任天堂の新キャラ「キノピーチ」は何者なのか?キノコ族から人間へと変異し生まれた謎のキャラにコミュニティは混乱


任天堂は9月14日、「Nintendo Direct 2018.9.14」を通じて『New スーパーマリオブラザーズ U デラックス』を発表した。同作は、Wii Uで発売された横スクロールアクションゲーム『New スーパーマリオブラザーズ U』に、新要素を導入しNintendo Switchへと移植するタイトルだ。使用可能キャラクターとしては、これまで使用できたマリオ、ルイージ、キノピオに加えて、新たにトッテンとキノピコが追加される。こうしたキャラクターに加え、ルイージが主人公の『New スーパールイージ U』も丸ごと収録される、大ボリュームになったパワーアップ版になるというわけだ。3Dマリオ作品も人気であるが、横スクロールの「マリオ」も絶大な人気を誇る。コミュニティはパワーアップ版の登場を喜ぶ声であふれたが、一部の人々は異なる点に注目しているようだ。

キノピーチは何者だ

使用可能な新キャラクターとしてトッテンとキノピコが追加されると前述したが、キノピコには特別な能力がある。それは、新アイテムスーパークラウンを入手すると、キノピーチと呼ばれるキャラに変身するというもの。キノピーチは、2段ジャンプに加え、ふわふわ空中を移動できたり、落ちても一度だけ自動で戻ってくることができたりと、機能は多彩。ゲーム内キャラクターとしては、非常に高性能でありプレイを助けてくれそうという印象が残るのだが、問題なのはキャラクター設定だ。キノコ族の愛らしいキャラクターとして徐々に「マリオ」シリーズに定着しつつあったキノピコが、何の説明もなく、アイテムをとることで、キノコの冠をかぶった人間らしき姿に変異するという現象が、人々を混乱に陥れた。ResetEraなどコミュニティで議論されている様相を、Game InformerKotakuPolygonが伝えている。

現時点でわかっていることは、キノピコがスーパークラウンをとることでキノピーチへと変化するということのみ。空中を飛ぶという性能や容姿はピーチを強く思わせる。ただ、キノピコとピーチはこれまでの作品で、遺伝や血縁をにおわせる描写がなく、突如として“キノコ族から変異したピーチに似た生き物”が生まれてしまったわけだ。名前はキノピコ(Toadette)とピーチ(Peach)の両方をとったキノピーチ(Peachette)であるが、実際はキノピコでもなく、ピーチでもない。そもそも、どの種族かもわからない。得体の知れない正体に、無邪気な外見に反して恐怖感を覚える人々もいるわけだ。

 

そもそもピーチはキノコ族説

物事をややこしくしているのは、ピーチの初期設定だ。キノコ王国の姫、そしてヒロインとして定着しているピーチ姫であるが、海外で『スーパーマリオブラザーズ』が発売された際には、Princess Toadstool(毒キノコ姫)という名前がついていた。毒キノコ姫をクッパ(Bowser)から救うというプロットになっていたわけだ。しばらくはその名前で定着していたが、『Yoshi’s Safari(ヨッシーのロードハンティング)』にてその名前を「Peach」と表記。その後表記が統一されないことが続いたが、『スーパーマリオ64』を境に海外でも「Princess Peach」という名前が定着した。

こうしたこともあり、そもそもピーチはキノコ族(Toads)と関連がありそうな名前として認知されてきた背景がある。キノピーチは、散らばっていたピースをつなぐヒントでもあったわけだ。ここから、ピーチはそもそもキノコ族であり、彼女の血族だけ特例として人型に進化したという説を導き出すこともできる。もっといえば、北米版『スーパーマリオブラザーズ』のマニュアルには、キノコをかぶったPrincess Toadstool、そして同じくキノコをかぶった父親の姿が確認できる。両親もまたキノコ族との関わりがあった。もともと一族はキノコ族で、ピーチのみ特異な進化を見せたという突き詰めた結論を出すことが可能だ。

Image Credit : The Almighty Guru

とあるユーザーは「キノピーチは、数千年にわたりキノコ王国を統治していたが、統治に疲れ普通のキノコ族として暮らすことを決めた。平穏に暮らす時に変えた名前がキノピコ。先祖のDNAを使い、自分のかわりとなる人物を作った。それがピーチ。」との推論を投稿し、Twitter上で支持を得ている。昔は、キノピコとピーチはひとりの人物であり、その名前がキノピーチだったという説だ。

 

マリオたちもまたキノコ族だった説

もうひとつ考えられているのが、そもそもマリオやルイージたちもキノコ族であり、ピーチと共に人に進化した姿であるという説だ。ピーチの先祖がキノコ族だったという説を、拡大および派生させた考えである。マリオたちがキノコを食すだけで身体やその性質が大きく変化するのは、祖先自体がキノコ族であったからであり、だからこそキノコが彼らにとって特別な食べ物であるという理論である。またさらには、むしろキノコ族自体が進化系であり、キノコ族から人に進化するのではなく、人がキノコ族に進化するという逆説的な発想も存在している。スーパークラウンをとることによって、進化するのではなく退化しているという考え方は、意外性に富んでいるといえる。

しかし結局のところ、情報が少なすぎるので、有力といえる説が存在しないのが正直なところだ。ただの一枚の画像で議論できるエネルギーの出処もまた謎に満ちているが、コスチュームレベルの変化が多かったマリオの変身に比べて、“種”自体を変異させるキノピーチの姿はそれだけ衝撃的だったのだろう。『スーパーマリオ オデッセイ』で登場した、他生物の能力をコピーするスキルを持つキャッピーと関連付ける意見なども出ながら、SNSのユーザーやメディアは推測を続けている。

ちなみにキノコ族といえば、昨年『スーパーマリオ オデッセイ』に登場するキノピオが、ヘッドフォンをかぶって音楽を聞くという一幕があり、これをきっかけに「キノピオの頭は、被りものか体の一部か」という謎が生まれ、激論がかわされた(関連記事)。これについては、今年2月に同作のプロデューサーである小泉歓晃氏より「頭なんですよ。」という公式な見解が告げられた(関連記事)。その仕組みは謎のままであるが、この議論には終止符がうたれている。ただし、キノピーチにまつわる謎は、2択で回答できるほどシンプルではない。その回答における難易度は高く、サービス精神のある任天堂とあれど、答えを出してくれるとは限らない。かわいらしい容姿とは裏腹に、その正体に関する恐怖や好奇の視線が注がれるキノピーチ。この謎が解明される日は、はたして訪れるのだろうか。