ベテラン結集RPG『ヴィリオン:コード』は、問題提起のRPG。「消費されないゲーム」「キャリアの終わり」「人間ってなんだろう」など、強い想いを岡田耕始氏に訊いた

学園RPG『Villion:Code(ヴィリオン:コード)』開発者インタビューの、岡田耕始氏編をお届けする。

コンパイルハートは6月25日、『Villion:Code(ヴィリオン:コード)』をNintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/PS4(ダウンロード版のみ)向けに発売する。

『Villion:Code』は、学園RPGだ。地球を救う人材を育成する学園都市がある日突如孤立。外部と断絶した世界に取り残された人々は、突如異形と化した人々など、学園都市を包む異変と戦うことに。絶望的な状況下で、人それぞれが背負う「業」に直面していくことになるという。ランダム生成で判断力が問われる「チューブ型ダンジョン」や、プレイヤーごとの戦術を活かして戦いに挑めるアクションバトルなどの要素が盛り込まれている。

そして本作は、かつて『女神転生』『ペルソナ』シリーズなどを世に出した岡田耕始氏が企画・プロデュースを担当。同氏がおよそ十数年ぶりにコンソール向けゲーム開発に臨むことでも注目を集めている。また、岡田氏と数々の作品に携わった里見直氏がシナリオを、増子津可燦氏がサウンドを手がける。

キャラクターデザインとしては「攻殻機動隊 SAC_2045」などで知られる人気イラストレーターのイリヤ・クブシノブ氏が参加。弊誌では今回、岡田氏・イリヤ氏に両名にインタビューする機会をいただいた。重厚な内容となったためふたつに分けて、本稿では岡田氏への質問を中心に、明かされた開発の裏側や思惑をお届けする。イリヤ氏の知られざるこだわりや、岡田氏との関係性については別記事を確認してほしい。

なぜ「コンソールゲーム」にふたたび取り組むのか

──本作は岡田さんにとって久しぶりのコンソールゲーム開発となると思います。その間、本作に影響を与えた個人的な出来事や変化はありますか。

岡田耕始(以下、岡田)氏:
どこから話せばいいのか……。2003年にガイア(*)を立ち上げた後にモバイルアプリゲームが出てきて、すでに市場はあったものの世界的にモバイルゲームが流行るという気配を感じていました。ガイアではPlayStation Portable向けゲームを手がけていたのもあり、会社としても個人としても、手軽にゲームを遊んでもらえる携帯ゲーム機特化の開発方針を取っていました。

*岡田氏が立ち上げたゲーム制作会社。好評を得た『Sword & Poker』などモバイル・携帯機向けゲームをメインに送り出している。

岡田耕始氏

岡田氏:
そうした流れがあった上で、コンソール向けゲーム作りに臨んだ理由として大きいのはコロナ禍でした。それまでもネットではみんな繋がっていましたが、ウィルスによってみんな家に閉じこもる中でも、ゲーム機を通じてみんなと繋がっているということを強く感じて。

ゲームというのは、いってしまえば「なくても世の中は成立する」娯楽という部分はあったと思うのですが……。コロナ禍のなかでゲームを通じた繋がりだったり、ゲームに限らないエンターテインメントの意味や必要性だったりがふたたび意識される部分があったと思います。

そうした中で、モバイルゲームとコンソールゲームについては別け隔てなく捉えていたんですが、一方で個人的にも「ゲームを遊びこむ」ということが好きで、作り込んで、ゲーム性の部分を遊びこんで楽しんでもらうタイトルが作りたいと感じていました。モバイルゲームって、遊びこむよりかは、もっと手軽に時間を潰せるものが求められている部分があって。ユーザーだけではなくメーカー側でも、そういった作品に寄っていく傾向があったと思います。

そこで自分としては、家でがっつり「今日はゲームをやるぞ!」とポテチなんかを用意してのめり込めるような、ゲーム性を極めた遊び込めるタイトルを作りたいという気持ちがありました。コンソールに限らずモバイルゲームでもいいのですが、じっくり腰を据えてゲームを楽しむという姿勢でやってもらえるゲームを作りたいなという。そういう流れで、『Villion:Code』の開発に行き着いたかたちですね。

イリヤ・クブシノブ(以下、イリヤ)氏:
「人間」を励まそうとしているんじゃないですか?ゲームって、孤独のなかで部屋に閉じこもらないといけない状況の人のための娯楽でもありますから。

岡田氏:
その話はまた後で……(笑)。変化という部分では、自分でも「ゲームを手軽に遊びたい」という気持ちはあって、モバイルゲームをスマホでポチポチやりすぎて指が痛くなるくらいで(笑)。でもやっぱり、そうしたタイトルが希薄なものになってきちゃって、印象に残らないなというのは感じていて。コンソールゲームには限りませんが、「記憶に残るものが作れればいいな」という思いが『Villion:Code』の開発にも繋がりました。

自分の「人生の終焉」を見据えて

──『Villion:Code』では、「学園」「SF」「遺伝子(ゲノム)編集」などのキーワードが世界観に盛り込まれています。こうした要素はどのように導き出されたのでしょうか。

岡田氏:
まず「遺伝子編集」という部分については、ゲームに向けた設定ではなく個人的興味が先でした。自虐的な言い方になりそうですが、自分ももう人生の後半……というか人生の終焉も考える年齢になってきて。コロナ禍の影響もあるかもしれませんが、昔から興味はもっていた、ウィルスだとかiPS細胞だとか、「人間はどういうふうにできて、存在しているのか?」など人間の神秘といったテーマをさらに意識するようになりました。実は遺伝子編集といった分野って現在進行系でどんどん研究が進化しているんです。

そこに面白みを感じていた時に、コンパイルハートさんから企画のお話がありました。当初は違う企画の提案をされて、どうしようか悩む中で「遺伝子編集という面白いテーマがあり、それをゲームに活かせないかなと思っているんですけど」と逆提案したところよい反応があり、そのテーマを活かそうという流れになりました。

岡田氏:
『Villion:Code』の内容を考えるなかでは、自分のゲームを遊んできてくれた方もそうだけど、若いユーザーに向けても「消費するだけではなく、がっつり遊べて記憶に残るものを作りたい」との考えがありました。そこで、日本に限らず世界的に、ほとんどの人にとって共通体験であろう「学生」「学園」という設定を選びました。

「SF」については最初から意識していたわけではなくて、ストーリーやゲームシステムを考えるなかで、本作を面白くするためには技術の進化といった要素が必要そうで。もっと技術が発達した、近未来的な描き方が『Villion:Code』の世界観にハマっていくだろうと判断しました。なので、「SF」という要素についてはゲームを構築していくなかで、その設定にしようと決まったかたちです。

──本作にまつわる岡田さんのインタビューなどを見るに、「このゲームを今、作り届けたい」という強い思いを抱かれているように感じます。

岡田氏:
これも「どこから話そうか」という感じなんですけれども。さっきイリヤさんが言ってくれた「プレイした人を元気づけたい」という思いももちろんあります。いま日本では「将来が見えない」といったネガティブな気持ちを抱いている人もたくさんいると思いますし、世界では景気がいい国もありつつも、戦争も含めて争いが絶えない状況です。

なので、『Villion:Code』を遊んでもらうことで、皆さんが前向きに生きていければと。大仰な言い方かもしれませんが、そういったメッセージを送りたいという思いをもっています。

実はもっと「過激」だった、社会への問題提起

──『Villion:Code』では、舞台が地球の危機を救う人材を育てる教育機関だったり、「インフルエンサー」「環境活動家」といったキャラクター設定だったりと、社会的・政治的な現実の時勢が反映されているように思います。

岡田氏:
そうですね、さっき触れたように、たくさんの人がネガティブな気持ちを抱える世の中で「どうしてそんな状況になったのか」という点に対して、問題提起というか「あなたはどう思いますか?」と質問を投げかけたいという思いはあります。

あと当初はもっと過激な設定もあったんですよ(笑)。個人的にはもっと攻めたかったのですが、思いが強すぎて行き過ぎた部分は抑えてもらって、落とし所をつけています。とはいえ、そこを抑えたからといってクオリティや内容が悪くなったわけではありません。

そういった点を含めて、日本だけでなくワールドワイドな状況も含めて時勢が影響しているのは確かだと思います。ゲーム内で起こることはリアルで具体的なイベントなんですが、ひとつの問題に対してだけではなく、全般的な意味での問題提起という感じですね。

──本作開発にあたって、岡田さんがもっとも気に入っている要素はなんでしょうか。

岡田氏:
「気に入っている要素」といえるかわかりませんが、個人的興味のある遺伝子編集というテーマから「人間というのはどういう生き物なんだろう」という疑問をもって、そこから人間だけでなく生物だったり、もっと辿れば地球、その周りを回る月、そして太陽・太陽系・銀河系という連なりについて広げた思考をギュッと集約して、生物の成り立ちについて思いを馳せていました。そうした深みをもつ「遺伝子編集」的なテーマをゲームに活かせた、自分の中ではうまく昇華できたと思っています。

もちろん、実際に発売されたゲームをユーザーに遊んでもらって初めて結果が出るところではありますが。自分が携わった過去のゲームを遊んでくれた人だけではなく、若年層などそのほかのユーザーにも、結果的に問題提起について考えてもらうような機会になればと願っていますし、そうした作品を開発して走り切ること自体に満足しています。

「シナリオはやっぱり里見」、そして変化した増子氏との仕事スタイル

──『Villion:Code』の開発には、かつてアトラスにて岡田さんと共に開発に携わられた、シナリオライターの里見直氏と、サウンドクリエイターの増子津可燦氏も参加しています。久しぶりに共に開発にあたっての感触はいかがでしたか。かつてと変わった部分もありますか。

岡田氏:
『Villion:Code』は若年層もターゲットにしているので、セリフ回しといった部分で若い表現をできる人がよいなと思って、実は里見ではなく若い作家さんを探していたんですね。でもやっぱり、自分の意思を汲んでくれる人がなかなかおらず……。自分の中のこだわりとして、『女神転生』シリーズなどもそうですが「プレイヤー=主人公」という構図があります。その「喋らずに選択肢で変化を起こしていく」というスタイルをゲームとして成り立たせつつ、シナリオで導いていくというのはハードルが高いんですね。

映画や小説であれば主人公がいて勝手に動いていくんですが、ゲームの場合は当たり前にプレイヤーが操作しなくてはいけなくて、「主人公はあなたですよ」という仕組みで。しかもその中で、いろいろな投げかけも含めたり説明もしなくちゃいけない。これが出来る方となかなか巡り会えなくて「自分のやりたいことをやるなら、やっぱり里見なのかな」というところに落ち着いて、オファーをしたら受けてくれた流れです。 増子に関しては、コンパイルハートさんからも提案があり、ガイアの作品にも携わってもらった背景がありました。とはいえ、それでも十何年ぶりに一緒に開発することになります。声をかけてみたら彼も、本心はわかりませんが快諾してくれて(笑)。

岡田氏:
変わった部分というか、逆に里見と一緒にやりだすと前の記憶に戻ってしまうというか。当然今は同じ会社ではなくて、上司と部下という関係でもないんですが、『ペルソナ』などを作ってた時の感覚で掛け合いをしながら……。時代も進んでリモートでのやりとりになるんですが、岡田・里見で激論を交わして、一緒に参加しているコンパイルハートの方やプロデューサーは「このふたりは何やってんだろう?」みたいな感じで(笑)。なので、変わったというより、30年くらい前に戻ったような感じでしたね。

増子に関しては、昔に戻ったような感覚もあるものの、以前はどちらかといえば「彼にお任せで作ってくれたものをそのまま受け入れて」という感じだったのですが、今回はこちらからもリクエストを出すようになって。「スネアの音をもっとデッドにしてくれ」とか「ギターのファズをもっと利かしてくれ」だとか、そうすると「今の環境だとリクエストされたファズはここまでの音しか出せない」とフィードバックが返ってきたり。

昔はわりとおまかせでやっていたんですが、今回はかなり細かいところまで「前半は静かに抑えて後半で盛り上がる」だとか、ヘタをすればシンバルの音にまでリクエストを入れてました。彼も快く受け入れて打ち返してくれました、本心はわかりませんけど(笑)。今までで一番やりとりしたくらい密にやっていましたね。実はバンドをやっていたこともあって、アナログ人間的な部分もありこだわりをもってお願いしています。

学園ものなのは「過去作品を踏襲した」わけではない

──岡田さんが過去に手がけられた。『女神転生』『ペルソナ』シリーズについて、意識されている部分はありますか。

岡田氏:
学園ものだからそのように見える部分もあるのかもしれませんが、それはあくまで結果的なことですね。さきほど触れた「主人公=プレイヤー」というコンセプトだったり、ユーザーに届けるにあたってのゲームコンセプトへのこだわりは昔から同じで、結果的に過去作品とベースが同じというかたちです。本作でもそのスタンスは変わっていないので、似た要素もあるでしょうし、でもいろいろな要素とかけ合わせてカスタマイズされていますね。

もっと広い話をすれば、さっきの「コロナ禍におけるエンターテインメントの必要性」にもかかってきます。自分もゲームだけではなく、演劇も映画も音楽も好きなんですが、それって基本的には一方通行で。ゲームはそういったメディアと違って、自分がやったことがその中で影響して変化を起こしていく。それはエンターテイメントのなかで唯一ゲームだけがもつ特徴だと思っているんですね。

そのゲームに携われることは喜びですし、その特徴を活かしたい。「主人公=プレイヤー」としてストーリーが紡がれていくという仕組みをやりたいという意図です。コンパイルハートさんにもその考えには共感してもらっていて。大本にそうした意図があって、あくまで延長線上として、今現在コンセプトが共通した作品を作っているかたちです。

──本作の「チューブ型ダンジョン」は一体どのようなゲームメカニクスなのでしょうか。

岡田氏:
見てもらうのが一番いいんですよね(笑)。これはコンパイルハートさんの方から提案されて作ったシステムです。当初は分岐要素などのあるランダムダンジョンをやりたいと提案していて、本作の精神世界や学園が変化するといった世界観の部分にあわせて、チューブ型ダンジョンについての提案を受けました。

初めは「どこに行けばいいかわからなかったり、画面酔いするんじゃないか」と話してたんですが、いざ作ったものをプレイしてみると良い感触で。上下左右関係なく、ランダムダンジョンとしても複雑すぎない。進む中でいろいろなギミックも入ってきて回避が必要になってきたりだとか。バトルについてもシンボルエンカウントを採用していて、自分やパーティの状況に応じて避けたりできるなど、プレイスタイルによって変化をつけていける自由度の高いシステムに感じたので採用しました。

動画1分44秒頃から、チューブ型ダンジョンのプレイ映像

──本作では仲間からの好感度システムがあるようですが、親睦を深める中で友情や恋愛などの関係に発展するケースもあるのでしょうか。

岡田氏:
ありません!(笑)あくまでシステム的な、好感度が高いと仲間との協力が発生するといったくらいで。友情はストーリー上に盛り込まれていたりはしますが、恋愛シナリオが発生したりすることはありません。

ゲーム作りに苦労はさほど感じない、「働き方がブラック超えて漆黒」だった時代

──本作開発の中で特に苦労したことはありますか。

岡田氏:
まあ毎回苦労はあるんですが……。変な話、自分はゲーム開発で苦労やストレスをあまり感じたことがないんですよ。もちろん大変な部分はあって、やりたかった事ができなかったり、昔はもうプログラムを組みながら企画も並行して考えて取り組んでたりして。でも、先に触れた表現を抑えめにした部分だったりなど、そういう壁にはぶつかるものの、それに対してネガティブになったり「やってらんねえ」みたいなのがあまりないんですよね。たとえば、昔は会社に寝泊まりするようなブラックどころか漆黒ぐらいの働き方をしていて(笑)。でも、それが「自分でゲームを作る」ということであればストレスを感じなかったんです。

今は会社に行かずにリモートで仕事ができる。イリヤさんが出してくれたものをチェックして、そのまますぐフィードバックをポンと返せる。すごくいい時代になったなと。自分の時間も増えたので映画を観たり、観劇に行って、帰ってきてまた仕事したり。もちろん、開発でバリバリやっているスタッフは大変だと思います。あくまで岡田個人としては前から、苦労などを感じたことがあまりありませんね。

イリヤ氏:
私から質問していいですか?岡田さんの自由時間が増えたことで、ゲーム作りへの影響はありましたか?映画などエンタメに触れたり、休みのなかで「こうすればいいかも」というアイデアが湧いたりとか。

岡田氏:
それについては、実は昔から忙しくても開発の途中に遊びに行ったり、エンタメには触れていたね。アイデアが思い浮かぶのって、会議を何時間もするよりもたとえば「スキーのリフトに乗っている時」にふわって思いついたり、映画を見ている時に「ハッ」と思い浮かんだりが多い。昔は会社で机の下に寝てるくらい忙しかったけど、映画は忙しくても観るようにしていたり、そういう時の方がいっぱいインスパイアされる。

あと、このインタビューみたいに自分は話がいろいろ脱線しちゃうんですよ。それはそれでアイデアが湧いてきたり。イリヤさんと話していても「あっ、それ良いんじゃない?」ってところから発展したり。今回のモンスターデザインも当初はやってもらう予定じゃなかったんですけど、話しているうちにお願いすることになったり。決まったことを話すより、自分は無駄話なのかもしれないけど、いろいろな話しをする中でアイデアが出ることが結構多いですね。

なので、「ゲームシステムが直接影響を受けた」というのはあまりないんですが、仕事以外の時間から色々なものは生まれてきますね。

今回のインタビューでは、岡田氏をふたたびコンソールゲーム開発に臨ませたその思いや、ゲーム開発にあたって「苦労はあまり感じない」と言い切るクリエイター精神が明かされた。イリヤ氏の知られざるこだわりや、岡田氏との関係性については別記事を確認してほしい。

Villion:Code』は6月25日、Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/PS4(ダウンロード版のみ)向けに発売予定だ。また、本作は3月28日(土)・29日(日)にベルサール秋葉原で開催される「ハピネットゲームフェス!」にも出展予定。本作の試遊ができるほか、イリヤ氏のアートワークが冴えるオリジナルステッカーや、同氏複製サイン入りのトートバッグがもらえる。詳細はこちらを確認してほしい。

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

記事本文: 2053