『Elona』後継作『Elin』「43問」特盛開発者インタビュー。ムーンゲートの有無から妹の追加予定、開発モチベなど、読者から寄せられた大量の質問に答えまくってもらった


Lafrontierから、『Elin』がSteamにて11月1日に早期アクセス配信開始予定となっている。『Elin』は、ローグライクRPG『Elona』を制作したnoa氏が手がける、同作の後継作だ。『Elin』では、現在Kickstarterのバッカー向けにβテストが開催されている。筆者もバッカーの1人としてβテストに参加しているが、『Elona』の良さはそのまま、遊びやすさは向上。新要素を追加しつつ順当に進化しており、『Elona』同様に気持ちよく時間が溶けていくゲームプレイが展開されている。

今回弊誌では、そんな『Elin』を制作中のnoa氏へメールインタビューの機会を頂いた。しかし前作『Elona』は、フリーゲームの代表的な1本といっても過言ではない。ゲームプレイも自由度が高く、何度も削除して遊び方を学んだり、核爆弾を使ってNPCの殺害を狙ったりなど、プレイヤーごとに思い出があるだろう。人気や自由な内容から、質問を絞りきれなかったのだ。そこで今回は、X(旧Twitter)上にて読者から質問を募集。妹やロミアスに関する質問から今後の予定まで、届いた多数の質問に答えてもらったので、その内容をお届けしよう。


──自己紹介をお願いします。

noa氏:
猫とファンタジー世界が大好きなnoaと申します。過去にフリーゲームの『Elona』や『Elona Shooter』といったゲームを制作しています。

ゲーム開発の沼に落ちてしまい、かれこれ20年ほどインディーゲームの開発に携わってきました。今作『Elin』も、およそ十年間、紆余曲折しながら、ようやくEAリリースに漕ぎつけた愛着のある作品です。

昨年から、クラファンのグッズの製作や配送、αテスト、βテストと、忙しい時期が続いたのですが、今は開発にも少し余裕ができ、毎日猫にMP(モフポイント)を回復してもらいながら、イルヴァの開拓をしこしこ続けています。

──本作の制作体制について、改めて教えて下さい。

noa氏:
グラフィック全般をNZさんと故MTさんが、そしてグラフィック以外を私が担当しています。昨年のKickstarterキャンペーンの後は、風切快夢さんとおくざんしさんが、グラフィック担当に加わっています。いろいろな経験をしてみたい、また自由奔放にやりたいということで、開発からSteamでのパブリッシングまで、すべてセルフ・プロデュースで行っています。

特別だと感じてもらえるゲームを作りたい

──本作の概要を改めて伺わせてください。

noa氏:
本作『Elin』は、イルヴァという世界でプレイヤーが自由に冒険生活を送れる、ローグライクなサンドボックスRPGです。前作『Elona』のカオスで自由度の高いゲームプレイを丸ごと引き継ぎつつ、サバイバル要素、クラフト要素、ハウジングや拠点運営といった機能を大幅に強化しています。

無限に続くダンジョンなど、ランダム性ややりこみ要素の多さも特徴的で、βテストの時点でも、たくさんのプレイヤーさんから、数百時間~千時間を越えるプレイ時間の報告を頂いています。

──本作は『Elona』からはさまざまな面でパワーアップしている印象です。どういったゲームを目指して、開発が進められてきたのでしょうか。

noa氏:
明確に目指している形はありませんが、時間と想像力とSteamレビュー評価が許す限り、ゲームプレイと世界を拡張していければと思っています。

  • あなたに伝えたい「物語」がある
  • あなたに届けたい「冒険」がある
  • あなたに感じてほしい「世界」がある

Kickstarter用に作った動画冒頭のこの台詞は、私が『Elin』開発にこめる思いのすべてです。『Elona』や『Elin』のような長編ゲームは、プレイヤー自身のその時期の心情やリアル事情が、ゲーム体験と深く結びついて記憶に残ることがあります。誰かの心の片隅で、イルヴァという世界がほっこり生き続ければ、製作者冥利に尽きます。万人に卒なく受け入れられるよりも、少数に深く刺さるゲーム、特別だと感じてもらえるゲームを作りたいと、いつも思いながら開発しています。

──システムや遊びの面での、『Elona』との違いを教えて下さい。

noa氏:
グラフィック的には『Elona』の見下ろし型からクォータービューへと変わり、操作方法もキーボードからマウス主体になったことが大きな変更点ですが、ゲームプレイ自体は、前作を継承しつつ拡張・強化する形となっています。

『Elona』プレイヤーの皆さんには 、視覚的な視点の変化だけでなく、『Elona』で慣れ親しんだゲームプレイや世界観もまた、別の角度から楽しんで頂きたいというのがあって、例えばアイテムを実際に手で持って使ったり投げられるようにしたり、ストーリーでは前作に登場した「悪役」に焦点を当てたりと、新しい発見ができるようなアプローチを各所に散りばめています。


──以下は、読者からの質問に対する一問一答となる。

妹、核爆弾、神、緑髪のエレアなどに関する質問

・妹はいますか。また妹と結婚できますか。

noa氏:
妹はもちろんいます。結婚も、早期アクセス以降に導入を予定しています。

・核爆弾は登場しますか。

noa氏:
こちらも早期アクセス以降に登場を予定しています。

・『Elona』では、核爆弾を利用してロミアスが討伐されていました。今作でも近いゲームプレイは可能ですか。また『Elona』制作当時、核爆弾を利用したロミアスをプレイヤーの行動を想定していましたか。

noa氏:
はい、今作でもさまざまな手段が用意され、種族によっては気持ちいいことで殺すこともできます。核爆弾でのロミアス殺害については、予想はしたものの、メジャーな手段になるとは思っていませんでした。

・爆弾魔ノエルに連なるキャラクターはいますか。

noa氏:
彼女は身寄りがなく、『Elin』の時点では生まれていないため、今のところ関連するNPCは存在しません。今後、ノエルを連想させるようなキャラが登場する可能性はあります。

・今作に神はいますか。

noa氏:
もちろん存在します!

・信仰要素はありますか。また信仰関連の追加要素はありますか。

noa氏:
信仰要素は『Elona』からアップグレードして導入されています。たとえば、ファクション・エンチャントという、装備していると仲間や住人全体に効果が及ぶ強力なエンチャントが、神々の恩恵装備に追加されています。

・『Elona』に登場していたユニークNPCなどは登場しますか。ロミアス、ラーネイレの登場予定はありますか。

noa氏:
三十年前にお年頃だったユニークNPC、つまり『Elona』時代のおじさん・おばさん勢はだいたい登場します。ロミアス、ラーネイレについては、登場させる予定はなかったのですが、バッカー・ウィッシュ(クラファンの特典)で願われているため登場します。

・チュートリアルから登場するエイシュランドは緑髪ですか。

noa氏:
エイシュランドは栗色の髪をしています。

・今作も人肉を食べさせられますか。また(人肉を)好きになってしまいますか。

noa氏:
もちろんです!

・Noaさんから見て、『Elin』のチュートリアルNPCと『Elona』のロミアスは、どちらの性格が悪いですか。

noa氏:
ロミアスも悪気があってやっているわけではなく、親切心と照れ隠しと悪戯心が混ざりあって、ああなってしまいました。ただ、どちらかと問われれば、やはりロミアスでしょうか。


ゲームプレイや願いなどに関する質問

・宴会の盛り上げクエストなど、戦闘以外の楽しみ方はありますか。

noa氏:
生活要素や拠点運営、ハウジング、クラフトなど、プレイヤーによっていろいろな楽しみ方があると思います。ランダムな依頼に関しては、料理コンテストのようなユニークなものを、これからもどんどん追加していきたいと思っています。

・吟遊詩人プレイはできますか。『Elona』では楽器を担いで吟遊詩人として遊んでいると、やたら巨大なおひねりが投げ込まれてくるのがとても好きでした。

noa氏:
演奏は、和太鼓からハープシコードまで、現在16種類ある楽器ごとに異なる曲が演奏できたり、練習しないと途中でダイナミックに間違えたり、『Elin』でもかなり力を入れています。ぜひお気に入りの楽器を見つけてみてください。

・願いのイベントはありますか。

noa氏:
願いのシステムは導入されています。また、願いに関連するクエストもあります。

・ムーンゲートはありますか。前作のムーンゲートは、ランダムな世界に行ける楽しさや、人によってまったく新しい世界観が構成された物語があるなど、あの世界に生きている感じがとても楽しかったです。

noa氏:
ムーンゲートはもちろん存在します!

・エーテル病のような要素はありますか。前作ではエーテル病がゲームプレイにメリハリを生みながら、症状によってはメリットも得られるユニークなシステムでした。

noa氏:
エーテル病はほぼ『Elona』と同じものが既に導入されています。今後さらに調整予定です。

・『Elin』の時点でリリィはすでに誕生しています。『Elin』ではリリィなどのNPCが、イベントでエーテル病に発症したり、エーテル病が進行したり、治療したりすることありますか。

noa氏:
エーテル病クエストは導入したいと思っており、エーテル病候補の人もすでにいるのですが、その人がちょっと微妙な感じなので、違う人になるかもしれません。

・『Elona』とのつながりを伺わせてください。

noa氏:
『Elona』のおよそ三十年前が『Elin』の舞台となります。もちろん単体でも楽しめるストーリーにしたいと思っていますが、すべては『Elona』の世界に繋がっているため、『Elona』を知っているとより楽しめると思います。

・『Elin』のストーリーに、プレイヤーはどの程度深く関わるのでしょうか。『Elona』のストーリーは、プレイヤーとあまり関係のないところで話が進んでしまう印象がありました。

noa氏:
『Elin』にはホーム系列のストーリーとメインクエスト系列のストーリーがあり、後者は『Elona』と同じように、プレイヤーが裏方的な働きをする感じで進行します。ホーム系列のストーリーでは、プレイヤーが密接に物語に関与します。

・本作は、『Elona』よりも過去が舞台となっていますが、『Elona』で使えなかった電子製品が使えます。本作では、なぜ電子製品が使えるのでしょうか。

noa氏:
設定的には、『Elona』でも電子製品は使えたが、その描写がなかっただけ、ということになると思います。技術や文明の水準は、『Elona』の時代も『Elin』の時代も、ほとんど変わりません。

・『Elona』では出来たことで、『Elin』では出来なくなったことはありますか?

noa氏:
今後導入予定のものも含めれば、特にないはずだと思います。

・『Elona』にあったような、ゆるいオンライン要素はありますか。

noa氏:
他のプレイヤーの遺言や願い、投票などをパルミア・タイムスで見ることができます。また、ムーンゲートを使い、他のプレイヤーが作成したマップを訪れることができます。

・『Elona』のヴァリアント作品から導入した便利機能などはありますか

noa氏:
ヴァリアントについては未プレイのため、特定の作品を参考にして導入した機能はありません。

・画像差し替え機能など、公式のMod機能はありますか。

noa氏:
画像差し替えなど、幾つかの機能はゲーム本体で対応しています。カスタムNPCなどは、Elinリリース後のプレイヤー製作Modの動向を見ながら検討したいと思っています。

・本作には、『Elona』における「Wizard mode」のようなシステムはありますか。

noa氏:
デバッグ・コンソールが組み込まれており、多種にわたるデバッグ・コマンドを実行することができます。また、開発モードでゲームを起動することもできます。

・作品中にハードコードはありますか、またどの程度ありますか。

noa氏:
スクリプトに関しては、会話スクリプト以外はハードコードされています。組み込み言語は使用しておらず、Modの製作ではハードコードされた関数をC#でフックする形となります。



『Elin』の今後に関する質問や要望

・今作では、新しい妹が増えて嬉しいです。更なる妹の追加予定はありますか。また彼女達について、どのように着想を得ているのでしょうか。

noa氏:
妹は概念というかファンタジー的な存在というか、ロマンだと思います。いろいろな妹の形が発見されるたびに、おそらくこれからも増えていくでしょう。

・『Elin』のゲーム内で読める「パルミア・タイムス」の記事が好きです。過去記事の読み返し機能の実装予定はありますか?

noa氏:
新聞のバックナンバーを読めるようにしたいと思っています。

・『Elin』で新規登場した神々の抱き枕は実装されますか。

noa氏:
抱き枕などは、主に主神と呼ばれる七柱の神々のみ実装する方針です。

・ゲームの種類や景品など、カジノの拡張予定はありますか。

noa氏:
景品は随時追加を予定しています。ミニゲームの追加は、現在は予定はありません。面白そうなアイデアが浮かんだり、開発に余裕が出てくれば、追加の可能性はあります。

・たとえばなめくじ浮浪者など、かたつむり観光客より弱い存在の実装予定はありますか。

noa氏:
かたつむり観光客は常に最弱の存在です。

・早期アクセス配信開始までのロードマップを聞かせてください。

noa氏:
序盤のゲームプレイのブラッシュアップが主な内容となります。8月の開発便りに掲載する予定ですので、詳しくはそちらをご覧ください。

・Modやヴァリアントへの対応予定はありますか。

noa氏:
Modには既に対応しており、今後も調整予定です。ヴァリアントのような本体を丸ごと改造するものは、ゲームに使われているアセットの権利関係もあるため、今作では難しいかもしれません。

・早期アクセス配信開始後、最終的にどのぐらいの規模の作品を目指していますか。またマップやコンテンツなど、どういったその内容を簡単に説明していただきたいです。

noa氏:
特にこれぐらいといった目標はありませんが、ティリス以外の大陸やリュン(イルヴァの月)まで、できれば進出してみたいという願望はあります。また、拠点システムを利用した防衛戦や戦争も楽しそうだなと思っています。

・DLCのリリース予定はありますか。数や頻度、方向性などについても教えてください。

noa氏:
ゲームプレイに関わるDLCは無料でリリース、もしくは大型アップデートに含める予定です。有料DLCとしては、ゲーム内のアイテムのスキンを変更するものなどを考えています。

・Nintendo Switch版のリリース予定はありますか。

noa氏:
今のところはWindows以外でのリリースは予定していません。

・クラウドファンディングの再実施予定はありますか。

noa氏:
クラファンはもうないと思います。

・パコパコ時代の超α版『Elin』の配布予定はありますか!!!!!!作りかけでも良いので只々パコパコしたいです!!足音が可愛い!!!!

noa氏:
公開の可能性はあります。ただ、パコパコ時代の『Elin』は公開を前提としていないバージョンなので、いろいろと使用アセットのチェックが必要かもしれません。



Noa氏への質問

・視点にクォータービューを採用した理由はなんでしょうか。

noa氏:
『Elin』はゲームエンジンの大部分を「Elin宿」という前身作から継承しています。「Elin宿」ではマイクラのような立体構造のマップを採用しており、高さを視覚的にわかりやすく表現する必要があった、というのが一番の理由です。

・同じ個人開発者として、ゲーム開発のモチベーション維持方法を伺わせてください。

noa氏:
これは、個人開発者にとって永遠の問題ですね(笑)とても書ききれませんが、私の場合は、モチベが低い時は無理に開発せず、ゲームをしたり動画を見ながら、モチベの方が舞い戻ってくるのをひたすら待っています。

・『Elona』から『Elin』までの間に触れて、インスピレーションを受けた作品があれば伺わせてください。ゲームでもそれ以外でも構いません。

noa氏:
これも多すぎて書ききれません!ゲームでは『No Man’s Sky』、音楽ではLo-Fiの『ファイナルファンタジー』やJRPGの名曲の数々、小説ではロビン・ホブの「エルダリングシリーズ」などなど。ファンタジー長編ものは大好きで、多くの作品から影響を受けています。

・開発をしてきた中で遭遇した一番面白いバグについて、聞かせてください。

noa氏:
アルパカとラマのグラフィックがいつの間にか入れ替わっていて、二年間誰もそのことに気づかなかったのが、個人的には一番面白かったです。

・Kickstarterを使用してみた感想を伺わせてください。

noa氏:
Kickstarterはシステムがシンプルで使いやすかったと思います。ただ、物理特典の選択を複雑にしてしまったため、配送関係では地獄を見ました。

・たらばがに!

noa氏:
うみみゃあ!

──ありがとうございました。

『Elin』はPC(Steam)向けに、11月1日早期アクセス配信開始予定だ。