性差別文化を告発された『LoL』のRiot Gamesが、謝罪と今後の方針を公式に表明。社内文化問題の解決に向け最初の一歩

 
Image Credit : Riot Games

「Riot Gamesは、能力のある人間なら誰でも歓迎するとしているが、社内では性的嗜好ストレートの白人男性たちが形成するホモソーシャルサークルに入れない人間は差別的待遇を受ける実態がある」――ゲームニュースサイトKotakuにてこのような性差別告発記事が発表されてから3週間あまりが経過した8月30日。『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の開発運営会社Riot Games(以下、Riot)は「Our First Steps Forward」と題した公式声明を自社サイトで発表した。声明ではこれまでRiotが関わってきた社員やファンに向けての謝罪と、問題への取り組みが示されている。

画像は「レインボーフラフト アイコン」。Riotが今年の「国際反ホモフォビアの日」参加を機に期間限定販売した。「多様かつ協調的な(違いを受け入れることのできる)ゲームコミュニティづくりへの支持を表明できます」という告知と共に公開された画像だ。今回の問題提起では女性差別非難が主な論調となっているが、トランスジェンダーやセクシャルマイノリティへの差別も含まれている。 Image Credit : Riot Games

 

「ごめんなさい」

「失望した皆さんへ」という呼びかけから始まる前半では、まず現・元社員や契約相手に対し「Riotがお約束した通りの場所でなかったことをお詫びします」という謝罪が述べられている。さらに顧客であるプレイヤーやファンに対しても「ゲームについての印象に開発会社が及ぼす影響は承知しています。皆さんをがっかりさせたこともわかっていますので、修正に取り組んでいきます」と表明。また今後Riotで働きたいと考えている人間に対しては、社を正しく再構築するために変化をもたらす人材が必要であると訴えている。

現社員に対しては先日のKotaku記事発表後の公式ツイートにもあったように、時間をかけて多くの聞き取りをおこなったようだ。もともとフィードバックを重視するRiotの姿勢が社内へ十分に向けられていなかったのは残念だが、具体的な改善策についての取り組みが始まっている。

 

批判の的となった要素をひとつひとつ改善

声明の後半は、Riotが今後の対策として用意した方針の説明となっている。最初に挙げられているのは、CEO直轄の新チームである「Culture and D&I (文化および多様・包摂性)」統括部署の立ち上げだ。この部署の活動により、Riotの既存文化の良い点を残しつつ、多様性と包摂性への取り組みを強化していくとしている。また、多くの告発で問題視されていた「Riotの文化表現」についても、全てを再検討の対象にするという。「ゲーマー」や「実力主義」といった、これまで求人情報に掲げていた言葉への見直しが第一に挙げられている。Kotakuでも以前求人情報に書かれていた「code ninja」という言葉がすでに削除されており、男性限定を匂わせるような言葉を見直す動きが水面下で行われていると報告されていたが、この動きを社内文化全体へと波及させるようだ。さらに、Riotは2つの第三者機関を招いて、社内文化の再構築を図る動きをすでにおこなっているとしている。

ここまではかなり内部的かつ将来的な話でありぼんやりしているが、注目すべきはこれ以降の具体的な対策であろう。たとえば、匿名通報が可能な社内ホットラインの設置、外部の法律事務所と提携した中立視点からの調査体制の強化、社員に対する必要な処罰事項の更新はすでに見直しを終わらせたと声明にはある。今後継続的におこなうものとしては、雇用プロセスの見直し(採用候補者を幅広くする)、社員へのハラスメント防止意識徹底(マネージャーに限定されていた訓練内容を全社員対象に)といったものを進めていくという。また人事チームのトップであるChief Human Resources Officerの採用過程見直しにくわえ、多様性を監督する役員となるChief Diversity Officerとなるのにふさわしい人員のスカウトも始めているそうで、これらの役職は経営最高幹部とともに既存のD&I推進活動に加わっていくとのことである。

 

本当に改善は可能なのか

今回の問題提起で批判されていたのは、主に「求人・社内文化アピールにおけるダブルスタンダード」「女性をはじめとする社内のマイノリティ差別」「フィードバック重視を標榜しつつ差別実態への声は無視」といった点だ。「ただ改善を行うだけではなく、多様性・包摂性・文化の面においてリーダーになることを目指しています」と力強く書かれた声明の内容は、的確な対応に見える。

最初の性差別告発記事の著者であるCecilia D’Anastasio氏は続報にて、「発表されたこれらの対策が、本当にRiot社内で傷ついている女性たちのためになるのかはわからない」「女性たちが社内文化にある障壁を乗り越えられない理由、先入観を永続させるシステムを壊せない理由を精査しない限り、真の変化はない」と手厳しく評する。Riot社員を占める非常に高い男性の比率も、採用候補者が男性比率の高いゲーマー層である構造も、すぐには変化しないだろう。

多様性と包摂性を推し進めていくことは、ゲーム文化を豊かにし、ゲームを楽しむ人間を増やしていく行為であるはずだ。ここ1年間ほどの『LoL』でもキャラクターストーリーに同性愛者が登場するようになるなど、ある種の啓蒙が始まっているといえるかもしれない。現状はすぐには変わらないだろうが、Riotが今後取る動きが、ゲーム業界や技術系企業などに 、大きな影響を与えていくのはまちがいないだろう。