『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』開発者合同インタビュー。カプコン史上初めての“アクション×ストラテジー”作にかける、本気のこだわりを訊いた

 

カプコンは7月19日、『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』を発売予定だ。対応プラットフォームはPC(Steam/Windows)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S。Xbox Game Passにも提供予定である。価格は税込4990円。

『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』は、カプコンが手がける完全新規タイトルだ。ジャンルを「神楽戦略活劇」と銘打っており、主人公「宗」を操作して「畏哭」と呼ばれる妖怪を倒すアクション要素と、村人を配置して巫女の「世代」を守るタワーディフェンス風のストラテジー要素が、リアルタイムで同時進行するゲームプレイが特徴だ。


発売に先駆けて、本作のプロデューサーである平林良章氏と、ディレクターの川田脩壱氏に、複数メディア合同のインタビューが行われた。本稿ではその模様をお届けする。

なお弊誌では、発売前にゲーム本編の一部を先行してプレイする機会をいただいた (弊誌先行プレイ記事)。こちらもあわせてチェックすると、本作についてより深く理解できるだろう。


──まず初めに、『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』ではどのようなゲーム体験ができるのでしょうか。

平林良章(以下、平林)氏:

本作では爽快なアクションの楽しさと、リアルタイムに変わる戦況に、自分なりの戦略をもって立ち向かうストラテジーの達成感をあわせもったゲーム体験をしていただけます。 世界観としても、和のテイストを中心に独創的な世界を作り上げました。


──既存のカプコンタイトルにたとえるのであれば、どの作品に近いのでしょう。

平林氏:

本作は新規IPとしてまったく新しいゲーム体験を目指して開発していますので、ほかのどのタイトルにもたとえられない作品になっています。


──新しいゲーム体験を目指すうえで、なぜタワーディフェンス風のストラテジーを選ばれたのでしょうか。

川田脩壱(以下、川田)氏:

本作を作るに至った理由として、自分自身がもともと日本文化や民間伝承が好きだったのがスタート地点になっています。日本文化をゲーム的に落とし込んでいくにはどうすればいいかと考えたときに、夜になると妖怪が出てきて、それに対して神様のような存在を守りながら戦うスタイルのゲームが面白いんじゃないかと思いました。私自身がタワーディフェンス要素やストラテジー要素があるゲームが好きなこともあり、ストラテジー要素として表現することにしました。

ただ、タワーディフェンスゲームが好きな故に、既存のタワーディフェンスゲームの問題点も感じていて、本作の開発でも課題として意識していました。たとえばゲームの途中で早々に負けが見えてきてしまい冷めてしまったり、やりなおすたびに結構前に戻されたりといったもどかしい部分をどうするかを考えていましたね。

そこで、采配をしつつも、最後の一手をアクションでクリアできる、途中から結果に関与できる要素を用意すれば、最後まで諦めずにプレイできると考えました。諦めないで乗り越えたからこそ、クリアの達成感やドラマが生まれるのではないかと考え、アクションとストラテジーが融合した現在の形になりました。

平林氏:
本作はタワーディフェンスの戦略性と、アクションゲームの自己完結型の達成感のふたつをあわせもった、体験としてはまったく新しいゲームだと考えています。

タワーディフェンス風のリアルタイムストラテジーは、コンシューマー向けには少ないですが、ゲーム業界全体では今も多数のゲームがリリースされています。リアルタイムストラテジーは決してニッチなジャンルではないと思っており、マルチプラットフォームの市場をグローバルな視点で見たときにニーズが大きいことも、このジャンルに挑戦した一因ですね。


──プレイヤーが操作する主人公の「宗」は積極的に戦闘に割り込める本作ですが、仲間に存在感をもたせるためにストラテジーとアクションのバランスで気をつけた点を教えてください。


川田氏:
おっしゃる通りストラテジーとアクションのバランス調整は難しかったです。たとえば宗の強さの数値を「1から1.2」にするだけで、途端にゲームが簡単になるといった問題が起こりました。かといって弱くすると、攻撃の意味が薄れてしまいます。

一方で、宗を動かす気持ちよさ・爽快感は、ある程度手触りとして答えを出しやすい部分になっていました。爽快感のある宗の強さをベースにしたうえで、ほかのNPCたちの役割をどういう配分するのかを考えて、さらにそこからどういう敵が、どういう配置で来るのか。敵の速度感や数のバランスを整えて、長い時間をかけて調整しました。最終的には、村人と一緒に戦って、達成した感覚を得られるように落とし込めています。


──仲間を個性のあるキャラクターではなく、一般的な村人に設定した理由はなんでしょうか。

川田氏:

普通の村人にした理由は、プレイヤーが「最初は信用できない」ところにあります。配置してうまく活躍させたときに、思ったより頼りがいがあるなと感じたり、一緒に戦っている感覚が生じて、「協力してくれた」という気持ちに繋がります。

その共闘感が、このゲームの醍醐味のひとつです。自分だけではなくみんなでクリアしていく気持ちを大事にしているので、もし“分かりやすいキャラクター”を出しちゃうと、持ち味とはズレてしまいます。

村人の名前も、あえて個性のない一般的な名前にしています。ただ、戦績の良い村人は、プレイヤーが自然と愛着やキャラクター性を感じられるとも思います。たとえば「又兵衛すげぇや」みたいに思ってもらえたり(笑)また村人たちにも設定があり、それが垣間見えるミニテキストも用意しています。これを読んでいくと、山中の村の関係性がわかったりします。


──前の村で助けた村人たちを引き継ぐ要素はあるのでしょうか。

川田氏:
宗が出向いて行って各村を助けるお話なので、村人は都度、その場所で助けてあげる形になります。そのため村人を引き継いでどうこうする要素はありません。引き継げるのは妖怪を倒した後に得られる結晶と、職業を司る「面」だけです。同じ村でミッションをもう1回プレイする場合は、一度助けた村人は、助けた状態からスタートします。


──各ステージ、何人ぐらい村人が登場するのでしょうか。

川田氏:

もっとも複雑なステージだと、最大で12人ほど登場します。全員使わなければクリアできないわけではないので、そういう部分での駆け引きというか、ユーザーによるプレイの幅を楽しめるような配分にはなっています。

平林氏:
複雑なステージは、職業をどうするか、どう配置するかなど、やりがいがあると思います。


──敵のデザインで特に見てほしいポイントはありますか。

川田氏:
敵の名前は既存の妖怪がモチーフですが、一般的なイメージとはかなり違うと思うので、そこを楽しんでもらいたいです。敵の行動もさまざまで、その敵の厄介な行動と目新しいデザインから、本作のプレイを通して新しい妖怪像を確立してもらえたら嬉しいですね。


──ストーリーの注目ポイントはどこですか。

平林氏:

本作はストーリードリブンではなく、比較的ゲーム体験をメインに楽しんでもらうゲームとなっています。山が穢れに覆われて危険に晒されてしまい、それを解決するためのキーパーソンとして巫女の「世代」がいて、世代を守る護人としてプレイヤーの「宗」がいる。この2人にどのようなドラマがあるかはナラティブな形で表現をさせていただくんですけれども、そこから違うNPCが出てきて、突然まったく違う話に展開したりはしません。

本作は意図的に言葉を減らして、ダイアログがほぼない状態で作っています。言葉で説明するようなところをあえてシンプルにして、クリア時に受け取り手側のプレイヤーそれぞれの読後感をもっていただける作りにしています。

ただ、これはムービーパートやカットシーンに対しての考え方で、拠点の中にある絵馬とか、あとあと手に入る絵巻など、世界観を深める要素も多数散りばめています。ちょっとずつ読み解きながら自分なりに解釈して、人それぞれの楽しみ方をしていただけるように工夫しています。


──本作は希望小売価格が税込4990円と、最近のゲームでいえばミドルプライスと言われる価格帯ですが、ゲームボリュームはどの程度あるのでしょうか。

平林氏:

ゲームのボリュームについては、普通にプレイしてストーリーをクリアするだけでも、20時間は下回らないと思います。もちろん、クリア後もミッションの達成項目へのチャレンジなどやりこめる部分もありますので、ボリュームとしてはフルプライスと言われるコンテンツに比べて遜色はないかなと思います。

ではなぜこの価格帯かというと、本作はカプコンとして新しいチャレンジになるので、ひとりでも多くの方に本作を手に取っていただきたいという狙いがあります。マルチプラットフォーム展開や、Xbox Game Passでの提供とあわせて、少しでも手に取りやすい価格にすることで多くの方に本作を試してほしいと思っています。


──発売後のDLC展開について、現時点で計画はありますか。

平林氏:

本作はDLCのような形でコンテンツを継ぎ足すことは考えていません。本編を楽しんでいただくというのが、現状我々が予定しているすべてですね。


──本作はSteam DeckやXbox Cloud Gaming (Xboxのストリーミングプレイ機能)でも遊べるのでしょうか。

川田氏:
対応しています。Steam Deck や、ストリーミング機能を使ってAndroidのスマートフォンなどでも問題なく遊べますし、そちらのデバッグももちろんやっています。


──本作のゲームエンジンである「RE ENGINE」ならではの持ち味が発揮された部分は、開発においてありましたか。

平林氏:
ミニチュアやキャラクターに用いるフォトグラメトリー技術のほか、表現の部分においていろいろなツールを使っていまして、ビジュアル的な品質の部分で持ち味が生かされたと思います。

ただそれ以上に、カプコンの各タイトルでの知見やノウハウを横断的に次のタイトルで活かせるのが「RE ENGINE」の良さで、このタイトルにおいても非常にプラスになりました。『ドラゴンズドグマ 2』や『バイオハザード』シリーズの制作ノウハウが『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』のチームにも反映できています。開発において時間短縮できた部分を、トライアルアンドエラーや調整に使えました。比較的コンパクトな制作チームでしたが、ビジュアル品質を確保しつつ、効果的に開発を進められたと思います。


──老舗和菓子店「京菓匠 鶴屋吉信」とのコラボで、ゲーム内に「鶴屋吉信」の御菓子が登場するそうですね。どういった経緯でコラボすることになったのでしょうか。

川田氏:
まず第一に、僕めっちゃ和菓子が好きなんです(笑)また世界観として、徹底して和風でやっていきたいところもありました。世代を喜ばせる要素として、見た目が華やかで面白みも出せるものとして、和菓子を用意するアイデアを平林さんに持ちかけたら、和菓子好きとして共鳴しまして(笑)

平林氏:
せっかくやるんだったらとことんやろうじゃないかという気持ちになりまして、和菓子にこだわりのある「京菓匠 鶴屋吉信」さんにお声がけさせていただきました。すると快諾いただけたので、これはもう頑張らないかんなと。

川田氏:
「京菓匠 鶴屋吉信」さんには御菓子のサイズ感に至るまで、しっかり監修していただきました。和菓子の説明とかもすごくきっちりと書いてもらえていて、日本人のプレイヤーが読んでも興味深いものになっていると思います。

平林氏:
これはちょっとした裏話なんですけれども、和菓子というのは、やっぱり賞味期限というか、きれいな形、きれいな見た目で保つ時間が限られているんです。フォトスキャンしてゲーム内に登場させるわけですけれども、撮影する和菓子を京都まで、僕ともうひとりのプロデューサーで取りに行って、その日に作られた和菓子を絶対に揺らさず壊さず大阪まで持ち帰り、当日中にフォトスキャンをしました。いろいろ大変でした(笑)

川田氏:
撮影用の照明の影響で結構暑くて撮影が長引くと質感が変わってしまうので、速度も重要でしたね(笑)

──なるほど(笑)撮影後の御菓子はどうしたんですか。

平林氏:
もちろん美味しくいただきました!


──最後に、本作のアピールポイントを教えていただけますでしょうか。

川田氏:

やっぱり、アクションとストラテジーをカプコンとしてどんなふうに融合させたかが一番の見どころです。もうひとつのポイントとして、本作では人々の暮らしにもフォーカスしているので、人々と共に厄を払っていく、そういう一体感と、みんなで乗り越えていく達成感を体験していただきたいです。

平林氏:
アクションとストラテジー、大きく2つの軸で楽しめるゲームですが、そのどちらのアプローチでも先に進む達成感を感じられる作りになっています。カプコンの新しいチャレンジになる本作をぜひ試してみていただけると嬉しいです。

──ありがとうございました。

祇(くにつがみ):Path of the Goddess』は、7月19日にPC(Steam/Windows)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売予定。Xbox Game Passにも提供予定である。