アーケードゲームハイスコア記録組織である「Twin Galaxies」が1月29日、Atari 2600専用レーシングゲーム『Dragster』において、プレイヤーRogers氏が持つ5.51秒の世界記録をレギュレーション違反として取り消したことがわかった。また記録が取り消しとなったことで、記録認定組織であるギネス世界記録にRogers氏が持つ「世界で最も長い間破られなかったゲームのハイスコア」という記録を無効とするよう要請したことも判明した。
Rogers氏の記録取り消しまでの推移はこうだ。1982年当時、氏が『Dragster』開発元であるActivisionに5.51秒のスコアを写したポラロイド写真を送付したことから始まった。そして2000年、Activisionによって記録されたRogers氏のスコアは、最終的に正式に世界のビデオゲームの記録を記録するグループであるTwin Galaxiesのデータベースに記録されることになる。この経緯を元に、2001年にギネス世界記録組織は彼が持つ5.51秒のハイスコアを「世界で最も長い間破られなかったゲームのハイスコア」として世界記録として認定したのだった。
In the wake of damning information provided by a former #TwinGalaxies Referee, a formal decision has been made in the #ToddRogers #Dragster dispute which has resulted in his total removal and banning from @TwinGalaxies Scoreboards.https://t.co/jQx2gGFS98 pic.twitter.com/YQnFeGFah7
— Twin Galaxies (@TwinGalaxies) January 29, 2018
しかし、Rogers氏が持つ5.51秒というハイスコアに対し「事実上再現不可能だ」という論争がプレイヤーの中でたびたび沸き起こることがあった。その中でもゲームプレイヤーであると同時にコンピューターエンジニアでもあったEric Koziel氏は『Dragster』のプレイを最適化するプログラムを開発。計算の結果、理論上実機で再現できるハイスコアは5.57秒であるという仮説を打ち立てたが、残念ながらその主張が認められることはなかった。だが彼の仮説を元にDick Moreland氏という名の別のプレイヤーが昨年の8月、記録の認定元であるTwin Galaxiesへ直接疑問を呈したことでこの論争はふたたび注目を集めることとなる。Moreland氏の訴えにより開始されたTwin Galaxiesによる記録正否の調査は、『Dragstar』のゲームデザイナーであるDavid Crane氏といったRogers氏の支持者を巻き込みながら数か月もの間続いた。
2017年末には著名なハード改造系ビデオブロガーBen Heck氏が記録を再現できるかハード検証の段階から挑戦しており、渦中にあるRogers氏本人と共に実証を試みたものの、結局のところKoziel氏の提唱した仮説どおり、ベストスコアは5.57秒という結果に終わっている。
そして最終的な調査の結果、Twin Galaxiesは「当時Activisionによって記録された5.51秒という記録を否定する気は無い。」としながらも「当時の状況を確認できるものがない以上、このスコアが正式なものであるとは認められない。」として、Rogers氏の記録を取り消すこととなった。
この発表を受けて、Rogers氏の記録を否定する仮説を打ち出したEric Koziel氏はワシントン・ポスト紙に対し「この判決を長い時間待っていました。」「スピードランをしたいと思っている全ての人の励みになれば。」とコメントを残している。また、redditのr/speedrunスレッド内ではKoziel氏とMoreland氏両名の働きに対して「よくやった」「ありがとう」という賞賛の反応が多く見られる中、今回あやふやな判断を下したTwin Galaxiesに対し、記録の認定基準の不透明性など、組織の運営方式に疑問を投げかける声も少なからず見受けられる。