『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はゲーム・オブ・ザ・イヤーの冠をいくつ獲得したのか?
昨年から今年にかけて、数々のアワードにて存在感を見せつけたのは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』だ。任天堂から2017年3月に発売したタイトルは、Golden Joystick AwardsやThe Game Awards、D.I.C.E. AwardでもGame of The Year(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)を獲得。そして昨日Game Developers Choice Awardsでもゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞した(関連記事)。とにかく賞という賞を総なめした印象を抱かせる作品であった。
— ゼルダの伝説 (@ZeldaOfficialJP) March 3, 2018
そこで気になるのが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はどれほどゲーム・オブ・ザ・イヤーの冠を獲得したのかという点だ。歴史あるアワードでは同作の独占状態であるが、はたして数としてはいくつその冠を得たのか。質だけではなく、量についても関心を持つユーザーもいるだろう。
実は海外には、「GAME OF THE YEAR PICKS BLOG」というブログを運用しているユーザーがいる。氏は世界各地のメディアのゲーム・オブ・ザ・イヤーをひたすらに記録し続けるという、一風変わった趣味を持つ人物だ。もちろん、2017年の記録も残しており『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』がいくつゲーム・オブ・ザ・イヤーの冠を獲得したのかがすぐにわかるというわけだ。
個人がつけている記録であるが、ルールはそれなりに厳しい。「ビデオゲームであること」「個人ブログではなくドメインを持つプロフェッショナルなメディア限定(ただ一部を除く)」「ゲーム・オブ・ザ・イヤーは、単体タイトルでなければいけない(いくつも列挙したものは無効)」といった基準がある。とはいいつつも、個人の管理の限界か、選定についてあやふやな部分もある。厳密な数字というより、ある程度の目安として参考として考えるといいだろう。ただし、ソース元も明記しているので基本的には信頼に足るデータとして位置づけたい。
結論からいうと、2018年3月23日時点での『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が獲得したゲーム・オブ・ザ・イヤーの数は189にのぼる。ゲーム・オブ・ザ・イヤーはメディアの批評家選考だけでなく読者選考も含まれているが、約70%が批評家に選ばれている。多くの業界人に認められたということになるだろう。このタイトルに続くのが、大手のゲームアワードでも見かけた『Horizon Zero Dawn』。批評家と読者の選考は五分五分で、プレイヤーから愛された作品であったと言えそうだ。そして『スーパーマリオ オデッセイ』『ニーア オートマタ』『ペルソナ5』『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』が続く。
では、この数字は他の年と比べてどうだっただろうか。2012年は『The Walking Dead: The Game』が75のメディアからゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞した。そして2013年は『The Last of Us』は249ものアワードを獲得。2014年は『Dragon Age: Inquisition』が134の冠を手に入れた。そして2015年にアワードの数はピークを迎える。同年の栄光に輝いた『ウィッチャー3 ワイルドハント』の獲得したゲーム・オブ・ザ・イヤーの数はなんと257。批評家・読者から圧倒的な支持を得た。ちなみに2016年もっともゲーム・オブ・ザ・イヤーを獲得したのは『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』だった。『オーバーウォッチ』が目立った昨年であるが、165ものメディアから選出されており、盤石の評価を獲得していた。そして繰り返しになるが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が獲得したゲーム・オブ・ザ・イヤーの数は189。
メディア自体が増減しているかもしれない可能性も、加味しなければいけない。そこで、対象となっているメディアの数を手作業で数えてみた。2012年にゲーム・オブ・ザ・イヤーの選考に傘下したメディアは385。2013年は523。2014年は410。2015年は439。2016年は409で、2017年は338となる。
割合で考えると、2012年の『The Walking Dead: The Game』がメディアからゲーム・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは全体に対する19%。2013年の『The Last of Us』は47%。2014年の『Dragon Age: Inquisition』は32%。2015年の『ウィッチャー3』は58%。2016年の『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』は40%。そして『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は55%。あらためてデータを以下にまとめる。
2012 年『The Walking Dead: The Game』
メディア数:385 獲得数:75 割合:19%
2013年『The Last of Us』
メディア数:523 獲得数:249 割合:47%
2014年『Dragon Age: Inquisition』
メディア数:410 獲得数:134 割合:32%
2015年『ウィッチャー3 ワイルドハント』
メディア数:385 獲得数:257 割合:58%
2016年『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』
メディア数:409 獲得数:165 割合:40%
2017年『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』
メディア数:338 獲得数:189 割合:55%
こうして数字を見てみると、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はその数こそ『ウィッチャー3』に及ばなかったが、メディアの数を加味して割合で考えると『ウィッチャー3』に肉薄するという結果が出た。そして『The Last of Us』『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』を手がけるノーティードッグが、コンスタントに高い評価を獲得しているという事実も再認識できる。『ウィッチャー3』には届かないものの、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は国産タイトルとして近年を通した作品の中で極めて高い評価を獲得していることは間違いなさそうだ。
ただし考慮しなければいけないのは、ゲーム・オブ・ザ・イヤーという冠にも“選ばれやすさ”がある点。全世界の各メディアの基準についてはバラバラというのはもちろんだが、ゲーム・オブ・ザ・イヤーは基本的に年末に発表されるものである。その性質上、年末に発売されるタイトルは、メディアが内容を吟味する時間がない以上、ノミネートはされるものの多くの冠は獲得しづらい。発売時期によって選出されやすさが変わるという性質を抱えているのだ。もちろん、ゲーム・オブ・ザ・イヤーという賞は疑いなく勲章である。しかしながら、年末に発売されるアワードという観点で陽が当たりづらいタイトルの中に、ゲーム・オブ・ザ・イヤーに値する良作がいくつも存在しているかもしれない。