『Dead by Daylight』開発元の新レーベルMiss Behaviourは「面白いインディーホラー」を埋もれさせたくない。『DbD』パワーも惜しみなく使い、“尖ったまま”世に出す狙いを訊く

『Dead by Daylight』開発元のインディーゲームパブリッシングレーベル「Miss Behaviour」の理念とは。TGS会場で訊いてきた。

Behaviour Interactiveは2026年6月、新たなインディーゲームパブリッシングレーベル「Miss Behaviour」を発足した。ホラーゲームを中心にインディーゲームを支援していくという。最新タイトルとして『Donut Panic(ドーナッても冷静に)』が発表されている。

弊誌は「東京ゲームショウ2026」の会場で、Behaviour Interactive(以下、Behaviour)の副最高経営責任者であるNathan Sellyn氏と、Miss Behaviourがパブリッシングする『Donut Panic』の開発者であるKyle Banks氏にインタビューを実施。Behaviourがインディーゲームを支援する理念と、『Donut Panic』を応援する理由について伺った。

――Miss Behaviourとはどのようなレーベルなのか、教えていただけますか。

Nathan Sellyn氏(以下、Sellyn氏):
Miss Behaviourは、Behaviourのインディーゲームパブリッシング事業です。Behaviourが手がけているほかの事業と区別するため「Miss」を付けました。当社は35年にわたって受託開発を続けてきましたし、『Dead by Daylight』も10年目になります。今では『7 Days to Die』や『Darkest Dungeon』もありますし、数年後には『Blight: Survival』も控えています。本当にいろいろなことをやっているので、インディーゲームのパブリッシングに独自の場を設け、ほかの取り組みとはっきり区別するためにレーベルとして独立させました。

――発足のきっかけなどはあったのでしょうか。

Sellyn氏:
一番シンプルな理由は「もっといろいろなことをやりたかったから」です。 社内には、インディーゲームにものすごく情熱を持っているメンバーがいます。それぞれの会社には目指すものがありますが、私たちとしては、インディーゲームのコミュニティに関わる方法を見つけたかったんです。

Behaviourは長い間、とても小さな会社でした。『Dead by Daylight』によって、はるかに大きな、それまでとは異なる会社へと変わり、カナダ最大のゲーム会社になりました。それはすべて、たった1本のゲームが起こした奇跡のおかげです。だからこそ、私たちに向けられた注目を小規模な開発者にも向けていく責任があると考えています。私たちが得たのと同じように、大きく飛躍するチャンスを彼らにも届けたいんです。

いまはゲームを見つけてもらうことが本当に難しい時代です。素晴らしいゲームでも簡単に埋もれてしまいます。そうした作品にふさわしい注目を集められれば、私たちの役割を果たせると思うんです。

『Dead by Daylight』開発元だからできること

――ホラーゲーム中心のレーベルになったのは、やはりBehaviourが『Dead by Daylight』を手がけたスタジオであることが大きいですか。

Sellyn氏:
そうですね。『Dead by Daylight』には毎月500万~600万人のプレイヤーがいます。ほかのゲームを『Dead by Daylight』と結びつけることで、それくらい多くのプレイヤーに見てもらえるわけです。それに『Dead by Daylight』を遊んでいるということは、その人たちはホラーが好きなはずですから、その人たちに面白いホラー作品を紹介してほんの一部の人にでも遊んでもらえれば、小さなゲームが軌道に乗るには十分です。私たちはそこに大きな可能性を感じていますし、社内でもかなりの盛り上がりにつながっていると思います。

当社はほかのゲームもリリースしていますが、そちらは発売の間隔が長めです。一方、このMiss Behaviourのパブリッシングでは数か月ごとに新しい作品が登場するので、そのたびにみんなが情熱を注げるんです。

――今後、どういったタイトルを支援していくのでしょうか。Miss Behaviourでパブリッシングするゲームに求めることはありますか。

Sellyn氏:
何か違うことに挑戦しているゲーム、新しいかたちのホラー体験をもたらすゲームがいいですね。私たちは、ホラーをジャンルというよりもテーマとして捉えています。どんな種類のゲームでも、ホラーゲームになり得ます。『Donut Panic』は、その素晴らしい例です。また、その新しいアイデアに奥行きがあることも大切です。『Donut Panic』の場合は、その奥行きが非常に豊かで、まさにそういう作品に注目しています。

ほかには、普段ならプレイヤーが手に取らないかもしれない作品や、何か特定のものを探している人にしか届かないかもしれない作品ですね。もっと幅広い層に知ってもらえれば、ゲームの持つ魅力に気づいてもらえる。そういうゲームを広めていけたら素晴らしいと思います。自分たちが共感できる作品を見極め、責任を持って光を当てていきたいですね。

――プレイヤーがゲームにMiss Behaviourの名前を見たときに、どのような雰囲気や作風、あるいはクオリティを期待するようになってほしいですか?

Sellyn氏:
2~3年後にある程度ラインナップが充実してきたとき、Miss Behaviourという名前から、Behaviour本体とはまた違うイメージを思い浮かべてもらえるようになっていたら嬉しいですね。

もちろん、私たちのロゴは本家Behaviourのロゴをもじったものなので、両者のつながりはずっと残ると思います。 でも、マスコットのMiss Behaviourを見た人が、普段なら興味を持たないような作品でも「Miss Behaviourなら信頼できる。このレーベルの作品なら、新しくて面白いホラー体験ができるはずだ」と思ってくれる。そんなところまでたどり着けたらと思います。

Miss Behaviour

Sellyn氏:
優れたインディーパブリッシャーを見ると、特定のテーマやジャンルに特化していなくても、まさにそういう信頼を築いていますよね。私はDevolver Digital を信頼しているので、名前を見ると「これはきっと素晴らしいインディーゲームだ」と思います。Top Hat Studiosもホラーを数多く扱っていますが、ホラーとはまったく違う作品も手がけています。ジャンルが違っても、それでも彼らが作品を見極めるセンスは抜群です。私にとって、信頼できるキュレーターなんです。Miss Behaviourも、ホラー好きのプレイヤーから信頼されるキュレーターになれたら、私たちの役割をしっかり果たせたと言えると思います。

今の私たちには、『Dead by Daylight』という頼れる存在があります。これらのゲームに注目を集めるために、その力は喜んで借りていくつもりです。おそらく今後も活用し続けるでしょう。せっかく私たちが使える強みですし、ほかの誰かが使っているわけでもありませんから。ただ、いつかその力を借りなくてもやっていけるようになったら、そのときこそ、この取り組みが成功し、当初の目標を達成できたと実感できると思います。

――Behaviourは『Dead by Daylight』を通じて、ホラーを好むプレイヤーについて多くの知見を得てきたと思います。その経験は、今のホラーファンがどのようなゲームを求めているのかを考えるうえで、どの程度影響していますか?

Sellyn氏:
『Dead by Daylight』や『7 Days to Die』、そして『Darkest Dungeon』から学んだことのひとつは、ホラーゲームを遊ぶ人たちは決して一括りにはできないということです。『Dead by Daylight』のコミュニティは、本当に多様なんですよ。例えばスポーツゲームやシューターのプレイヤーは、比較的限られた範囲に収まっているのではないかと思います。一方、『Dead by Daylight』のプレイヤーは、国や地域、民族、年齢、バックグラウンドなど、あらゆる面で多様です。私たちは、その多様性をコミュニティの大切な魅力として尊重し、積極的に称えていきたいと考えています。

これはMiss Behaviourに取り組むうえでも、重要な学びになっています。ホラーというテーマは、どんなゲームにも取り入れられると考えられるからです。ここでも『Donut Panic』が良い例ですが、この数年だけでも、実にさまざまなタイプのホラーゲームが登場しています。ゲーム以外だと、映画では「オブセッション 災愛」や「バックルームズ」がそうですよね。特定のタイプの人だけに訴えかけていては、あれほどの成功は収められません。恐怖は、とても普遍的な感情です。だからこそ、具体的なジャンルやゲームプレイがその人の好みに合えば、誰でもホラーファンになり得ると思います。

チームが満場一致で「支援したい」と決めた『Donut Panic』

――『Donut Panic』は、ドーナツ店の経営に、心理的な恐怖や異変を見つけるホラー要素を組み合わせた作品です。このゲームのどのような点に触れて、「これはMiss Behaviourから出すべきだ」と直感したのでしょうか?

Sellyn氏:
大きくふたつの理由があります。ひとつは、私たちが検討していたゲームの中でチーム全体が初めて大きく盛り上がったのが、『Donut Panic』だったことです。 作品を次の段階へ進めるかどうかを話し合うのであれば、どのゲームにも、チーム内に強く推す人が必要だと私は考えています。Kyleさんと『Donut Panic』の場合は、チーム全員がそう感じていたんです。

もうひとつは物語の奥深さです。遊び始めたときには予想もしなかった深みがあり、それがほかの異変探し系ホラー作品との違いになっていると思います。物語が非常に練られているんですよ。「エレベーテッド・ホラー」という表現は好きではないのですが、近年、ほかのメディアで人気を集めているホラー作品にも、そうした特徴があると思います。この予想外の一面が、本当に素晴らしかったですね。  それから、Kyleさんが経験のある開発者で、しかも前作の『Farewell North』が『Donut Panic』とはまったく違う作品だったことも大きかったと思います。私たちは、初めてゲームを作る方や、まだ経験の浅い開発者とも数多く仕事をしています。そうした場合、「この人たちは、やろうとしていることをすべて実現できるだろうか」という点も考えなければなりません。でも、Kyleさんには、実際にゲームを完成させ、発売までこぎつけた実績がありました。

――最近は、身近な仕事や日常的な場所にホラーを組み合わせたゲームが増えていますよね。この組み合わせが生むギャップが、プレイヤーにこれほど響いているのはなぜだと思いますか?

Kyle Banks氏(以下、Banks氏):
ゲームの仕組みという点では、プレイヤーを何かの作業に集中させることで、ホラーを効果的に演出する大きなチャンスが生まれると思います。作業に夢中になると、警戒が緩むんです。 突然の脅かしなどに身構えていたはずなのに、それを忘れてしまう。そういう意味で、この仕組みはとてもよく機能すると思います。それに、手を動かしている実感があり、なじみのある作業をこなすゲームプレイなら、すぐに入り込めます。

抽象的な概念をあれこれ説明する必要がなく、直感的に理解できるんです。そこに、作業に集中することで警戒が緩むという効果が組み合わさると、短い時間でとても面白いゲーム体験を生み出せます。 だから、遊んでいて楽しいですし、配信するのも楽しい。そして、ひと目で興味を引くこともできます。

一般的に、スクリーンショット1枚でどんなゲームプレイなのかを伝えるのはとても難しいんですよ。でも、作業をこなすゲームや、見てすぐに理解できる内容であれば、スクリーンショットを見ただけで「ああ、こういうゲームなんだ」と直感的にわかってもらえます。開発者にとって、それは本当に大きな強みです。

――『Donut Panic』でも、そうしたことを実現できましたか?

Banks氏:
はい、そう思います。最終的にはわかるのは発売されてからになると思いますが、コンセプトはすぐに理解してもらえているようです。今、デモを遊んでいる方々を見ても、実際に触れるとすごく楽しんでくださっていますし、作業に集中することで警戒が緩むという仕組みもうまく機能していると思います。

――ドーナツ作りという作業と恐怖のバランスは、どのように調整したのでしょうか。また、そのふたつの間で生まれる緊張感は、『Donut Panic』らしさを形づくるうえで、どれほど重要ですか?

Banks氏:
開発者としては「これはホラーゲームが主体なのか、それとも料理ゲームが主体なのか」は、しっかり考えなければいけないことです。少し逃げの答えになってしまいますが、どちらも同じくらい大切にしたゲームを目指しています。

私は妻がパン職人なので、実際に1日、妻のもとで働かせてもらったんです。ドーナツをどう作るのか、一連の工程がどうなっているのかを学び、生地を扱ったり、グレーズをかけたりする感覚をつかむためでした。 そして、その体験をできるだけゲームにも取り入れたいと思いました。ただ、実際にドーナツを作るのにかかる何時間もの作業は省く必要があります。工程を簡略化したり、一部を省いたりはしていますが、全体としては、本当にドーナツを作っているように感じてもらえたらと思っています。

料理の部分にも奥行きを持たせて、単なる仕掛けではなく、きちんと料理ゲームとして楽しめるものにしたいと思っています。「Fキーを押してグレーズをかける」だけならさほど注意を向ける必要もないですが、 生地を成形し、グレーズをかけ、いろいろなトッピングをのせたり、イチゴを切ったり、実際に工程をひとつずつこなしていく必要があります。そして、その部分を充実させるほど、プレイヤーは料理に集中する必要があるので、警戒が緩むのです。

Banks氏:
また、私は本作を、物語を重視したゲームとしても捉えています。ただ、その点は、ひと目見ただけでは必ずしも伝わらないと思います。 物語は少し奥に隠れていて、遊んでいるうちに、いつの間にか存在感を増してくるんです。でも、本作は物語を軸にした、ストーリーが強い作品です。そして、料理、ホラー、物語という3つの要素は、互いに補い合えると思っています。別々のゲームを3本遊んでいるように感じさせる必要はありません。 それらが一体となって、ひとつのまとまりのある体験になるんです。

パブリッシャーの仕事は、クリエイターの個性を守ること

――『Donut Panic』は、今後Miss Behaviourから登場するゲームの方向性を代表する作品なのでしょうか。それとも、作品ごとに遊び方がまったく異なるかもしれないという点も、レーベルの魅力のひとつなのでしょうか?

Sellyn氏:
すべての作品を「お仕事シミュレーションと異変探しの組み合わせ」にするつもりはありません。 実は、今後発表を予定している別のお仕事シミュレーションもあります。ただ、そちらは異変探しではなく、まったく違うタイプのホラーです。お披露目できるのを楽しみにしています。

『Donut Panic』についてプレイヤーに感じてもらいたいのは、まず、本当によくできたゲームだということです。見た目や演出には遊び心があって、どこか軽いノリもありますが、実際にはとても練り込まれた作品なんです。私たちがレーベルとして評価してもらいたいのも、作品を選ぶうえで求めているのも、まさにそういうところです。

ホラーというテーマの中で、いくつか異なることに挑戦し、ラインナップの多様性をしっかり打ち出そうとしています。そのうえで、どの作品にもプレイヤーの予想を超える奥深さがあり、型にはまらないホラー体験を提供できるようにしたい。その意味では、『Donut Panic』はまさに私たちの方向性を代表する作品ですね。

――Miss Behaviourがパブリッシングを担っている作品の多くは、少人数のチームで開発されていますよね。インディーホラーの魅力である独特のクセや、作り手の個性を損なうことなく、そうしたクリエイターに開発資金や人手などの支援を提供するために、どのようなことを心がけていますか?

Sellyn氏:
まず言いたいのは、大規模開発のAAAゲームや比較的大規模なAAゲームのように、より幅広い層に受け入れてもらおうと作品の尖った部分を削っていくと、結果としてつまらないゲームになりかねないということです。「この独創的な部分を削れば、それを理由に敬遠する人たちにも遊んでもらえるかもしれない」という誘惑はありますが、それは良いゲームを作る方法ではなく、むしろ失敗するための方法だと思います。

インディー開発者と仕事をするとき、私たちの役割は、そうした作品の尖った部分を守ることだと思っています。開発者が自分の作品を独自で、刺激的なものにするために下した判断を守り、そこを魅力として発信していく。私たちは、インディー開発者の個性を守る存在でありたいと思っています。それができていなければ、良いパブリッシャーとしての役割を果たせているとは思えません。

Banks氏: 開発者の立場からもう少し補足すると、ゲームの脚本を読みたいと言ってくれたり、物語の中身にまで深く踏み込もうとしてくれたりするパブリッシャーはなかなかいません。物語の部分にも興味を持ち、そもそも自分がこのプロジェクトに心を躍らせた理由を損なうことなく、作品をさらに良くして可能性を広げようとしてくれる……そんなパブリッシャーと一緒に仕事ができる機会は、皆さんが思う以上に少ないんです。そう考えると、本当に貴重なことだと思います。

――『Donut Panic』について、日本のプレイヤーにぜひ体験してほしいことや、楽しんでほしいポイントがあれば教えてください。

Banks氏:
異変探しというゲームプレイについて、日本の『8番出口』から影響を受けていることは否定できません。『8番出口』が提示した仕組みには、まだまだ大きな可能性があると思います。異変探しはひとつのジャンルになりつつありますが、もっと幅広い要素を持つゲームの中に組み込み、ひとつの仕組みとして掘り下げる余地は、今も十分にあります。『8番出口』のファンにも、『Donut Panic』を単なる模倣ではなく、このジャンルに新しいものを加える作品として受け止めてもらえたら嬉しいですね。

Sellyn氏:
日本には非常に成熟したゲーム文化があります。私たちの多くにとって、日本はゲームの原点ともいえる場所です。日本には素晴らしいインディーホラーがたくさんあります。Chilla’s Artはかなりのハイペースで新作を出しているように感じますし、墓場文庫さんの『都市伝説解体センター』もあります。 私が一番好きなインディーホラーは『ゆめにっき』です。もう20年か25年くらい前の作品ですよね。

日本のプレイヤーに『Donut Panic』を気に入ってもらえたら――私はきっと気に入ってもらえると思っていますが――世界中のプレイヤーにも受け入れてもらえるという、非常に心強い手応えになると思います。よろしくお願いします。

――ありがとうございました。

『Donut Panic』はPC(Steam)にて、無料体験版を配信中だ。

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