『リーグ・オブ・レジェンド』2017シーズンSpring Splitが終了。戦いは国際大会MSIへ

 

年明けからプロチームたちの激しい戦いが繰り広げられた『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』トップリーグ。この4月下旬には、各地域でSpring Splitが終了した。弊誌では開幕前に欧米韓の3地域について、各チームと見どころの紹介記事を掲載している。

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盤石の強さを見せたチームがあった。惜しくも涙を飲んだチームがあった。凋落著しいチームもあった。本稿ではこれら3地域の春スプリットについて振り返り、月末から始まる国際大会「Mid-Season Invitational(MSI)」の展望を解説する。

 

欧州

UoLの名物マネージャーが扮したチームシンボルのユニコーンに対し、鋭い眼光を放つ「G2仮面」が登場。両チームの大旗が翻る決勝オープニングセレモニーは、大きな盛り上がりを見せた。画像出典:Riot esports Flickr

グループA
1位:G2 Esports 12勝1敗
2位:Misfits 8勝5敗
3位:Fnatic 6勝7敗
4位:Team ROCCAT 6勝7敗
5位:Giants Gaming 2勝11敗

グループB
1位:Unicorns Of Love 11勝2敗
2位:H2k-Gaming 10勝3敗
3位:Splyce 7勝6敗
4位:Team Vitality 3勝10敗
5位:Origen 0勝13敗

プレイオフ結果
優勝:G2 Esports
準優勝:Unicorns Of Love
3位:Fnatic
4位:Misfits
5~6位:Splyce, H2k-Gaming

新しき王者の治世は続く

今シーズンより、2グループに分かれて順位を競う新形式を採用したEU LCS。対戦回数もグループによって異なり、それぞれのグループ内で各チーム同士2試合、別グループとの試合を1試合行う形式で行われた。グループAは「G2 eSports」が今シーズンも安定した強さを発揮し、全13マッチ中12勝を収めてグループ1位を確保した。

グループBは「Unicorns of Love(UoL)」が同グループB内では全勝。グループAのG2およびMisfitsとの対戦は落としたものの、グループ内1位でプレイオフへの出場を決めた。グループBには入れ替わり激しいEUで強豪の地位を保ち続けているH2kも入っており、それを抑えてのグループ1位はEU LCS参入以来の好成績だ。

そして迎えたプレイオフでは、予想通りに熾烈な戦いが繰り広げられた。春期前半は不調だったFnaticは古参の意地を見せ、春からの新参チームであるMisfitsを圧倒して3位に入賞。決勝では「古き王者」Fnaticに準決勝で引導を渡した「新しき王者」G2が、トリッキーなだけでなく堅実な強さを身に着けたUoLとの戦いに臨んだ。確実な試合運びの末、3勝1敗で2017シーズン春期優勝を勝ち取ったのはG2となった。2016シーズン春からの3スプリット連続優勝は、まさしく彼らがヨーロッパの新しき王者であることを示している。

流星のごとき輝き、そして凋落

EU LCSはチームの入れ替わりや変化が激しいリーグだ。Season 4(2014年)に上位を占めた有力チーム「Alliance」「SK Gaming」「Fnatic」の中で、現在もEU LCSに留まっているのはFnaticのみである。SK Gamingの『LoL』部門は降格後活動休止中。Allianceは幾多のリブランドを経た末にドイツのプロサッカークラブのe-Sports部門「FC Schalke 04 Esports」としてトップリーグ昇格を目指しているが、夏への入れ替え戦出場は逃してしまっている。

一方で華々しいデビューを果たすチームも数多存在する。今シーズンのチームの中では、G2が昇格直後から強豪の地位を占め続けている。またこの春よりLCS昇格を果たしたMisfitsも、Fnaticを抑えてグループAで2位を獲得している。ROCCATのようにギリギリの順位を死守するチームもあれば、VitalityやSplyceのように体制の刷新で順位を目まぐるしく変えていくチームもある。

入れ替え戦をサポートとして戦うxPeke選手。彼以外の選手はチームを去ったが、夏の二部リーグを戦う準備に余念はない。そう、全てがスタートラインに戻っただけなのだ。画像出典:Riot esports Flickr

そんな中で、今シーズンもっとも劇的な結末を迎えたチームを1つ挙げたい。結成は2015年春、その年の夏からEU LCS昇格を果たし、そのまま世界大会ベスト4進出を遂げたチーム。ヨーロッパの伝説的なプレイヤーに数えられるxPeke選手によって立ち上げられたそのチームの名は「Origen」という。しかしそのあまりにまばゆい栄光は、流星のごとく燃え尽きてしまう。2016シーズンにxPeke選手がスタメンを退いたOrigenは、代わって入ったPower Of Evil選手が上手くチームに馴染めず苦戦。またボットレーンの強さを支えていたZven選手とMitthy選手のコンビが揃って離脱し、スターティングメンバーの選手にも事欠く状況が続くこととなってしまう。2017シーズンは3月以降サポートの選手が見つからず、本来ミッドレーナーであるはずのxPeke選手が代理を務めた。しかしチームを立て直すことは叶わず、EU LCS史上初のレギュラーシーズン「無勝」で最下位が決定。入れ替え戦も敗退してEU LCSからの脱落が決定した。過去に多くのチームがLCSを去って行ったが、これほどの栄華をつかみながらも瞬く間に崩れていったチームはない。いくつもの原因が簡単に推測できるが、『LoL』のプロチームがいかに不安定で運営が難しいものかを示す一例として記憶するに値するだろう。

 

北米

決勝の舞台裏でオーナーのReginald氏を囲むTSMメンバーたち。チームの雰囲気は上々だが、国際大会で存在感を示せるかどうか。画像出典:Riot esports Flickr

レギュラーシーズン結果
1位:Team SoloMid 15勝3敗
2位:Cloud9 14勝4敗
3位:Phoenix1 11勝7敗
4位:Counter Logic Gaming 10勝8敗
5位:FlyQuest 9勝9敗
6位:Team Dignitas 9勝9敗
7位:Immortals 8勝10敗
8位:Echo Fox 6勝12敗
9位:Team Liquid 5勝13敗
10位:Team EnVyUs 3勝15敗

プレイオフ結果
優勝:Team SoloMid
準優勝:Cloud9
3位:Phoenix1
4位:FlyQuest
5~6位:Team Dignitas, Counter Logic Gaming

羽ばたく不死鳥

中国からの韓国人選手流出に伴い、世界規模で大荒れとなった移籍市場によってさらなるタレントが流入したNA LCS。Team SoloMid、そしてCloud9といった盤石の強豪たちがその強さを見せつけた一方で、昨年から大きな飛躍を遂げたチームもあった──その名は「Phoenix1(P1)」。元々は運営上の問題で瓦解してしまったチーム「Team Impulse」のLCS参加権および選手の一部を引き継いで発足した急造チームであり、組織運営も昨年夏スプリット終了間際の6月にようやく整うという、苦しい戦いを経験した組織である。今年は春スプリット開始前に韓国人選手による大型補強を敢行し、その結果が注目されていた。P1が獲得した韓国人選手は2人。ヨーロッパはH2kのミッドとして主軸を務めつづけ、世界大会出場経験も豊富なRyu選手。韓国の「無冠の強豪」KT Rolsterで戦い続けていたADCのArrow選手。Arrow選手は中国から帰国したDeft選手に席を奪われた格好といえなくもなく、今年の移籍市場を象徴する事例と言えるだろう。かくして2016シーズンの夏を8位で終えたP1は、今シーズンの装いを全く新たにして、Team Impulseの残渣から不死鳥と呼ぶにふさわしい飛翔を遂げ、レギュラーシーズン3位というみごとな成績を収めた。

また、この春からLCS昇格を果たしたFlyQuestも注目に値するチームだ。メンバー構成を見るとまるで2013シーズンのCloud9を主軸にしたようなチームなのだが、ミッドへと帰ってきたHai選手の手腕はやはり侮りがたく、韓国人選手で補強を図るチームが大半のNA LCSにおいて、参戦直後から北米出身の選手のみでプレイオフ進出を果たしている。個々の技量において秀でる選手は多いが、チームの主軸として指揮官役としての才能を兼ね備えた選手という点では、Hai選手こそが北米最高の一人と言っても過言ではないだろう。

もがき続けるチーム

ゲームバランスの変化や各選手の人間関係、ゲーム面での得手不得手や相性によって目まぐるしく環境が変化するLCSにおいて、何シーズンも強豪であり続けることはとても困難だ。主軸だった選手がキャリアアップのために脱退するということも珍しくない。たとえば、昨年強豪の一角を占めていた「Immortals」は、トップのHuni選手が世界最強の名をほしいままにする韓国の「SK Telecom T1」へと移籍し、さらにはジャングルのReignover選手がTeam Liquidへ、WildTurtle選手も古巣のTeam SoloMidへ里帰りという形でメンバーのほとんどを失う結果となった。韓国のベテランFlame選手や、昨年の新人賞獲得ジャングルのDardoch選手といったタレントを新たに揃えたものの、チームとしての最終結果は7位。プレイオフ進出を逃してしまうこととなった。

プレイオフ決勝・3位決定戦の舞台となったバンクーバーは、Inori選手の出身地でもある。優勝チームTSMのBiofrost選手とともに、故郷に錦を飾ることができた。画像出典:Riot esports flickr

また、苦しい戦いを続けるチームもある。昨年公開された「Breaking Point」という動画を覚えているだろうか。Team Liquidが春から夏シーズンにかけてのチーム内情をドキュメンタリーとして公開した動画だ。再起を誓ったLiquidは、脱退したDardoch選手に代わり北米最高のジャングルの一人であるReignover選手を招き、復帰したPiglet選手とのコミュニケーションを補強して新たなシーズンに臨んだ。しかし他チームも同様に補強を重ねており戦績は振るわなかった。春スプリット後半には競技プレイヤーとして休養中だったDoublelift選手を加えて、Piglet選手をADCからミッドへとコンバートする新体制で戦っている。ADCとして頭角を現す前はミッドとして鳴らしていたPiglet選手のポジション変更は、チームの活力を取り戻したかに見えた。しかしこのテコ入れにもかかわらずチームの順位は低空飛行を続け、入れ替え戦に参加する9位でレギュラーシーズンを終える結果となった。入れ替え戦では辛うじて残留に成功したが、春に補強した選手が夏以降もチームに参加し続けるかどうかもわからず、行く末が気になるチームである。

 

韓国

LCK優勝カップを手にするSKTの選手とコーチ陣。初のMSI連覇達成はなるだろうか。画像出典:@sktelecom_t1

レギュラーシーズン結果
1位:SK Telecom T1 16勝2敗
2位:Samsung Galaxy 14勝4敗
3位:KT Rolster 12勝6敗
4位:Afreeca Freecs 10勝8敗
5位:MVP 10勝8敗
6位:ROX Tigers 8勝10敗
7位:Longzhu Gaming 8勝10敗
8位:bbq Olivers 5勝13敗
9位:Jin Air Green Wings 4勝14敗
10位:Kongdoo Monster 3勝15敗

プレイオフ結果
優勝:SK Telecom T1
準優勝:KT Rolster
3位:Samsung Galaxy
4位:MVP
5位:Afreeca Freecs

玉座は揺るがず

この春の注目はなんといっても、堂々たる実績の選手・スタッフ陣を抱えて世界大会二連覇中の「SK Telecom T1(SKT)」と、SKT以外からオールスターのような選手たちを集めてスーパーチームを作り上げた「KT Rolster」の2チームだろう。両チームはほとんど負けることなく破竹の快進撃を続け、第6週で二度の直接対決をほぼ間をおかずに行った。結果は2回ともSKTの勝利となり、春のレギュラーシーズン首位達成への弾みをつけることとなった。KTはSKTの選手たちに劣らない素晴らしいタレントを揃えたわけだが、個々の選手の技量がいかに素晴らしくとも、チームとしての意志決定で上回ることができなければ真の強敵に勝つことはかなわないという『LoL』プロチーム運営の難しさを象徴する結果といえるだろう。最終的には昨年の世界大会でSKTと優勝カップを奪い合った「Samsung Galaxy(SSG)」がKTとSKTを抑えてレギュラーシーズン2位に入賞した。韓国のプレイオフは、5位以上のチームがすぐ上のチームに挑んで勝ち上がるという「King of the Hill方式」になっているため、レギュラーシーズンの順位は世界大会進出に直結している。決勝で待ち構えるSKTに、SSGを破って相対したKTだったが、3勝0敗と全く歯が立たず、「無冠の王者」の称号返上には至らなかったのであった。

旧ROXメンバーの明暗

一昨年・昨年と世界大会でSKTの前に立ちふさがった「ROX Tigers」の素晴らしいプレイは記憶に新しい。しかし今シーズン開幕前、そのROXのメンバーたちは新たなるチームへと旅立っていった。SKTに移籍したジャングラーのPeanut選手や、スーパーチームKTでトップを務めるSmeb選手、Afreeca FreecsのミッドとなったKuro選手らは、この春にプレイオフ優勝ないし優勝を争える位置で戦いを終えることができた。しかしボットレーンコンビのPraY選手・GorillA選手らが移籍した「Longzhu Gaming」は、スタートダッシュは悪くなかったのだがレギュラーシーズンの最終結果は7位。降格圏ではないものの、プレイオフ出場は叶わない順位で終わることとなってしまった。この結果を受け、2人は中国リーグへの移籍を検討しているという報道もある。どんな選手にも言えることではあるが、夏スプリットでの好成績に賭けて同じチームに留まり続けるという選択ももちろんある。韓国で踏みとどまるか、新天地を目指すか。オフシーズンの動向に注目だ。

 

そして戦いはMSIへ

各地域で春のプレイオフが終わり、春夏の節目となる国際大会「MSI」がいよいよこの週末から始まる。各地域の春の優勝チームが集まって今シーズン上半期のプロシーズンの総決算を行うMSIは今年より開催方式を変更し、現地時間で4月28日から5月21日と約4週間をかけて開催される。上記で春スプリットの経過を紹介したヨーロッパ・北米・韓国以外の地域からも優勝チームが集結しており、その数は総計13チーム。日本からはLJL春スプリット王者の「Rampage」が参戦する。

下馬評としては、やはり韓国代表のSKTが最有力の優勝候補と見られている。ヨーロッパ代表のG2は、今まで出場した国際大会での成績が振るわず結果的に「内弁慶チーム」になっているが、裏を返せばヨーロッパ地域そのものが不調であったということでもあるだろう。地域間の力関係で現在のヨーロッパがいかなる位置につけるのかに注目したい。北米代表のTSMも公式国際大会でここ数年の上位入賞は果たせていないが、昨年のMSIでCounter Logic Gamingが見せた奮闘は強烈な記憶を残しており、チーム特性とメタゲームが噛み合えば希望はあるだろう。北米はプレイインステージのラウンド2からの参戦となるため、旧ワイルドカード地域との力量差にも注目したい。

MSI賞金総額に売り上げが加算される期間限定スキン「覇者カルマ」の販売や、MSIサモナーアイコンをつけてプレイしたプレイヤー数を地域別に競う「MSI 2017 ファンバトル」といったファン参加型のイベントも開催中

MSI開催地はブラジルのサンパウロとリオデジャネイロで、不幸なことに日本時間とはちょうど12時間の時差となる。たとえば現地時間15時開始の試合は、日本時間では深夜3時開始になってしまうのだ。現地から生中継の日本語実況解説つき配信も行われるが、後から録画も見られるはずである。黄金週間の連休に突入されている向きもあるかとは思うが、どうか無理をせず観戦していただきたい。LJL公式サイトでは、試合スケジュールやチーム紹介などの詳細が公開されている。特設サイトでも、出場チーム紹介が公開されている。新形式になったMSI、そこで繰り広げられる熱い戦いを楽しみにしたい。