より執拗に、より残忍に。『リーグ・オブ・レジェンド』リメイク後のワーウィック

『リーグ・オブ・レジェンド』のチャンピオンの一体、人狼の姿をした狩人「ワーウィック」。ティーザーの公開から公式発表やPBEでの実装を経て、リメイク後の具体的な姿が明らかになった。

『リーグ・オブ・レジェンド』のチャンピオンの一体、人狼の姿をした狩人「ワーウィック」。ティーザーの公開から公式発表やPBEでの実装を経て、リメイク後の具体的な姿が明らかになった。リメイク前後を比較しつつ、新たなる狩人の姿を紐解いていこう。

 

新ワーウィックの能力

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かつてのワーウィックは、自己回復能力に長けていることからジャングルを回りやすく、ジャングラーというポジションに慣れていない初心者に向けた設計のファイターとなっていた。ジャングルを回りやすいファーム重視の性能ではあるが、敵との距離を詰める能力には欠けており、ジャングルからレーンへ飛び出して敵を襲う「ギャンク」については味方との協働や機会をうかがう動きが必要とされていた。また集団戦では、有効な行動阻害手段がRしかなく単体対象の攻撃能力しか持たないため、育っていない場合は敵から無視されてしまうこともしばしばだった。

リメイク後のワーウィックは過去の設計の欠点を克服しつつ、「ジャングル初心者向け」というコンセプトをなるべく保つ試みがなされている。いくつかのスキルに新たに追加されたダッシュは敵中に飛び込むための能力であり、メインクラス「ファイター(攻撃力と耐久力をある程度両立した近接攻撃チャンピオン)」、サブクラス「ダイバー(敵に飛び込むチャンピオン)」の定義にピタリと当てはまる。対象指定スキルから方向指定スキルへの変更を行ったことで、シンプルなチャンピオン設計にありがちな「戦闘に入ってからキーを押す順番を覚えたらそれで終わり」という早い段階の学習曲線の頭打ちが取り払われており、状況に応じてスキルの使い方を工夫することでパフォーマンスの天井を引き上げることができるだろう。以下にリメイク前後のスキル性能を比較していく。旧スキルの記述については公式のチャンピオン紹介より、新スキルについてはリメイク公式告知より引用している。

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002旧パッシブ:永遠の渇き
通常攻撃が命中するたび、ワーウィックの体力が回復する。同じ対象を連続で攻撃すると回復量が増える。

003新パッシブ:永遠の渇き
通常攻撃で追加魔法ダメージを与える。自身の体力が半分以下の場合、追加ダメージと同量だけ体力を回復する。

ワーウィックが血に飢えた狩人であることをゲーム的に表現しているパッシブスキル。リメイク前は「攻撃しながら立ち続ける」ためだけのスキルだったが、変更後は与ダメージも向上するスキルに。

004旧Q:餓狼
敵ユニットを食いちぎり、自身の体力を回復させる。

005新Q:野獣の牙
前方の敵に噛みつき、与えたダメージの一部と同量だけ体力を回復する。Qを押したままにするとその敵の背後に向かってジャンプする。

ワーウィックのメインウェポンであるQは、以前の能力を残しつつも劇的な変化を遂げた。スキルプレビュー動画でも見られるように、ダッシュやブリンクといった能力で瞬間的に移動してしまう敵であっても、最初の攻撃が命中していればそのまま追尾して背後にジャンプするようになっている。歩く以外の移動手段がなかったため、離脱手段を持つ相手の追撃が苦手だったワーウィックだが、新しいQを使いこなせば相手に張り付くことができる。対象の最大体力にから算出される割合ダメージも与えることができるので、タンクのような肉厚な敵もたやすく噛みちぎることができるだろう。

006旧W:狩りの遠吠え
ワーウィックが雄叫びを放ち、周囲のすべての味方チャンピオンの攻撃速度を短時間増加させる。

007新W:血の追跡
自動効果:体力が半分以下に低下した敵チャンピオンが通り道に血の跡を残すようになり(効果範囲はマップ全体)、その敵に「血の追跡」が適用される。「血の追跡」が適用された敵に対してはワーウィックの攻撃速度が増加し、その敵に向かって移動する時は非戦闘時に限り移動速度が大幅に上昇する。体力が残りわずかの敵に対しては、これらの効果が3倍になる。
発動効果:広範囲内のすべての敵チャンピオンへと続く血の跡が表示される。この効果はたとえ敵の体力が満タンだったとしても発動する。さらに、もっとも近くにいる敵チャンピオンには「血の追跡」が適用される。「血の追跡」の発動効果には長いクールダウンがあるが、「追跡」されている敵チャンピオンがいない間は、クールダウンが2倍の速さで解消する。

かつてのWは、ギャンクや集団戦の際に「一応使っておいて」アシストを獲得するためのものだったといっても過言ではない。リメイク後のWは以前のEのリメイクとなっており、ワーウィックの「狩人」というコンセプトを色濃く反映した興味深いスキルに仕上がっている。広範囲の敵チャンピオンのヘルス状態をある程度把握できることはチームでキルを獲得することにつながる。また敵チャンピオンの移動経路を可視化できるということは、敵サポートがワードを設置する動きを推測したり、敵ジャングラーの周回ルートを予測する上で重要な情報を得られるということだ。ただの攻撃速度アップから、チームプレイにつながる強力な情報獲得能力になったといえる。もちろんWで追跡した敵チャンピオンを攻撃する際には多くのボーナスが得られるし、くわえてQやRを使っていけばキル獲得へと近づける。敵からしても追跡されていることは工夫すれば把握可能なので、体力が少ないチャンピオンを囮にしてチーム全員でワーウィックを袋叩きにするといったカウンタープレイも想定できる。

008旧E:血の香
有効にすると、範囲内の弱っている敵チャンピオンを自動的に感知する。
血の匂いを嗅いだワーウィックは興奮し、移動速度が増加する。

009新E:怒りの咆哮
少しの間だけ受けるダメージが減少する。効果時間の終了時、または再発動時に、ワーウィックは遠吠えをあげて周囲の敵ユニットを怯えさせ、逃げ惑わさせる。

旧EがWに移動・リメイクしたことから、新Eは完全新規スキルとなった。獲物を狩る獣としての本性をさらけ出し、敵を恐怖に陥れる様を表現したスキルだ。説明を読めば一目でわかるように、このスキルは敵中に飛び込んだ後に使うべきスキルだ。恐怖状態となった敵チャンピオンは一時的に操作不能となり、ワーウィックからゆっくりと遠ざかる動きしかできなくなってしまう。恐怖の範囲外にいる敵は効果を受けないのでワーウィックを攻撃し続けることができるが、スキルの効果でワーウィックの被ダメージ量は減少している。集団戦においてダイバーとしての役割を果たし、敵チームをかき回すのに最適なスキルとなっている。Qで敵の背後に回ってからEを使えば、逃げる敵の足止めも簡単だ。

010旧R:絶狼牙連撃
ワーウィックが敵チャンピオンに突進してサプレッション状態に陥らせ、数秒間殴りつけて魔法ダメージを与える。

011新R:絶狼牙連撃
指定方向にジャンプして、最初に接触した敵チャンピオンにサプレッション効果とダメージを与える。効果時間中はアイテムなどによる通常攻撃時効果が適用され続ける。ジャンプの飛距離はワーウィックの移動速度に応じて増加する。ワーウィックは「絶狼牙連撃」の効果時間中に与えた全ダメージと同量だけ自身の体力を回復する。ジャンプ中は行動妨害効果を受けない。

Rの最大の変更点は、方向指定スキルとなった点だ。リメイク前は対象指定スキルであったため、射程内に入った敵はこれを回避できず、対抗する手段がないことが問題視されていた。リメイク後は方向指定の地形無視ダッシュスキルとなり、単純に移動することで回避が可能になった。また最初に接触した敵チャンピオンに攻撃が行われるため、いわゆる「ボディブロック」で狙われた味方を守ることもできる。方向指定スキルとなった以外は、以前の性能を受け継ぎつつも要所で強化が施されている。たとえばジャンプ中は行動妨害効果を受けないため、スタンやスネアといったスキルでこのダイブを止めるのは不可能だ。回避不可能な場合は、ケイルやタリックなどが持つ無敵スキルやアイテム「ゾーニャの砂時計」などでやり過ごすのがベストな選択肢になると思われる。飛距離はワーウィックの移動速度に応じて増加するため、移動速度アップスキルを持つチャンピオンがチームメイトにいると、プレイの幅が広がるだろう。さっそくPBEにて「どれくらい遠くまで跳べるか」を試した動画がアップされているが、ネクサスからネクサスまで跳べるわけではなく、どうやら内側タワーまでが限界のようだ。

 

以上、リメイク前後のスキル性能を比較してみた。純粋な強化で新しめのチャンピオンとの差は埋まり、プレイが深まる要素も取り入れられており、良いリメイクといえるのではないだろうか。なおリメイクに際してスキルに乗る攻撃力は全て物理攻撃力に統一されているため、物理攻撃力と耐久力を上げていくアイテムビルドが適している。担当デザイナーはスレッシュ、ヤスオ、カリスタなど「ぶっ壊れ性能」のチャンピオンデザインで知られるBradford ‘CertainlyT’ Wenban氏。氏のデザインらしい一見強力なスキル構成になっている。とっつきやすい性能なので、プレイが解禁されればそこかしこでプレイされるはずだ。

PBEにて実際にジャングルを回ってみた動画もアップロードされている。周回速度は速く、体力を高く保ったままファームが可能だ。遠距離攻撃能力が皆無なので、レーンでの運用は向かないようだ。

 

運命に翻弄される悲しき人狼

最古のチャンピオンの一体であるワーウィックにとって、「人狼」「ジャングラー初心者向け」という2つのキャラクターコンセプトが大きな束縛だったことは、リメイクまで7年という時間がかかったことからもうかがえる。

これまでワーウィックのキャラクター設定には、マッドサイエンティスト「シンジド」と星の子「ソラカ」というふたりのチャンピオンが大きく関わっていた。今回のリメイクではシンジドはワーウィックの体を改造したことが明らかになっているが、ソラカとの関わりはなくなってしまったのか、いまだ明らかになっていない。可憐な女神ソラカと醜い人狼ワーウィックの組み合わせは、ファン創作でも人気のモチーフであったため、どうなったのかやきもきしているファンもいることだろう。

今回のリメイクに関連してか、公式のチャンピオン一覧ページに異変が起きている。「カミール」「アイバーン」「タリヤ」「ヨリック」のチャンピオンアイコンの色調が暗くなっているのだ。先月に新規実装されたチャンピオン「カミール」の公式紹介ページではさらにスキルアイコンの色調が暗くなっている。カミールの所属地域である都市ピルトーヴァーとワーウィックの所属地域であるゾウンは隣接しており、『LoL』世界の魔法機械文明の光と影をそのまま象徴するような場所だ。カミールの活動にワーウィックが関わってくるのかもしれない。ソラカとの関わりも含めて、今後の「ユニバース」でのストーリー展開も心待ちにしたい。

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Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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