VRスーパーロボットアクション『メカフォース』開発者インタビュー。「六神合体ゴッドマーズ」『Another Century’s Episode』好きのオタクが自分のロボゲームを作るまで


MyDearestは2024年内に配信予定の王道ロボットアクションVRゲーム『Mecha Force –メカフォース-(以下、Mecha Force』の日本向けリリースのためのクラウドファンディングキャンペーンを5月30日19時より開始した。

『Mecha Force』はVR専用のロボットアクションゲーム。本作はスーパーロボット、アクション、ローグライクの要素を含んでいるとのことで、自分の手でロボットを操作することができるハイスピードなアクションが特徴。グローバルでのパブリッシングはMyDearestが担当しており、日本では2024年に配信予定となっている。

今回、そんな本作の開発を手がけるMing Studio社の開発責任者、ソン・イハン氏にメール・インタビューを行うことができた。同氏は中国在住のクリエイターながら日本のロボットものに造詣が深く、その愛が高じて本作の開発に至ったとのこと。相当なロボットオタクのようである。ではなぜ本作のクラウドファンディングキャンペーンを実施することに決めたのか。日本のロボットファンやゲーマーに向けたメッセージや、同氏へのロボットに対する熱い愛情を含め、気になることを訊いた。

中国のゲーム開発者はいかにしてロボットを愛するようになったのか

―自己紹介をお願いします。これまでにはどのようなプロダクトに携わってきたのでしょうか。

ソン・イハン(以下、ソン)氏:
僕は2018年からゲーム業界に入りました。X.D. Network と NetEase に在籍しており、X.D.時代には『鈴蘭の剣:この平和な世界のために』というスマートフォン向けゲームを開発していて。NetEase時代にはVR向けFPS『Stay Silent』と『ポケモンクエスト』の開発に携わっていました。メインはスマートフォン向けゲームの開発でしたね。
それから2021年に独立してMing Studioを設立しました。Ming Studioを設立してからはVR向けゲームの開発をメインにしています。


―どういった子供時代を過ごされましたか?

ソン氏:
子供の頃はあまりゲームやアニメなどのサブカルチャーには触れることのない小さな町で育ちました。ただ実家がDVDレンタルショップを経営しており、それもあって運良くたくさんのゲームやアニメに会うことができました。


子供時代によく見ていたのは「魔動王グランゾート」と「魔神英雄伝ワタル」の二作です!よく中国のテレビで流れていたので、同じ中国の世代の人たちなら多分誰でも見たことがあると思います。毎日ワタルごっこをしていました(笑)僕のロボット愛、鋼の魂の始まりとも言える存在ですね。

―ソン・イハンさんはロボットアニメがかなりお好きとのことですが、そのきっかけになった作品名があれば教えてください。

ソン氏:
良く聞かれる質問です!以前はよく「ゲッターロボ」シリーズや「トップをねらえ」と答えていました。熱い設定やストーリー展開に凄くハマっていましたね。


でも実際、なにが好きになったきっかけだったのかを考えると、「六神合体ゴッドマーズ」という作品がそれにあたりますね。すごく王道で面白い作品です。ゴッドマーズは毎回合体する時に、仲間のロボットたちを色んな遺跡から呼んでくるという設定なのですが、メカフォースの主人公ロボである「麒麟」も遺跡から発掘されたという設定になっているんです。改めて影響を受けていたんだなと思いますね(笑)

―スーパー系、リアル系で言うとソン・イハンさんはどっち派でしょうか。

ソン氏:
僕はやっぱりスーパー系です(笑)ただやっぱり、スーパー系にもリアル系にも通じている魅力はあると思います。たとえば「トップをねらえ!」や「勇者王ガオガイガー」でも、凄くリアル系のようなメカニズムを感じさせるシーンが沢山あります。逆に最近の「機動戦士ガンダム00」や「機動戦士ガンダムUC」はスーパー系のようなシーンもいっぱいありますしね。「装甲騎兵ボトムズ」や「機動警察パトレイバー」のようなリアル系もすごく好きです。


なのでスーパー系、リアル系といった区別にあまりこだわらず、ロボットそのものに対する愛を持っています!

なぜ『Mecha Force』の開発に取り組んだのか

―本作の開発がスタートしたきっかけを教えてください。どういった思いがあったのでしょうか。

ソン氏:
きっかけはMeta Quest 2を購入して、体験した時です。「今なら最高のロボットゲームを作れるかもしれない」という思いがよぎりました。その後すぐ企画をスタートさせて、現在で二年半ほどになります。


スーパーロボットのスキルを使えるロボットゲームを開発したいという気持ちは小学生のころからありました!当時は自分がスーパーロボットのパイロットになったような夢をよく見ました。大人になって他のジャンルのゲームもいろいろ作りましたが、やっぱり自分でスーパーロボットのゲームを作りたいという思いはずっとありました。

―本作を開発するにあたって一番影響を受けたロボットゲームはなんでしょうか。

ソン氏:
フロム・ソフトウェアさんの『Another Century’s Episode』シリーズです!先ほども申し上げた通り、『メカフォース』を作り始めたきっかけとしては自分がスーパーロボット系のアクションゲームがやりたかったからというのが一番大きかったのですが、『Another Century’s Episode』シリーズはまさにそれでした。本当に僕にとって最高の神ゲーでした。

―本作の開発にあたり、資金調達の方法としてクラウドファンディングという手法を取ったのはなぜでしょうか。

ソン氏:
まず今の経済状況はVRゲーム業界に限らず、楽観的な状況ではないと思っています。やっぱりキツイ時期です。
苦しい時期でも応援してくれたのはやっぱりプレイヤーたちでした。お金ももちろん大事ですけれど、何よりプレイヤーたちに、僕たちがどういう気持ちでここまで開発してきたのか、そして一体どんなゲームを作りたいのかをプレイヤーたちに伝えたかったんです。なので今回、クラウドファンディングでの資金調達を選択しました。


そういった思いもあってクラウドファンディングの目標金額もそんなに高くは設定していないです。金額ゴール問わず、メカフォースを最高の状況でプレイヤーに届けられるようにしたいという気持ちで開発をしています。

『Mecha Force』で表現したい「ロボット」とは

―Mecha Forceの「ロボット感」に一番近いものはなんだと思いますか?

ソン氏:
僕が本作で表現している「ロボット感」はやっぱり、『Another Century’s Episode』シリーズや『機動戦士ガンダム vs.』シリーズのようなスピーディーなものが一番近いと思います!


ただ「ロボット感」といってもいろんな表現方法がありますよね!たとえば「ガンダム」シリーズで言うと「第08MS小隊」のビームサーベルで温泉を掘ったりする描写のような、戦場のリアルさを追求した「ロボット感」も魅力的です。ただ宇宙戦になると白い悪魔のような、ロボットの動きとは思えないくらいのハッタリの効いた動きも出てきますよね。それで言うと『Mecha Force』は、どちらかというと陸戦型ザクⅡというよりも、白い悪魔を操縦しているような体験に近いと思います。

―Mecha Forceの操作感でこだわった個所はどこでしょうか。

ソン氏:
『メカフォース』に近い第一人称のロボットゲームとして『鉄騎』や『機動戦士ガンダム戦場の絆』シリーズなどが挙げられると思います。プレイヤーからもよく、このゲームみたいな重量感が欲しいと言われます。ただVR専用ゲームの場合、ロボットを自分の手で直感的に操作しますよね。そこでゲーム内の戦闘スピードをあえて重くしたり遅くしたりすると、爽快感を感じられないんです。


僕が求めていた「ロボット感」はやっぱりスーパーロボットみたいに自由自在に派手な武器やスキルを使って打ちまくることで、それが一番面白い所だと思っています。システムの理解が深まると格闘ゲームのような駆け引きもできますので、上級者にも初心者でも楽しめると思います。

―ソン・イハンさんが考える、本作でしか表現できない体験とは何でしょうか。

ソン氏:
あの迫力感満満のスーパーロボットの必殺技を自分の手で目の前にくり出す体験ですね!思い付く限りのロマンあふれるロボット技をメカフォースには入れ込みましたので、ロボット好きの方には是非プレイしてみてほしいです!

「王道ロボット」の良さを沢山の人たちに伝えたい

―中国のゲーム市場でも、こういった買い切りのロボットゲームは広く受け入れられているのでしょうか。

ソン氏:
中国でもだんだんと受けられてはいるのですが、現在ではやはり日本とアメリカ向けの方が広く受け入れられていると思っています。何年か前に『ハードコア・メカ』という中国のRocketPunch Gamesが開発したロボットゲームがあったのですが、確か日本のPS Storeでの売上が一番多かったと記憶していますね。
そういった事例もあり、中国ではそんなに売上があがらないかもしれないのですが、中国でも一人でも多くのプレイヤーに『Mecha Force』のことを知って欲しい思いはあります。

―本作のターゲットはどういった層を想定していますか?

ソン氏:
ロボットファンの年齢層としては30~40代ぐらいが多いと思っています。ただ僕がちょうど15歳くらいからロボットものにハマっていたのもあり、そのくらいの若い世代にも訴求できるんじゃないかと期待しています。新しい世代の少年少女たちにもメカフォースという新しい時代のスーパーロボット物語を体験してほしいです!

―最後となりますが、ソン・イハンさんが考える「王道ロボット」の良さとはなんでしょう。

ソン氏:
「大人的な冷静さや計算を抜きにして、自分の信じる正しさと正義で戦う」ことですね!途中で迷うこともありますが、自分の信念を信じて乗り越える所に王道の展開や成長があると思っています。
そう考えてみると、今自分の会社をやっているのも僕なりの王道とも言えますね。ロボットアニメの主人公たちと同じようにさまざまな困難に向き合うことになるのですが、そこでいかに自分の信念を貫けるかを大事にしています。

――ありがとうございました。

『Mecha Force -メカフォース-』のクラウドファンディングキャンペーンはCampfireにて実施中。