AUTOMATON vs. トイボックス 和田康宏、金沢十三男のこれまでとこれから (中編)

前編から引き続き、トイボックス和田氏と金沢氏へのインタビューです。

 

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――トイボックスさんとしては自社はかなりコンパクトな体制になっているということですね。現在所属しているのは基本的に金沢さんと和田さんのみでしょうか?

和田:
常駐しているのは僕と金沢ふたりで、2、3人手伝ってくれる人がいます。そして、開発のライン自体は、それぞれの協力会社にあって、そこに行ったり来たりしています。設立して4年目をむかえるので、そろそろインハウスに小さなラインを立ち上げようと思っているところです。

 

――なるほど。では、トイボックスさんからリリースされたものについて簡単にお聞きしたいと思います。ホームページに載っているかぎりでは『ホームタウンストーリー』と『魔都紅色幽撃隊』と『レッド・シーズ・プロファイル』のディレクターズカット版です。

和田:
ディレクターズカットは色々やっていてPS3やSteamでも作ったりしていますね。

 

――一番古いのは『レッドシーズプロファイル』?

和田:
元々マーベラスエンターテイメントから発売されたものです。Xbox360版はすでにリリースされていたのですが、海外のパブリッシャーから「ぜひPS3版を発売したい」という話があって、それを受けて金沢が企画承認を得ようとSCEアメリカの門を叩きました。

開発が長引いたせいで表現の進化があって、当初はメディアからの酷評が多かったのですが、プレイしてくれたユーザーさんからの評判がよく、だんだんカルト的な人気が出てきたタイトルです。その人達が熱狂的に支持をして好きになってくれて、評価があとからどんどんあがっていったんです。そういう遷移を見ていた海外のパブリッシャーがPS3もぜひやりたいという流れになり、金沢が交渉を成功させたうえでマーベラスエンターテイメントさんにお願いをして、リリースする承諾をしていただいたという感じですね。

 

――ディレクターズカット版には特別な要素としては何がありますか?

和田:
新しいシナリオと、あとテクスチャーをいじったり。もともとこれはPS2とXboxのころから開発がスタートしていて、のちにPS3用にリファインをした経緯がありました。だから、PS3向けとしてはちょっとグラフィックが弱いみたいなところがありました。そういうところを色々と修正することを条件にSCEが「OKだ」と言ってくださったんです。そういう細かなグラフィック系のリファインが多いのですが、ほかにもPlayStation Moveにも対応しています。あとは3D立体視に対応したり、ちょこちょこいじったりしています。でもファンの方にとって一番大きいのはシナリオ追加だと思います。あとはDLCで衣装チェンジとか、結構仕込んでます。……ところでこの記事っていつ公開されます?

 

――いまのところ、はっきりとしたな予定はありませんが、なにかございますか?

和田:
金沢さ、どうせだったら日本でもやりますって書いてもらったほうがよくない?

 

――では、おうかがいします。『レッドシーズプロファイル』ディレクターズカット日本版のプラットフォームは?

和田:
PS3です。ダウンロード配信だけなんですけど。ありがたいことに、日本版出ないのかなとおっしゃってくださるかたがいらっしゃいますので。

金沢:
Amazonで売っているけど、今、定価を超えて1万円以上します。

和田:
インターフェースとかも今出てるやつよりもよくなっています。

 

――最近は海外のゲーム中心に物語重視のアドベンチャーが注目を浴びているので、また再評価されるかもしれません。

和田:
ただ、もともとこれ開発スタートしたのは2004年位なので、そういう意味ではちょっと古臭いところはあるかな。

 

――昔の映画の映像の粗さも、味と思える部分もありますので。ではもうひとつのタイトル『ホームタウンストーリー』。これは自社で完全にパブリッシングした作品ですね。基本的には『牧場物語』の精神的な続編というニュアンスが強かったと思うのですが?

和田:
うーん……結果的にそう見えちゃうのはしょうがないと思うんですけど、僕自身は『牧場物語』と違うものを作ろうという意識が強かったです。実際『牧場物語』の僕の後を引き継いでくれている人達が頑張っているし、そういう意味では、それはもっと次の世代に受け継がれていってほしい。そこと競合するようなものはあんまり創りたくない。

でも、そのジャンルの幅、たとえば「戦わないゲーム」にも、いろんな選択肢があって、いまだと『どうぶつの森』とか『トモダチコレクション』とか戦わないでもゲーム成立するんだという状況になっているので、その中で選択肢がもっと広がればいいと思っています。

シリーズが続いているものでも、リリースの間には長い時間が空くじゃないですか。その間を埋められる体験を提供できればいいなあというのもはありますけど、。だからといって、似たようなものを創って面白くないかったので、どうやって違うものを創ろうかな、というのが発想としてありました。

ただ結果的に……。たとえば、あるギタリストがバンドを変わっても、ギターの音一緒じゃないかとか。本当に、そういうこともあるんだなぁって、とあらためて思いました。

 

――私も音楽好きなのでお気持ちはよくわかります。好きだったバンドのギタリストが抜けて、次のバンドでギターをやるとどうしても比べてしまいますよね。その違いを作るという面で特別に意識された部分はありますか?

和田:
『牧場』の場合は作物育てたり動物と触れ合ったりするのがメカニック的にはメインループになっている。そうじゃないことからはじめよう、という感じですかね。

今回お店のゲームなんですけど、お店にしたきっかけというのは、物流というかモノが流れる仕組みが変わってきていることです。一番分かりやすい例でいうと、ダウンロードです。昔だったらLPレコードとか12インチシングルをお店に買いに行ってたのが、大人になってからCDになって、今はダウンロードになって。もちろん、どんどん音質も良くなっているし便利にもなっているんですが、だけど、なにかモノが動かないとさびしいなと。ゲームもだんだんダウンロードの比率が高くなってきている。そのうちパッケージもなくなっちゃったりとか、それってちょっと寂しい。そんなことを思っていた時期にちょうど企画を始めたんです。

たとえば、いまここで使っているICレコーダーって僕にはいっさい必要ないですが、インタビューを収録するライターさんには、絶対必需品ですよね。そういうのと一緒で、ある人に要らないものでも他の人には要るものだったりすることはよくあります。オークションとかフリーマーケットなどで、そういう物を通じて、こんなのがこんなに安くてよかったなとか人が喜ぶ気持ちをなんかミックスしたら素敵だなと。

 

――物流みたいなものと人のコミュニケーションがリンクするということですか?

和田:
そうですね。たんに昔はLPジャケット壁に飾っていていい感じだったのに、今の時代はなにもなくなっちゃってさびしい、だと老害の戯言になっちゃいますよね。でも、その感覚は大事にしたいし、伝えたいです。そういうのを利用したうまいゲームシステムができるんじゃないか? というのが最初のきっかけですかね。

 

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――自社パブリッシングで苦労したところはありますか?

和田:
えっとですね……人がいない。もうほんとに全部やらなきゃいけなかった。もちろん最初にゲーム業界に入ったときは、なんでもやらされたんです。ただその時は、どうでもいいことの割合が多かったので、ただがむしゃらにがんばればよかった。でも今回は、ミスれない大事ないろんなことが多すぎて、やばかったですね。とにかくモノをパブリッシングするというのは、いろんな人がいろんなことで頑張っているんだなということをあらためて認識しました。

 

――ほかにかトイボックスさんがホームページに載せてないもので関わったり、お手伝いしているものはありますか?

和田:
今進めているやつはありますね。ごめんなさい。それはあまり話せない……。ひとつは『ホームタウンストーリー』の次のやつだったりしますし、僕の別の企画だったりします。あと金沢もいろいろ進めています。来年には発表できるんじゃないかな。

 

――金沢さんは最新作が出ているということもあって、関心が高い人もたくさんいると思います。金沢さんはゲーム業界に入ったきっかけは何だったのでしょうか?

金沢:
僕は新卒で入りました。入ったときには、和田がいました。僕は単純に普通の就職活動をしているなかで、音楽が好きだったので、それ関係で探していたのです。音楽関係だと営業とかばかりで、ものづくりのところにいけないんですね。僕の時代はバブルだったので、たくさん内定取ったあと、どうしようかなと思って。「どこにも行きたくないな」と思っていたのですが、最後に受けたのがパック・イン・ビデオでした。

和田:
映像制作をやりたかったんだっけ?

金沢:
映像だったらいろんなことできるなと思っていました。それで映像やりたいですと言ったら、「君ゲームやる?」と聞かれ、「はい、ゲームやります」と答えました。「好きなのは何?」「君詳しいね」というやりとりが面接を進めていくうちに5、6回あったんです。最終的にゲームソフト部の部長が出てきて、「これはもう僕は絶対ゲームのほうに行くな」と。

僕はファミコン世代なので、本当に自分の生活のなかにゲームがありました。なぜか高校時代にパソコンでゲームなんかも作っていましたし。そういうのもあって、すごく自然に入りました。

 

――会社側からすると良い人材がちょうどよく来たみたいな感じですか。

金沢:
そうかもしれません。

和田:
当時の部長はゲームのことは何も知らなかったんですよ。さっきも言ったけど(笑)

金沢:
そのころ、スタッフを集めていんたんですよね。面接でその部長に「金沢君はどういう時代がこのあと来ると思う?」と聞かれたので、「なんでも光ディスクに入る時代が来るんじゃないか」と答えたら、「わしはそう思わん」とその場で否定されたんです。「落ちたな」と思っていましたが、幸か不幸か受かりました(笑)

僕はもともとパック・イン・ビデオがゲームを創っていると知りませんでした。映像やりたかったので。入ってもたいした人いないんだろうなと思っていたら和田がいました(笑) 「じつは僕も半年前に入ったんです」みたいな。そういう会社がリスタートするようなタイミングだったので、非常に良かったなと思います。きっかけはそんな感じです。

 

――なるほど。ちなみに音楽は何がお好きですか?

金沢:
僕は80’sで育ったので、基本80’s好き。結構ロックとかポップがごちゃまぜになっていたシーンで、プリンスとかあのへんの時代のものです。

 

――入社してからは、おふたりは同僚としてやっていらっしゃった?

金沢:
いや、和田が先輩。半年だけ先輩ですが、4歳上なんです。

先ほど、高校時代にパソコンをやっていたと言いましたよね。昔のパソコンだと文字入力のアドベンチャーゲームが主流だったのです。そのへんをたくさんやって、絶対アドベンチャーゲームを創ろうと思っていたら、ちょうどアドベンチャーゲームが死に体になっていた時期なんですよね。

 

――ファミコンからスーファミに変わる時代?

金沢:
そうです。ファミコンで『ポートピア連続殺人事件』とか出て、自由度の高い文字入力からコマンド選択になりました。そうすると、結局しらみつぶしにやっていけばクリアできるよ、犯人わかったらおしまいだよ、なんて言われていまして。「アドベンチャーゲームに価値ないわー」みたいな時代になってしまったんです。そのころの主流はRPGとかでした。あんまり創りたいものが創れないなと思っていたとき、サウンドノベルが出てきたのです。チュンソフトさんのものなど。あれは選択肢が無限に広がっていって、エンディングがいくつもあって、かなり長い時間遊んでいられる。これだったらコンシューマゲームでもできるかなと。和田とか課長とか先輩に相談して、赤川次郎だったらいいんじゃないかという話になって、「だったら手紙書けよ」って。

 

――けしかけたんですか。さっきは勝手にやったような話になっていましたよ(笑)。

和田:
あまり記憶にない(笑)。「金沢えらいな、パイオニアスピリッツがあるな」って思っていたけど。

金沢:
ようは誰もツテがなかったから、手紙を書けばいいんじゃん、ああそっかその手があったかと。普通にウキウキ書いたら、意外と早めに返事が来たのです。その当時、赤川さんにはたくさんファンレターが来ていたはずなんですが。

和田:
すごいよね。

 

――目を通していらっしゃるのですね。

金沢:
そうですね。でも丁寧に断りの手紙が来ました。嬉しいからまた手紙を書いたら、出版社の担当の人から赤川さんが興味があるみたいだから会いましょうとホテルでお会いしたのが最初でしたね。

 

――赤川次郎さんに題材を使わせてもらおうというのは、元々ミステリーが大好きだったのですか?

金沢:
そうですね。元々赤川次郎さんを中学時代にかなり読んでいました。当時ミステリーといったら赤川さんだった。トップの人を使ってゲームに落とし込むというのが、一番近道というかキャッチーであると思いました。

 

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――なるほど。これはさきほどお話していたのですが、創っているものがおふたりはかなり異なっていらっしゃいます。同僚としてはどのような間柄だったのですか?そして、その後どうして会社を一緒に作ったのですか?

金沢:
なんでかな……?

和田:
よく遊んでいたからじゃない?

 

――違った企画でもお互い相談していたということですか?

和田:
ゲームの中身について相談したことは一切ないです。でもすごくよく飲んでいました。もうひとり先輩もいたりして、夜中からよく飲んでいました(笑) これからゲームってどうなっていくんだろうとか、何を創っていけばいいんだろうという話をめちゃくちゃしていました。

僕らの世代は、ゲームだけが好きなわけではなくて、みんな音楽も好きだし、映画も好きだし、漫画やアニメ、もちろん小説も好きです。そういうものに育てられてきたので。そんななかで、ゲームは、僕個人的にはまだそこには追いついていないような気がしていました。でも金沢の感覚は違っていて、それは世代で言うとわずかな差なんですが、自分よりも小さなころからゲームがあったからじゃないかと。

 

――ゲームに親しんできたという感覚があった。

和田:
とかいうことを、朝まで喧嘩しながら話す。結構、よく喧嘩していたよね?

金沢:
もうひとりの人と僕が喧嘩して、和田がまあまあとなだめる。僕はゲームはオモチャでいいんじゃないのというと、いや、芸術に近くないといけないとか、単なる娯楽だとか。くだらない話です。

和田:
青春な感じです。だけど真剣にやってましたよ。むしろ今も考えてるし(笑)

金沢:
でも、本当に創っているものが違う。僕は『牧場物語』はひとつもクリアしたことないです。

 

――そうなんですか(笑)

和田:
触ったことすらない。

金沢:
和田も僕のはやったことないと思う。

和田:
いや、何言ってんの。

金沢:
でもクリアしたことはないでしょ?

和田:
全部コンプリートしたことはないけど、『魔女たちの眠り』も『夜想曲』も……。

金沢:
あ、やっています?

和田:
2つ3つエンディング観たことはある。ほらっ!

 

――(笑)

金沢:
『牧場物語』とか、はじめの農作業の段階で「なんでこんな仕事しなきゃいけないんだ」と思って絶対できない。そこの棚のラインナップ見れば全然系統が違います。すごく平和な世界と……

 

――陰惨な世界。

金沢:
そうそう。でも、最後のテーマは一緒なんです。

 

――と、言うと?

金沢:
言わないけど。

――(笑)むしろ考えろということですね。

和田:
表面では何も分からないということです。

 

――では、そのあと現在トイボックスさんを立ち上げてから関わってきたのは、先ほどおうかがいした『レッドシーズプロファイル』のディレクターズカット版。

金沢:
はい。海外版ですね。『レッドシーズプロファイル』の完全版みたいな感じです。

 

――最初出すときにNGみたいなのがあったのですか?

金沢:
さきほど少し言っていましたけど、アメリカのPS3の規格基準が非常に厳しかったんです。あのゲームには5年かけてしまったので、見た目がちょっとアップデートしないとダメだということで審査に落とされてしまいました。

そのことが非常に悔しくて、海外のPS3でも出せないかと常々思っていたのですが、Xbox 360版を出したライジングスターという会社から「このゲーム非常に評判がいいから、PS3もチャレンジしない?」とお声がけいただいた。だったら、絶対SCEAに企画承認を通そうと思って、追加シナリオみたいなのを入れました。もちろんファンの方が買ってくれると思ったので、喜んでもらいたいなと。

そのころはソニーさんもXbox360での評判を聞いていたので「あのゲーム、内容はよかったんだけど、もうちょっとだったんだよな」みたいな感じで意外と好意的でした。「じゃあこうしたら通してくれる?」と聞いてみたら、「うん通す」と。直接交渉をしました。

 

――日本版も出るということで。

金沢:
はい。それもマーベラスさんの方で追加生産とかはしていないので、待っている人というか、まだまだ遊んでいない人が、いるかなと思って、一応トイボックスから日本版を出そうかなと。

 

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――ところでミステリーがお好きなようですが、海外のものも好きなんですか?

金沢:
下地としては赤川次郎さんとか読んでいたので、ミステリー的なものは好きだし、僕が遊んでいたPCのアドベンチャーゲームもほとんどミステリー的でした。だから「ゲーム=アドベンチャー」というのが僕のなかにしみついています。その流れがあって、下地として『ツイン・ピークス』みたいな、一見ミステリーなんだけど、じつはオカルトに転がっていくような、結局この世のすべてのものは根底としては理解できないものでできているというのが好きなんです。

あの世界観、とくにデヴィッド・リンチが大好きでして。それをゲームに落とし込みたいなというのが、『魔女たちの眠り』や『夜想曲』だったりするんです。表面的にはミステリーなんですけど、最後は分からないものに転がっていく。外伝などではあたらしい話が出てくるたびに、違う方向にあれあれとひっぱられちゃう感じ。それは多分そもそもの下地からきているんじゃないかと。そういうものが一番面白いかたちだと自分では思っています。

 

――最近でも海外のドラマを観ることありますか?

金沢:
観るんですが、いわゆる『プリズン・ブレイク』とか『LOST』とか有名どころは観てなくて。

 

――マニアックなやつがお好きなんですか?

金沢:
そうなんですが、言うと色々なものの元ネタがばれるんで言いたくないです。

 

――そうおっしゃられるとむしろおうかがいしたくなります。

金沢:
法廷ものとかが多いですね。結構理屈で話が進むもの。『LOST』とかも観ようと思ったのですが、僕が観ようと思ったときにはシーズン6とか7で、ビデオ屋さんに行ったら壁一面にあって。絶対これ観られないなと思ったので、とりあえず1分くらいで全部説明してと知り合いに言ったら、最後が夢オチって言われまして。僕は夢オチ自体はオッケーなんですが。でもはじめにそれ言われちゃうと、観られないなあ。という感じです。

『スーパーナチュラル』もあれは、悪魔が題材じゃないですか。ああいうのは僕の好みなんですが、日本ではなかなかそういうのないじゃないですか。

 

――オカルトはちょっと日本では流行ってないのかもしれないですね。

金沢:
日本はもっとトレンディなほうに行ってしまう。愛だの恋だの。やっても刑事物とかですので。

 

――そのへんは結構時代と共に流行が変わっている印象がありますね。では、新作についてうかがいたいと思います。『魔都紅色幽撃隊』は今井秋芳監督とのコラボレーションというかたちですよね。古くからのお付き合いですか?

金沢:
そうですね。今井さんとは17、18年はお友達というか。彼は『東京魔人學園伝奇』が出る前に、たまたま知り合ったのです。仕事というか飲み仲間。ふたりで一晩中ダーツをやったり、そんな関係ですね。僕が『マジック・ザ・ギャザリング』にハマっているときは、とりあえず今井さんに教えてあげたらハマって。ちゃんと予定通りハマってくれて、ふたりでずっとやっていました。

 

――今回の企画自体は今井さんの発案ですか?

金沢:
企画自体は今井さん。僕と和田がトイボックスを作ったときに、会社にしばられなくなったので、なにか一本面白い企画があったらやるよと言ったら、「じつは」とその場でPCで説明されました。僕はプロデュースするとだいたい作品の中まで突っ込んでやりますが、これだけはプロデュースというか、今井さん含めたプロジェクトをプロデュースするつもりでやりました。なので、僕の思想は含まれていないです。

 

――ではこれまでの今井さんが関わったものよりも、彼の個性が存分に出たということですか。

金沢:
彼は私がプロデュースするかどうかは関係なく、しっかりと個性を発揮する人なので、それはあまり関係がないかと思います。キャラを全部説明されたときに、僕のなかで「できあがっているな」と思ったので。質問すると全部答えられるようになっていました。だからもうできているなという感じで、それを形にしましょう、その手伝いをしますと。

 

――完全に新規IPのタイトルであるにもかかわらず、世界観もかなり濃厚に作りこんでありますし、ボードゲームというゲームシステムも相当野心的ですよね。これをトイボックスから出そうというのは、自由に出せる環境が大きかったんですか?

金沢:
そうですね。判断があまり縛られないというのはよかったなと思います。ただ時間にしろコストにしろ僕らの責任になってしまうので、そこをしっかりと自分達でコントロールする必要があります。

和田:
あと、パブリッシュをしていただいたアークシステムワークスさんが寛容でした。

金沢:
そうですね。アークさんがあんまり細かく言わなかったというか、非常に自由にやらせてくれたというのはありますね。

 

――もともとアークさんと付き合いはあったのですか?

和田:
面識はありましたが、直接のお仕事の機会はありませんでした。

金沢:
今井さんと話していて、自分で企画書を作っていたときに、たまたまアークさんに行く機会がありました。社長さんと話していた時に、僕はプレゼンするつもりはなかったんですが、なんか「企画持っていると聞きましたよ」と言われて。そこで見せたら「ああいいですね」と、その場で決まってしまう感じでした。なので、僕はそこに結構運命があったんじゃないのかなと。ちょうど作っているタイミングが合ったので。

 

――なるほど。4月に発売してその後の売れ行きはいかがですか?結構ガチのボードゲームということらしいですよね。

金沢:
売れ行きは結構良いんですが、ユーザーさんからは戦闘が難しいとかいろいろ言われていますね。

僕も初めは分かりにくいかな、と思ったりもしたのですが、彼のやりたいことは分かったし、これまでにない戦闘システムだったので、やる意義はあると感じていました。試行錯誤しながらあの形になったのですが、まだまだ改善の余地があったので、これは発売後で申し訳ないのですが、パッチという形で納得がいくまでいじくらせてもらいました。今のバージョンは、かなりやりやすくなってますので、ぜひ試してみてもらいたいです。

 

――ちなみにいわゆる日本の「学園オカルトもの」みたいなものはお好きだったりしますか?今井さんの作品みたいな。

金沢:
僕は學園ジュヴナイルと呼ばれているものにはあまり深い造詣があるわけではありません。ただ、僕は生とか死とかにはすごく興味があって、今回の作品は霊・ゴーストを扱っているので、彼の作品のなかでいうと合っていたなと。彼は生と死を描きたいということだったので、歯車としては合いやすかっただろうと思います。

だから僕もシナリオを書いていて自分の中でのカタルシスとかはあったのですが、今井さんから「そんなに放出しちゃダメ」って言われておさえめにしました。彼が描きたい生と死があるわけじゃないですか。それは人によって違うわけで、それをお互い話しながら、最終的に詰めていきました。


後編へ続きます(9月21日公開予定)。

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