PCゲームを家庭用ゲーム機やモバイルデバイスで遊べるアプリ「Rainway」オープンベータ実施迫る。高まる期待と拭えない疑念


PCゲームをさまざまなデバイスでプレイすることを可能にするアプリ「Rainway」公式Twitterは、同アプリのオープンベータテストを1月20日より実施すると発表した。今回のオープンベータの対応プラットフォームは、Webブラウザのみ(短期間のモバイルデバイス対応も示唆)となっているので注意してほしい。

「Rainway」は、前述したようにPCゲームをさまざまなデバイスでプレイできるようになるというアプリだ。価格は無料。対応予定のプラットフォームはWebブラウザ、Mac、PlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch、iOSおよびAndroid。必要なものはゲームが動くPCと「Rainway」、そして対応プラットフォーム。PCで動作させているPCゲームを、ストリーミングにより該当デバイスに映しだす(操作も可能)という仕組みだ。つまり、相応のスペックのPCがまず必要になることを留意してほしい。

「Rainway」のストリーミングでは、遅延の生まれにくい独自技術を使い、場所と方法を問わずPCゲームが遊べる体験を目指すという。快適に遊ぶためには5GHz帯域に対応したWi-Fi環境と、DirectX 11に対応したGPUを搭載するPCを用意する必要もある。要求される環境を整えるのは容易ではないが、ニンテンドースイッチやモバイルデバイスでPCゲームを遊ぶことができるという点で、大きな期待を背負っている。1月10日には同製品を紹介するトレイラーも公開し、サービス開始にむけて順調に見える。ただこのアプリが、そのまま宣伝文句通りのことを実現するかは疑わねばならないだろう。

プロモーションへの疑念

「Rainway」とニンテンドースイッチは切り離せない関係にある。初出の時から「ニンテンドースイッチに対応予定」という一文が弊誌も含めたメディアの注目を集めた。開発者であるAndrew Sampson氏もそれを把握しているようで、『オーバーウォッチ』や『ニーア オートマタ』、『Cuphead』といった作品をニンテンドースイッチ上で動かす「Rainway」のデモ映像を公開し、注目を集め続けた。今回公開されたトレイラーでもニンテンドースイッチを大々的に取り上げている。

しかしながら、ここまでニンテンドースイッチをプロモーションのツールとしながらも、同ハードへの正規な対応については「いい話し合いができた」といった示唆的な発言のみを繰り返すほか、当然任天堂およびニンテンドー・オブ・アメリカもこのアプリについて言及していない(関連記事)。ニンテンドースイッチのeショップにおいてアプリ配信自体は始まったものの、ニコニコ動画やHuluなどいずれも大手のもの。近い将来に、個人開発レベルのアプリが配信されるとは現段階では考えづらい。こうした不透明な状況ながら、全面的にニンテンドースイッチ対応をアピールし続けることに疑問を呈するユーザーは少なくない。

トレイラー内でも各タイトルを大々的に使ったプロモーションをおこなっている。さらには同映像内では屋外で『ニーア オートマタ』をスムーズにプレイする場面などが映し出されているが、ストリーミングという環境を考えると、こうした体験をできるユーザーは限られているだろう。PVにかぎらず、Twitter運用も含めて開発者による誇大広告感は否めない。アプリは無料であるが氏はこれまでSNSにて募金を示唆することもあり、将来的な商用利用も視野に入れていることを垣間見える。そうなれば、ニンテンドースイッチを大々的に扱う意味も大きく変わってくるだろう。

アプリへの疑念

また「Rainway」がどれほどのパフォーマンスを出せるかについても疑問が残る。というのも、まず「Rainway」は当初は5月にベータを実施予定であったことを忘れてはいけない。2度の延期を経た6月に、約半年先である11月25日にベータを実施すると予告。それも結局さらに延期し最終的に1月20日の実施が決まった。今回のベータは直前に実施を発表されているので、さすがにこれ以上伸びることはないと思われるが、氏の開発力自体に疑問が残る。

https://twitter.com/RainwayApp/status/919521490160189442

オープンベータ対象のプラットフォームも基本的にはWebブラウザのみ。Webブラウザ向けのストリーミングには、家庭用ゲーム機器にも応用できる共通の技術はあると思われるが、そうスムーズにはいかないだろう。各デバイス向けのアプリケーションの開発の手間を含めると、現在Webブラウザを試している段階ならば、家庭用ゲーム機への実装は程遠いと言わざるをえない。さらには、ストリーミングという個々の環境を考えても激しいアクションゲームを快適に動せるのはごく一部。にもかかわらずSampson氏は「60fpsで快適に動く」と積極的に発言しており、実現性に依然として不安が残る。

「Rainway」は夢のあふれるアプリであるが、その実現性には疑念の余地が多く、それを覆せる証拠が生み出せていないのが現状だ。それでも「Rainway」はPCゲームに可能性に幅をもたらすアプリであることには間違いない。現状を考慮すると、ベータテストが迫る現在でもなお、同アプリを介してPCゲームを他デバイスで快適に遊べる未来はかなり遠そうだ。Sampson氏はこれまで「プロモーション」で良くも悪くも多くの人々を巻き込んできたが、これからは実際にユーザーに作り上げたアプリを使ってもらうことにより、その真価が問われることになるだろう。


国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)