PS5/Steam死にゲーTPS『スカーレッドサルベーション』は、「キャラの衣装破壊のために、ダメージ被弾する弾幕シューター」になった。開発者にヘキ強めの開発ルーツ訊く
本作の特徴として、主人公のウィロが身に着けているアーマーが破壊されていくという要素が用意されている。

コンパイルハートは5月29日、『スカーレッドサルベーション』を発売予定だ。対応プラットフォームはPS5/PS4/PC(Steam)で、5月29日に発売予定(Steam版はIDEA FACTORY INTERNATIONALより5月30日発売予定)。
本作は、機械兵器との死闘を繰り広げる三人称視点のアクションシューターだ。主人公のウィロ・マーティンは、見知らぬ部屋で目を覚ます。しかし、彼女は記憶がなく、なぜここにいるのかもわからない。そんな彼女に助言をくれるAIに従って、真相を探っていくことになる。
本作は、“剥き出しのアーマーブレイクTPS”というキャッチコピーが付けられている。TPSらしく、さまざまな武器が用意されていて、武器によって威力、射程、発射レートなどに違いがあり、さらに爆発して広範囲に攻撃できたり、敵をスタンさせたりといった特徴があるものも存在。どの武器を使うかによって、強敵も攻略しやすくなるため、使い分けていくことも重要だ。
また、本作の特徴として、主人公のウィロが身に着けているアーマーが破壊されていくという要素が用意されている。攻撃を受けることでアーマーが破壊され、ウィロがインナー姿になってしまう。敵の攻撃をアーマーで受ける分にはダメージを受けないものの、インナー部分に攻撃を受けるとダメージを受けるようになっている。
女性主人公とアーマー破壊という、一見コンパイルハートらしさも見える本作は、一方で “死にゲー”とされる高難度のゲームとなっている。そこで弊誌は、コンパイルハートらしさと、らしくない両方の面をもつ本作について、『スカーレッドサルベーション』のプロデューサーを務めるアオキヒロシ氏に話を伺った。
TPSであることは元々決まっていなかった
――自己紹介をお願いします。
アオキヒロシ(以下、アオキ)氏:
コンパイルハートブランドでプロデューサーをしているアオキヒロシです。2021年10月に入社し、現在は今回の『スカーレッドサルベーション』のほかに、『魔法司書アリアナ ~七英傑の書~』『ザレスタ』の3作品でプロデューサーを務めています。
弊社以前は、タイトーでプログラマー、ディレクター、プロデューサーを経験し『ダライアスバースト』立ち上げなどに携わった後、サイバーコネクトツーに転職してプランナーを、さらに後にはマーベラスで『ルーンファクトリー4スペシャル』と『ルーンファクトリー5』でプロデューサーとして働いていました。
――『スカーレッドサルベーション』は、どういったゲームなんでしょうか。
アオキ氏:
本作は、「衣装破壊」をテーマのひとつにした死にゲーTPSです。死にゲーという、そもそもコンパイルハートの中ではなかなかチャレンジしたことがないものを、TPSというかたちでひとつチャレンジしようと制作したタイトルです。
――コンパイルハートじゃなくても、衣装破壊がテーマの死にゲーでTPSというゲームはなかなかないような気がしますが……(笑)
アオキ氏:
そもそも今回の企画のルーツなんですが、TPSというジャンルは最初決まっていなかったんですよね(笑)

――そうなんですか?
アオキ氏:
本作は衣装破壊ギミックがまず最初にあったんですね。過去のいろいろなゲームの中でも衣装がはだけたり、ダメージによって段階を踏んで服が破けていくというゲームはあったんですが……。そもそもこのプロジェクトは、衣装破壊をテーマにしようということから始まったんです。
――ええっ!
アオキ氏:
信じられないかもしれませんが、そうなんです。衣装破壊がとっかかりで、「衣装破壊を物理演算でやっているタイトルってほかにはないよね」っていうことを思いつきまして。そこで突破口を開こうというところから企画がスタートしました。それで私が選んだジャンルがTPSだったというわけです(笑)
――ゲームをプレイさせていただきましたが、あの難しさの死にゲーなのに、発端が衣装破壊からなんですか。
アオキ氏:
ただ、ある意味これがコンパイルハートらしいところだと思います。で、TPSに関しては私が個人的に非常に好きなジャンルなんです。三人称視点だったら、肉弾戦よりはシューターだろうと思って、今の方向性に舵を切って作り始めた感じですね。
――3DのTPS、ゲームジャンル的にコストが高そうなプロジェクトだと思うんですが、会社の方は素直にGOサインを出してくれたんですか。
アオキ氏:
当然ですが、企画が会社に承認される際には予算感も出しつつなので。あと、技術的アプローチとして衣装が物理演算のもと破壊されていくという要素の先駆者になるという目標もあったので、そういう意味ではトライする意義があるのでは、ということも含めて、経営陣にぶつけました。ただ、説得力をもたせるためにどうやってプレゼンしようかという作戦は結構練りました。で、GOサインが出たら、後は開発会社のネイロさんと協力して、本作の開発を進めていったというわけです。
――ネイロさんは、アオキさんから見てどういった開発会社でしょうか。
アオキ氏:
元々、ネイロは創業者の平井武史さんがエンジニア出身の方で、技術というものに興味をもって取り組む開発会社だという印象がありました。皆さん優秀な方々で、こちら側が希望していることをちゃんと汲み取ってくれていますね。
――今回、なぜネイロさんと開発をすることになったのでしょうか。
アオキ氏:
理由としてはご縁があったことと、平井さんが今回のアーマーブレイクを前面に押し出したゲームを作っていくということにすごい関心を示してくれたのがきっかけです。
弾が当たらなければ脱げないから死にゲーに

――『スカーレッドサルベーション』は、なぜ死にゲーになったんでしょうか。
アオキ氏:
弾が当たらなければ、脱げないわけですよ。簡単に避けられちゃうゲームだと、そもそも着想部分が何の日の目も浴びないんですよ。だから、基本的に殺しにいくゲームにしようと。そうなるとやっぱり死にゲーかなと。
――脱げるようにしたら死にゲーになったというのは、なんか冗談みたいですね……!
アオキ氏:
そう仰られましても、本当にそうなんですよ(笑)何の作り話もなく、本当にそういう発想のもと死にゲーTPSとして作り始めました。
――実は、個人的に『スカーレッドサルベーション』はHousemarqueのローグライクTPS『Returnal』に似ていると思っていたんです。しかし、結構違うと。
アオキ氏:
企画のルーツ自体は全然違いますね。ただ、ゲームの作りとして『Returnal』は結構参考にさせていただきました。
――どういった部分を参考にされたんでしょうか。
アオキ氏:
『Returnal』は、結構シンプルなゲームの作りをしているなと思ったんですね。そういったシンプルな部分を、『スカーレッドサルベーション』の作り方の参考にしています。ただ、本作はアーマーブレイクがひとつの特徴になっているので、それが『Returnal』にはない我々独自のセールスポイント、コンパイルハートらしさかなと思っています。
――なるほど。シンプルさを参考にしつつ、衣装破壊をコンパイルハートらしさとして味付けしているわけですね。
アオキ氏:
そうです。衣装が破壊されるというところにとにかくコストをかけようと。それがテーマなので、とにかく衣装破壊にコストをかけようとなると、あまりいろいろ作り込むのが難しくなってくるわけですよ。
そうなると、キャラクターはひとりで、となって。だけど、主人公ひとりだとシナリオがまったく成り立たないので話し相手を作って、主人公のウィロと話し相手のAIの会話をバックグラウンドに、とにかくヘビーなシューターを遊んでもらおうと。そこで、いわゆるローグライトになり、結果的に相当ストイックなゲームになりましたね。とはいえ、高難度だけで勝負しているわけではなく、ちゃんと弊社のセオリーというか、色を意識はしています。

――骨太なTPSを味わいつつ、やっぱり衣装破壊というセクシーな部分も楽しんでほしいという想いがあると。
アオキ氏:
最初は、本当にそういうイメージで作っていたんです。ただ、仕上がったら結構ハードな部分だけ残ったなと思っています(笑)
――ゲームはハードだとセクシー要素に集中できなくないですか?(笑)
アオキ氏:
そうなんです。そんなことを意識していると死んじゃうので、思ったよりもガチなゲームに仕上がったなと……。
――お色気要素が原点にあって、それを見せるためにTPSを作ったのにハードな方に寄っていったと。
アオキ氏:
マーケティング的な部分だと、PVを作るときにはアーマーブレイクをかなりフィーチャーして作ってはいるんですが、世界観がシリアスなので、そういう意味ではお色気方面には行けないゲームになっちゃったなと……。結果論ですけどね。
――このゲームの世界観でお色気を入れ過ぎちゃうと、ちょっと違う感じもしそうですもんね。
アオキ氏:
あと企画しているときに、主人公のウィロをどういう風に仕上げるかっていうところに結構悩みました。いつものコンパイルハートのノリだと、もうちょっと若い、いわゆる美少女にするところなんですけど、今回は物理演算で脱げていくというところを考えると、いろいろありまして……。

――年齢的に低いとレーティング的に問題があるやつですね。
アオキ氏:
そこでどちらかというと大人の女性に仕上げていくというところを意識して、ちゃんと美女なんだけどティーンエイジャーには見えないようにしようと。あと、か弱い女性だとすごくあざとくなってしまうので、少し勝気なキャラクターにしようとか、キャラクターメイクは気を使っていますね。
――プレイさせていただいたとき、一見ハードなゲームで女性のアーマーが破壊されていくのを楽しんで良いのかというドキドキ感があったんですけど、そこは開発陣のこだわりとして楽しんで良いんですね。安心しました。
アオキ氏:
ぜひドキドキしてください(笑)ちなみに、シナリオはSFの世界観でシリアスにしたものの、キャラクター同士の会話は少し笑える感じにしようと思ったんですね。たとえば、AIなのに半端なことを言ってきたり、人間にツッコまれたり。そういった感じでユニークさも意識はしています。
――いろんなドキドキがあるんですね、ありがとうございました。
『スカーレッドサルベーション』は5月29日(Steam版はIDEA FACTORY INTERNATIONALより5月30日)、PC(Steam)/PS5/PS4向けに発売予定。
[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]