「22本しか売れなかった」とキャッチコピーに掲げるゲーム『SAMUZA』、ちょっと売れ始める。何が起こったのかスタッフに訊いた
「22本しか売れなかった」ことをキャッチコピーにしているゲーム『SAMUZA』の売上が、じわじわと伸びているようだ。開発元スタッフに話を伺った。

株式会社Crackinは昨年11月21日、『SAMUZA』をNintendo Switch向けに発売した。しかしその後同作の売上は22本にとどまり、長らくまったく売れなかったという。ところが最近になって同社の広報担当者は「22本しか売れなかったゲーム」をキャッチコピー化。大胆な“開き直り戦略”を打ち出し、新たな施策も功を奏したことで最近は売上がグッと伸びているという。
本作は、未来世界でロボが奔走するタイムアタックレースゲームだ。本作の舞台は、人類が滅亡し、暴走した人工知能が支配する299X年の世界。プレイヤーは人類が残した最後の切り札であるロボシリーズ「サムザL-800」として、人工知能に支配された世界のリセットを目指すこととなる。
本作ではさまざまなコースを攻略。コースでは狭い足場や通路からプレイヤーを弾き飛ばす、多種多様なトラップが仕掛けられている。コース外に落ちるとライフが減るため注意しながらトラップの猛攻を掻い潜り、ライフがなくなるまでにゴールにたどり着くのだ。
また本作にはさまざまなコースをエンドレスにクリアしていく「エンドレスモード」が搭載。さらに「クリエイトモード」でコースを自作し、アップロードして世界中のユーザーに共有することもできる。ユーザーが作ったオリジナルコースについては「サーチモード」で遊ぶことが可能で、どんどんクリアすればクリエイトモードで使えるトラップを新たに入手できる。さらに本作には2P対戦モードも用意されている。

そんな本作は昨年11月21日の発売後、Steam向けにも1月9日に発売。しかし長らく売上22本のまま伸び悩んでいたという。しかし最近になってCrackinの広報担当者の小川氏は本作を「22本しか売れなかったゲーム」というキャッチコピーと共に宣伝開始。注目を集める中で同氏は3月26日に本作のダウンロード数が22本から151本になったことを報告した。なおSteam版は2月11日より無料化されているが、売上本数はすべてNintendo Switch版の数値だそうだ。
なぜ突然売上が伸びたのか。「22本しか売れなかったゲーム」という大胆な開き直りキャッチコピーが付けられたことにはどのような背景があるのか。小川氏に話をうかがった。
── 本作は11月に配信開始されたタイトルですが、アピールされている「売上22本」に到達したのはどのタイミングだったのでしょう。
小川氏:
12月28日時点で22本に到達しました。これ以降、1か月以上は売上本数に変動はありませんでした。
── そこから売上が伸びなかった時期の、スタッフの心境をお聞きしてもよろしいでしょうか。
小川氏:
広報としては「ゲームを広めるのって本当に難しい。どうしたらいいんだ?」という想いでした。毎週Xで売上本数を報告していたけど、本数の変動がなくなってからは投稿も止まっていたし、消極的な気持ちでした。エンジニアチームと当社代表は以下のような心境だったそうです。
(エンジニアチーム)
Switchへの移植がかなり大変だったのでもう少し売れて欲しかった……
(代表)
アップデートや他のプラットフォームへの移植も考えていたけど難しいな。ゲームって面白いだけではだめだなと痛感。絶望感、諦め、喪失感を感じた。
── ネガティブなイメージにもなりかねない「売れなかったこと」をあえてアピールされているのは大胆な戦略だと思います。どのような経緯でそうしたプロモーションアイデアが生まれたのでしょうか。また、御社の中でGOサインをもらうまでの苦労などはありましたか。
小川氏:
知ってもらわないと売れないというのは痛感したので、逆に「22本しか売れてないのはレアではないか?」と考え、開き直って全部を公にしてみんなを巻き込み、応援者を作ろうと思いました。「恥ずかしいから迷ったけど、ゲームはみんなを巻き込んでいかないと売れない」と社長にプレゼンしたところ、なりふりかまってられないからとGOサインをもらえました。
── なるほど。その後ずっと止まっていた売上は、3月9日に2本伸びて24本になったそうですね。そこから約2週間で151本まで到達したとのことでぐっと売上が伸びていますが、何がきっかけになったと考えていますか。
小川氏:
思いきってセールで100円にしたことと、「東京インディーゲームサミット2025(TIGS 2025)」に出展したことがきっかけだと思います。でも、何よりSNSで発信し始めて、ユーザーの皆様が拡散してくれたことが1番大きいと感じています。TIGSでも「X見てます」「応援してます」と声をかけていただき嬉しかったです!
── 売上の目標としては1000本を掲げられていますが、なぜ1000本に設定されているのでしょうか。
小川氏:
かけた工数的には本当は1万本程度売り上げたいと考えていましたが、現状では現実味がないのでまずは1000本と設定しました。1000本達成したら感謝イベントを開催したいです!
── まずは堅実な目標を設定されたのですね。1000本達成に向けて、今後どのような施策をお考えですか。
小川氏:
『SAMUZA』だけのゲームイベントを開催したいと思っています。また、アーティストコラボ等も考えています。
── では、読者に向けて本作のアピールをお願いします!
小川氏:
本作は一言で表すと“激ムズタイムアタック”で、クリアできそうでできない、クリアできなそうでできる、の連続です。絶妙に「ここまでやったらやめる」という気持ちにしてくれる沼をご堪能ください!
またあまりフォーカスされてないですが、実はクリエイトモードは自分でコースを作成できて、アップして家族や友達と一緒に作ったコースで遊べます。やり込めばやり込むほど特殊で難しいパーツをゲットして面白い激ムズコースが作れるので、是非トライしてみてください。
── ありがとうございました。
『SAMUZA』はNintendo Switch/PC(Steam)向けに配信中だ。Steam版は無料となっている。