ヒーローシューター『Gigantic』7月サービス終了へ。『Paragon』に続き、ジャンルに新しい光を照らした後続作品がプレイヤー争奪戦に破れる

Motigaは1月31日、『Gigantic』のサービスを2018年7月31日付けで終了することを発表した。Epic Gamesが開発するF2Pの三人称視点MOBA『Paragon』も先日サービス終了が発表されており、マルチプレイ対戦ゲームがプレイヤーの確保に苦心している背景が見て取れる。

Motigaは1月31日、『Gigantic』のサービスを2018年7月31日付けで終了することを発表した。正式リリースを迎えた2017年7月からおよそ1年でのサービス終了となる。なお本作はF2Pのタイトルであり、通常であればヒーローのアンロックに無償/有償ゲーム内通貨を要するが、ゲーム内ショップの閉鎖に伴い、全ヒーローが無料で解放されている。

『Gigantic』は2017年7月にF2Pのタイトルとして正式リリースを迎えた、三人称視点のヒーローシューターである。対応プラットフォームはPC(Arc/Steam/Microsoft Store)および海外Xbox One。MOBA形式のルールにて、アクション性の高い5対5のチーム戦が味わえる。操作できるヒーローは、近接戦闘に特化した格闘家ガエルや、フラスコを投げて味方を回復する錬金術師のおじさんなど、どれもチャーミング。MOBA、三人称視点アクション/シューター、どのジャンルから来たプレイヤーでも馴染めるよう、幅広いプレイスタイルに対応している。

※2017年7月に公開されたリリース・トレイラー

レイオフを繰り返すも、最後まで諦めず

2014年7月に発表された当時は、複数のジャンルをブレンドしたユニークな作品として注目を浴びていた『Gigantic』。ゲームのルールは、敵チームのヒーローを倒したり、陣地を奪い取ったりすることでヒーローのレベルを上げ、敵拠点の破壊を目指すというもの。骨組みはMOBAであるが、簡略化を図るためミニオンという概念が取り除かれている。また防衛ポイントは固定の施設ではなく、ガーディアンという生きた巨大生物。プレイヤー5人+ガーディアン1体で戦うという変則的なチーム対戦が見どころであった。

当初はMicrosoftがパブリッシャーとなる予定であったが、資金切れにより2015年12月、2016年2月と大規模なレイオフを繰り返すことになる。一度は役員3人を除く全従業員(75人)を一斉に解雇するというスタジオ存続の危機に陥ったが、2016年5月に中国のPerfect World Entertainmentがパブリッシャーとして名乗りをあげ、九死に一生を得る(PCGamer)。なおMotigaのCEOであるChris Chung氏は後日、Pefect Worldにスタジオを買収されていたことを明かしている(Destructoid)。

1月のアップデートで追加された最後のヒーロー「T-MAT」

紆余曲折ありながらも2016年12月にオープンベータを開始。2017年3月にも人員削減に踏み切り、なんとか2017年7月の正式リリースを迎える。だが2017年11月に再度のレイオフが決行され、その後はメンテナンス用の少数チームだけで運営を続けていた(Kotaku)。サービスを継続する方法をギリギリまで模索したものの、十分なプレイヤーを集める術が見つからず、今回の判断に至ったという。公式のアナウンスでは、「最善を尽くしましたが、競争相手の多い市場の中でブレイクを果たす方法を見つけることができませんでした」と無念をにじませている。

プレイヤー人口を維持する難しさ

年明けよりサービス終了のアナウンスが続いており、つい先日1月25日にはEpic Gamesが開発するF2Pの三人称視点MOBA『Paragon』についても、サービス終了が発表されている(4月26日クローズ)。こちらの作品でも、プレイヤーを集める道筋を見つけられなかったと伝えられている。発表直前の1月18日には、Epic GamesのコミュニティマネージャーであるEdgar Diaz氏がRedditに投稿。アップデートを重ねることでプレイヤー人口を増やそうと試みてきたが、依然として新規ユーザの継続率が低く、「持続可能なゲーム」のレシピというものを編み出せていない。そんな開発チームの悩みをコミュニティとシェアしていた。

『Paragon』

Diaz氏は、マーケティングやマネタイズ手段ではなく、あくまでもプレイヤー人口を拡大できないことが問題であると強調している。前者についてはある程度のノウハウがあるものの、後者についてはEpic Gamesと言えども成功の方程式をつくれなかった。『Gigantic』と『Paragon』はいずれもプレイヤー人口に悩まされており、魅力的なマルチプレイ対戦ゲームがたくさん世に送り出されている近年のゲーム市場において、有限であるプレイヤーの時間を確保することの難しさが窺える。

『Gigantic』は複数のプラットフォームで配信されており、そのうちSteamだけでも所有者数は150万近くにまで伸びている(SteamSpy)。ゲームの存在を知ってもらうところまではクリアしているのだ。しかしながら、正式リリースの2か月後には平均同時接続ユーザ数が3桁台にまで落ちている。『Paragon』と同じようにマーケティングではなく、継続率の低さがネックとなっているようだ。

『Paragon』から『Fortnite』へ

なおDiaz氏は上述したRedditの投稿にて、『Paragon』の開発メンバーの多くは同社の『Fortnite』チームに転属済みであることを明かしている。『Paragon』はMOBAブームの幕開けから数年経過したあとで生まれたが、『Fortnite』はバトルロイヤルブームの最中に「F2PかつPC・コンソールに対応」という市場にぽっかり空いた穴を埋めるべく、いち早く名乗り出た。そして『Fortnite』独自の建設メカニックやコミカルなガジェットにより『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』との差別化を図り、累計プレイヤー数4000万人を超えるメガヒット作品へと成長を遂げた。

『Paragon』も『Fortnite』も先駆者のいるジャンルの中で新しいことに挑戦している点は同じ。だが後者は市場が飽和状態になる前に手を打ち、プレイヤーを囲い込むことに成功した。Epic Gamesが『Fortnite』のバトルロイヤル展開で見せたスピードとタイミングこそが、「持続可能なゲーム」をつくるための、重要な材料なのかもしれない。一方、大規模なレイオフが実施されたMotigaが『Gigantic』のサービス終了後にスタジオ再建を図るのか、それとも閉鎖へと向かうのか、今後の行方も気になるところだ。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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