『The First Berserker: Khazan』は、開発陣に訊いたところ“ソウルライクじゃない”けどフェアな難しさにこだわりアリ。『アラド戦記』ダブル新作インタビュー前編

NEOPLEおよびNexonは、『Project OVERKILL』『The First Berserker: Khazan』2作合同でのインタビューを実施。前編として『The First Berserker: Khazan』開発陣インタビューをお届けする。

パブリッシャーのNexonは、11月14日から17日まで韓国にて開催されていたゲームイベント「G-STAR 2024」にて、『Project OVERKILL』(対応プラットフォームはPC/モバイル)と『The First Berserker: Khazan』(対応プラットフォームはPS5/Xbox Series X|S/PC)をプレイアブル出展した。両作ともMORPG『アラド戦記』から派生した新作となる。

『Project OVERKILL』『The First Berserker: Khazan』両作の開発元であるNEOPLEは、2作合同でのインタビューを実施。インタビューを通じて、両作それぞれ別のアプローチで『アラド戦記』IPに新しい風を吹かせようとする試みが見られた。今回は前編として、NEOPLEのCEOであるユン・ミョンジン氏と、『The First Berserker: Khazan』のクリエイティブ・ディレクターであるイ・ジュンホ氏へのインタビューをお届けする。

『アラド戦記』は、NEOPLEが開発しNexonが展開するMORPG。サービス開始から現在まで約20年にわたり根強く愛される作品だ。世界観を活かした作品も広がりを見せており、アニメ等のメディアミックスや、対戦格闘ゲーム『DNF Duel』などへ展開している。『The First Berserker: Khazan』(以下、『Khazan』)は、『アラド戦記』の世界観をベースにしたアクションRPGだ。いわゆる「ソウルライク」的な、緊張感と歯ごたえのあるゲームプレイを基調として『アラド戦記』の世界観と物語を掘り下げ。「鬼剣士」という職業の祖とされる英雄カザンの復讐の物語を描く。



──『The First Berserker: Khazan』(以下、『Khazan』)は、『アラド戦記』の世界観をベースにしたアクションRPGですす。カザンを主人公となり、全体的にダークな雰囲気になっているように感じられました。『Khazan』を作るにあたって、『アラド戦記』らしさが残るようにこだわった点や、『Khazan』の世界観のために新たに加えた要素などがあれば教えて下さい

ユン・ミョンジン(以下、ユン)氏:

ユン・ミョンジン氏

まず、『Khazan』はたしかにダークな世界観をもっています。元となった『アラド戦記』はグラフィックがドットで表現されており、一見明るめに見えるかもしれません。しかし『アラド戦記』にも、世界が滅亡したり、人が死んだり、戦争が起きたりと、暗い要素がたくさん出てきます。なので、『Khazan』をダークな世界観のゲームとして作るために『アラド戦記』に無いなにかを新しく加える必要はなく、『アラド戦記』が元々もっている要素をそのまま活かすだけで十分でした。

そして『Khazan』では、主人公のカザンや親友のオズマ、ブレード・ファントムといった、「たしかに『アラド戦記』の世界観に存在しているものの、ちゃんとゲーム内で表現されてこなかった要素」を表現できたと思っています。これらのキャラクターがもっていた設定上のストーリーに集中し、最後まで詳しく伝えることができました。

なので、『アラド戦記』をプレイしたことがある方には「設定上は知っていたけど詳しくは知らなかった話」を理解できる楽しさを感じていただけると思いますし、一方で『アラド戦記』に触れたことのない方には『Khazan』の物語に集中することでゲームの楽しさを感じていただけると思います。


──『アラド戦記』はMORPGである一方、今回の『Khazan』はソウルライクアクションRPGと認識しています。『アラド戦記』から大きくジャンルを変更した経緯について教えて下さい。

ユン氏:
まず、社内では『Khazan』がソウルライクゲームだとは考えていません。もちろん似ているように感じられることはわかりますし、そう思っていらっしゃることは十分理解できます。元々『アラド戦記』はハードコアなゲームを作りたいという社内のニーズで開発され、その中で難易度がどんどん下げられて今のRPG形式になりました。『Khazan』は「3Dグラフィックで表現された、買い切りのパッケージタイトルとして『アラド戦記』を作ったら」というコンセプトを考えながら開発したゲームである、という風に理解していただきたいです。

そもそも原作である『アラド戦記』も開発の段階ではミッション制のゲームにしたいと考えており、難易度ももっと高いものになると考えていました。今の『Khazan』がソウルライクのように感じられるということはもちろん理解しますが、私たち開発チーム内部では、『Khazan』は「3Dで表現されている」ことと「買い切りのパッケージタイトルである」ということ以外は、『アラド戦記』とのゲーム的な違いはないと考えています。むしろ、装備の面やスキルコンボの面などで『アラド戦記』のゲームプレイを多く継承しており、ゲーム体験としては『アラド戦記』ととても似ているように感じてもらえると思っています。

──Khazan』のアクションを触っていて、ジャストガードや反射、カウンターといった特殊防御が多い印象を受けました。このように特殊な防御行動が多いことの理由も含めて、本作のアクション面を開発するにあたっての理念を聞かせて下さい。

イ・ジュンホ(以下、イ)氏:

イ・ジュンホ氏

『Khazan』アクション面で一番大事にしているのは、攻撃と防御のやり取りを鮮明で精巧なものにすることです。そのためには、プレイヤーに「確かなシグナル」を送る必要があると考えています。敵の攻撃というシグナルをプレイヤーに認知してもらい、受け止めるのか避けるのかという選択肢をプレイヤーに認識してもらうためには、シグナルをきちんと送ることが必要です。敵と戦っている時に、ちゃんと狙っている、ちゃんと当てている、ちゃんと避けているということをシグナルとして送ることが大事です。

私は、決して簡単なゲームや易しいゲームを作りたいと思っていません。最初からハードコアなゲームを作るつもりでした。そして『Khazan』は復讐の物語であり、主人公のカザンはストーリー序盤でとても厳しい状況に置かれています。そういったシナリオ的な状況に合った挑戦という意味でも、高い難易度が必要だと思いました。

もちろん、チャレンジをしていく過程ではたくさん失敗をすると思います。ですが、大事なのはユーザーが失敗しても「なぜ失敗したのか」をちゃんと理解できることです。どうすれば避けることができるのか、どうすればカウンター攻撃ができるのかといった明確なシグナルを与えないと、プレイヤーはなぜ自分が失敗しているのかを理解することができません。

本作の遊び始めでは、敵の攻撃に上手く対処できないこともあるかもしれません。ですがゲームを進めていく中で、「どうすればこの攻撃にカウンター攻撃を出すことができか」、「どうすれば避けることができるか」といった小さなシグナルをひとつずつ得られると思います。プレイヤーにシグナルをきちんと送ることで、もし失敗をしても「次はもっと頑張れる」「次はきっと成功できる」と感じてもらうことが特に大事であると考えています。そして挑戦に成功した際には、報酬として達成感を得てもらうことを重要視しています。

結論として、『Khazan』のアクションで大事にしていることは挑戦、そしてその挑戦で得られる達成感です。この両方を維持するため、鮮明で精巧な攻防が必要であると考えています。


──『Khazan』を試遊してみて、難易度が高めと感じました。テストプレイでも「難しい」とのフィードバックはありましたか。

イ氏:
難易度についてのフィードバックはいろいろ頂きましたが、操作が難しいというフィードバックは非常に少なくなっています。私が把握している限りではほとんどなかったのではないかと思います。

『Khazan』はオフラインテストとテクニカルクローズドβテストの2回のテストを行っており、この2回ではフィードバックの傾向がわりと違っていました。オフラインテストの場合は『Khazan』に初めて触れる方が多い状況もあり、操作面も含めてゲームが難しいというフィードバックが多くありました。しかしテクニカルクローズドβテストのフィードバックはやや異なっていました。テスターにそれぞれの家などの居心地のいい環境でゆっくりとプレイしていただいたことが影響している可能性もありますが、操作自体に関してのフィードバックは少なかったという印象です。

そうした背景もあり、テクニカルクローズドβテスト中に発見した問題については改善に取り組みましたが、操作については今のところ改善を行う計画はありません。ですが難易度に関しては、私たちが作りたいゲームにおける適切な難易度と、それを通して得られる達成感や面白さなどを考慮しながら調整していきたいと考えています。


──ほかに、フィードバックについて感じたり印象に残ったりしたことはありましたか。

イ氏:
先ほどお話した通り、『Khazan』では挑戦とそれを経て得られる達成感を一番大事にしています。そのために、私たちが思う面白さとユーザーの皆さんが思う面白さが、どれだけ違うのかを理解することが私たちにとってとても重要でした。なのでほかのゲームもいろいろプレイしていますし、開発中にもっとたくさんテストをすると思います。

実は、今の私たちのゲーム開発チームにはコンシューマーゲームの開発に携わった人があまり多くない状況でして、いろいろみんなで工夫しながらやっているところがあります。そうした中で、コンシューマーゲームが人気な海外の方から寄せられたフィードバックは印象に残っています。また、オンラインゲームに比べて短い時間でのプレイでも楽しめることや、自宅などの居心地のいい場所で遊ぶと感じられる、ゲームへの没入感などのフィードバックなどはよく見ました。

ゆっくりとゲームプレイに没入できる環境や、プレイヤーが十分ゲームに取り組めているかという部分はよく考慮しました。ゲームの序盤部分の調整についてもよく考えており、。そうした部分については、さまざまなフィードバックが寄せられていました。たとえば、最初は「このゲームは難しすぎる、プレイできない」とか、「スタミナがなさすぎる」というようなフィードバックが多くあったものの、ゲームをどんどんとプレイしていく中で「もうどうすればいいのか分かった」というようにフィードバックが変わっていきました。特にスタミナに関しては、「どうすればこのスタミナでちゃんとプレイできるのか、今はもう理解したのでスタミナについては調整しないでほしい」というようなフィードバックもありました。

そういったいろいろなフィードバックを見ながら、「あとで快感を得るためには、最初は難しくないといけないのか?」ということについて開発陣でたくさん議論を重ねました。今は、このゲームで得られる「楽しさ」についての意見がプレイヤーの皆さんと私たちでどう違うのかを考えながら、多様なフィードバックをもとにしてゲームの完成度を上げている段階です。

──おひとりずつ、日本のプレイヤーに向けたメッセージをお願いします。

ユン氏:
『アラド戦記』シリーズに多くの関心を寄せていただき、本当にありがとうございます。『アラド戦記』は日本でも長年サービスをしていて、多くの方に愛されているゲームです。『Khazan』や『Project OVERKILL』といった新しいプロジェクトにも期待していらっしゃる方が多く、感謝を申し上げます。私たちとしても、期待をしてくださる方々により良いゲームをお届けしていけるように、またより多くの方にゲームをプレイしていただけるように取り組んでいきたいと思います。今後ももっと面白いゲームを皆さんにご提供していきたいと思っておりますので、皆さんからの応援よろしくお願いいたします。

イ氏:
多くの日本のプレイヤーの方々が私たちのゲームに興味をもってくださっており、本当に嬉しく思います。『Khazan』 を東京ゲームショーに出展した際には、語弊があるかもしれませんが、「gamescom 2024」(ドイツで8月に開催されたゲームイベント)の時よりもこのゲームに慣れていらっしゃるような上手なプレイをたくさん見ました。多くの方に以前よりも楽しくプレイしていただいているようで、すごく嬉しく思いました。操作の面でも、「すでにこのゲームをどこかでプレイされてるんじゃないか」と思うぐらい、本当に馴染んで熟達されている方が多かったことが印象に深く残っています。

日本でも東京ゲームショーの際にいろんなフィードバックをいただきました。それを受けてもっと改善していきたいと思いますし、発売時には期待以上のゲームになって皆さんに楽しんでいただけるよう、これからも取り組んでいきます。皆さんからのご関心とご期待ありがとうございます。

──ありがとうございました。

左からパク・ジョンワン氏(同席した『Project OVERKILL』ディレクター)、ユン・ミョンジン氏、イ・ジュンホ氏

『The First Berserker: Khazan』は、PS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに開発中。発売時期は2025年初頭を予定している。なお、弊誌では過去に『Khazan』の試遊プレイに参加し、その内容をまとめている(試遊プレイ記事)。

『アラド戦記』新作インタビュー後編では、『Project OVERKILL』開発者インタビューをお届けする。

[聞き手・編集:Sayoko Narita]
[執筆・編集:Daijiro Akiyama]

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