Steam売上30万本突破サバイバルクラフト『Soulmask』はなぜヒットできたのか?開発者に「他サバイバルゲームとの違い」や「面白かった日本ユーザーからの反応」を訊いた

 

Qooland Gamesは2024年5月31日、『Soulmask』をSteamにて早期アクセス配信を開始した。同作は配信開始初日から人気爆発。セールスは早くも30万本を突破するなど、破竹の勢いを見せている。賛否両論あるものの、Steamレビューではそのポテンシャルを高く評価する声も多い。誰がどのような意図をもって開発しており、何を目指しているのか?そうしたことを訊くべくインタビューを敢行した。

――自己紹介をお願いします。

ZIMA:
ZIMAです。CampFireStudio代表で、『Soulmask』のリードプロデューサーも務めています。学生時代大好きだったゲームをより良くしたいと思っており、学校を卒業してすぐにゲーム開発者のキャリアを始めました。夢が叶ってそのゲームの制作チームに参加でき、開発に携われたことはとても嬉しかったのですが、結局思い通りに改善できずじまいでした。当時の私に経験や決定権がなかったからでしょうね。

それから何年も経ちましたが、私は当時と同じだけの情熱を持って、相変わらず大好きなゲーム制作に携わっています。そして今は皆さんや素晴らしい制作チームがいてくれているので、とても幸せです。今ある環境を大事にし、皆さんと一緒に『Soulmask』を精一杯盛り上げていきますので、よろしくお願いします!


――『Soulmask』については、Steam上で謎のリッチなサバイバルクラフトゲームが突如登場した、という印象でした。CampFire Studioはどのようなバックグラウンドがあるスタジオなのでしょうか。

ZIMA:
CampFire Studioは確かに設立されて間もない会社で、『Soulmask』が最初の作品です。しかし私たちのチームは業界のベテランで構成されており、中心メンバーは皆10年以上一緒に仕事をしてきた古い友人たちなんです。

私たちの豊富なゲーム制作経験は、PC向けの大規模な3Dオンラインゲームから始まり、これを長期にわたって続けている間にコンソールゲームやモバイルゲームも開発してきたところにあります。これらのタイトルはいずれも良い結果を出して多くのユーザーを獲得し、今も運営し続けているものもあります。これらは大規模な3Dオープンワールド作品だったので、私たちはオープンワールドの構築という点においてはそれなりにノウハウを蓄えてきていると言えます。

また、私は数年前にサンドボックスゲームに出会ったのですが、その時これこそ自分たちが作りたかったゲームなのだと気付きました。世界観の表現やゲームプレイそのものに焦点を当てた作品を作ることに長らく興味を持ってきたので、買い切り型のサンドボックスゲームはまさに私たちのようなチームにぴったりでした。

こうした経緯で準備を始め、いくつかの回り道も経て、ようやく最初のタイトルをリリースするところまでたどり着きました。私たちはこれからも信念をもってこの道を歩み続け、全精力を注ぎ込んで『Soulmask』の世界を完成させていきます。

ちなみに、私達のサバイバルゲームへの愛は本当に強いです!チーフ デザイナーのLuisは、自宅の地下室に緊急用品を準備し、50 キログラムの塩とヨウ素を箱に買いだめしました。もちろん、最終的にはこれはサバイバルゲームの開発には役に立たないことが判明し、これらの消耗品は現在に至るまで消費されていません(笑)

――(笑)

Steam早期アクセスのローンチおよび10万本突破、おめでとうございます。同時接続プレイヤー数やレビュー評価も上々に見えますが、スタジオとしてはこうした反響をどのように捉えていますか。率直な感想を教えてください。

※ なお記事掲載時点では売上は30万本を突破している


ZIMA:
数を見るだけではあまり実感は湧きませんが、10万本というのはかなり良い数字なのではないでしょうか。しかし喜んでばかりではいられません。

早期アクセスが始まるこということは、そのゲームが「別の段階」に入ったことを意味しており、そこで私はSteamの早期アクセスが持つ本当の意味を理解できました。今この段階において、我々はプレイヤーと共にゲームの改善を進めています。ほとんどのプレイヤーがゲームについて肯定的なフィードバックを寄せてくれて、中にはより強い愛情を伝えてくれる方もいました。これは開発者にとってこの上なく大切なことなので、お礼を申し上げます。

そして同じくらい重要なのが、好意的なものに限らず多くの意見を寄せてくれた方々の存在です。彼らのおかげでたくさんの問題点を見つけることができたので、全力で解決に取り組み、ゲームを盛り上げていこうと思います。

また、洞察に満ちたフィードバックもたくさん頂いたので、改めて色々考え、もう少し長い時間をかけてより良い調整を行うつもりです。私はユーザーの声を聞くのが大好きです。特にゲームの世界で多くの時間を費やしてくださった方々は、私たちがあらゆる面で注目すべき存在であり、私はこのようなゲーム開発へのアプローチを心から楽しんでいます。


――なるほど。では逆に、今はどのような部分を課題だと感じており、どのような調整をしていく予定ですか。すでにSteamニュースで語られておりますが、かいつまんで教えてください。

ZIMA:
まずは不具合ですが、多くのプレイヤーの参加により発見することができました。特に深刻なものについては全力で修復し、ゲームの円滑な進行をサポートしてまいります。他の課題はより複雑なので、ここでは簡単に述べますね。

たとえば、ゲームの多様な遊び方への対応についてですが、現在私たちは公式のPVEサーバーとPVPサーバー、個人で構築したサーバー、シングルプレイとマルチプレイプレイ、そしてその他にもいくつかのモードを用意しています。公式サーバー以外においては、プレイヤーがかなり自由にゲームを構築できるようになっています。しかし、ゲームの難易度や一部の機能に対してより多様性を求める声はまだあるため、直近、そして将来的には、できるだけそれに応えていく必要があります。

もうひとつ重要な点としては、ゲーム内容の改善と充実が挙げられます。たとえば、ゲームのサウンドはまだ完成していませんし、他に改良すべき点もたくさんあります。建物の充実や改善も必要ですし、コントローラーのサポートなどもあります。

――今多くのサバイバルゲームがSteamに存在します。その中で『Soulmask』の個性はなんだと思いますか?

ZIMA:
私たちはサバイバルサンドボックスゲームの熱心なファンでもあります。独自のサンドボックスゲームを設計するとき、よく自問します。サバイバルサンドボックスというジャンルの中で、私たちの主要な違いはどこだろう?と。長年のプレイヤーとして、私たちは過去のゲーム体験を思い出し、それらを組み合わせて何をすべきかを考えることにします。

たとえば、たくさんのゲームをプレイした後、終わりのない木を伐採したり、土地を植えたり、装備を作成したりするのに少しうんざりしています。これらの繰り返しの作業のために常にキャラクターを作業台に座らせたくないので、誰かに手伝ってもらいたいです。 ——このとき、ソウルマスクでは「部族民」と呼ばれる「賢いNPC」が自然に頭に浮かびます。適切に手配されている限り、彼らはすべてを手伝ってくれます。準備が整っていれば、もっと沢山の冒険ができます。

先ほども言いましたが、皆様が自分好みの遊び方を見つけていただけるよう、多様で自由な遊び方を提供していきたいと考えておりますので、早期アクセス版では10種類のマスクだけではなく、さまざまな選択肢を用意しております。 8 種類の武器、75 種類の戦闘スキル、約300種類の部族民の才能など、この世界を楽しむためのお気に入りの方法を見つけてください。さらに重要なのは、マスクの意識変換を組み合わせることで、さまざまなキャラクターの遊び方を体験できるようになっています。これは、他のサバイバルクラフトゲームと比較した時の『Soulmask』の大きな利点でもあります。

最後に、サバイバルクラフトゲームで文明間の衝突とコントラストを表現できればと思います。本作においては、原始的な部族の背後に、意識のアップロードと自己規律の機械を備えた神秘的な文明が存在しています。そのコントラストは魅力的なテーマであり、深く探求する価値があものだと思っています。そこにある秘密にゲーム内で触れてもらえれば、クリエイターとして非常に嬉しく思います。


――ちなみに、『Soulmask』のどのような部分がプレイヤーに好まれたと感じていますか?

ZIMA:
豊富で奥深い部族民募集システム、仮面システムや仮面によって異なる部族民をコントロールする能力、そしてさまざまなスキルを組み合わせたアクション性の高いバトルシステムでしょうか。

――前述したようにCampFireStudioは謎めいたスタジオという印象です!一方で本作の規模は大きくチームとしての大きさも感じます。開発中はどのように資金調達、およびスタジオの運営を行っていたのでしょうか。

ZIMA:
私たちチームには豊富なゲーム開発経験と業界経験があり、サバイバルクラフトゲームの分野でもかなりの経験を積み上げてきたため、非常に安定かつ優秀なスポンサーを見つけることができました。

スタジオの運営についても、チームの規模はそれほど大きくなく、かつ長い間一緒に仕事をしてきたので、基本的に管理はとても簡単でした。『Soulmask』の開発も非常にスムーズに進んだと言えます。もちろん、私たちのマネジメント経験も豊富だったからというのも大きいです。私自身、十年以上にわたっていくつもの大規模プロジェクトを担当してきましたから。

――今の商業的な成功を踏まえると、今後も開発を続けていけそうですか。もしイエスなら、本作をどのようなゲームにしていきたいですか?

ZIMA:
もちろんです。私たちの挑戦はまだ始まったばかりなので!実は私たちのゲームのテーマは、知的文明の発展と人間の本質についての探求です。これからもこのテーマに沿って更なるコンテンツを作っていけたらと思っています。最終的には、皆さんがこの作品について語るとき、すべてが進展し完成され、ストーリーがクリアになっていったときに、サバイバルクラフトの部分がメインではなく、この世界に存在するいくつもの異なる文明のレイヤーや、仮面そのもの、そしてその裏に隠された本当の持ち主に焦点を当てたりできるようになればいいなと思っています。

意識とは何か?魂が肉体を離れても、あなたはあなたで居続けるのか?もちろん、そのために私たちがやるべきことはまだたくさんあります。テキストを増やし、マップを広げ、遺跡を増やし、仮面を増やし、CGを増やす……などですね。

――どんどんスケールが大きくなりますね。ちなみに、本作におけるプレイヤーの日本人は、想定よりも多いですか?少ないですか?

ZIMA:
昨年末にベータテストが開始されて以来、『Soulmask』のプレイヤーは欧米がメインでした。ただ昨今の日本のメディアの熱心な報道によって、リリース直前の1か月間でこれほどの注目を集めることになるとは予想外でしたし、日本のプレイヤーからの期待や意見は、我々にとって大きなサプライズとなっています。日本は現在『Soulmask』の販売数において4番目の国です。頂いたすべてのご支援、ご協力に対して心から感謝申し上げます。

もちろん『Soulmask』にはまだまだ多くの進歩が必要です。私たちは日本のプレイヤーから現在のバージョンに対する丁寧なフィードバックをたくさん受け取っており、肯定的なものも否定的なものも全て読ませていただきました。操作のしやすさやシングルプレイの体験など、さまざまな側面において、継続的に最適化を行っていきます。また動物の飼育や家の建設など、特に好評な機能についても今後展開していきます。私たちは『Soulmask』を長期的に育ててゆき、皆さんの期待に応えて、ますます良くしていくつもりです。

――ちなみに、日本人プレイヤーから寄せられた感想として、嬉しかったものをひとつ教えてください。

ZIMA:
私たちチームは、日本のプレイヤーが『Soulmask』について議論しているのを見るのが大好きです。Steam、discordの日本語チャンネル、Twitter(X)、実況動画など、様々な場所で熱いコンテンツがたくさん飛び交っています。自分のスタイルで基地を建設したり、部族民のダンスに笑ったり、高ランクな武器を作り出したり、ワニに襲われた後に他のプレイヤーから助けを受けるなど、こうした全ての瞬間に感動を覚えています!

最近特に印象深かったのは、@𝖢 𝗈 𝖼 𝗈 ෆˎˊ˗さんというユーザーのコメントです。私たちは『Soulmask』において部族民一人一人の外見や能力を完全ランダムで設計していますが、この方はそうした部族民を募集する過程を「部族ガチャ」と言ったんです。実に象徴的でユニークな表現ですね!『Soulmask』の楽しさをこのような形で伝えることができるとは考えてもみませんでした。


このような日本独自の表現は、私たちのゲームが他の文化の中に根付き、発展していることを実感させてくれます。このことに気づいてから、私はますます感謝と喜びを感じるようになりました。

――ありがとうございます。今後の開発に期待しております。

『Soulmask』は、Steamにて早期アクセス配信中である。

[聞き手・編集:Jun Namba]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]