2017年「Steamサマーセール」AUTOMATONライターが選ぶおすすめタイトル11選
Valveは現在、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」にて「サマーセール」を実施中だ。期日は日本時間の6月22日から7月5日まで。2016年末から2017年上半期に登場した多数のトリプルA級タイトルから人気インディーゲームが値引き対象となっており、どのタイトルを買うべきか頭を悩ませているプレイヤーも多いだろう。今回はサマーセールで買うべき、各ライターのおすすめタイトルをこちらにまとめたので、ぜひ検討の対象としてほしい。
Wolfenstein: The New Order
1100円(2200円、50%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
先日Bethesdaが発表した『Wolfenstein II: The New Colossus』に興味があり、シリーズ作を未プレイの方は、この機会に本作をプレイしておこう。なぜなら『Wolfenstein II』のストーリーは本作の直後から始まるからだ。多くのキャラクターが引き続き登場するので、世界観や登場人物のバックグラウンドを予備知識として持っておけば、より深く楽しめるはずだ。
本作は第二次世界大戦が終結を迎える直前、連合国がナチス・ドイツに総攻撃をかける場面から始まる。史実では連合国が勝利を収めるが、『Wolfenstein』の世界では、ナチスがこの時代には本来あり得ない高度な科学技術をもって世界を支配するifの物語が紡がれていく。主人公の米軍大尉BJブラスコビッチは、仲間の力を借りながら強大なナチスに立ち向かう。ゲームはオーソドックスなライフ制FPSで、プレイ内容に応じてPERKがアンロックされていく。マルチプレイは無いが、その分キャンペーンはボリュームある内容となっている。本作が気に入ったなら、連合国の総攻撃に至るまでを描いた『Wolfenstein: The Old Blood』もセール中なのでお勧めしておきたい。
by Taijiro Yamanaka
Knee Deep
792円(1980円、60%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
ビデオゲームは演劇に似ることがある。RPGのサイドビューでの戦闘を舞台に見立てた演出には、『ファイナルファンタジー6』のオペラのシークエンスや、『ファイナルファンタジー9』の演劇を模したオープニングでの戦闘など、著名なシリーズで見立てることもある。
『Knee Deep』はビデオゲームとプレイヤーの関係を本格的に演劇に見立てた作品だ。舞台はあるさびれた町。殺人事件を巡る物語を、3人の主人公が演じる。基本的にはアドベンチャーゲーム版『Walking Dead』などで知られるTalltale Gamesのような、ダイアログ選択をメインにしたエピソード制のADVだが、ローディング時には舞台が変わって背景美術が入れ替わる演出が入るなど、ゲーム的な約束や構造のほとんどを演劇的な演出にあてはめている。
昨年にはVRに対応したアップデートが行われ、より劇場の中で観客として物語を見つめる体験に仕上がっている。徹底した演劇の空間に仕上げることで、逆にビデオゲームの第四の壁を浮かび上がらせている。
by Hajime Kasai
Pinstripe
991円(1480円、33%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
『Pinstripe』は「雪の煉獄」を舞台としたタイトルだ。主人公は元神父の「Teddy」。謎の男「Pinstripe」にさらわれた最愛の娘「Bo」を救い出すため、美しくも恐ろしい地獄へと足を踏み入れていく。ゲームとしては、ゆるい2Dアクションアドベンチャーと表現するのが一番近いだろう。横スクロール形式で進行していき、会話やイベントをこなして「Bo」を助けるべく地獄の底へと潜っていく。地獄というと恐ろしげなイメージを持つ方も多いと思われるが、本作は地獄であるものの、住民はコミカルで雰囲気は美しい。アクションはカジュアルなものであるが操作感は気持ちよく、謎解きなどもほどよい難易度かつ練られており、ゲームとしても一定の楽しさがある。
Thomas Brush氏がすべてひとりで手がけたという本作は、絵本のようなタッチのビジュアルをベースに「Teddyの過去」に付随した重厚な物語が展開されていく。ゲーム中に流れるサウンドはかわいらしくも儚げで、演出を盛り上げる。なぜTeddyは煉獄を探索するのか、なぜ最愛の娘Boはさらわれなければいけなかったのか?そうしたシナリオの設定の秘密に気が付いた時、本作のメッセージを感じ取ることができるだろう。
by Minoru Umise
Replica
149円(298円、50%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
『Replica』は一風変わったアドベンチャーゲームだ。ゲーム内容は、他人のスマートフォンをいじくりまわすというもの。日常的になんとなくやってみたいという思う方もいるであろう、「他人のスマホを覗き見る」というゴシップな願望を叶えるゲームになっている。しかし浮かれている場合ではない。この『Replica』でいじるスマートフォンの持ち主は、テロリストの疑惑をかけられている青年だ。しかも、テロリストである証拠をうまく見つけ出さなければ主人公の命も危ういという。生死をかけた“スマホいじり”が展開される。
ナビゲーターらしき人物から把握すべき情報を指定されるので、スマホから情報を探していくというのが本作の流れだ。しかし、ただ情報を見つけるだけでなく、情報から個人情報を推測しパスワードを予測したり、時には見知らぬ誰かに電話をかけてみるなど、プレイヤーの発想力を試すゲームデザインも本作の特徴だ。突き詰めていければ総当りになっていくのだが、物語は緻密に練られており、先が読めないシナリオ展開はプレイするものの心を惹きつけるだろう。クリアまでは2時間以内で終わることもあり、長さには期待できないが、その分お値段も安く日本語もあるので、お値段以上の体験が約束できる。
by Minoru Umise
Late Shift
1024円(1280円、20パーセントオフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
90年代初期に大容量メディアと共に現れたアドベンチャーゲームのサブジャンル「インタラクティブ・シネマ」あるいは「FMV」は、改めて現代で注目するに値するようだ。この『Late Shift』は実写映像を見ながら、時々現れる選択肢を選びつつ物語の行方を見守る作品で、他のインタラクティブ・シネマと比較しても、もはやゲームというより映画に近い作品である。しかしゲーマーならば、時間制限の選択肢を選ぶ瞬間は『アンティル・ドーン』と似た感覚を呼び起こされるだろし、マルチエンディングの複雑な分岐はまさにアドベンチャーゲームの方法論のそれである。何より重要な事実は、『Late Shift』がユーザーから高い評価を得られていることである。スマホやタブレットで映画やドラマを観る現代を考えれば、今後の映像業界の黒船になりえるだろう。残念ながら日本語字幕には対応していないが、新しい時代の流れであるのは間違いないので、このセールの機会にチェックしてみるのもいいかもしれない。
なお、インタラクティブ・シネマは日本でも挑戦したジャンルである。今こそスクウェア・エニックスは『ユーラシアエクスプレス殺人事件』『the FEAR』などの「シネマアクティブ」シリーズを復活させるべきだ。
by Koji Fukuyama
The Witcher: Enhanced Edition
147円(980円、85%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
『Gwent』のオープンベータ開始でシリーズ本編が再注目されている今だからこそ、カードゲームで初めてシリーズに触れたという人も、最新作だけならプレイしたことがあるという人も、ペットボトルの飲み物より安い価格でゲーム版の原点をプレイする絶好の機会だ。『Gwent』プレイヤーの中にはGOG.comのキャンペーンにてすでに無料で入手した人も多いだろう。続編の2作品とゲームデザインが大きく異なり、戦闘はアクションゲームというよりはむしろリズムゲームの感覚だが、慣れれば特有の奥深さが実感できる。Steamで購入できるのはディレクターズカットのみで、残念ながらセックスシーンは哲学的な静止画に差し替えられている。
この「Enhanced Edition」は2007年に発売された無印版を改良した内容で、ダイアログやカットシーンの再編集に加えて、キャラクターのアニメーションも増えている。また、インベントリ機能の改善やロード時間の短縮、戦闘場面におけるレスポンスの向上など、あらゆる場面で技術的な改良が施されている。ちなみに原作小説は5つの長編と4つの短編からなる。長編第1作「エルフの血脈」のみハヤカワ文庫から日本語版あり。ゲームの物語は小説版の後の話で、オープニングムービーは1993年の短編「The Last Wish」の一部を描いたもの。日本語には対応していないが、有志による日本語Modが公開されている。
By Ritsuko Kawai
The Witcher 2: Assassins of Kings Enhanced Edition
297円(1980円、85%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
この流れで初代『The Witcher』をプレイしたなら、未体験のユーザーは続編の2作目も遊ばざるをえない。こちらは日本でも2012年8月にスパイク・チュンソフトからXbox 360向けにコンソール版が発売されているが、レーティングの事情でセックスシーンや人間の臓器露出シーンに表現規制が施されている。Steam版は規制なし。「Enhanced Edition」からは日本語にも対応している。このバージョンは無印版の発売からおよそ1年後にリリースされたもので、インターフェイス等の改善に加えて、ゲーム本編の追加シナリオ、アリーナモードや長時間のムービーパートなどが新たに収録されている。
ストーリーは前作の直後から。『The Witcher』のクリアデータをインポートすれば、一部主要キャラクターの生死やシナリオの顛末が引き継がれる。ちなみに1作目は原作小説をベースにしているとはいえ、物語部分がほぼ完全に独立していたために小説を読んだことがない人でもすんなり理解できる内容だった。それに対して『The Witcher 2』の脚本は、原作の長編シリーズと密接につながったストーリー展開で描かれていることから、今作がシリーズ初体験のプレイヤーはほぼ間違いなく置いてけぼりにされるだろう。隅々まで理解したいシリーズ入門者には、まず1作目をプレイすることに加えて、ゲーム内のジャーナル等もすべて読むことをおすすめする。
By Ritsuko Kawai
The Witcher 3: Wild Hunt
3291円(5486円、40%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
いまさらおすすめする必要はないかもしれない作品。個人的には『Fallout: New Vegas』と並んでゲーム史上最高のRPG。本作をプレイするなら、必ず2つのダウンロードコンテンツ「Hearts of Stone」「Blood and Wine」もおすすめする。DLCでありながらゲーム本編に匹敵するボリュームと満足感を誇ると名高い。ちなみに本編を単品で購入するより、これら2つのDLCが同梱された「Game of the Year Edition」を買ったほうが、5割引きで3240円と安い。DLCだけ未体験の人も、すべて半額セール中なのでいまが絶好の機会だろう。
シリーズを1ミリも知らない人は「The Witcher Trilogy」で3作まとめて買ってもいい。そして気に入ったら業界で一番熱いカードゲーム『Gwent』をプレイして、原作の小説も全部読もう。面倒くさいから手っ取り早く最新作だけやりたい人は、スパイク・チュンソフトが親切に用意してくれた公式年表を読めばすべてのネタバレが分かるが、決しておすすめはしない。余談になるが、筆者は本作のサントラを1日中無限ループで毎日流し続けている。ゲーム音楽も最高傑作。
By Ritsuko Kawai
Ori and the Blind Forest: Definitive Edition
1000円(2000円、50%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
ちょうど先日の「E3 2017」で続編『Ori and the Will of the Wisps』が発表されたので、まだオリの愛情あふれる冒険を体験していない人はいい機会だろう。特に仕事や恋愛に疲れ果て、人間社会に嫌気が差した時こそプレイして欲しい。いやむしろプレイしなくても起動するだけでいい。オープニングシーンをぼけっと眺めているだけで、大人になってから久しく緩んでいなかった涙腺が崩壊するかもしれない。その神々しい視覚的な演出と幻想的な音楽に、しがらみに汚れた心が洗われること間違いなし。日々の中で張り詰めていた緊張は音もなく優しくほぐされていく。
もちろんゲームプレイも時間を忘れるほどに熱中させてくれる。難易度は初見殺しのマゾゲーでトライ・アンド・エラーの連続だが、スーファミ時代のドンキーコングシリーズをやり込んだアクションゲーム好きなら、逆に心地いいくらいの感覚だろう。ストレスが溜まるどころか解放されるような達成感も味わえる。もしマリオの1面もクリアできないくらいアクションゲームが苦手という人なら、いちばん易しい難易度にしてストーリーだけ楽しむのもいい。親子愛と友情。種族を越えた絆を語るのに人間の言葉は必要ない。
By Ritsuko Kawai
Life is Strange Complete Season
495円(1980円、75%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
こちらも先日の「E3 2017」で次回作『Life is Strange: Before the Storm』が発表されたので、まだマックスとクロエの青春友情アドベンチャーを体験していないなら、全話がセットでワンコインのいまこそ絶好の機会だろう。本作は、カオス理論においてカオス運動の予測困難性や初期値鋭敏性を寓意的に表現したいわゆるバタフライ効果をテーマにしており、主に写真の撮影時点にタイムリープできるという主人公の能力において、その現象が顕著に描かれている。要するに映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、マーティが両親の若い頃にタイムトラベルしてヘタレ親父を男前に育ててやったおかげで、現代に戻ってきた際にビフが車にワックスを二度がけさせられる羽目になっているアレである。
かくいう筆者も未プレイである。このゲームが発売された当初、わくわくして最初のエピソードだけ購入したはいいが、多忙で結局プレイできず終い。いまとなっては第1話は無料である。しかも全部セットでワンコイン以内とオフィス街のランチより安い。前日譚を描く次回作の発売が今年8月に迫る今だからこそ、この機にまとめて買わない理由はないと思い、さっそく開発した。ちなみに発売当初は日本語に対応していなかったが、現在は日本語の言語パックが無料でダウンロードできる。スクエニは変わった。
By Ritsuko Kawai
Blackwake
1584円(1980円、20%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
今年2月にリリースされた『Blackwake』は、海戦にテーマを当てたオンラインマルチプレイヤーゲームだ。先日のE3ではUbsoftが同じく海戦をテーマにした作品を公開していたが、『Blackwake』はもっと“バカ”である。20%オフとそこまで値引率は高くなく、さらに現在の平均プレイヤー数はローンチ時から減少しつつあるが、お祭りゲーと紅茶を嗜む英国紳士と頭の悪い海賊が好きであるのならば、楽しめるうちにチェックすべき作品だろう。
本作は英国海軍と海賊の戦いを描いており、数隻同士の戦艦が一定の海域で砲弾を撃ち合ったり船体をぶつけあったりすることになる。戦艦は1人が操作するわけではなく、船全体を指揮するキャプテンと、大砲の弾込めから開いた船体の穴の修理までなんでもこなすクルー数人から十数人で協力して運用していく。1人1人のクルーができる作業量は少なく、また船内から外界は見づらいため、必然的にキャプテンの指示が重要になってくる。これがほかの海戦ゲームにはない『Blackwake』の楽しい点だ。特に英語圏のサーバーでは、キャプテンがまるで本物のように「ヨーホーホー」と歌いながら指示を出してくれたりもする。ぜひ人がいる内にボイスチャットありでプレイしてほしい作品である。
By Shuji Ishimoto