるとしていたが、ゲームの評価は芳しくなく、売れ行きも事前予想を下回る。

結果的に、「The Walking Dead」のIPを保有するSkybound Entertainmentから、求める水準にも、約束されていた品質にも届いていないとして契約を打ち切られることとなり、同作はSteamストアから取り下げられてしまった(関連記事)。Starbreezeは、これを不服としSkyboundとの協議を続けており、現時点ではプロジェクトは完全に終了したわけではないようだが、両社による合意を見ることができなければ、PC版の販売再開もコンソール版の発売もないだろうとしている。なお、同作はPS4版がスパイク・チュンソフトから国内発売予定だが、現在無期延期状態にある。

『OVERKILL’s The Walking Dead』の販売不振を受け、Starbreezeは事業コストの削減を迫られることとなり、VR事業を除くゲーム開発・販売のコアビジネスへの注力を発表。そして、昨年12月にストックホルム地方裁判所に再建計画を申請する。同時にCEOの交代もおこなった。それから同社は、OVERKILL Softwareを含む開発部門やパブリッシング部門などにおける組織再編に取り組んできたが、2019年第1四半期は約1億6700万スウェーデン・クローナ(約19億円)の最終赤字に。同地方裁判所の指示により、再建計画は今年6月まで延長されている。

資金が必要なStarbreezeは資産の売却を進めており、これまでには『System Shock 3』の販売権を開発元に売却。『Civilization IV』のリードデザイナーが手がける新作ターン制ストラテジー『10 Crowns』についても、2019年第1四半期終了後に、その販売権を開発元に買い取ってもらっており、負担してきた開発費の回収を見込んでいる。5月12日には、インドにある子会社Dhruvaも売却した。Dhruvaは、『Marvel’s Spider-Man』や『Forza』シリーズなどのアートワークの受託開発をおこなってきた会社だ。一方で、Double Fine Productionsが手がける『Psychonauts 2』の販売権については保有したままのようだ。同作は2019年内の発売が計画されている。

Starbreezeは今年4月、すべてのDLCを同梱する『PAYDAY 2: Crimewave Collection』をコンソール向けに突如リリース。またSteamでは、現在フリープレイおよび「Ultimate Edition」の8割引セールを実施している。実は同社の2019年第1四半期の売り上げは『PAYDAY 2』だけで半分以上を占めている状況で、『OVERKILL’s The Walking Dead』がストアから取り下げられたいま、とにかく『PAYDAY 2』をたくさん売るしかないという焦りのようなものが透けて見える。

その『PAYDAY』シリーズについては、まずモバイル向けの『PAYDAY Crime War』が予定されており、Universal Gamesと5年間の販売契約を締結し道筋がついている。一方で、ファンからもっとも期待されているシリーズ最新作『PAYDAY 3』はまだ開発初期段階だという。また、ほかにもSmileGateと取り組む『Project Crossfire』や、Nintendo Switch向けの『Geminose』なども計画されている。そうした発表済みの作品についてStarbreezeは、まずは会社の再建計画を遂行し、財務状況を強化する必要があると述べるにとどめた。

冒頭で述べたとおり、Starbreezeにはあまり多くの時間が残されておらず正念場を迎えている。同社の新CEO Mikael Nermark氏は、Starbreezeは現在難しい状況にあると認めながらも、すべてのチームと連携しビジネスを進めていくと強調。そして、強力な資産である『PAYDAY』を基盤に、同社の将来を築いていくとコメントしている。