GDC 2015にて「Unreal Engine 4」の無料化を発表したEpic Games。AUTOMATONでは、日本支部Epic Games Japanの代表である河崎 高之氏にインタビューし、無料化の狙いや採算について聞いてみた。その前編に引き続き、今回は、ローエンドからハイエンドにまで対応するエンジンの幅広さ、無料化によって懸念される不正使用、また国内で増えている格闘ゲームでの採用など、Unreal Engine 4を様々な視点からうかがった。
参考: 「Unreal Engine 4」無料化の"狙いと採算"は? Epic Games Japan河崎氏に聞く [前編]
Unreal Engine 4の魅力、「ビジュアル」と「スケーラビリティ」
――今回のGDC 2015では、「Unity」やValveの「Soruce Engine 2」でも無料化が発表されましたが、各社の動向についてはどうお考えでしょうか。
河崎氏:
我々としては、別に競合を意識して何かやってるという意識はまったく無いです。20年以上やってきたUnreal Engineを、我々は素晴らしいものだと思っていますし、我々自身も自分たちのゲームを作る時に使っています。すごく大事なものなので、ただ単純により多くの方に使っていただきたいというのが、我々が無料に踏み切った理由です。たまたま他のエンジンメーカーでも、同じようなことをやられているので、そうやって競争が活性化していくっていうのは、ゲーム業界全体にとっては、すごく良いことだと思います。より良いゲームがたくさん出てくる土壌にもなると思うので。デベロッパーの皆さんにとっては、とても良い時代なんじゃないかと思います。
――「Unreal Engine」、「Unity」、「Source Engine 2」と、デベロッパーの選択肢は広がりました。そのなかで、Unreal Engineはどの部分をプッシュし、魅力を出していきますか?
河崎氏:
1つはやっぱり表現力、ビジュアルの力というのは、我々が自信を持っているところです。PS4とかハイエンドPC向けの、いわゆるリッチコンテンツ。それから、VRでも特にハイクオリティなビジュアルを要求されるものですとか。今回のGDCでも、Weta DigitalというCGスタジオが作った「ホビット」のVRデモを、うちのブースで出したんです。ああいった、映画からそのままコンテンツを持ってくるっていうのは、Unreal Engineの強みの1つだと思います。
ハイエンドだけかというとそうではなくて、一方で「ブループリント」という、プログラム、コードを全然書かなくてもゲームが作れるっていう仕組みもあります。その辺りを使って、少人数のチームでより早いテンポでゲームを作っていくっていうところにも使えます。ハイエンドからローエンドまで、広いスケーラビリティで。使い手がやりたいものに合わせて使っていただける懐の広さというか、幅の広さというのが、Unreal Engineの一番の特徴なのかなと思いますね。
――Unreal Engine 4でハイエンドと言えば、今年のGDCではデモ「Kite Open World」が公開されました。かなりオープンワールドを意識されているように感じました。
河崎氏:
そうですね。「Kite Open World」については、今公開している「4.7」というUnrealの最新バージョンよりも、もう少し先の「4.7プラス」みたいな、「4.7」と「4.8」のあいだみたいな社内用のバージョンを使っているんです。今回、会場に置いてあったデモのムービーは、もちろん作ったマップの上でカメラを動かして撮影しています。デモとしては、10マイル×10マイル、16km×16kmの大きな範囲の中に、谷とか川とか森とかがあります。実際ミーティングルームの中には実機もあって、動かせるようになっていました。コントローラーで自由に動きまわって見て回れるっていうもので、その舞台の上にあの男の子を置いて、凧を動かすっていうシネマティックを作ったのが、お見せしたものです。
9人から15人くらいのスタッフが、7週間から8週間をかけて作りました。スピード感的にとても早いです。16km×16kmをただ手で全部作ったわけではなくて、キーになるようなランドスケープ、目立つ部分だけは手で作って、あとは実際にニュージーランドとかスコットランドとかに撮影に行ったらしいんですけれども、そういうところで撮影してきた写真から取り込んだモデルとかテクスチャを、プロシージャルに配置して作っています。まあ言ってみれば、自動生成で16km×16kmのワールドが作れてしまうというのが、今回の「Kite Open World」の一番の肝ですね。
やっぱり今、オープンワールドとか広い箱庭の中で自由に遊ばせるっていうのが、1つ大きな流れになってますので。そこをなるべく手間をかけずに作れるようにサポートしようというのが、エンジンの意図としてありますね。
「小規模開発」、サブスクリプションを始めた後に意識
See also: Unreal Engine 4製の"ヴァニラウェア"風2Dアクションゲーム『The Vagrant』――ローエンドのお話になるんですが、『The Vagurant』や『Dicetiny』など、2Dビジュアルの作品が登場しつつあるように感じます。Urenal Engine 4で2Dビジュアルの作品は増えつつあるのでしょうか。
河崎氏:
去年の3月にサブスクリプションを始めてから、我々が驚いた、というか、我々の本社の人間が驚いています。日本のスタッフからすると、「ほらやっぱり」という感じではあったんですけども。やっぱり、2Dをもっと簡単に手軽にやりたいという声は、すごく大きかったです。2Dのスプライトにボーンを仕込んで、アニメーションさせたり、っていうニーズがすごく多かったので、それに応える形で、Unreal Engineの中に「ペーパー2D」っていう新しい機能を入れました。今でも、もっと充実させようとしています。
我々の本社の人間からすると、「当然3Dでしょう。ゲームの未来は3Dでしょう」という思い込みがあったんですけども、実際みなさんに触っていただくようになると、やっぱり2Dもやりたいって声がすごく大きかった。Unreal Engineを使いながら2Dを作るっていうニーズが、確実にあるんだなっていうのが、我々としてもわかりました。
さっき言った「ブループリント」みたいなトライ&エラーが迅速にできるところだったり、プログラマが居なくてもゲームを作れたりっていう、Unreal Engine自体のパイプラインが優れているところで、わざわざUnreal Engineを使って2Dをやることのメリットを見い出していただけるっていうのは、非常にありがたいことだなと思っています。
――少し話は戻りますが、Unreal Engine 4の無料化は、インディーゲーム、小規模なチームへの普及を意識した部分もありますか?
河崎氏:
エンジン自体は100人を超えるような大規模なチームでも効率よく使えるし、一方で少人数のチームでも使えます。そこはもう、Unreal Engine 4を最初にご紹介した時から変わってないですし、ブレてないです。ただ、サブスクリプションを始めた後に一番意識したのは、学生だったりアマチュアのチーム、少人数でゲームを作られる方たちが、使いやすい環境を用意しようというところです。チュートリアルのドキュメントだったり、ビデオだったりサンプルだったりっていうのを、すごく充実させたました。そういう少人数とかアマチュア系の方たちに勉強していただくというか、Unrealを覚える機会なりを充実させたっていうところは、注力しましたね。
――海外ではUnreal Engineの公式フォーラムがあり、頻繁にやり取りされている印象があります。国内で同様の場所となると、どこが一番活気があるんでしょうか?
河崎氏:
公式フォーラムにも日本語版がありまして、日本語でも書き込み、やり取りできるようにはなっているんですけども、日本語で1つの板になってしまっているんです。英語だとトピックごとに板が分かれていたりして、非常に書き込みやすいんですけれども、日本語は日本語で1つの板にまとめられちゃってて、トピックが立てづらかったりします。あとは日本人の傾向として、跡が残るところに書き込むのをあまり好まない人は多いのかな、という印象があります。こちらの意図したほどには、なかなか盛り上がっていないというのが現状です。
そういう意味では、それをうまく吸収して一番活発にやり取りしてくれているのは、Facebookの「ユーザー助け合い所」というページです。ボランティアというか、Unreal Engineのファンの方に作っていただいているページがあるんです。Facebookのそのページだったり、あとはTwitterとか個人のブログでまとめていただいたりっていうのが、日本に関しては一番まとまっているのかなって思いますね。
――Unrealを初めて触る方は、Facebookなどから入るのがよい?
河崎氏:
初めて触る方に関しては、公式のドキュメントとかチュートリアルなどのマニュアル類を、どんどん日本語化していますので、Unreal Engineの公式Webサイトにある、そういう日本語化されたドキュメントを見ていただくのが、一番いいと思います。FacebookとかSNS系は、追ってる分にはいいんですけど、アーカイブ化されなくて、どんどん流れていっちゃうので。後から見ようと思うと、なかなか俯瞰で見れないというか。そこが問題ではあるので、ちょっと我々としても、なんとかしたいなと思っているんですけども。
――GDC 2015の少し前に発表された、「Unreal DevGrants」についてお聞かせください。先日、第1弾の受領者が発表されました。社内ではどのように選考されるのでしょうか。
河崎氏:
専門のメールアドレスがありまして、我々の社内のチームが審査することになっています。本社の各ファンクションのおもだった人間、ゲームのプロデューサーだったりエンジン側の人間だったりで作ったチームがあります。そこで定期的に応募作品を見て、これはっていうのをピックアップしていくような形となっています。日本語で送っていただいても、我々の方でサポートしますので、日本の方にもぜひ、どんどん応募していただきたいと思っています。
――日本からでも選ばれる可能性があるんですね。
河崎氏:
もちろんそうです。
海賊版の問題と、新生『Unreal Tournament』
――無料化したことで利用者が増えたと思うんですが、Unreal Engine 4のコードを利用した作品を認知できないパターンもあるのではないでしょうか?
河崎氏:
そうですね。もっと言うと海賊版、パイラシー(Piracy)の問題なんかも当然ありますし、そこはサブスクリプションが始まる前に、社内でも当然議論になりました。現在の我々の対応としては、特にオンラインからのチェックだとか、ウォーターマークを入れたりってことは一切していません。性善説にもとづいてというか、まるごとお渡ししてしまっているので、黙って使ったり、あるいはパイラシー版を作ったりっていうのも、やろうと思えばできるようになっちゃってます。
そういうやり方をしている背景としては、たぶんそういう海賊版を作ったり、悪いことを考える人っていうのは、どれだけセキュリティを講じても出てくるだろうというのがあります。セキュリティの度合い、ガチガチに固めているか何もしないかという差に関係なく、悪いことを考える人の比率は一定で、しかもものすごく少ない人たちだと思っているんです。その悪いことを考える人たちを排除するために、大部分のまっとうに使おうとしている人たちに不便な思いはさせたくはないと。たとえば、会社のPCに入れたものを自宅のPCに移そうとするとすごく手間がかかるだとか、毎回オンライン認証が必要で面倒臭いだとか、そういう正直に使おうとしている人が悪い人のために不当に不利益を被るようなことはしたくないねと。
それともう1つ、仮に海賊版であっても、Unreal Engineを使ってUnreal Engineのことを気に入ってくれれば、ゆくゆくはコミュニティの一部になってくれるかもしれないと思っています。まずは使ってもらおうと。その2つから、あえてセキュリティをガチガチにするということはしていません。
――過去のEpic Gamesは、『Gears of War』などのタイトルでUnreal Engineのグラフィックの素晴らしさをアピールしてきたと思います。現在の『Fortnite』や新生『Unreal Tournament』というのは、過去の『Gears of War』などと比較して、どういう立ち位置にあると言えるでしょうか?
河崎氏:
もちろん同じです。我々はやっぱり、車の両輪だと考えています。Epicの一番の特徴であり強みであるところは、我々自身がデベロッパーだというところです。ゲームエンジンを作るためにゲームエンジンを作っているわけじゃなくて、自分たちがゲームを作るためのツールとして、ゲームエンジンを作っているので。デベロッパーによるデベロッパーのためのエンジンというのが、Unreal Engineの一番の強みです。その意味では、Unreal Engine 4を使って、『Fortnite』とか他のタイトルを作っているのは非常に重要な部分です。昔で言う『Gears of War』とUnreal Engine 3の良い関係、車の両輪としてゲーム作りながらエンジンも作って、お互いにフィードバックが回るというのは、今でも有機的に機能しています。
――新生『Unreal Tournament』は、コミュニティと関係を持ちながら開発しているスタイルだと思います。UE4とコミュニティの関係性を強調する意図があるのでしょうか?
河崎氏:
そうですね。『Unreal Tournament』に関しては、正直国内でほとんど知られていないですし、僕自身もほとんどやったことがありません。あまり馴染みがないんですけれど、アメリカの『Unreal Tournament』のコミュニティって、ものすごく深くて、激しくてですね。僕も驚くんですけれども。
今うちで『Unreal Tournament』のコミュニティマネージャーをやっている女性がいるんですけども、彼女も本当に昔の初期の『Unreal Tournament』が好きすぎて、自分でMod作って、コミュニティの中で色々発言しているうちに、頭角を現してというか、目立って、いつの間にかEpic Gamesに入っちゃった。その頃になると、もう『Unreal Tournament』をやらなくなっていたんですが、せっかくEpic Gamesに入ったんだから『Unreal Tournament』をやりたいやりたいと言い続けて6年か7年ぐらい経ったところで、『Unreal Tournament』をやるぞっていうことになったので、喜んでコミュニティマネージャーになったっていう人なんです(笑)
そういう人が社内にもいっぱいいて、もちろん会社の外にも一杯いて、そういう人たちがTwitchとかSNSとかで、普段からコミュニケーションしながら作ってますので、本当になんというか、みんなで作っているゲームというムードはすごくあって。ちょっとModの文化っていうのは、なかなか日本人には感覚的にピンと来ないですが、ああいうのはアメリカ独特のものなのかなあと感心します。
格闘ゲームでの利点は「トライ&エラーの早さ」
――国内ではUnreal Engine 4が格闘ゲームに採用されているパターンが増えてきております。『ストリートファイターV』に関しては、どのような経緯で採用されるにいたったんでしょうか?
河崎氏:
去年の初めにUnreal Engine 3で『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』が出て、夏に『鉄拳7』が発表されて、年末に『ストリートファイターV』が発表されて。2ちゃんねるとか見てると、「Unreal Engineは格闘ゲームしか作れないんじゃないか」みたいな意見を言われるぐらい、格闘が続いちゃってるんですけれども(笑)
『ストリートファイターV』に関しては、開発会社がもともと『ストリートファイターIV』をやっておられている当時から、Unreal Engineにご興味を持っていただいていて。開発会社さんの方に、我々からUnreal Engineのデモをお見せしたり、評価版をご提供したりっていう中で、ご興味を持っていただいていました。そこでPS4やXbox Oneといった次世代機のプロジェクト、恐らくその第1陣の1つとして『ストリートファイターV』という企画が立ち上がって、じゃあUnreal Engineを使ってみようかという流れで、選んでいただけたっていうのが、きっかけですね。
――格闘ゲームにてUnreal Engineを採用するメリットとはなんでしょうか。
河崎氏:
やっぱり一番の売りは、さっきも申し上げたトライ&エラーが早くできるというところです。一々プログラマーの実装待ちをしなくても、エンジンのエディターのなかで試して直して、また試してっていうのができます。その部分のイテレーション(繰り返し)を早く回せるっていうところは、格闘ゲームみたいなチューニングが非常に大事なゲームに関しては、とても強みになるのかと思います。
あとはやっぱり、1対1の格闘っていうのは絵としては構図が決まってしまっていて、新鮮味がどうしても出しづらいんですよね。その中でいかに次世代感、ああやっぱり新しい『ストリートファイター』はすごいな、新しい『鉄拳』はすごいって思わせるか。わかりやすくどういう絵の差をどう出すかっていうところで、Unrealのライティングだったり、レンダリングのパワーっていうのを、評価していただけたのかなと思います。
――国内では格闘ゲーム以外にもUnreal Engineを採用するタイトルが続く見込みでしょうか。
河崎氏:
いま発表されているものだと、『KINGDOM HEARTS III』がUnreal Engineを使っていただいていますし、同じく大阪のプラチナゲームズさんがMicrosoftと作られている『スケイルバウンド』もUnreal Engineです。いま発表されているのはそれぐらいですかね。あとは、スクウェア・エニックスの『スクール オブ ラグナロク』というアーケードゲームも、Unreal Engine 4を使っていただいていますし。バンダイナムコゲームスの『ナレルンダー! 仮面ライダードライブ』という、「仮面ライダー」になりきってKinectを通して自分で戦うキッズ向けアーケードゲームがあるんですけども、あれもUnreal Engine 4を使っていただいています。そういう意味では、わりとハードコアなタイトルからキッズ向けのアーケードゲームまで、色々と幅広く使っていただいています。
まだ申し上げられない未発表のタイトルで、すごく大きなタイトルが何本もありますので、その辺りが今年の夏以降、発表になってくると思います。
――夏以降とは、やはりE3やgamescomなどになってくるのでしょうか?
河崎氏:
もうちょっと後かもしれないですね(笑)結構大きなタイトルなので、たぶんパブリッシャーさんが独自のイベントで発表されたりとかっていうところになるかと思います。
――今後モバイル向けですとか、ニンテンドー3DSのような携帯機向けのUnreal Engine使用を推進していく考えはありますか。
河崎氏:
ニ ンテンドー3DSに関しては、ハードのアーキテクチャ的に対応できないので、今も対応しないですし、今後も対応の予定はないです。モバイルに関しては、 我々のなかでプライオリティが一番高いのはPCなんですけれども、その次にプライオリティが高いのはモバイルです。というのは、コンソールよりもモバイル の方が重要だという位置づけで、エンジンの開発は続けているんです。その意味では、まだちょっとタイトルは出てきてないですけど、今後さらにモバイルの比 重が高まってくるというのは間違いないですね。
厳しくなりつつある市場でUnreal Engineが目指す先
――「Unreal Engine」、「Unity」、「Source Engine 2」と無料化が続きました。今後ゲームエンジンの市場はどのように変化してゆくと思われますか。
河崎氏:
どのように変化していくんでしょうねえ(笑)特にアメリカの場合、コンソールとかPCの市場っていうのが、すごく二極化が進んでいて。PS3とかXbox 360の世代にあったような、10億から20億ぐらいの開発予算で、ワールドワイドで200万本から300万本売れればいいやっていう、いわゆる中堅どころみたいなタイトルがほぼ無くなっています。
大きい方は、予算が100億を超えて500万本から1000万本売れる、『Grand Theft Auto』とか『Call of Duty』みたいな化け物クラスのタイトルになって。小さい方は、インディーで2、3人で作って、まあ売れればラッキーぐらいの細かいタイトルがすごく増えて、その中から時々『Minecraft』みたいなスーパーヒットが出てきているという。すごく二極化が進んでいる中で、実は特にUnreal Engineの場合は、前の世代だと一番いいお客さんっていうのはそういう中堅どころのタイトルだったんですね。
というのは、一番ハイエンドの『Call of Duty』とか『Assaassin's Creed』みたいなところまでいくと、みんなそれぞれ、そのタイトル専用のエンジンを作っていて。それを秘伝のタレみたいに、煮詰めて煮詰めてずっと使っていくので、専用のエンジンにはどうしても汎用のエンジンでは勝てない。あの『Assassin's Creed』の人混みの中を抜けていくやつだとか、ものすごく細かなチューニングもできたりします。こういうウルトラ・ハイエンドに汎用のゲームエンジンが入っていくっていうのは、すこく難しいんです。
でも中堅どころの開発って、デベロッパーも外部の独立のデベロッパーだったり、予算も大型タイトルにくらべると限られてたりっていうところで、汎用のエンジンを使っていただけるチャンスが多かったんです。そういうミドルクラスのタイトルっていうのが、我々にとってはすごくいいお客さんだったんですけども、このゾーンが、今の世代でスッポリ無くなろうとしているので、コンソールっていうのは、ゲームエンジンにとっては、なかなか厳しい業界になってきているのかなっていうのは1つありますね。
ただ、とは言っても裾野が広がっているのは間違いないので、その意味でもインディーの方々に沢山使っていただくっていうのは、我々にとっても重要なことの1つとなっています。インディーがたくさんあるなかで、また次の大ヒットに繋がるようなタイトルにUnreal Engineを使っていただけるっていうのは、我々にとって大きなことですね。
――今回の無料化を聞き、Unreal Engineに興味を持った方にメッセージがあればお願いします。
河崎氏:
Unreal Engineというのは、我々Epic Gamesが20年以上関わってきたものです。無料にした時のアメリカ側でのキャッチフレーズが「If you love somthing set it free」となります。日本語で言うとなかなかうまくならないんですけど、「可愛い子には旅をさせろ」的なニュアンスで、本当に大事なものは解き放ってあげようというのが、今回のTim Sweeneyの言葉になります。それぐらい我々自身はUnreal Engineのことを愛していますし、優れたものだと思っています。かつ我々自身、デベロッパーだと思っています。デベロッパーがゲームを作るために、Unreal Engineが一番ベストなソリューションであり、ベストなツールであるっていうところは、すごく強く自負していますので。そういったところを感じていただきながら、いいものを作っていただけると、我々としてもすごくありがたいです。
――ありがとうございました。
[聞き手: Shuji Ishimoto]
[写真: Mon Gonzalez]