『ファイナルファンタジーVII リバース』浜口D&北瀬Pインタビュー。海外ゲームからの影響の有無、そしてブレず貫いていることなど、開発の信念を訊いた

 

今月2月29日に発売日を控える『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、FF7 リバース)。1997年リリースのオリジナル版をベースにしながらまったく新しい体験を再創造した前作 『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FF7 リメイク)は、全世界累計販売本数700万本を達成するなど、世界規模のタイトルとしての結果を残した。そして今作は、物語としてはミッドガル脱出から忘れられる都を描き、フィールドもリニア型からオープンフィールド型に変化。単なるリメイクだけに留まらない、大胆な挑戦を挑んでいる。

今回は同シリーズがグローバルに成長していく中で感じた点を、プロデューサー北瀬佳範氏とディレクター浜口直樹氏にお訊きしている。日本と海外の比較にフォーカスしながらも、『ファイナルファンタジー』として制作する上で開発陣は何を選択したのか。ぜひ最後まで読んでほしい。


――まずは、『FF7 リバース』が「The Game Awards 2023」にて、2024年のMost Anticipated Gameに選ばれました。おめでとうございます。周囲の反応はいかがでしたか。

浜口直樹(以下、浜口)氏:
純粋にチームの皆と喜んでいました。ただ我々は非常に手応えを感じながら作っていたので、取れると思っていました。……いや、信じておりました(笑)

北瀬佳範(以下、北瀬)氏:
(笑)では僕は謙虚に……。Most Anticipated Gameに選んでいただき、非常に光栄です。

――2月29日に発売を控え、現在のお気持ちはいかがですか。

浜口氏:
ゲームは完成しております。延期することもないため、2月29日にユーザーの皆様に触っていただけるのが本当に楽しみな状態です。

――『FF7 リバース』はどれくらいの開発規模なのでしょうか。

北瀬氏:
そこまで大きなチームではなく、従来の『ファイナルファンタジー』シリーズの延長で作っています。ですが、実際にゲームをプレイされると、このクオリティとボリューム感はどれだけ大きな規模で作っているのかと思えるほど、開発規模以上のパフォーマンスが実現できています。

浜口氏:
『FF』のナンバリングやAAAタイトルと同等の規模で、極端に人数を増やしていることはありません。前作から4年で今作が作れたのは、最初に決めたビジョンからブレることなく、開発期間がそのまま作品のクオリティに変換された印象で、本当に納得のいくものができました。


――『FF7 リメイク』シリーズは、グローバルタイトルとしても成長されています。海外メディアインタビューでは、『ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、ウィッチャー3)のサブクエストなどを参考にしたとコメントされていましたが、欧米のタイトルから影響を受けている部分はありますか。

浜口氏:
おっしゃるとおり、他社や海外のAAAタイトルからも影響を受けており、『ウィッチャー3』は好きなタイトルです。ほかにも『The Elder Scrolls V: Skyrim』など、オープンワールドで自由度の高いゲームを参考にしている側面もあります。

――『ウィッチャー3』という例を出されたとなると、サイドクエスト(サイドコンテンツ)に厚みがあるというニュアンスでしょうか。

浜口氏:
正しく言うと、少し違います。『FF』というシリーズは主軸であるメインストーリーに注目するユーザーの方が多いため、サイドコンテンツばかりが増えても、ネガティブな印象を受けてしまうと思います。そのためメインストーリーを王道に残しつつも、サイドコンテンツへいかに触れさせるかが、『FF』における自由度だと考えています。

――ふむふむ。あくまでメインストーリーが主役だと。

浜口氏:
『ウィッチャー3』のエッセンスに影響を受けているのは確かですが、決してゲームデザインを真似ているわけではありません。今作における他のタイトルとの差別化としては、ミニゲームも1つのクエスト専用に制作するなど、それぞれのサイドコンテンツのユニーク性を担保したいというのが私の中にありました。

ただサイドコンテンツも凝っていますよ。サイドコンテンツがガワを変えただけの使い回しという状況が続くと、次のエリアに行ったとしても結局中身は今までと同じだと感じてしまい、ゲームを進める楽しみが失われてしまいます。そのため基本的には新しいロケーションに着いたら、新しい探索方法やミニゲームが提示できるように、ゲームの開発当初の時点で全エリアの発生要素は、私の方で細かく設計をしました。そのためサイドコンテンツの量は膨大ですが、常にワクワクしてもらえるのではないかと期待しています。

――なるほど。浜口さんはプログラマー畑ご出身ですが、『FF7 リバース』ではゲームデザインセクションもがっつり関わっていると。

浜口氏:
私がほぼ握っています。

北瀬氏:
ディレクターですからね(笑)

浜口氏:
シナリオに関しては野島(一成)さんや、野村(哲也)さんに担当していただいていますが、そのシナリオをどうゲームに落とし込むのかは、プログラマー出身ということもあり、実装方法も含めて私がすべて担当しています。

――逆に、欧米のタイトルにはない自分たちの強みについてお聞かせください。

浜口氏:
今回『FF』としての魅力を残す意味で選択したのが、メインストーリーとサイドコンテンツの区別を明確にする点です。最近のタイトルはメインとサイドの線引きが曖昧で、今なにをプレイしているのか分かりにくいゲームが多いと思います。それが悪いことだとは思いませんし、良い部分もありますが『FF7 リバース』にはそぐわないかなと。今作では、プレイヤーがプレイしたいと思っているものが、メインなのかサイドなのかが理解しやすいように制作し、『FF』としてユーザーに対して届きやすくしています。

――『FF7』シリーズにストーリー性が求められているというのは明白ですからね。

浜口氏:
そうなんです。なので『FF7 リバース』の企画書を書いて、会社に提案したときの最初のコンセプトが「膨大なサイドコンテンツを用意するが、メインストーリーだけを追いかければ前作同様のプレイ体験ができる」でした。つまりサイドコンテンツはまったくプレイしなくてもいいということです。たとえばカームのメインストーリーに1回区切りがついたときに、ワールドマップに点在するサイドコンテンツをじっくりプレイするか、無視してジュノンに向かいルーファウスの式典を見るのかはユーザーの選択です。ただストーリーを進めた後で前のエリアに戻りたい方もいると思うので、今作の全サイドコンテンツはメインストーリーが進んでも絶対に消えないようにしています。

――『FF7 リメイク』と比べ遊び方に多様性が出るからこそ、レベルスケーリング(難易度「ADVANCED」を選択すると、レベルに応じて敵の強さが自動調整される)機能を実装されたと。

浜口氏:
まさにその通りです。近年の『FF』はストーリー進行のなかでレベルが上がっていくため、レベルは開発者が想定した範囲に収まって難易度調整がしやすいのですが、今作はメインストーリーよりサイドコンテンツの物量のほうが多いんです。 そうなると難易度がコントロールしにくく、ワールドマップを隅々まで探索したらメインストーリーのボスが弱くなりすぎたという展開は喜ぶユーザーもいますが、当然そうではないユーザーもいます。そういった意味で、レベルに応じてゲーム難易度が調整される機能を実装したいというのは、開発の初期段階で話していました。

――た、大変ではなかったですか……?

浜口氏:
もちろん大変ではありました。ただ、必要だから実装するという気持ちで調整していました。サイドコンテンツを網羅していただいても、難易度「ADVANCED」ではメインストーリーのボスに歯ごたえを感じられますし、逆に気にしない方は難易度EASY・NORMALを選んでサクサクと進んでいただければと思います。『FF7 リバース』で掲げているテーマは「選択」なんです。サイドコンテンツをプレイするかしないか、難易度の調整はどうするのか。ゲームを通してユーザー自らが選択して、自分らしくゲームがプレイできることを狙っています。

――なるほど。自分らしいゲームプレイを選択できるというのは面白いですね。少し話は戻ってしまいますが、『FF7』シリーズがグローバルタイトルとして成長し、世界中からインタビューを受けるなかで、海外メディアからは聞かれやすく国内メディアからは聞かれにくい質問はありますか。

北瀬氏:
まさに先ほどお答えした、どの作品からインスピレーションを得ているのかという質問は海外では頻繁に聞かれます。国内の取材で具体的なタイトル名を出してしまうと、安易に真似をしているのではという誤解を生みやすいので、あまり言わないようにしています。ですが海外メディアは、その人が人生の中で何を吸収してクリエイティブの才能を育てていったのかというクリエイターとしてのルーツを探りたがっている印象です。私たちもそういったロジックであれば答えやすいのですが……(笑)なので、このインタビューの冒頭質問も珍しいと思っていました。

――がんばってお答えいただきありがとうございます!(笑)一方コミュニティ面では、『FF7 リメイク』シリーズは、海外コミュニティで大きなファンダムが形成されており以前と比べタッチポイントが増えている印象です。日本との文化の違いがあれば教えていただきたいです。

浜口氏:
日本だとティファやエアリスというヒロインに注目が集まりやすいのですが、海外ではセフィロスが非常に人気ですね。

――海外ではセフィロスが人気なんですね。

浜口氏:
そうなんです。ヴィランとしての知名度や注目度が高くその点は日本との温度差を感じます。今作のセフィロスはニブルヘイムで炎に消えていく時に、少し寂しそうな顔しながらもニヤけている表情をしているのですが、そういったセフィロスの人間らしい部分はどういう反応をされるのか楽しみです。


――最近では『ファイナルファンタジーVII エバークライシス』における少年時代のセフィロスの登場など、「人間・セフィロス」としての見せ方が強まっていると感じます。では最後に1点、今はSNSなどでファンと開発者の距離が近くなっていて、いろんな声がすぐ届く時代になりました。そんな時代に、ユーザーから寄せられるとうれしいメッセージを教えてください。

浜口氏:
私にしてもほかの主要メンバーにしても、ユーザーが考えているよりネット上の書き込みは確認しています。ポジティブなメッセージも、ネガティブなメッセージも届いていますし、ポジティブな意見ばかりいただくと、徐々に開発側もぬるくなってしまう部分はどうしてもあるので、時には叱咤激励もあっていいと思います。書き込んでもらうことで雰囲気の盛り上がりにも繋がっているので、リアクションをいただけること自体がうれしいです。

――いい意見ばかりでなくていいと。胆力がすごいです。

浜口氏:
そうですかね?(笑)

北瀬氏:
『FF7 リメイク』シリーズの3部作の良い点は、次の作品までの空いた期間にユーザー同士で考察や想像をしていただける点だと思うので、『FF7 リバース』がリリースされた後も次回作に向けての思いを伝えてもらえるとうれしいです。ただ考察されすぎて展開が当てられてしまうと困るんですけどね(笑)と言いながら、我々はそれも含めて楽しみながら制作しています。

浜口氏:
ユーザーとのコミュニケーションは取りやすくなってきましたが、ファンイベントみたい催しは、まだ活発にはできてないですね。

北瀬氏:
そういう意味では先ほどの海外との違いという話になりますが、浜口と一緒に「Paris Games Week」などに出席させていただいて、ファンとの触れ合いという点では日本と海外では距離感が違うと感じます。

浜口氏:
コロナ禍でさまざまなイベントが中止になったというのもありますが、日本では『FF7 リメイク』発売記念に行ったスカイツリーでのイベント(「SKYTREE in MIDGAR FINAL FANTASY VII REMAKE」のこと)以来やっていないですよね。需要があればファンと直接触れ合えるイベントもしていきたい思いはありますが、その辺は今後の施策も含めて検討中ですね。

――もしイベントが開催されるのであれば、ぜひ参加させていただきます!ありがとうございました。

『ファイナルファンタジーVII リバース』は、PS5向けに2月29日発売予定だ。

[執筆・編集:Yuuki Inoue]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

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