『フォートナイト』の隕石落下地点をリークした元スタッフをEpic Gamesが提訴。成功の鍵となる”サプライズ”を奪う行為
Epic Gamesが、同社の元QAテスターとして勤務していたThomas Hannah氏を、営業秘密保護法およびEpic Gamesとの秘密保持契約(NDA)違反で提訴していることがわかった。『フォートナイト』シーズン4の内容が一般公開される前にHannah氏が情報をリークしたというのがEpic Gamesの主張だ。同様の内容を海外メディアのIGNやPCGamerが報じている。
Hannah氏は2017年12月にQAテスターとしてEpic Gamesに入社し、『フォートナイト』のシーズン4が開幕する前の2018年4月4日に退社。Epic Gamesによると、Hannah氏は同社在籍中に出席した会議にて企業秘密であるシーズン4の情報を仕入れた。そして退社してから3週間後の4月24日、「internetadam」名義の人物により、「SPOILERS for Season 4 Battle Pass & Meteor」というredditスレッドが立てられた(現在は削除済み)。「internetadam」の正体はAdam DiMarco氏という別人物であるが、DiMarco氏に情報を提供したのはHannah氏であったとEpic Gamesは訴えている。
これはHannah氏による営業秘密保護法およびEpic Gamesとの秘密保持契約(NDA)違反に該当するとして、Epic Gamesが被った経済的損失もしくはHannah被告が企業秘密の不正流用により得た不正利益のどちらか総額の大きい方を損害賠償として請求。同時に懲罰的損害賠償、訴訟費用、および企業秘密のさらなる不正流用の禁止を求めている。
※『フォートナイト』シーズン4アナウンストレイラー
『フォートナイト』ではシーズン3途中の2018年3月から、ゲーム内世界にて彗星らしき天体が目視できるようになった。ほかにも、天体を観測するための天体望遠鏡が設置されたことなど、さまざまなヒントが追加されたことで「隕石が落下する」という説がコミュニティを賑やかすようになった(関連記事)。その後もモールス信号やスペクトラムアナライザーを用いた隠しメッセージや、マップ上に隕石やUFOの絵が描かれたプラカードがゲームに追加されたりと、手の込んだ仕掛けによりシーズン4に向けたコミュニティの期待が高まっていった(関連記事)。
Hannah氏によるNDA違反は、『フォートナイト』のシーズン4開幕に向けて積み上げてきたワクワク感や将来的なサプライズを奪ってしまったと、Epic Gamesは訴状にて訴えている。シーズン4に向けた取り組みは、コミュニティの興奮やエンゲージメントを高めるために進められてきた施策であり、その興奮が冷めることでゲームの収益にマイナスな影響を与えるかもしれない。コミュニティを盛り上げるための取り組みは『フォートナイト』にとって成功の鍵であり、それらが奪われたことによるダメージは金銭的価値では測りきれない、修復不可能な損害だとも述べている。
一方のHannah氏は原告の主張を部分的に認めつつも、redditでリークスレッドを立てたDiMarco氏には能動的に情報を渡したわけではないと供述している。具体的には、Hannah被告はDiMarco氏から「隕石がどこに落下するか」という質問責めに遭い、「みんなが予想するような場所には落下しない」「ティルテッド・タワーではない」というヒントを与えたが、そこから先はDiMarco氏自身で情報を集め仮説を立て、ダスティ・デポ(現ダスティ・ディボット)に落ちるという結論に至った。とはいえ、最終的にDiMarco氏からダスティ・デポに落ちるのかどうか尋ねられた際、Hannah氏は肯定したという。ゆえにNDA違反であることは認めているが、DiMarco氏はHannah被告の意思とは関係なく、個人の判断で情報を公にしたというのが、被告側の主張である。なおDiMarco氏はEpic Gamesと直接関係がなく、NDAを結んでいないため提訴されていない。
リーク投稿では、隕石落下地点がダスティ・デポであることだけでなく、シーズン4では毎週マップが変化すること、同じく隕石が落下したティルテッド・タワーに関しては週を追うごとに復興作業が進み様相を変えること、シーズン4バトルパスのテーマがスーパーヒーローであることまで言及されていた(FortniteIntel)。そのうちHannah被告がDiMarco氏に流したのは、隕石がダスティ・デポに落下するという情報だけであり、残りはDiMarco氏が他の情報源もしくは自身の仮説をもとに記述したもの。つまりリークの全て、Epic Gamesが被った損害の全てがHannah被告の責任というわけではない。以上が被告側の言い分である。
訴状でEpic Gamesが述べたように、今後のゲーム展開のヒントを作中に仕込むことの多い『フォートナイト』にとって、それらは作品の人気を支える重要な柱。現在も『フォートナイト』では、7月に控えているシーズン5の開幕に向けた演出が少しずつ追加されていっている。リークに対し容赦ない態度を取るEpic Gamesの対応は、シーズン5以降のさらなる情報流出を防ぐ抑止力となるかもしれない。