墜ちた栄光を取り戻せ。『LoL』北米トップリーグNA LCS夏の観戦ガイド

各地域で続々と夏の戦いが開幕している『LoL』プロシーン。本記事では北米トップリーグである「North America League of Legends Championship Series(NA LCS)」について、開幕直前までの流れを振り返りつつSummer Splitを見ていく。春スプリット直前の各チーム紹介記事も前提として合わせてお読みいただければ幸いだ。

各地域で続々と夏の戦いが開幕している『LoL』プロシーン。本記事では北米トップリーグである「North America League of Legends Championship Series(NA LCS)」について、開幕直前までの流れを振り返りつつSummer Splitを見ていく。春スプリット直前の各チーム紹介記事も前提として合わせてお読みいただければ幸いだ。

4月末から4週間にわたって繰り広げられたシーズン半ばの国際大会「Mid-Season Invitational」には、北米代表としてTeam SoloMidが出場した。北米地域は直近数年間の国際大会成績が芳しくないため、今年から前哨戦である「プレイインステージ」を勝ち抜かなければグループステージへ出場することができなくなった。台湾/香港/マカオ地域とともにプレイインステージラウンド2からの参戦ではあったが、台湾から参加したFlash Wolvesが危なげなくプレイインステージ勝ち抜きを決める一方で、旧ワイルドカード地域のベトナムからやってきた「GIGABYTE Marines」とのBo5対戦で2敗してからの3勝というギリギリの逆転劇を決める羽目に。こうして辛くも勝利を収めた1週間後、TSMはグループステージで再び相対したMarinesに敗北し、「1週間前に戦った相手チームを覚えてもいられないのか」などといった批判がファンからは相次いだ。その後、他チーム相手の試合でも苦戦してグループステージ敗退が決定し、昨年のCLGの奮闘とは対象的に、今年こそ国際大会で北米の存在感を示すというTSMの野望ははかなくも消え去ることとなってしまった。

かくして、世界各地のトップリーグの一員としての威厳を失いつつあるNA LCS。北米におけるe-Sports全体のビジネス規模は他地域を圧倒的にしのいでいるが、『LoL』についてはシーンを支えるファン層に影が差し始めているような話もある。他地域サーバーの推定プレイヤー人口がこの1年で10%以上の増加を示す中、北米サーバーのみは増減がほとんどないという。競技選手はプレイヤーの中から頭角を現すもの。さまざまな面で北米という地域は岐路に立たされている。

 

Team SoloMid

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 1位
・NA LCS 2017 Spring Playoff 優勝
・Mid-Season Invitational 2017 グループステージ敗退

北米随一の人気と実力を誇り、NA LCSを代表するチーム。2016年世界大会の敗退により「燃え尽きていた」Doublelift選手が復帰し、昨年の夏のメンバーで再び夏シーズンを迎える。レギュラーシーズンの強さに反して、ここ数年は国際大会での結果が振るわない状態が続いている。この春もレギュラーシーズン、プレイオフとも何ら問題ない結果を残しているだけに、国際舞台での存在感を増すことはチームの悲願となっている。

・ADC:Jason “WildTurtle” Tran(脱退、FlyQuestへ移籍)→Yiliang “Doublelift” Peng(TLへの貸出を経て復帰)

 

Cloud9

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 2位
・NA LCS 2017 Spring Playoff 準優勝

NA LCS参戦以来、常に上位を維持し続ける北米のもう一つの巨頭、それがCloud9だ。TSMや復権したCLGといったライバルと常に激闘を演じ続け、世界大会でも見せ場を作っている。結成当初のメンバーからスタメンを様変わりさせながらも常に結果を残し続け、組織力も非常に優れている。今シーズンは、トップレーンのスターター・サブ双方に韓国人選手を起用するという変わった体制で一層の飛躍を目指す。春からチームに加わったジャングラー・Contractz選手も鮮やかなプレイでチームを導き、春スプリットの新人賞を受賞している。ここ数年リーグ制覇そのものはCLGやTSMに阻まれているが、王座に就く準備は万端だ。

※春からのメンバー変更なし

 

Phoenix1

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 3位
・NA LCS 2017 Spring Playoff 3位

昨年の夏、運営を続けられなくなったTeam Impulseに代わってLCSに参戦した急造チーム。全く組織の整わない状況下にあって厳しい戦いを生き抜き、今期は強烈な補強と組織力の発揮により見事に飛躍を遂げ3位で春を終えている。新たに加入したRyu選手や、春スプリットのMVPを受賞したArrow選手の活躍に加え、春シーズン途中に戦線離脱を余儀なくされたInori選手の代役となったMeteos選手が見事なパフォーマンスを発揮できたことも大きい。夏シーズンのジャングラーは、Inori選手とMeteos選手が状況によって使い分けられながら参戦予定となっている。中堅のライバルたちを跳ね除けて世界大会への出場を果たせば、Ryu選手とFaker選手が再びまみえることも十分にあり得る状況だ。

・ジャングル:Rami “Inori” Charagh / William “Meteos” Hartman(2月より加入)
・ミッド:Pirean(脱退、Envyへ移籍)→Ryu
・サポート:Adrian(3月に脱退、TLへ移籍)→Jordan “Shady” Robison(3月より加入)

 

Counter Logic Gaming

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 4 位
・NA LCS 2017 Spring Playoff 5~6位

北米でTSMに匹敵する歴史を持ち、人気を二分する古参チームの一つ。かつてはプレイよりも話題提供での人気が強かったが、ここ数年は組織力も大きく向上し、昨年はリーグ制覇にMSI準優勝と優秀な成績を収めている。2017シーズンはチームとしてのまとまりは悪くなかったものの、TSMやC9、そして装いを新たにしたPhoenix1に後塵を拝する結果となった。夏に向けてチームは久々のメンバー変更を断行。サポート志向のXmithie選手を放出し、強気でキャリー気質のDardoch選手をジャングルに招いて一気に攻撃的な戦略へと舵を切った。新たな選手を上手くチームにフィットさせて二強の間に割って入ることができるかが試される夏となりそうだ。

・ジャングル:Jake “Xmithie” Puchero(Immortalsへトレード移籍)→Joshua “Dardoch” Hartnett(トレード加入)

 

FlyQuest

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 5 位
・NA LCS 2017 Spring Playoff 4位

2017春シーズンから昇格した新チーム。とはいってもその母体はCloou9の二部チームであり、メンバーにはそうそうたるメンバーが揃っている。北米の競技シーンに名ショットコーラーとしてその名を刻むHai選手を中心に、ブレーンとしても知られるLemmonNation選手が戦略を練り、北米出身のベテラン選手たちが縦横に活躍するのがこのチームの特色だ。春シーズンは5位と昇格後初のシーズンとしてはまずまずの結果を残しているが、世界大会を目指すならば夏の完全制覇か地域選抜での勝ち抜きが必須だろう。北米有数の攻撃的ADCであるWildTurtle選手の加入により、積極性が増した体制でさらなる高みを目指す。

・ADC:Jason “WildTurtle” Tran(TSMより加入)→WildTurtle / Altec

 

Team Dignitas

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 6 位
・NA LCS 2017 Spring Playoff 5~6位

紆余曲折を経て蘇った北米古参チームの一つ。2017シーズンの再生時に、韓国人選手による大幅なメンバー強化を行ったものの、トップ2の牙城を崩すには至らずに勝率5割の6位で春シーズンを終えた。このオフシーズンの新規加入選手としては二部チームでの経験が豊富なサポートのBig選手、春は日本のDetonatioN FocusMeでジャングルを務めていたShrimp選手の2名となる。韓国の強豪KT Rolsterで世界大会経験もあるトップレーンのSsumday選手らのポテンシャルを引き出せば、周囲の予想を覆すだけの可能性を秘めているチームでもあるはずで、この夏の戦いこそ選手および戦略スタッフ全てを含めたチームの真価が問われることになる。

・ジャングル:Lee “Shrimp” Byeong-hoon(加入)→Chaser / Shrimp
・サポート:Terry “Big” Chuong(加入)→Big / Xpecial

 

Immortals

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 7 位

昨年こそ新チームとして破格のメンバーを揃え、台風の目となったImmortals。2017シーズン開始前の移籍市場によってPobelter選手を除く主要なメンバーを失い、かつての圧倒的なパフォーマンスを発揮できなくなってしまった。春シーズンも、Dardoch選手やFlame選手といった実績のあるプレイヤーを揃えたのだが、その強さは“不滅”とはいかなかったようだ。夏シーズンに向けては、アグレッシブ過ぎるきらいのあるDardoch選手を柔軟なプレイに定評のあるXmithie選手とトレードし、チームのバランスを整えた。昨シーズンに韓国ROX Tigersを指揮したSSONGコーチのもと、栄冠を取り戻すべく新たな挑戦を始めようとしている。

・ジャングル:Joshua “Dardoch” Hartnett(CLGへトレード移籍)→Jake “Xmithie” Puchero(トレード加入) / Andy “AnDa” Hoang(3月に加入)
・サポート:William “Stunt” Chen(P1より加入)→Olleh / Stunt
・ヘッドコーチ:Kim “SSONG” Sang-soo(韓国Longzhu Gamingより移籍)→SSONG / Robert Yip

 

Echo Fox

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 8位

欧州の看板選手だったFroggen選手や、2014シーズン世界王者のSamsung whiteに所属していたLooper選手など、強力なラインナップを揃えたこのチームだが、パフォーマンスが安定しなかったことから8位という結果である。TSMやCLGとの対戦成績も極端に悪くはなかったのだが、ほかの中堅チーム相手に落としてしまった試合が多かった。入れ替え戦行きこそ回避できたものの、他に何も得られなかった春、この夏はより多くを求めて果敢な戦いへと挑む必要があるだろう。

・トップ:Brandon “Brandini” Chen(加入)→Looper / Brandini
・ミッド:Tanner “Damonte” Damonte(加入)→Froggen / Damonte
・ADC:Brandon “Mash” Phan(加入)→KEITH / Mash
・ヘッドコーチ:heavenTime(脱退)→Wang “Feng” Xiao-Fen(加入)

 

Team Liquid

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 9位

2016シーズン終了時に「Breaking Point」という動画を公開し、チームの内情と運営の難しさを周囲に知らしめたTeam Liquidは、長い歴史を持つ古参でありながら苦闘し続けている。永遠に4位となる呪いを受けたチームはその混乱から抜け出せず、この春は9位という結果に終わってしまった。Dardoch選手に代わって加入したのは、北米最高のジャングルに数えられるであろうReignover選手だった。しかしライバルチームたちは、彼を狙い撃ちにする戦術でゲームを組み立て、このチームが元々抱えている弱点を露わにし、そこから勝利をもぎ取るようになってしまった。韓国での武者修行から帰国し、新たな力を身につけ自信を取り戻したというGoldenglue選手らによってチーム全体の状況が改善しなければ、前へと進むことは難しいだろう。かつてプレイオフ決勝まで進んだこともあるチームである。その奮起に期待したい。

・ミッド:Andrew “Slooshi” Pham(加入)→Goldenglue / Slooshi / Link
・ADC:Piglet(ミッドへのロール転換から復帰) / Youngbin
・サポート:Kevin “KonKwon” Kwon(2月に加入)→Matt / KonKwon
・ヘッドコーチ:David “Varsix” Lim→Jang “Cain” Nu-ri(3月に加入)

 

Team EnVyUs

画像出典:LoL Esports Photos Flickr

・NA LCS 2017 Spring Split レギュラーシーズン 10位

昨年、運営が困難になったRenegadesに代わって立ち上がった新チームであるEnvy。この春は他チームの補強に取り残される結果に終わってしまい、最下位となった結果入れ替え戦へ。挑戦者を跳ね除けて乗り越えて降格こそ免れたものの、苦境に立たされていることに変わりはない。しかしながら何の光明もないわけでは無い。Lira選手は春シーズンで最も優れたジャングラーとして結果を残しており、また新たなヘッドコーチとしてviOLet氏を迎えている。氏はもともと『StarCraft2』プロシーンで名声を上げた元選手であるが、韓国の名コーチには『StarCraft2』シーンで活躍した人物は少なくない。そもそも世界最強の誉れも高いSKTを率いるコーチのkkOma氏からして元『StarCraft2』プロ選手である。その手腕によってどのようにチームが生まれ変わるのかが注目される。

・ミッド:Ninja(脱退)、Yasin “Nisqy” Dinçer(加入)、Choi “Pirean” Jun-sik(P1より加入)→Nisqy / Pirean / Alex Ich
・ヘッドコーチ:Dylan(脱退、Fnaticへ移籍)→Kim “viOLet” Dong Hwan(同組織より異動)

 

開催・配信情報

NA LCSはRiot Games本社のあるアメリカはロサンゼルスのLCSスタジオで開催されている。試合配信スケジュールは、日本時間で毎週土・日・月曜早朝となっている。土曜は朝7時開始、日・月曜は朝4時開始となっているので、リアルタイム観戦したい向きは注意されたい。公式サイトLoL eSportsYouTube公式チャンネルにて、6月3日朝7時より配信開始予定となっている。プレイオフファイナルは9月2~3日にボストンで開催されることもすでに告知済みだ。

ちなみにNA LCSスタジオはRiot Games本社と道路を挟んで隣接した立地。

https://twitter.com/FionnOnFire/status/868282902651351040

歴史が長いだけではなく、変革と勝利がなければその歴史を輝かせることはできない。ビジネスとしていくら魅力があっても、勝利がなければシーンからも人心は離れていってしまうのではないだろうか。苦闘する北米地域の戦いの行方やいかに。

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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