『レインボーシックス シージ』海外での値上げプランが批判を浴び、発表翌日に内容の一部を撤回。値下げされる国内とは真逆の状況に

国内版が2月13日より値下げされる『レインボーシックス シージ』。実は海外の事情はまったく逆で、同日より各種エディションが「値上げ」される予定となっていた。2015年12月の発売から2年以上が経過し、39.99ドルまでプライスダウンしたタイトルを、なんと59.99ドルのフルプライスに戻すというのだ。

国内版が2月13日より値下げされる『レインボーシックス シージ』(関連記事)。実は海外の事情はまったく逆で、同日より各種エディションが「値上げ」される予定となっていた(海外向けの発表)。2015年12月の発売から2年以上が経過し、39.99ドルまでプライスダウンしたタイトルを、なんと59.99ドルのフルプライスに戻すというのだ。

旧作としては異例の処置であり、当然というべきかプレイヤーたちの反感を買った。発売から2年が過ぎたタイトルを値上げするという決断そのものを疑問視する声から(公式フォーラム)、高すぎて新規プレイヤーの参入を妨げてしまうという懸念。さらには、ゲームの購入特典に有償ルートボックスが加わっていることから、これでは長年ゲームをサポートしてきたベテランプレイヤーたちが報われないと悲嘆する声まで、コミュニティ上にはさまざまな意見が寄せられた。

イヤー3シーズン1より実装される「Outbreak Collection Pack」の提供アイテム

こうした批判を受け、Ubisoftは値上げプランを発表した翌日に、予定の一部変更をアナウンスした(Reddit)。まず廃止が予定されていたスタンダード・エディションを、現行価格のまま据え置くことを約束(国内でも追従するかは不明)。続いて、既存プレイヤーに向けたギフトとして、3月6日までにオンラインマッチをプレイした方に、アッシュの「Sidewinder」エリートスキンが贈られる(イヤー3シーズン1開幕時に付与)。また、以前からオペレーターのアンロックに時間がかかりすぎると批判されていたスターター・エディションについても、2月に開催される「Six Invitational」にて改善案を発表するとのことだ。

 

ルートボックス分の値上げ

海外向けの比較チャート

海外向けに発表された変更内容をまとめておこう。当初の発表では、スタンダード・エディションがアドバンス・エディションに置き換わり、価格が39.99ドルから59.99ドルに変更される予定であった。アドバンス・エディションには、有償ゲーム内通貨600「R6 Credit」と、「Outbreak Collection Pack」10個が特典として付いてくる。「Outbreak Collection Pack」とは、イヤー3シーズン1にて期間限定で発売される有償のルートボックスのことである。

そのほか、ゴールド・エディション(イヤー3のシーズンパスを同梱)は69.99ドルから89.99ドルに、コンプリート・エディション(イヤー3のシーズンパス+イヤー1・2の追加オペレーター即時解除)は89.99ドルから129.99ドルに値上げされる。いずれもアドバンス・エディションと同じ特典がセットになっている。

同日発表されたエコーの「Demon Bundle」とヒバナの「Traditional Bundle」

なぜこのタイミングで値上げするのか、その理由については明かされていない。ただ、変更後の各エディションにはもれなく特典が付いてくるという点は注目に値するだろう。逆に言うと、「特典なし」のゲーム本編を単独購入する術がなくなる予定だったのだ(ややイレギュラーな立ち位置のスターター・エディションは除く)。その特典とは、先述したように有償ルートボックス10個と、ルートボックスを購入できる有償ゲーム内通貨600「R6 Credit」である。

「R6 Credit」は600クレジットにつき4.99ドル、有償ルートボックスはひとつにつき300「R6 Credit」。つまり計30ドル相当の通貨・ルートボックスが同梱される。値上げ幅は20ドルだが、実質10ドルの買い得というわけだ。Ubisoftの軌道修正により、「特典なし」のスタンダード・エディションがこれまで通りの価格で販売されることから、「特典あり」のアドバンス・エディションにおける値上げ分の価値は、そのまま特典の価値とイコールであることが浮き彫りになった。

これまで「ゲーム本編」だけで販売されていたものを、「ゲーム本編+特典」のバージョンにごっそり置き換えるという、一風変わった計画である。なおコンプリート・エディションのみ値上げ幅が20ドルではなく40ドルになっている。これは2年分のアップデートを経て、即時解除対象となるオペレーターの数が増えたことを加味した結果なのかもしれない。

 

正当化理由としてのルートボックス

『レインボーシックス シージ』で販売中の「Alpha Pack」

『レインボーシックス シージ』にて実装済みの「Alpha Pack」は、マッチをプレイするか、無償ゲーム内通貨(名声ポイント)を消費して取得する無償のルートボックスである。一方、イヤー3シーズン1で実装される「Outbreak Collection Pack」は、無償取得分もあるが、基本的には有償ゲーム内通貨で購入することになる。有償のルートボックスを導入するにあたり、お試し分を配布するというのは、決して珍しい施策ではない。お試し分を入り口として、「もっとルートボックスを開封したい」という気持ちを掻き立てる。それ自体は、ゲーム業界において不自然な行為ではなくなっている。

ルートボックスの中身は、キャラクターの性能に影響を及ぼさないコスメティック・アイテム限定で、しかも重複なし。今のご時世では良心的と言えるし、Ubisoftも健全なマネタイズモデルであることをアピールしている(海外向けの発表では、「コスメティック限定」「重複なし」の部分を太字で強調している)。健全なルートボックスを特典にするという、健全な値上げ。Ubisoftが実行に移そうとしている計画は、ゲームの値上げを正当化する理由としてルートボックスを持ち出すという、新しい試みなのかもしれない。仮にこれが受け入れられると、ほかの作品でも「ゲーム本編+ルートボックス」という形式で値上げに踏み切れてしまう恐れが生まれる。

なおUbisoftが自社作品にルートボックスを導入すること自体は珍しくなく、最近ではリリースから時間を空けて実装するケースが続いている。『ディビジョン』では2017年8月に、『ゴーストリコン ワイルドランズ』では2018年1月25日の最新アップデートにて追加された。いずれも発売から時間が経過しているため、メディアで大きく取り上げられることもなかった。過度な注目を避けるという意味では、穏便なやり方と言える。発売を3月に控えた『Far Cry 5』や年内リリース予定の『The Crew 2』がどのようなマネタイズモデルを採用するのか、Ubisoftの今後の動向も気になるところだ。

『ゴーストリコン ワイルドランズ』で実装されたバトルクレート。こちらもアイテムの重複なし

 

撤回が計画通りだとしたら

『レインボーシックス シージ』は2015年12月に発売されてから精力的なアップデートを重ね、2017年12月には累計プレイヤー数2500万人超えを達成している。根強いファンが多く、Ubisoftの対応に不満があれば、きちんと声をあげる。彼らの支持を失わないためにも、通常版の販売を据え置くというのは賢明な判断だったのではないだろうか。

もしくは、ここまで全て計画通りだったのかもしれない。販売活動に関わる変更というのは、開発チームの一存では決められない事柄だろう。それなのにわずか1日で判断を覆し、確定事項としてコミュニティに約束するという手際の良さを見せた。さらに言うと、2年前の作品を値上げするというのは異例の対応であり、批判が寄せられることは想定できていたはずなのだ。

一連の流れに違和感を覚えた一部のプレイヤーは、Ubisoftがわざと過剰な施策を提示したのではないかと勘ぐっている(Redditスレッド)。価格改定によりプレイヤーの反感を買ったあとで、すぐさま譲歩してみせる。するとその迅速かつ柔軟な対応に称賛が送られる。企業イメージの向上に繋がるし、「ゲーム本編+ルートボックス」で価格を上乗せするという事実から人々の関心をそらす効果も期待できる。うがった見方であり、憶測の域を出ないものであるが、一部のプレイヤーにそう思われるほどには突飛な出来事であった。

『レインボーシックス シージ』のイヤー3シーズン1「CHIMERA」に関する詳細は、2月13日から2月18日にかけて開催される「Six Invitational」にて発表予定。新シーズンでは新オペレーターが追加されるほか、最大3人で挑むCo-opイベント「Outbreak」が実施される。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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