『LoL』最強地域のプライドはこうして形作られる。韓国トップリーグLCK、夏の観戦ガイド

4月末から4週間にわたって全13地域のチームがブラジルで激しい戦いを繰り広げた国際大会「Mid-Season Invitational」が幕を閉じたのは先週のことだ。そこからわずか1週間しか経っていないが、いよいよ6月初頭から世界各地で約2か月間にわたる夏スプリットが開幕する。

4月末から4週間にわたって全13地域のチームがブラジルで激しい戦いを繰り広げた国際大会「Mid-Season Invitational」が幕を閉じたのは先週のことだ。そこからわずか1週間しか経っていないが、いよいよ6月初頭から世界各地で約2か月間にわたる夏スプリットが開幕する。本記事では世界でもいち早く開幕する韓国トップリーグ「League of Legends Championship Korea(LCK)」について、今年前半の結果を振り返りつつ、夏レギュラーシーズンの概観を紹介していく。

春スプリット概観記事では、参加チームの概要からメンバーまでを紹介しているので、ぜひ合わせてお読みいただきたい。

 

Kongdoo Monster

画像出典:yong woo ‘kenzi’ kim

・LCK 2017 Spring Promotion 昇格
・LCK 2017 Spring Split 10位
・LCK 2017 Summer Promotion 降格

春に昇格を果たしたチームだったが、レギュラーシーズンの対戦成績は振るわず順位は常に低空飛行。最終的に3勝15敗という成績で最下位から入れ替え戦行きとなり、二部リーグへの降格となってしまった。

KMは結成以来LCKへの昇格と降格を繰り返しているチームだが、生き馬の目を抜くような激しい競争が繰り広げられ続けているのが韓国という地域だ。再度一部リーグの仲間入りを果たすために克服すべき課題は多いだろうが、またきっと上がってきてくれるにちがいない。

 

Ever8 Winners

画像出典:yong woo ‘kenzi’ kim

・LCK 2017 Summer Promotion 昇格

JAGには敗れたものの、Kongdoo Monsterと元一部チームCJ Entusを破って昇格を果たしたチーム。入れ替え戦前には、北米Team Liquidから韓国ソロキュー武者修行に来ていたGoldenglue選手が練習部屋に逗留しており、選手同士の交流を育んだという。そういった刺激もプラスに働いたのであろうか。

スポンサーであるEver8は韓国のホテル経営会社で、E8Wの練習部屋は経営ホテルの一角に設けられている。元CJ・SSGのトップレーナーであるHelper選手や、中国のSnake Esportsに所属した経歴のあるElla選手など、有力な選手を抱えている。昇格後にジャングラーとして加入したComeback選手(旧名Hachani)は、昨冬のオフシーズンにヨーロッパのTeam Vitalityにサポートとして移籍したものの、現地の生活が肌に合わず選手活動に支障を来して帰国した選手だ。ほか、SpawN監督はRascal Jesterと7th heavenの2チームで計2年間を日本チームのコーチとして過ごしており、コーチのAlvingo氏は2015年に日本のチーム7th heavenのミッドレーナーを務めた元選手でもある。国際的に活躍したベテランたちが集結したE8Wだが、トップリーグでどこまで勝ち抜いていけるかに注目したい。

・トップ:クォン “Helper” ヨンジェ (권영재)
・ジャングル:ハ “Comeback”スンチャン (하승찬) / キム “Malrang” グンソン (김근성)
・ミッド:パク “Cepted” ウィリム Park Wi-rim (박위림)
・ADC:キム “Deul” ドゥル (김들)
・サポート:カク “Ella” ナフン (곽나훈)
・コーチ:チェ “Alvingo” ビョンチョル (최병철)
・監督:パク “SpawN” シハン (박시한)

 

Jin Air Green Wings

画像出典:yong woo ‘kenzi’ kim

・LCK 2017 Spring Split 9位
・LCK 2017 Summer Promotion 残留

これまでは中堅チームをキープしてきたが、この春はひどく不調だったJAG。レギュラーシーズンの最初からKMやROXと降格圏争いを続けていたが、最終的に9位と降格圏で春スプリットを終えることになってしまった。やはり春から新規加入のボットレーンの調子が上がらないようで、他ポジションもそれをカバーする余力がない状態のようだ。入れ替え戦では歴史あるチームの意地を見せて2勝をもぎ取り残留を決めたが、チームワークと個人練習の結果がこの夏に出せるかどうかが課題だろう。

※春からのメンバー入れ替えなし

 

bbq Olivers

画像出典:@bbqolivers

・LCK 2017 Spring Split 8位

KMと同じく春から昇格したチームbbq Oliversは、レギュラーシーズン当初こそそこそこの順位でスタートできたものの、対戦相手が同じような中堅~下位チームに偏っていたために勝数を上げられた面が否めなかった。その後ずるずると負けを増やして最終戦績は5勝13敗。ギリギリ降格圏を免れることができはしたが、厳しい状況には間違いない。期待の若手であるADCのGhost選手とミッドのTempt選手の奮闘は、チームを引っ張る力となっていた。だが他ポジションの選手たち、そしてチーム全体の成長がなければ、夏に上位を狙うのは難しい。

※春からのメンバー入れ替えなし

 

Longzhu Gaming

・LCK 2017 Spring Split 7位

多くのチームが夏前のオフシーズンに選手の入れ替えを控える中、大きなメンバー変更を行ってきたのがLZだ。春スプリットは上位からスタートしたが、bbqと同様にその後ずるずると負けが増えてしまったこのチーム。ROXより引き抜いたボットレーンコンビであるPraY選手とGorillA選手も十分な活躍をすることができず、夏から中国チームへの移籍も噂されていた。しかし実際に脱退したのはトップのExpression選手とジャングルのCrash選手、ミッドのFly選手の3名であり、ボットレーンの2名は少なくとも夏の間はチームに留まる決意をしたようだ。春スプリットの最初にコーチを務めていた元NaJin・ROXのSSONGコーチも、レギュラーシーズン半ばの2月末日をもって脱退している。新規加入の選手は3名で、中でもRascal選手は春スプリットの間、日本のRascal Jesterで活躍したTaki選手その人。Cuzz選手は韓国サーバーソロキュー上位の常連であり、個人技量は確かなものだ。これらの選手入れ替えを総評すると、ボットレーン以外のポジションにいた有力選手を放出し、有望な若手選手を迎え入れたといえる。新しいチームワークをこれから練り上げられるかがLZの焦点となる。

・トップ:Expression(脱退)→キム “Khan” ドンハ(加入) / キム “Rascal”カンヒ(加入)
・ジャングル:Crash(脱退、中国Vici Gamineへ移籍)→ムン “Cuzz” オチャン(加入)
・ミッド:Fly(脱退、北米Gold Coin Unitedへ移籍)→BDD(サブからスターターへ)
・ADC:イ “Jin” ウジン(加入)→PraY / Jin
・コーチ:キム “SSONG” サンス(3月1日に脱退)→キムジョンス(加入)

余談ではあるが、夏スプリット開幕直前のこのタイミングで、LZが選手やスタッフに対して少なくとも昨年から給与の不払いや遅延を抱え続けているという内部告発があった。その後LZは給与未払いとなっていた選手たちに連絡を取って一部の支払いを解決し、未解決の支払いも今後早急に対処していくとの声明を発表した。この給与未払いは、昨年11月に母体組織が中国の家電企業である蘇寧電器に買収された前後に中韓関係が緊張状態になったため、資金の流れに滞りが発生したことも原因のひとつにちがいない。選手に対しての未払いは解決に向かいつつあるが、スタッフへの未払いは公式声明で言及されておらず、コミュニティではLZという組織の選手とスタッフの扱いへの非難の声が上がっている。

 

ROX Tigers

画像出典:@tigerslol_jp

・LCK 2017 Spring Split 6位

一昨年・昨年に華々しい結果を残したメンバーが散り散りになり、まったく新しいチームに生まれ変わったROX。春スプリット中盤まではなかなかチームが噛み合わなかったのか、当初は降格圏前後をさまようことになった。しかし徐々に勢いを取り戻し、プレイオフ進出まであと一歩のところでレギュラーシーズンを終える結果となった。春スプリット折り返しの2月後半より、国外でのプレイ経験が豊富なジャングラー・Mightybear選手が加入し、チーム全体に良い刺激があったのだろう。オフシーズンの間も熱心に練習をしていたようで、ヨーロッパから強化合宿に来ていたチーム「Unicorns Of Love」との交流を持った様子も公開されている。夏はさらなる結果をつかみたいところだ。

・ジャングル:キム “Mightybear” ミンス(2月に加入)→SeongHwan / Mightybear

 

Afreeca Freecs

画像出典:@Freecs_LoL

・LCK 2017 Spring Split 4位
・LCK 2017 Spring Playoff 5位

昨年から「SKTキラー」の異名を持つこのチームは、この春もSKT相手に1勝1敗と悪くない勝敗をつけることに成功し、さらにはSSG相手にも対戦成績2勝という好成績を収めた。春レギュラーシーズンの戦績は10勝8敗と、中堅どころではあったがプレイオフに進出したが、対戦勝敗数で並ぶMVP相手に思うような試合展開ができず、2敗してプレイオフ敗退となった。チョゲヒョンコーチは昨年12月の就任で、ESC Ever(現bbq Olivers)のコーチを務めてその年のKeSPA Cupで好成績を収めた後、他地域チームへの移籍も考えたという。しかしAFのロースターに大きな可能性を見てオファーを受け、まず春に中の上という結果を残すことができた。国外帰りのMaRin選手にSpirit選手、元ROXのKuro選手など実績のある選手を抱えるこのチームには、もっと高いポテンシャルがあるはずだ。世界大会を目指してチームワークにさらに磨きをかける。

※春からのメンバー入れ替えなし

 

MVP

画像出典:yong woo ‘kenzi’ kim

・LCK 2017 Spring Split 5位
・LCK 2017 Spring Playoff 4位

中堅チームの条件とは「上位チームには負けてしまうが、下位チームには確実に勝ち、同じ中堅どころに対してはそこそこ」というところだろう。その条件から一歩先に進むことができれば、上位チームの仲間入りも間近だ。現在の韓国における上位チームは間違いなくSKT・KT・SSGの3チームとなるだろう。そしてその中でスーパーチームたるKTから2勝をもぎ取ったMVPこそ、中堅から上位への扉の前に立つチームといえる。とはいえ「SKTキラー」ことAFも条件はほぼ同じ。どちらが先に上位チームの仲間入りを果たすのか。上位チームが少しでも隙を見せれば迷わずその首筋をかっ切り、世界大会進出へのチャンスを見逃すことのない「後門の狼」たちの戦いを見届けよう。

※春からのメンバー入れ替えなし

 

Samsung Galaxy

画像出典:yong woo ‘kenzi’ kim

・LCK 2017 Spring Split 2位
・LCK 2017 Spring Playoff 3位

昨年の世界大会準優勝、押しも押されぬ強豪チームのひとつがSSGだ。この春レギュラーシーズンの戦績は14勝4敗で2位につけたが、プレイオフではラウンド2から勝ち上がったKTに敗れ、春スプリット優勝ならびにMSI進出はかなわなかった。このオフシーズン中の5月、ジャングラーを務めるAmbition選手が長年付き合ってきた女性と挙式し、LCK現役選手の中で唯一の既婚者となった。Ambition選手は今後もこれまで同様の選手活動を続け、チームが再び世界大会へ進出できるよう尽力するという。春スプリット中の成長を注目された同チームのジャングラーHaru選手と協力しつつも競い合う、野心あふれる彼とチームメイトたちの活躍を今後も楽しみにしたい。

※春からのメンバー入れ替えなし

 

KT Rolster

画像出典:@KTRolster_tw

・LCK 2017 Spring Split 3位
・LCK 2017 Spring Playoff 準優勝

韓国随一のタレントをずらりと並べたことで話題になったスーパーチームKT。ADCのDeft選手をはじめとして、春レギュラーシーズンの初戦から素晴らしいプレイを見せてくれた彼らの最終戦績は12勝6敗。敗北の内訳としてはSKTとMVPに2敗を喫したほか、SSG・KMと互いに1勝1敗を分けあっている。個々人の技量としては非の打ち所のないメンバーではあるが、そこは厳しい韓国トップリーグだけあって、ミスを見逃すチームはいない。またKTは試合中のコミュニケーションの問題が指摘されており、試合中のマクロ的な意志決定に疑問が生じる場面も散見された。この問題を解決するためか、オフシーズン中にサブサポートとしてChance選手が加入。チーム全体の意志決定に大きく関わるポジションをテコ入れし弱点を克服しようという意図なのだろう。夏の王座を勝ち取り、世界大会進出と初のタイトル獲得を目指す彼らの旅路は、まだまだ長いようだ。

・サポート:イ “Chance” チャンドン(加入)→Mata / Chance

【UPDATE 2017/5/30】 KT Rolsterは5月30日、新規加入したChance選手の除名を発表した。除名理由はゲーム内チャットでの暴言とELOブースティング行為が認められたためとのこと。この除名を伝える報道によると、このことからプロ選手の暴言や規約違反を巡ってコミュニティ内でも激しい議論が巻き起こっているという。KTは5月30日の開幕戦第2対戦にてLZと対戦予定であり、少なくともこの試合には春までのメンバーで臨む見込み。しかし、KTを含む春スプリット上位4チームが出場する国際大会「Rift Rivals」には、サブ含めて6名の選手の登録が必要なため、それまでに別のサブ選手を登録しなければならない。

 

SK Telecom T1

画像出典:LoL Esports Photos

・LCK 2017 Spring Split 1位
・LCK 2017 Spring Playoff 優勝
・Mid-Season Invitational 2017 優勝

この押しも押されぬ最強地域・世界王者は、一昨年の世界大会以来ずっと公式国際大会のタイトルを連続独占し続けている。春レギュラーシーズンは対戦戦績16勝2敗、試合勝率79%という驚異的な成績を収めた。春プレイオフ優勝によって韓国代表の座を射止めて出場したMSIでも、グループステージ8勝2敗という成績でトップに立ち、圧倒的なプレイで優勝を飾った。マクロ戦略に長け、集団戦ではチーム全員がまるでひとつの生物のように確実な動きを行うこの最強チームに打ち勝つには、一体どうすればよいのだろうか? その答えとして序盤の立ち上がりにつけ込む隙を見つけた台湾のFlash Wolvesや中国のTeam WEは、グループステージでSKTから勝利をもぎ取ることに成功した。イーブンに近い条件である序盤にリードを取り、マクロ戦略で常に上回ってオブジェクトの有利を取り続ける──このとんでもない困難が伴うことを実行できたチームしか、このチームに勝つことはできない。そしてこのオフシーズン、Huni選手とともにトップレーナーを務めていたProfit選手の脱退にともない、SKTは新たに元CJのUntara選手を迎え入れた。コーチのkkOma氏は新しい才能を見る目に長けることで知られている。世界大会三連覇をまっすぐに見据える最強チームは、勝利を確実にするために着実な歩を進めている。

・トップ:Profit(脱退、Ninjas in Pyjamasへ移籍)、パク “Untara”ウイジン(加入)→Huni / Untara

 

日本から一番近いトップリーグは配信も見やすい

『LoL』最強地域は日本のすぐ隣国だ。韓国標準時(KST)は日本時間と時差がないため、KST表記の日時を参照すると他地域や国際大会の試合も観戦しやすい。

LCK 2017 Summer Splitの開幕日は5月30日夕方と、他地域にほぼ先駆けて全9週間にわたる戦いが始まる。試合日は毎週日・火・水・木・土曜日。1日に2戦(2本先取制)が行われ、最初の対戦が17時、次の対戦が20時開始となっている(進行によって開始時刻が変更になることも)。残念ながら日本語配信は存在しないが、韓国語公式配信と全世界向け英語公式配信(TwitchYouTube)の2配信が開設されている。最強地域の試合では手堅い選択が重視され、その上で効率とスピードを極めたゲームが展開されるため、全世界のプロチームが常にその動向をチェックしてもいる。プロ関係者でなくとももちろん、巧みなプレイや的確な意志決定を楽しむことができる。今年も世界大会への韓国地域出場枠は3チーム。世界大会へ向けてスパートをかける10チームの戦いぶりを見届けよう。

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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