ロボ工作サンドボックス『オモチム』は「首をぶん投げてゴール」でも正解、自由度が振り切ってる。開発者が目指すのは“本気で遊べる”プログラミング工作

『ʘmʘchim(オモチム)』が目指している入口はあくまでゲームだという。まず遊びに夢中になり、そこで覚えたことが現実のロボットにもつながっていく。

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アソビズムが開発中の『ʘmʘchim(オモチム)』は、ロボットを組み立て、改造し、プログラミングで動かすこともできるサンドボックスゲームだ。パーツや文房具を組み合わせた機体で課題に挑むだけでなく、自分でステージを作って配信することもできる。さらに、ゲームと同じアプリで動かせる実物のロボットも開発が進められている。

ロボット工作やプログラミングと聞くと、少し難しそうに感じるかもしれない。しかし、本作が目指している入口はあくまでゲームだという。まず遊びに夢中になり、そこで覚えたことが現実のロボットにもつながっていく。おもちゃの開発から始まった本作には、アソビズムがゲーム開発と教育事業の両方で培ってきた経験が活かされている。

今回弊誌は、東京ゲームショウ2026の会場にて本作を試遊しながら(弊誌試遊プレイ感想)、アソビズム代表で『オモチム』のディレクターを務める大手智之氏に話をうかがった。ゲームと実物をつなぐ仕組みから、子どもたちが見つけた意外な攻略法、ステージ制作や対戦の遊びまで、その狙いを訊いた。


「お勉強」ではなく、ゲームを入口に

──まず、『オモチム』がどのようなゲームなのか教えてください。

大手智之氏(以下、大手氏):
プログラミングができるサンドボックスゲームです。ロボットを組み立てて、そのあと自分でプログラムして動かすことができます。

ステージも作れるので、今日遊んでいただいているステージは、全部『オモチム』で作ったものなんですよ。ユーザーの皆さんも同じようなステージを作って、配信できます。イメージとしては、小学生でも触れるUnityのようなものですね。

──会場には実物のロボットもありますが、ゲームとはどのようにつながっているのでしょうか。

大手氏:
ゲームと実機で、まったく同じアプリを使っています。実機の方では、プログラムを組んでロボットを動かせます。

仕組みはScratch(編注:教育用のビジュアルプログラミング言語)と同じように、命令のブロックをくっつけて、順番に実行していくものです。たとえば「前に20cm進む」「後ろに20cm進む」と並べて実行すると、そのとおりに前へ進んで戻ってきます。

実機にはカメラだけでなく、距離センサーや赤外線センサーもあり、壁までどれくらい離れているかがわかります。ジャイロセンサーで向きもわかりますし、サーボモーターを使ってアームを動かすこともできます。

これを通じて、プログラミングやロボット工作に興味を持ってくれる子が増えたらいいなと思っています。ただ、教育系のアプリケーションは「あ、お勉強のやつでしょ」と思われると、やらなくなってしまうじゃないですか。

僕らは入口をゲームにしたいんです。まずSteamでゲームとして楽しんでもらって、実はゲームでやったことが、こういう実物でも活かせますよ、という仕組みになっています。

──最初はおもちゃの開発から始まったとうかがいました。ゲームにしたことで、どのような面白さや利点が生まれましたか。

大手氏:
実物には実物の面白さがあって、皆さんも「リアルっていいね、新鮮だね」とおっしゃってくださいます。でも、僕らはずっと実物を扱ってきたなかで、難しい部分も感じていました。実物ではゲーム的な調整ができないので、扱いが難しすぎることがあるんです。

子どもたちには、難しいところをできるだけやわらげて、徐々にのめり込んでいってほしい。そのためにはゲームの方が向いています。たとえば、音が鳴ってキャラクターが踊るといった演出に引き込まれて、「じゃあ次に行ってみよう」となる。そうやって遊びに引き込むことは、ゲームの方が圧倒的にやりやすいですね。

──ゲーム内の物理挙動でも、現実らしさと遊びやすさのバランスは調整しているのでしょうか。

大手氏:
しています。リアルを追求すると、気持ちよくないこともあるんですよ。

たとえばゲームで、車で重い物を運びたいとします。でも現実どおりにすると、少し何かを付けただけでもう動けなくなってしまったりする。そこは動力のパワーや摩擦の力を少し上げるなど、微調整しています。ただ、基本的にはできるだけリアルにしようと考えています。

──ゲームと教育の両面を意識して開発されているのですね。

大手氏:
そうですね。半々という観点です。僕らはプログラミングスクールもやっているので、そのノウハウをゲームに活かしたいと思っています。

ゲームにはすごく可能性があって、もっと日常的な場面で使えるところがあると思うんです。そのひとつが、学校のプログラミングの授業を面白くすることです。みんなが家で遊んでいる『スプラトゥーン』のようなゲームを、授業でも使えたら面白そうじゃないですか。そういう状況を作りたいと思っています。

ゲームメーカーで教育事業部を持っているところは、なかなかないと思うんですね。僕らは15年間、教育事業部で子どもたちにプログラミングを教えたり、イベントとしてキャンプや映画を撮る「映画塾」をやったりしてきました。子どもたちに何をどう伝えれば響くのか、そのノウハウがあります。それと、20年間ゲームを作ってきた経験を合わせて開発しています。


段差を登る代わりに、首をゴールへ飛ばす

──試遊では、物を配置して道を作り、次にロボットを改造するという順番で遊びを覚えられました。遊び方は段階的に広がっていくのでしょうか。

大手氏:
まずは「発明ドック」で、物を動かして階段を作るような遊び方が一番初歩の段階です。次に「改造ドック」でオモチムを改造して、さらに上級者は自分でステージを作る、という段階になっています。

おそらく、多くのユーザーは改造ドックで遊ぶことになると思います。答えが見つかれば簡単にクリアできるのですが、「どうやって改造しようかな」と考えるところを楽しんでもらうゲームですね。こちらからもステージをどんどん配信していこうと考えています。

──改造には、どのようなパーツを使えるのでしょうか。

大手氏:
試遊で使っていただいたモーターやジョイントのほかにも、曲げる動きを作るヒンジや油圧シリンダー、磁石などがあります。ライトを付けたり、音を鳴らしたり、ペンキを塗ったりもできます。

たとえば、回転する歯車にいろいろな棒を付けて、「マッドマックス」みたいに物を吹き飛ばすものも作れます。タイヤを大きなものに付け替えて、足回りを変えることもできますね。

「ペイントモード」では、タイヤなどに自由に絵を描けます。ステージにも描けますし、ペイント銃を付ければ、どんどんペンキを塗っていけます。逆に、水を出す高圧銃を使えばペンキを落とせるので、汚れているところをきれいにするような遊びもできます。

──細かく改造しようとすると、3DCGソフトのような操作も使うのですね。子どもたちは、すぐに慣れるのでしょうか。

大手氏:
Blenderなどの3Dツールに近いところもありますが、子どもたちも学校で教えると、すぐに覚えて使っていきますね。ずっと改造していますし、変わったクリアの仕方を考えるんですよ。

たとえば、段差を越えるステージがありました。オモチムはミニチュアで、キャラクターの大きさも5cmくらいなので、5cmの段差でもタイヤでは越えられないんです。

そこで、タイヤを大きくしたり、前にヒンジを付けて持ち上げたりと、いろいろな方法を試すわけです。でも、ある子が「このステージは、首だけゴールすればいいじゃん」と気づいたんですよ。段差を登らず、油圧シリンダーで首をビヨーンと伸ばして。

──それでもクリアできるんですね(笑)

大手氏:
もっとすごいのは、首をカタパルトで吹き飛ばしたりとか。「そこに届けばいいんだ」と気づいて、「これ、できるんじゃない?」と試しているんですね。クリアできるかどうかより、「どうクリアするか」を楽しんでくれている。それは僕らとしても、すごくうれしいです。


改造して対戦し、ステージごと作って遊ぶ

──目的を達成するために、自分なりの方法を考えることが遊びになるのですね。自分でステージを作る以外には、対戦などの遊び方もあるのでしょうか。

大手氏:
2人でローカル対戦ができます。今回のブースにも対戦台を用意しています。

たとえば『ストリートファイター』なら、リュウはリュウ、ケンはケンとキャラクターが決まっていますよね。『オモチム』では自分で改造して、「俺はプロペラを付けるぞ」「僕はガトリングを付けるぞ」といった形で対戦します。そこは遊びやすいところだと思います。

さらに上級者なら、「自分の作ったステージでみんなと対戦しよう」という遊び方もできます。

──対戦はローカルのみの対応でしょうか。

大手氏:
対戦自体はローカルですが、Steamには、ローカル対戦のゲームをネットワーク経由で一緒に遊べる機能(編注:Remote Play Together)がありますよね。それに対応したいと考えています。

──ステージ制作では、今回の試遊のような課題以外にも、いろいろな遊びを作れるのですか。

大手氏:
はい。「パークエディター」で、ホラーやアクション、それこそ『スプラトゥーン』のようにペンキを塗るゲームも作れます。クリア条件も自由に設定できます。

物理演算エンジンでは磁力や水、火などもシミュレーションしています。たとえば段ボールに火を近づけると燃え移って、どんどん燃え広がっていく、といったこともできます。

こちらでステージを作って配信し、ユーザーに遊んでもらうことと、ユーザー自身に作ってもらうこと。その2つが軸になっています。

──Steamで展開するということで、大人のプレイヤーにはどのような楽しみ方を想定していますか。

大手氏:
ステージを作ったり、作ったステージをYouTubeなどで「面白いでしょ」と配信しながら遊んだりしてもらえたらうれしいですね。

今回出ているパーツはほんの一部で、ステージの種類もいろいろあります。宇宙やホラー、昔の迷宮のようなステージなどがあり、テーマによってストーリーも変わります。

天候と時間帯も変えられるので、雨や雪のステージにもできます。日没になったり朝になったりと、時間もリアルタイムで変わっていきます。

オモチムにはライトが付いているので、真っ暗ななかをライトを照らして走る、といった遊び方もできますよ。

──最後に、本作を通じてプレイヤーに体験してほしいことを教えてください。

大手氏:
僕がゲームクリエイターになりたいと思ったきっかけは、小学校3年生のときにPC-8801でBASICのプログラミングを始めたことでした。自分で作ったゲームを友達に見せるのが、めちゃくちゃ面白かったんです。それにのめり込んだ結果、今の自分がいるという実感があります。

だから、今の子どもたちにも「物を作って、誰かに楽しんでもらう面白さ」をぜひ体験してほしいんですね。

もちろん、買ってきたゲームを楽しむのも全然いいと思います。それに加えて、自分で作った何かを、誰かに遊んでもらう楽しさも味わってほしい。自分の作ったロボットを見せて友達に笑ってもらったり、操作してもらったり。そういう楽しみ方をしてもらえたらと思います。

──ありがとうございました。

『ʘmʘchim(オモチム)』はPC(Steam)向けに2027年発売予定。

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Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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