サバイバルホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズ3部作のコンソール向け移植版『S.T.A.L.K.E.R.: Legends of the Zone Trilogy』が3月7日のXbox Partner Previewにて発表され、即日配信となった。

『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズはPCでリリースされカルト的な人気を持つFPSタイトルであり、国内にもコアなファンが多い。今回、同シリーズのファンとしてインタビューを受けてくれたゲームライターのみお氏もその一人だ。一方で、筆者自身は『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズには馴染みがなく、正直どんなゲームなのかすらよく分かっていない部分があった。そのため、この機会に「本作独自の魅力はなんなのか」ということを、筆者の友人である彼に、納得がいくまで聞いてみることにした。


開発者ではなく、ファンにインタビューを行うというのはかなり変則的だと思うが、自分なりに納得できるような回答が得られた。今回のトリロジーの発売を期に、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズに触れようか悩んでいる方はぜひ参考にしてほしい。

みお氏のプロフィール:
フリーランスのゲームライター。PCゲーム歴は2017年からと短めだが、ズブズブと沼にハマりSteamのゲーム所持数はすでに1800本近くにのぼっている。FPS全般を好んでおり、部屋に遊びに行くと『DOOM II』をプレイさせられることになる。

――『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズはコアなファンの多いPCゲームだと思いますが、国内ではタイトル自体知らないというユーザーも多いと思います。具体的な質問に入る前に、まずはざっくりと、ジャンルや開発元、ストーリーなど、本作の概要を教えて下さい。

みお氏:
『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズは広いフィールドを探索しながら撃ち合いやミッションを楽しむサバイバルFPSです。爆発事故が起きたチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所の立ち入り禁止区域周辺が舞台となっており、事故の影響で「アノマリー」と呼ばれる超常現象が起きていたり、化け物が出現したりしている危険な地域「ゾーン」を探索することになります。

開発元のGSC Game Worldは元々ウクライナのキーウに拠点を置いている会社だったのですが、現在は軍事侵攻の影響でチェコのプラハに移転していますね。

――主人公は、なぜそんな危険なところに……。

みお氏:
シリーズ1作目『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chornobyl』の主人公は、記憶喪失の状態で目覚めます。所持していたPDAには「ストレロクを殺せ」という謎のメッセージが記されており、ストレロクとは誰なのか、なぜその人物を殺さなければならないのかを探っていくというのが目的になります。


――なるほど。

みお氏:
『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズは3作が発売されているのですが、1作目を起点として、2作目がその前日譚、3作目が後日譚を描くというストーリーになっています。

――ゲーム自体はリニアな進行なのでしょうか、それとも開けたフィールドで自由に探索できる形でしょうか。

みお氏:
完全にオープンワールドというわけではないのですが、かなり広大なフィールドになっていて、攻略順もだいぶ自由ですね。メインクエストの他にサブクエストとかも豊富で、リニア進行ではないです。

――個人的に前から気になっていたことなのですが、『S.T.A.L.K.E.R.』というタイトルは結局「ストーカー」と「スタルカー」どちらで読むのが正解ですか。

みお氏:
ストーカーが正しいです。英語だと「ストーカー」と発音すると思うんですが、本作は舞台がウクライナなこともあり、その地域特有のなまりがあって、作中のボイスではみんな「グッド ハンティング スタルカー」と言うんですよね。なのでファンの間では「スタルカー」と呼ばれることがあるんです。

――なるほど。プレイヤーにとっては「スタルカー」という呼び方もあるんですね。

今回『S.T.A.L.K.E.R.: Legends of the Zone Trilogy』が出るにあたって、トレーラーも公開されました。ただ、原作をプレイしていない筆者からすると、「見てもどんなゲームかぜんぜんわからない」というのが正直なところで、一般的なFPSタイトルとの差をあまり感じませんでした。本作ならではの部分というのはどういうところなのでしょうか。

みお氏:
やっぱり一番は「撃ち合い」の部分になると思います。本作に登場する銃は、そのへんに落ちてるやつを拾ったりとか、敵のギャングが持っているものを奪ったりするのですが、質がぜんぜん良くないんですよね。ちゃんと狙ってもまっすぐ飛ばないし、歩きながら撃てばもうブレまくりです。ジャムること(弾づまり)もしょっちゅうですね。

普通、FPSだったらある程度狙ったところに飛んでほしいじゃないですか。だけど、本作はそういう質の悪い銃で戦わないといけないことで、撃ち合いに独自の緊張感が生まれていると思います。

そして、ストーリーを進めていくなかで次第に質のいい武器が手に入るようになります。いろんな人に聞き込みをして情報を手に入れたり、クエストを受けたりというのも含めて、他のFPSタイトルとくらべて少しRPGっぽいと思いますね。


――最初すごく使いづらい武器からはじまって、だんだん使いやすい武器になっていくというのが、少しRPG的な成長要素になっているんですね。

みお氏:
本作は2007年に1作目が発売しているんですけど、当時たぶんFPSってそこまでRPG的な側面を押し出したものって多くなかったと思っていて。挙げられるものだと、『The Elder Scrolls』シリーズをFPSに含むのかとか、あと『Deus Ex』や『System Shock』とか、あるにはあったんですが、そういう中でも本作はFPSとRPGを近づけたタイトルの一つかなと思っています。

――トレーラーを見ると、なにか魔法のようなエフェクトが出ている場面がいくつかあるのですが、あれは一体なんなのでしょうか。

みお氏:
たぶん、さっき言った「アノマリー」という現象だと思います。この地域では、原子力発電所の爆発の影響でいろいろ危険な現象が起きているのですが、そのうちの一つである「アノマリー」はさまざまな場所で発生しています。

アノマリーには触れると危険なんですが、透明で見えづらいので、安全のために「ボルト」を投げて反応を確認することになります。ボルトをぽいぽい投げて、「ここは安全だな」、「ここは危ないからどうしようか」というようにちょっとずつ探索することになるのも本作の醍醐味ですね。

『S.T.A.L.K.E.R.: The Legends of the Zone』トレーラーより


――本作のようなポストアポカリプスな世界観の廃墟を探索できることにテンションが上がるユーザーは筆者を含めかなり多いと思うのですが、本作はやっぱりそういう欲求も満たしてくれるゲームですか。

みお氏:
そこについてはもう、たまらないですね。そういう人にとっては探索すること自体がめちゃくちゃ楽しいゲームになっていると思います。

――どこかおすすめのスポット、印象に残ってるロケーションとかはありますか。

みお氏:
やっぱり最終盤に行くところが……いや、終盤の話はしないほうがいいか。でも、序盤からいい感じに寂れた小屋や、ボロボロになった住居、大きな工場とか、ロケーションが豊富で、そういう場所で身を隠しながら撃ち合いをするという体験は最初から最後まで楽しめると思います。


――うーん、素晴らしい。終盤にも、ネタバレだから言えないけどすごく魅力的な場所があるんですね。

みお氏:
はい。魅力的なロケーションがありますので、ぜひ。

――トレーラーを見ると、ほかのNPCと協力しているような場面があるのですが、コンパニオン的なシステムがあるのでしょうか、それともミッションでそういう場面があるという形でしょうか。

みお氏:
基本的にはミッションですね。ミッションで、「こいつらと一緒に賊を倒してきてくれ」みたいに言われて一緒に行く、みたいなことが多いかな。ただ、本作のNPCのシステムで一つ欠かせないものとして「A-Life」というものがあって、これが当時本作の大きな特徴だったんです。

このシステムは、NPCが自立したAI的な思考を持っているような感じで、敵は賢く身を隠すなどしながら迫ってくるんですが、これは味方も同じなので、そういう協力感みたいなものはかなり楽しめると思います。開発当初は、自立したNPC同士が勝手にクエストを進めちゃうぐらいのシステムだったらしいのですが、最終的にはその部分は削られたみたいです。


――1作目の『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chornobyl』には当時日本語がなかったと聞いているのですが、今回のトリロジーが出る以前に3部作を日本語で遊ぼうと思った場合、どのような環境を用意する必要があったのでしょうか?

みお氏:
以前に発売されていたPC用パッケージ版の2作目以降は日本語がついているので、そちらを買えばプレイできます。問題は1作目ですが、1作目には字幕表示機能がゲーム内になくて、Modで日本語化しようと思っても字幕表示のModも入れないといけないのでちょっと面倒ですね。Steamにも3作品揃っているのですが、こちらはすべて日本語がなく、Steamだけで3部作を遊ぼうとするとすべて日本語化する必要がありました。

――前に『Half-Life』をPCで遊ぼうとしたら、字幕が小さすぎたり、フルスクリーンの挙動が怪しかったりと、古いPCゲーム特有の不安定さを感じたのですが、やっぱり『S.T.A.L.K.E.R.』にもそういうところがありますか。

みお氏:
多少はありますね。ただ、結構Modも充実していたので安定させることはできると思います。とはいえ、人に『S.T.A.L.K.E.R.』をおすすめしようと思った時に、「ここで海外版買って」、「このModダウンロードして」とか言わないといけないのも勧めづらいですよね。そういう意味で、トリロジーが出たことはありがたいです。ちゃんと最初から日本語が入っていて、コントローラーもしっかりサポートされているのでおすすめしやすくなりました。

――今回のトリロジーで、操作感やUI、システム面で原作より便利になっている部分や変化している部分はありますか。

みお氏:
『S.T.A.L.K.E.R.』は元々かなりマウス向きのゲームだったんですよね。今回初のコンソール向けということもあって、コントローラーで上手く狙えるのか心配していたんですが、実際にプレイしてみたら、かなりエイムアシストが効いてくれているので安心しました。ぜんぜん問題なくコントローラー操作で楽しめるようになっていると思います。

あと、原作は毎回インベントリを開いて武器をセットしなおしたりする必要があったんですが、トリロジーではウェポンホイールが追加されているので、コントローラーでも武器選択がしやすくなりましたね。


――本作はシリーズの3作がトリロジーとして収録されていますが、お話を楽しむうえではやっぱり1作目から順にプレイしたほうがいいのでしょうか。

みお氏:
そうですね。各作品で主人公は違うんですけど、お話としてはかなり繋がっています。システム的にもやっぱり発売順にやるのが一番いいと思います。

1作目は、さっき説明したとおり記憶喪失の男が主人公。2作目は前日譚なんですが、いろいろなものに耐性を得た主人公がその能力を見込まれて色々頼まれるみたいな話です。3作目は、1作目のマルチエンディングの一つからつながる話になっていて、ベテランのストーカーが失踪してしまったウクライナの軍事遠征隊を探すためにゾーンの中心部に向かうという話になっています。

――ベテランのストーカーと言いましたが、結局「ストーカー」とはどういう意味なのですか。

みお氏:
これを言うと若干ネタバレになってしまうんですよね。というのも、1作目の主人公は記憶喪失で、所持していたPDAに「ストレロクを殺せ」と書いてあると言ったと思うんですが、腕にも「ストーカー」という入れ墨が彫られているんですよね。

なので、「ストレロクとは誰なのか」ということと同時に、「ストーカーとは何なのか」という謎もあり、そういう設定周りが何もわからない状態から真相を突き止めていくというのも1作目の楽しみの一つですね。そういう意味でもやっぱり1作目から遊んでほしいです。

――少しトリロジーの話からはズレるのですが、シリーズ最新作『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』の発売が迫っています。現状のトレーラーなどをみて、3部作を遊んでおいたほうがストーリーは分かりやすそうという部分は感じますか。

みお氏:
どうなんでしょうね。現状の情報だけではどんなストーリーかはわからないのでなんとも言えないです。開発当初は、3部作の主人公うちの誰かがもう一度主人公になるという話もあったんですけど、それも今はなくなって刷新されているようなので、問題なく『S.T.A.L.K.E.R. 2』からでも入れるんじゃないかな。ただやっぱり伝説的なゲームではあるので、そういう面を含めてトリロジーを体験しておくのはアリだと思います。


――あらためて今回のトリロジーを遊んでみて、『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』に期待していることなどはありますか。

みお氏:
個人的には、さっき言った「質の悪い銃を楽しむ」という部分はちゃんと受け継がれていてほしいです。あとは、やっぱりグラフィックが綺麗になっていたら嬉しいと思っていますが、これは現状のトレーラーの時点で十分に伝わってくる部分なので、期待大ですね。もうあのグラフィックで、『S.T.A.L.K.E.R.』の廃れた世界を見られるというだけで、とんでもないご褒美ですから。

――最後に、あえて質問したいのですが、現状ポストアポカリプスでもっと美しいゲームや優れたアクションFPS、RPGなどが溢れているなかで、いま『S.T.A.L.K.E.R.』を遊ぶ意味はどこにあると思いますか。

みお氏:
なんだかんだ本作はいろいろなゲームに影響を及ぼしていると思うんですよね。たとえば、公言はされていないですが『Escape from Tarkov』もかなり影響を受けているとタイトルだと思いますし、『Chernobylite』とか、あとは『S.T.A.L.K.E.R.』のクリエイターの一部はその後に『メトロ』シリーズを作っています。

ただ、意外とストレートに『S.T.A.L.K.E.R.』の魅力をフォローしているタイトルは少ない。『メトロ』はリニアでストーリードリブンなアドベンチャーゲームだし、『Escape from Tarkov』は対人戦です。『Fallout』シリーズもかなり近しいところにあるゲームだと思いますが、やっぱり『S.T.A.L.K.E.R.』の銃撃戦と比べると少し物足りないところがありますね。

そういう面で、『S.T.A.L.K.E.R.』は今でもかなり独自の魅力を持っているゲームだと思っています。もちろん古典としてはほかにもっと大きな影響力を持つFPSタイトルもあるんですが、私のようにいまだに本作の魅力の虜になっているファンも大勢いる。やっぱりそういう、本作ならではのフェチを推していきたいです。

――ありがとうございました。

国内向けPS4ダウンロード版『S.T.A.L.K.E.R.: Legends of the Zone Trilogy』は、6578円にて販売中。PS4パッケージ版は6月27日に発売予定だ。またダウンロード版については各作品2860円で個別購入も可能となっている。

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