『SNOW BROS. 2 SPECIAL』『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』は「リマスター」でも「リメイク」でもなく「リデザイン」。目コピで旧作復刻を続けるCRT GAMESに意気込みを訊いた
グラビティゲームアライズは『SNOW BROS. 2 SPECIAL』『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』を発売予定だ。『SNOW BROS. 2 SPECIAL』は1994年に発売された人気作『スノーブラザーズ2』を現代向けに再創造する作品。『はしれへべれけ』もまた近い時期である1995年に発売された、このタイミングで現代向けに再創造される。開発元は、『サイキック5エターナル』を手がけたCRT GAMESだ。同作はリマスターともいえるしリメイクともいえる、巧みな再創造タイトルであっただけに、今回の2作品もどのように蘇るか気になるところ。ということで、CRT GAMESに話を聞いてきた。
──はじめに、自己紹介をお願いいたします。
イム・ソンギル氏(以下イム氏):
CRT GAMESの代表を務めるイム・ソンギルと申します、よろしくお願いします。韓国のゲーム業界で22年間ほど活動しており、主にアートディレクターやプロデューサー業務を担当しています。
真ん中がイム氏
──今回、CRT GAMESとしては『サイキック5エターナル』に続いて、あらたに日本のタイトル2本を復刻させるとうかがっています。開発においての意気込みや、心境などを教えてください。
イム氏:
CRT GAMESが手がける日本のゲームタイトル復刻は、今回発表している2作を含めると合計4作となります。これまでの開発を通して、日本のレトロゲームIPに対するユーザーのニーズを吸収して、それに応えるノウハウは積み上がってきていると考えています。ユーザーがどういったものを求めているかの理解は以前よりも深まっていると自負しています。今回の『SNOW BROS. 2 SPECIAL』と『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』ではそうして培ってきたノウハウを生かして、ユーザーが期待する面白さを追求して開発していきたいと思っています 。
──その培ったノウハウは、新作ゲームのなかではどんなかたちで組み込まれていますか。
イム氏:
『サイキック5エターナル』の例にすると、シングルプレイ専用だった原作を2人同時プレイで楽しめるようにした点ですね。こういったレトロゲームを複数人で一緒にプレイしたい、と言う要望はユーザーさんからもかなり寄せられていたので、それを組み込んで実現しました 。
また、原作でのプレイアブルキャラは限られていたんですが、開発の過程で主人公だけではなく雑魚敵でなど、新しいキャラクターを追加していった点も同様です。原作の中で面白かった部分に新しい要素を加えつつ拡張していく、と言うのもユーザーのニーズに沿って取り組んでいます。現在開発中の2作品でも、こういったノウハウを盛り込んでいきたいと考えています。
──今回の『SNOW BROS. 2 SPECIAL』と『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』のリメイクについては、どういう経緯で開発が始まったのでしょうか。
イム氏:
『SNOW BROS. 2 SPECIAL』については、前作である『SNOW BROS. SPECIAL』がグローバルである程度の実績を残したので、自然な流れで続編のリメイクにも着手していきました。『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』はもともと私が好きな作品でもあったのですが、今回グラビティゲームアライズと契約を結ぶにあたって、先方からも同作やIP(へべれけ)に対するおススメをいただきましたので、今回開発するはこびとなりました。
パク・ヒョンジュン氏(以下、パク氏):
ここからはグラビティゲームアライズ側からも説明させてください。もう少し補足させていただくと、私自身もゲーム業界にいて、イムとは既に15年程前から共同で仕事をしていました。当時からPCでのマルチプレイが普及していたのもあり、「古いタイトルをオンライン向けに開発しよう」という話があったのですが、開発途中で諸事情により立ち消えになってしまったんです。最近、彼ら(イム氏ら)が『SNOW BROS. SPECIAL』を開発していることを耳にしていたので、続編の『SNOW BROS. 2 SPECIAL』の開発とグラビティゲームアライズへのオファーをすすめた結果、グローバルパブリッシング契約を結ぶことができ、今回の開発へと繋がりました。
もうひとつの『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』に関しては、去年BitSummitに出展した際、弊社のお隣に『へべれけ』のライセンスをもつ SUNSOFTさんのブースがあり、そこに私の知人もいたんです。そこで『SNOW BROS. 2 SPECIAL』のパブリッシングが決まったことと一緒に、SUNSOFTさんの『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』についても今後の候補に考えている旨を、ちょっとお話させてもらう機会がありました。僕自身も、同作はすごく好きなタイトルでしたので。その後、実際にオファーしてお話をうかがった際には、先方からも「是非やりたい」との返事をいただき、今回開発する流れになりました。
──そんな背景があったんですね。既に配信されている『サイキック5エターナル』では、いろいろな新要素が追加されていて、復刻と言うよりリメイクに近いように感じました。今回の2作品の新要素としては、どのようなものが追加されていますか。なにかユーザーが驚くようなものはありますか。
イム氏:
『SNOW BROS. 2 SPECIAL』では「モンスターチャレンジ」という新モードを追加予定で、このモードは敵として登場するモンスター達を、プレイヤーが操作してプレイできるモードになっています。モンスター個別のスキルのほか、通常とはちょっと違った専用のエンディングなども用意しています。一方『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』に関しては敵として登場するキャラクターはいません。今はまだお伝えできないのですが、既存のキャラクターのほかにびっくりしてもらえるような、新しいプレイアブルキャラクターを準備しようと思っています。やはり、前作『SNOW BROS. SPECIAL』でうまくいったポイントは、今回の2作品でも仕様として仕込んでいきたいですね。
──ありがとうございます。弊誌で『サイキック5エターナル』についてインタビューさせていただいた際に、「目コピ」で移植されたという衝撃的なお話(関連記事)がありましたが、今回は流石にしていないですよね……?
イム氏:
……実は今回も「目コピ」で開発をおこなっています。『SNOW BROS. 2 SPECIAL』も『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』も、どちらのタイトルでも目コピで作業をおこないます。
──す、すごい。
イム氏:
ただ、目コピでのリメイクなので原作を100%そのまま表現するのは難しく、『SNOW BROS. SPECIAL』と『サイキック5エターナル』を開発した当時には、ユーザーさんの意見の中にあまり肯定的でないものもございました。ですので、今回の2作品ではリメイク版の中に原作版も移植も含めることにいたしました。そうすることで、原作ファンの方々も新しいプラットフォームで原作版をプレイできますし、CRT GAMESがリスペクトをこめて、原作を継承しつつ追加要素や調整をくわえたリメイク版のほうも、同時に楽しんでもらえると考えています。
──CRT GAMESさんによるタイトルの復刻は、シンプルなリマスターでもなければ単なる移植でもありませんし、かといってリメイクでもないし、なんと表現するか難しいです。皆さんとしては何と呼ばれたいですか?
イム氏:
開発内容の表現に関しては、CRT GAMES社内でも悩ましいところではありました。やはり、リマスターではありませんし移植でもありませんので、メディアの方からはリメイクと表現されることが多いですね。ただ、自分たちが新しいゲームデザインも色々と盛り込んでいるという点から、社内では「リデザイン」という風に読んでいます。
──「リデザイン」……たしかに、非常にしっくりときました。ゲームシステムもアートスタイルも、リスペクトを込めてデザインされている、ということですね。
ちなみに、今回はグラビティゲームアライズと一緒に開発を進めるにあたって、どんなサポートを受けていますか。
イム氏:
やはりパブリッシング契約ということで、開発費に対してはもちろんサポートをいただいています。ほかの側面で一番手厚くサポートしてもらっているのは、『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』のIPホルダーであるSUNSOFTさんとのコミュニケーションですね。これまでは日本語が話せるキムPMが対応していた部分を、グラビティゲームアライズを通して進めていて、いろいろなサポートをうけています。
──発売楽しみにしています、ありがとうございました。
『SNOW BROS. 2 SPECIAL』『HASHIRE HEBEREKE: EX(仮題)』は現在開発中である。
[執筆:Toru Ishikawa]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]