『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の中国トッププロリーグ「LPL」が、夏スプリットよりフランチャイズ制へとシステムを変更することが明らかになった。発表があったのは4月30日に行われたプレスカンファレンスで、北米におけるプロスポーツと同様に、各チームが都市に拠点を構えてホーム&アウェー戦を行うシステムになるという。リーグ参加チーム数の拡大や、二部リーグのシステム改定も同時に発表されている。
現在の『LoL』プロリーグには一般的にトップリーグと二部リーグが存在しており、各リーグには昇格・降格システムが存在している(参考記事)。この構造内の序列や昇降格についてはもちろんチームの実力のみが影響し、レギュラーシーズン中のチーム運営を失敗すれば投資などが水の泡になってしまうこともある。このことから欧米のトップチームたちは昨夏、「降格はチームのブランドイメージを下げるため経営上大きなリスクである」という問題提起を行い、運営開発会社であるRiot Gamesも将来的な改善に務める姿勢を示してきた。
今回発表されたLPLのシステム変更は徐々に実施される。まず手始めに「降格」が廃止され、夏スプリットの参加チームはトップリーグから落ちることがなくなる。さらに2018年の春スプリットには参加チーム数が現在の12チームから14チームに拡大され、将来的には20チームになる予定とのこと。また注目のフランチャイズ制だが、LPL参加チームのひとつであるLGDのオーナーによると参加チームはそれぞれ「LGDは杭州、EDGは広州、Snakeは蘇州、OMGが成都へ」の移動を計画しているという。ホーム&アウェー戦の詳細など、現時点では未定・不明な点は多いものの、北米でNBAやNHLといったメジャースポーツが運用している都市別フランチャイズ制と同様のものになるという推測がなされている。
このフランチャイズ制への移行でチームにとっての最大のメリットは、やはり降格がなくなることだ。LGDのオーナーも「降格が廃止されることはとても重要で、人材確保やチーム育成にかけたコストが無に帰することがなくなる」と新システムを歓迎している。北米のメジャースポーツとの比較から、現状のチーム経営は大きく安定するのではないかとする推測もある。現在の『LoL』プロチームには「外国人選手はスターターに2名まで」という制限があるが、そのおかげでこれも変わっていく可能性がある。トップチームはテコ入れのために高いリスクを負って韓国人選手を入れることがあるが、チーム経営が安定することで各組織がいわゆる「ファーム」を持つことができれば、外国人選手に頼らないチームのテコ入れが可能になるのではないだろうか。ファームができれば選手を育成する環境も整備され、リーグの競技性が高まるだけではなく、選手のキャリアパスを広げることにも寄与するはずだ。こうして環境が変わっていけば、将来的には選手同士の互助団体の結成や、ドラフト制の導入にまで発展するかもしれない。
ただ、観戦者としては今までトップリーグに新風を吹き込み続けてきた昇格・降格システム──すなわち「入れ替え戦」がなくなるのは少しさびしくも感じる。今回のLPLのシステム変更では、二部リーグ「LSPL」と三部リーグ「TGA」は「LoL Developing League」に統合され、年に1チームをLPLへと昇格させるという。LPLが20チームになった後はどうなるのかといった点など、詳細は不明だ。またフランチャイズ制となることで、トップリーグへの新規参入は参加権を購入することでしか行えなくなるはずだ。金銭的なバックボーンは乏しくとも実力のみで勝ち抜く組織がトップへと上がっていくような構図は、全体的になくなってしまうだろう。
今後各地域の『LoL』トップリーグはこのようなフランチャイズ制になっていくのだろうか。中国では『LoL』プレイヤー人口・ファン人口がともに巨大であり、都市ごとのフランチャイズ制導入により各地に散らばるファンたちへ生観戦環境を提供できるというのは興行的に大きなメリットだろう。一方で韓国のトップリーグはすでKeSPA(韓国e-Sports協会)とRiot Games の共同開催になっており、配信権もOGN・SPOTVの二業者に委託されるなど、他地域に先行して運営主体と権利の分離が行われている。中国でもフランチャイズ制導入発表に引き続き、『LoL』『King of Glory』といったe-Sportsコンテンツの中国配信を行うe-Sports専門TVチャンネルをテンセントやRiot Gamesらが共同で設立するしたという発表も行われている。北米でもトップリーグの配信権を売却するといった報道や、2018年よりフランチャイズ制がスタートするという報道などがあり、噂や推測の域を出ない話も多いが同様の変化が他地域でも進んでいくようだ。