『閃乱カグラ』5周年。「パッケージソフトを続けたい、そのためには変えなければならない」プロデューサー高木謙一郎氏インタビュー

5周年を迎えた『閃乱カグラ』シリーズのプロデューサー高木謙一郎氏インタビュー。爆乳プロデューサーはどのような人物なのか、何を思って『閃乱カグラ』を作ったのか、株式会社マーベラスにお邪魔し、さまざまなお話をうかがった。

胸が揺れ、服が破れ、艶めかしい声が響きわたる。こう書くと、「エロゲー」を連想してしまうのが一般的だが、同様の演出がある『閃乱カグラ』は、「エロ」という言葉だけでは語れない。私自身、スクリーンショットやトレイラーから、“あっち系のゲーム”だと思っていたのだが、実際に触れてみると感想は違った。

気になったら聞く。5周年を迎えたシリーズの生みの親は誰なのか、どのような人物なのか、何を思って作ったのか――個人的な疑問から、『閃乱カグラ』プロデューサー高木謙一郎氏をたずね、さまざまなお話をうかがった。

ちなみに、ご存知の方も多いと思われるが、氏は爆乳プロデューサーとしてファンの前に立ち、数多の男性を虜にし続けている。

senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-ss-001senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-ss-002senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-ss-003

 
――本日はよろしくお願いします。『閃乱カグラ』5周年おめでとうございます。

高木謙一郎氏:
ありがとうございます。

 
――ベタではありますが、この5年間いかがでしたか。

高木氏:
全力で走り続けた5年間だったので、疲れたな……というのもあります。まあ、止まることなくここまでこれた嬉しさが一番大きいですね。

 
――毎年新作を出されてましたよね。

高木氏:
そうですね。何かしら新作を出してきました。

 

senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-001

――そのたびに高木さんは体を張って表に出られますよね。そりゃ疲れますよ。(笑)

高木氏:
まあそうですね。(笑)良いことも悪いことも全部受けてしまいますし。

 
――高木さんの体を張られるスタイルは、ほかのプロデューサーさんとは違うような気がします。

高木氏:
マーベラスという会社も認知度は上がってきましたけど、出したら売れるというところまでは行ってないので、何かひとつでも面白いと思ってもらえるポイントを作らなければと思い、「爆乳プロデューサー」という名前にしてみたりとか。

 
――インパクトありますよね。

高木氏:
僕がなるべく表に出てお客さんに近いところで話をして、興味を持ってくれる人が一人でも増えてくれるなら、という気持ちで始めたら、いつの間にやらサイン会やら握手会やら開催されるようになって。こんなオッサンでも大丈夫ですか?みたいな。

 
――人気者ですね。「爆乳プロデューサー」と名乗られたのは、『閃乱カグラ』の1作目のときからですか?

高木氏:
2007年に『一騎当千』のゲームを作ったときからですね。普通にプロデューサーとして表に出るのってつまらないなって思ったのがきっかけで、みんなに「え?え?」って顔をされながらも爆乳プロデューサーと名乗りました。じつは来年で10周年なんですよ。

 
――爆乳プロデューサー爆誕10周年ですか。

高木氏:
10年続けてみると、意外と定着したなと。

 
――そんな変わったプロデューサーさん、なかなかいないですよ。

高木氏:
そうですね。日本では僕一人だけです。(笑)

 
――町の中を歩いていて、ファンの方から声をかけられることもあるのでは?

高木氏:
まれにありますね。ゲームショップとかに行くと、「高木さんですよね?値引きしておきましたよ」とかって言われたりするんですよ。ただでさえ利益が少ないんだから「やめてください!」って言いますけど。

 
――それはやはり、今までの努力の成果ですよね。

高木氏:
そうですよね。ゲームが広がっていくためにできることって、露出をすること、脱ぐっていう意味じゃなくてね、やってきてよかったなって思います。

 

senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-ss-005

――『閃乱カグラ』5周年のサイトには、「こんなゲームがあってもいいじゃないか」から始まったと書いてありますが、最初から“おっぱ愛”にあふれたゲームを作ろうと考えていたんですか?

高木氏:
最初からそう考えていました。当時は、エッチな要素があって、アクションゲームとしても遊べる内容のものが意外となかったんですよ。「エロだけで釣っちゃいました」みたいなゲームが多かったので、ちゃんとしたものを作りたいって考えてました。

 
――エロだけで釣るゲーム、たしかに多かったです。

高木氏:
シリーズってだいたい売上本数が下がっていくんですけど、『一騎当千』は上がっていったんですね。そこで、「もしかしてこれはチャンスがあるんじゃないか」と思ったときに3DSの話があって、これは大チャンスだと判断して『閃乱カグラ』を始めました。

 
――しかしよく企画が通りましたね。一般的な会社だと難しそうです。

高木氏:
そこはもうマーベラスの良さだと思いますね。「これ、飛び出すおっぱいなんですよ」なんてことを、偉い人の前でプレゼンしました。普通の会社だと「は?」ってなると思うんですけど、うちの場合は「いいじゃん。やろうやろう」ってなったんです。

 
――面白ければ企画は通る?

高木氏:
「面白いじゃん」っていうノリの部分もあるんですけど、『一騎当千』がちゃんと収益を上げていたというベースもありました。1作目は予算的に小さなプロジェクトだったんですけど、ちゃんとした事業計画を立てましたね。そして全力でアホなことをやるという。(笑)

 
――本気でアホなことをやるみたいな。

高木氏:
当時はモバイルゲームが流行し始めていて、カードゲームの人気が高くて、コンシューマーはもうだめだなんて言われていた時代でしたよね。だったらやりたいことをやらないと、絶対に後悔すると思ったんです。僕はパッケージタイトルとか、コントローラーを握って遊ぶゲームを続けたいという意思が強かったので。これでだめだったら諦めようという気持ちもありました。

 
――その結果、『閃乱カグラ -少女達の真影-』はうまくいきましたね。

高木氏:
そうですね。びっくりしました。

 
――思惑どおりだった部分もあるのでは?

高木氏:
本数は想定外でしたね。2作目で落ちるかなと思ったんですけど上がって、「やべぇ、これ初回で10万本超えちゃったぞ」というふうに社内がざわつき始めて、これはちゃんと売れるように手を打たないといけないと感じて、「真夜中パイランド」というイベントを急遽組んで盛り上げたり。大変だったけど面白かったですよ。

 
――『閃乱カグラ』は一風変わったイベントが多い印象です。イジリーさんとか、水道橋博士さんとかとご一緒されてますよね。

高木氏:
とにかく、宣伝っぽいものをしたくないという気持ちが強いんです。当時、ブランドもないチームで、小さなライブハウスで30人ぐらいのお客さん相手に全力で触れ合って、「いつかメジャー目指すぞ!」というような気分でやっていましたね。

 
――そういえば先日、イジリー岡田さんがじつは下ネタが嫌いだというニュースがありました。高木さんはそのニュースをツイートされていましたよね。もしかして高木さんは、じつはエロがお嫌いなんですか?

高木氏:
あのあと、「僕は好きだよ」って書こうと思ったんですけど、忘れたまま寝ちゃったんですよ。(笑)

 
――本当は好きじゃないんだと思ってました。

高木氏:
大好きですよ。下ネタさえ言えれば幸せですよ。

 

senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-002

――(笑)

高木氏:
イジリーさんは何度かお仕事させていただいてますけど、プロとしてすごいですよ。あんな全力でおふざけやってますけど、打ち合わせは綿密ですし、尊敬しています。

 
――僕は「ギルガメッシュないと」世代なので、イジリーさん大好きです。でも今の若い世代の方は知らないかも?

高木氏:
そうですね、もうエッチな深夜番組もなくなっちゃいましたよね。夜中に隠れて見てたなあ……。だから目の前でイジリーさんの舌芸を見た瞬間、番組を忘れて大喜びしちゃいましたよ。(笑)

 
――あの舌の動きは、かなり速いですよね。練習してみました?

高木氏:
あの動きは練習しただけではできないですね。舌芸をその場で見るとわかるんですけど、カメラの向きや位置など状況をちゃんと確認してからスーッと芸に入っていくので、これはもうプロだなと。

 
――あはは。

高木氏:
1回目のときにゲストでユリオカ超特急さんが来てくれていたんですけど、ニコ生のコメントで「イジリー、イジリー」って出てたんですね。すると、ある日を境にイジリーさんに代わりました。(笑)

 
――まさかイジリーさんの話で盛り上がるとは。変わったイベントをやる理由は、ほかにもありそうです。

高木氏:
パッケージソフトの考え方を変えていかないといけないなと当時から考えていたんです。「予約を煽って売っておしまい」とかではなくて、みんなで一緒にゲームやコンテンツを作っていきたいなという思いが強いんです。だから、発表したタイミングからエンタメというか商品として始まっていて、発売されるまでの過程をどんどんみなさんに楽しんでもらって、最終的に6000円とか7000円で買ってもらうような、そんなふうにゲームを作っていきたいなって。5年前も今もそう思っています。

 
――そう考えるようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

高木氏:
単純に、パッケージソフトが売れなくなっているというのが大きいですね。普通にやっていても広がらないですし。自分としては続けていけるシリーズ物を確立させたかったので、ここはスタイルを変えていくしかないだろうと。毎回毎回新しいものを作るというのは、すごくパワーが必要ですからね。

 

senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-ss-007

――今年6月にSteamにて『SENRAN KAGURA SHINOVI VERSUS』が発売されました。PC版をやろうと思った理由は何ですか?

高木氏:
3DSやVitaなどいろいろやってきましたけど、基本的には、一番女の子をかわいく表現できるプラットフォームに出していきたいんです。予算や技術的な都合もあってPS3とか出せていないプラットフォームもあるんですけど。『一騎当千』は最初はPS2から始まって、その後はPSP、『閃乱カグラ』では3DS、Vitaという感じで、そしてPS4、据え置きに戻ってきました。より多くの人に最良の状態で遊んでもらいたいという気持ちがあります。

 
――そしてPCへ。

高木氏:
とくに海外はVitaが弱いというのもあります。海外のファンから「遊びたいけどVitaを持っていないんだよね」なんて声があって、じゃあPCで出そうかって。それにPCで出せば、『閃乱カグラ』がさらに広がるチャンスなんじゃないかなと。

 
――高木さんは英語版のTwitterアカウントも運用されていますよね。やはり海外のファンも多いですか。

高木氏:
不思議な事に増えました。3DSのときはそうでもなかったんですけど、Vitaで出してからはリージョンフリーという点もあって、劇的に広がりました。

 
――日本と海外でファンの反応に違いはありますか?

高木氏:
言葉は違いますけど、基本は一緒かなって感じます。みんなおっぱいが大好きですね。

 
――ですよね。(笑)

高木氏:
(笑)

 
――『閃乱カグラ』シリーズのほかの作品もPCへ?

高木氏:
そうですね。社内でほぼ前例が無いに等しいので『閃乱カグラ SHINOVI VERSUS』のPC版はお試しの部分もあったんですよ。でもとにかく出したいなと思っていて、実際に出してみたらやはり評判が良かった。自分の中でもPC版は外せないという気持ちがあったので、続けたいなと思います。

 
――早くほかの『閃乱カグラ』もPC版を出してほしいという声は多いと思います。

高木氏:
いろいろと準備しています。(笑)

 
――毎年新作を出されていましたけど、今年は出てないですよね?

高木氏:
今年は出ないです。

 
――出ないんですね。

高木氏:
出るのは来年ですね。5周年サイトでも「2017 少女達の戦いは続く。」と、フリだけはしています。

 
――今年出ないというのは、ちょっとさみしいです。

高木氏:
『UPPERS』とか『VALKYRIE DRIVE』とか『IA/VT』とか、この何年か『閃乱カグラ』をやりながら別の路線も模索していたというのもあります。『閃乱カグラ ESTIVAL VERSUS -少女達の選択-』はPS4とVitaというマルチプラットフォーム展開を初めてやって、当初では考えられないぐらい予算とか規模が大きくなってきたんです。5~6年前に思い描いていたひとつの到達点までは来れたのかなと。そして次のステップに進むための準備をしています。それが2017年から次々と出てきて、10周年とかに向けて続けたいなと思っています。

 
――「脱カグラ」を考えてらっしゃるんですか?

高木氏:
この数年で、「やりたいこと」と「できること」が見えてきた感じがあって、『閃乱カグラ』は「やりたいこと」だし「できること」、そして「もとめられてること」だなと。まだ美少女アクションゲームとして頂点にも立ってないですし、「脱カグラ」「脱おっぱい」なんてことは考えずに、これからも全力でやっていこうと思っています。

 
――安心しました。ところで2017年の新作がとても気になります。

高木氏:
ちょっと意外なところから始める感じです。

 
――もしかして、おっぱいではなく乳輪がデカイとか?

高木氏:
乳輪がデカい!?乳輪は……乳輪は……そんなでもないです……。

senran-kagura-bakunyu-producer-kenichiro-takaki-interview-ss-006

 

つづく: カグラ1作目では賭けに出た、ブレるのが嫌だった

Shinji Sawa
Shinji Sawa

ゲームはジャンルを問わず遊びますが、1回のプレイ時間が短いものが好きです。FPSやRTSは対戦モノを積極的にプレイします。しかし緊張するとマウスを持つ手が震えるタイプでもあります。

記事本文: 141