魔改造メカアクション『カスタムメックウォーズ』プロデューサーインタビュー。話題だった発表タイミングや、プロトタイプ版へのユーザー反応などへの本音を訊いた


ディースリー・パブリッシャーは12月14日に、『CUSTOM MECH WARS -カスタムメックウォーズ-』を発売する。対応プラットフォームはPS5/PC(Steam)。『カスタムメックウォーズ』は、魔改造メカアクションシューティングゲームだ。活況にあるロボゲームジャンルの新作、また“面白系の改造”も可能ということで、初報時から注目を集めていた。

一方でプロトタイプ版が配信され、さまざまなフィードバックも寄せられていた。本作の理想的な遊び方はなんなのか、またプロトタイプ版への意見をどのように思っているのか。プロデューサーの内田陽介氏に話を訊いた。

──自己紹介をお願いいたします。経歴や、これまでに手がけた作品なども教えてください。

内田氏:
本日はよろしくお願いいたします。ディースリー・パブリッシャーの内田と申します。これまで、『オメガラビリンス ライフ』や『SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-』などの、ディースリー・パブリッシャーから出ている美少女系のゲームを担当しておりました。なので、今回の『カスタムメックウォーズ』は初めての美少女系タイトル以外の担当タイトルということになります。いつもは白い布がチラチラ見えるようなゲームを作っているんですが……(笑)それもあって、本作は私が担当したタイトルでは初のCERO Bのゲームになっております。


──内田さまのキャリアを教えていただけますか。

内田氏:
私の前歴として、もともと編集ライターをやっていて、少年向けマンガ雑誌やゲーム雑誌の記事を書いたり、ゲームの攻略本を作ったりしていました。そんな中、もともとゲームが好きだったということもあり、ゲーム業界、ディースリー・パブリッシャーの方に宣伝や広報、プロモーション担当として入社しました。で、今はどういうわけか新作タイトルのプロデューサーの仕事をしています。

──ありがとうございます。今回発売される『カスタムメックウォーズ』について、紹介をお願いします。

内田氏:
『カスタムメックウォーズ』は、PS5とSteamでの発売を予定している新作タイトルです。いわゆるロボットゲーム、俗にいうロボゲーというジャンルのゲームではあるんですけども、その中でもカスタマイズの部分にとにかく重きを置いて、そこが1番のウリとしてユーザーさんに認めてもらえるような、カスタマイズ重視の魔改造ゲームという形になっております。

カスタマイズの部分が本当に自由自在というところが同ジャンル作品との違いであり、最大のウリなので、やはりその部分をじっくりと楽しんでいただきたいですね。

──プリセットのロボでミッションを進めて楽しむというよりは、たくさんカスタマイズして、自分だけのロボを動かして楽しむというのが醍醐味になるのでしょうか。

内田氏:
もちろんいくつかの機体がプリセットとしてありまして、それだけを使って遊ぶこともできるんですが、プリセット機体だけでは本作の魅力の1割くらいしか楽しめないような形になってしまいます。

たとえば、他社さんのロボットゲームをプレイしている際に、「カッコいい機体は結構あるけど、ちょっと自分の好みじゃない」とか「あの作品の、あの機体で戦いに出たい!」と感じることが結構あるかと思います。で、本作は自由自在に機体をカスタマイズして、自分の理想のロボを作って動かしたい、戦いたいという需要に応えられるような、そんな作品になっております。


──なるほど。本作はどれくらいのチーム規模で作られているんでしょうか。

内田氏:
開発期間でいうと、企画の立ち上げが2021年の夏くらいですかね。規模でいうと、具体的な人数はちょっと避けますが、ディースリー・パブリッシャーの中ではかなり頑張っている方の開発規模でやっております。

──ありがとうございます。本作の発表タイミングは、『アーマード・コア6』発売4日後で、かなりインパクトがありました。人気作の発売と同タイミングで同ジャンルの違うタイプのゲームが出るということで、ユーザーさんからの反響も大きかったですよね。

内田氏:
ありがたいことに、大きかったですね!『カスタムメックウォーズ』の発売時期を考えると、大体この時期には情報を出さなければいけないな、というタイミングがありまして。狙った訳ではなく、本作のマーケティングプランなどを踏まえた結果、その時期に情報を出した感じです。ただ、たまたまではありますが8月のいつごろ情報を出そうか、なんて考えているときにカレンダーを見たら”ロボットゲーム熱”が高まっていそうなタイミングがありまして、そこを若干意識したところはあります。

──もともとTGS前の時期で、それとなく発表も含めてかぶったと。ユーザー反応を見ていると、本作については面白がられている印象が強かったです。その中でも嬉しかった反応とか、印象に残ったあだ名などがあれば教えてください。

内田氏:
人気ロボットゲームの名前をもじりつつ「バカ」をつけて本作の率直な印象を表したものであったりとか、あるいは『カスタムメックウォーズ』という名前の略称として”カスメ”とか。

──カスメ……(笑)ちなみにユーザーからの反応は想定通りでしたか、それとも予想以上でしたか。

内田氏:
予想以上でした。それこそディースリー・パブリッシャーが過去に出していたような美少女系のゲームであれば、ある程度はユーザーさんの反応を想像できる部分もあります。ただ今回はターゲットにしている層がまったく違うというところと、完全新規のIPでもあるというところで、まったく読めなかったんですね。


さらに、今でこそロボットゲームは熱があるような感じではあるんですけども、ロボゲーはかなりニッチで、マニアックなジャンルだとゲーム業界の内外では言われることが多かったので、発表の前日まではもしかしたらユーザーさんからの反応が何もないかもという覚悟はしていました。リアクションがまったくない、無風のような状態までは覚悟していましたね。

──さすがに無風にはならないのでは。

内田氏:
それが、なりえるんですよ。ディースリー・パブリッシャーは「ロボゲーでおなじみ」だったり「ロボゲーを期待されている」という会社ではないので。結果的には、ユーザーさんから一切反応がない状況まで覚悟の上で1stトレーラーを出したところ、たくさんの反応をいただけたので、それは素直に嬉しかったです。

──反応が多ければユーザーの期待値が上がります。一方で、プレッシャーを感じたりもしましたか。

内田氏:
プレッシャーはもちろんあります。が、それ以上にユーザーさんの期待を裏切らない形でお応えしたいという形で頑張っています。

──ありがとうございます。本作のターゲット層はずばりどこでしょうか。

内田氏:
メインのターゲットがロボットゲームユーザーというのは間違いないです!サブターゲットとしては、自分でクリエイトしてモノを作るような、サンドボックス系やクラフト系のものが好きな人などを想定しています。普通のゲームとは少し違った、変わったゲームが好きなユーザーさんとか、そういったところを想定している感じですね。

──ありがとうございます。プロトタイプ版の質問をさせてください。本作ではプロトタイプ版が配信されています。ユーザーさんからどういう反応があり、どういう学びがあったのでしょうか。

内田氏:
プロトタイプ版は、10月末に配信させていただきました。おかげさまで、こちらの想定よりもかなりプロトタイプ版のインストール数が多かったです。現状ユーザーさんからいただいている意見として、「ゲームのこういう所を改善してほしい」とか「こういう所がダメ」とか、そういったご意見をかなり率直にいただいております。ユーザーさんからのご意見をいただけること自体がすごくありがたいですね。僕ら自身としては、その部分をどう直していくかに専念しています。

──SNSをざっと見ても、割と厳しい指摘が多い印象でした。そういう意見を前にしても、ポジティブな部分が勝つと。

内田氏:
はい!厳しい意見を見ると落ち込むには落ち込むんですが、そうした指摘は有意義ですし、一切何も意見をいただけない状態の方が、コンテンツにとっては良くない傾向だと考えています。補足するとすれば、プロトタイプ版で遊んでいただいている内容が、基本的にはTGSでお出しした9月時点のバージョンなので、そこからさらにクオリティが上がった製品版をユーザーさんにお届けできるというのは間違いないところです。


それに加えて、今のプロトタイプ版は、だいたい7月頃からある程度の改善の方針は立てておりまして、7月時点から先行して追加の予算を出したり、追加の人員をアサインしたりと、改善に向けての準備期間がしっかりあったので、それを踏まえても製品版は間違いなくクオリティを上げられるだろうという見立てです。

気持ち的には落ち込む部分はありつつも、製品版を遊んでいただければ評価も変わってくるかと思います。そういう意味でも、具体的な改善案、修正案が上がっているということはポジティブに捉えています。

──本作のプロトタイプ版の意見を書くユーザーさんは、言葉こそ厳し目ですが建設的な意見を書いてくれる方が数多くいる印象です。単純に「面白くない!」というものではなく、「この部分をこう直してくれ」といったような。

内田氏:
「こうしてほしい」というユーザーさんのリクエストって、本当に明確なんですよね。漠然と「つまらない」と言われるよりは、「この部分が良くない」というような、具体的なフィードバックをくれているユーザーさんが多い印象ですね。「全体的にダメ」「まったく面白くない」とだけばかり言われてしまうとなかなか難しいんですけれども、本作では本当に具体的な意見を挙げていただいていて助かっています。もちろんいただいた意見をすべて反映できるわけではないんですけれども、その中でも優先度の高いものからどんどん直していけるような体制作りはしているので、そこは製品版を楽しみにしていただけたらと思います。


──しっかりユーザーからの意見を受け止めているんですね。ちなみに、このゲームはこういう風に遊んだらより面白いよ、という遊び方を教えていただけますか。個人的にプロトタイプ版を遊んだ際には、用意されているプリセット機体でプレイし、ちょっと単調で大味だなとは思いました。それはあまりオススメしない遊び方ですか?

内田氏:
製品版の方でもゲーム開始時から、今のプロトタイプ版に入っているものとはまったく別のプリセット機体が3機入っておりまして、基本的にはそれを使ってゲームをどんどん進めることも可能です。ただやっぱり、それだけだと味気ないゲームになってしまいますので、ミッションを進めていくごとに手に入る新しいパーツを自分の好きなように付け替えたり、組み立てたりして楽しんでいくのが良いかなと。

ゲーム開始時から選べる難易度「ノーマル」や「ハード」はそこまで難しい難易度ではないので、ユーザーさんによってはアニメ作品のロボを再現したような、見た目を重視したロボットを使ってミッションをクリアしていってもいいですし、効率を重視して大量の武器を搭載した機体でとか、いろんな楽しみ方をしてほしいなとは思っております。

──なるほど、ゲームプレイの動機付けとしてはパーツを増やしていく、新しく組んでいくという所が軸になっているんですね。

内田氏:
TGSの試遊ではプレイ時間が限られていたので、プリセットで遊ぶしかなかったというところはありました。いかにいろんなパーツを集めるか、自分が理想とするようなロボットを作って、それを活躍させられるかという楽しみ方が1番面白いんじゃないかなとは思っていますね。

──そう考えるとこのゲーム、あんまり試遊とは相性が良くないですよね。

内田氏:
そうなんですよ。TGSでは試遊時間が10分や15分なので、どうしても機体のカスタマイズとかはできなかったと思います。ミッションだけをプレイしていただいたユーザーさんには本当に申し訳ないんですけれども、それだとゲームの魅力のほんの一部しか体験していただけなかったんじゃないかなと。

いま遊んでいただいているプロトタイプ版に関してもそこは同じで、ゲームの全部を楽しんでいただけなかっただろうなという想いもあります。本作は最大5体までロボットをミッションに連れていく事ができるんですが、プロトタイプ版は1機しか連れていけなかったりと、遊び方の幅も制限されていたので、製品版ではプロトタイプ版とはまるっきり違った楽しみ方をしていただけると思います。

──ありがとうございます。このゲームを遊んでいるとゲーム全体の骨組みとして『地球防衛軍』シリーズの影響を感じる部分があります。やっぱり同じ自社タイトルとして『地球防衛軍』の影響を受けていたり、参考にした面とかがあったりするんでしょうか。

内田氏:
『カスタムメックウォーズ』の開発チームは『地球防衛軍』シリーズを作っている会社のサンドロット様とはまったく関わりのない会社なので、開発チームが直接アドバイスを受けていたり、知見を活かしたりというのはないです。ですが、私自身が『地球防衛軍』シリーズのファンというところと、開発チームの中にもロボット版『地球防衛軍』みたいなゲームを作れたらいいよね、みたいな声が企画段階からあったので、少なからず参考にさせていただいている部分はあります。

──プロトタイプ版での要望やフィードバックを受けての改善点をしっかり表明されていましたが、この改善点について補足するポイントはありますか。

内田氏:
『カスタムメックウォーズ』というゲームを他のロボットゲームと比べたとき、カスタマイズなどの自由度の高さから、どうしても過去の作品とかで参考にできるものが少ないという問題がありまして。ユーザーさんに触っていただいて初めてどこに不満を感じるかとか、どういう所を改善してほしいのかが、プロトタイプ版を配信したことで、より具体的に知ることができました。なので、プロトタイプ版に対していただいたユーザーさんの意見をフラットに見たうえで、アクション部分の操作性とか、手触り感とかはユーザーさんの意見を重視するようにしています。

そもそもとして、もともと今回の『カスタムメックウォーズ』は軽快にロボを動かさない、どっしりとしたシューター寄りの作品にする予定だったんです。

──『超操縦メカMG』みたいな感じですかね。いつの間にか自機をガンガン動かせる、アクションに寄った作品のほうがトレンドになったと?

内田氏:
自機を自由に動かす「アクションシューター」というのはもちろん最初から変わってないのですが、スピーディーにキビキビ飛び回るというよりは、ロボの重量感を感じられるタイプの操作感を優先していました。ただ、「スピーディーにキビキビ飛び回る」というアクション性を求めているユーザーさんが結構多かったので、既存のゲームバランスだったりを崩さないようにどう取り入れていくかを考えながら調整しています。

──たしかに、『アーマード・コア6』であんなに近接武器が使えると「『カスタムメックウォーズ』にはないのかよ!」となりますよね。これまでのロボットゲームでは、そこまで近接戦闘は重要視されていなかった印象で、『アーマード・コア6』からは常識みたいになったイメージです。

内田氏:
たしかにそういう面はありますね。プロトタイプ版の改善点の補足としてもうひとつ挙げさせていただくと、「パーツ破壊」の件があります。プロトタイプ版のフィードバックの中で「せっかく作ったロボットのパーツがダメージを受けると破壊されて、見た目が変わってしまうのが嫌だ」というご意見が、想像以上に多かったんです。

このパーツ破壊を「すべて無くす」というのはゲームのルールや難易度に大きく影響を与えてしまうのはもちろん、パーツ破壊があった方が良いというご意見も少なからずあったので、とても悩ましく難しいところでした。ただ、パーツ破壊要素がある他社様のロボゲーでも同様のご意見を多く集めていたことは把握していたので、どうにか対応したいと……。

そこで、完全な採用は難しかったのですが、ゲームクリア後のおまけ要素として「パーツが破壊されても見た目は変わらない」というオプション設定を加えることができました。これにより、気に入ったデザインのロボの見た目を変えずに戦うことができます。

──プロトタイプ版のプリセット機体には、小さい機体からビキニアーマーまで、5種類のバリエーションがありました。どういう意図で選ばれたんですか?

内田氏:
TGSでの試遊時間が10分ほどしかないので、プリセット機体は絶対に用意しなければいけなくて。その上で、用意されているのが普通の機体だけだと、カスタマイズの自由度がウリというのを前面に出しきれないかなと思って複数のバージョンを用意しました。

オーソドックスな見た目の機体に加えて、四つ足のアニマル系のもの、あとはちょっとバカっぽいビキニアーマーのものだったりとか。いろんなジャンルを用意しつつ、今回『地球防衛軍』とのコラボもあったのでTGSに足を運んでくれている『地球防衛軍』ファンの方にも触っていただけるかな、というのもあってバルガ(GM-BARUGA-GX)も出して、という感じでプリセットは選んでいます。


──ありがとうございます。このゲームを知るために、最初にこのプリセットを触ってほしいというものはありますか。個人的にプレイした際には最初にビキニアーマーを触ったので、ちょっとクセ強めでした。

内田氏:
GM-WhiteGriffonという白い機体があるんですが、オーソドックスにゲームを楽しんでいただくのであれば、最初にそれで遊んでいただくのが無難かなとは思います。ビキニアーマーを触っていただけるのはありがたいんですけど、実はビキニアーマーってプリセットの中では唯一胴体のパーツがない、言ってしまえばふざけたロボットなので、難しく感じてしまう部分もあるかなと(笑)

──ありがとうございます。1番人気のプリセットはなんですか。

内田氏:
TGSだとやはり1番最初の、白い機体を触っていただいているユーザーさんが多いのと、2番目がたぶんバルガですかね。

バルガはプリセットの中でも唯一Lサイズのロボットなので、触っていただいたユーザーさんからは「バルガだけめちゃめちゃ強いじゃん」という意見も挙がっているかと思うんですが、製品版ではLサイズのパーツは結構ゲームを進めないと手に入らないので、そのあたりのバランスは問題ないかなという感じですね。

──ユーザーコンテストも実施され、その結果も出ていましたよね。コンテストで面白いと思ったカスタマイズや遊び方、感心させられたアイデアはありましたか。

内田氏:
入賞した作品の基準とはちょっと違うんですが「かっこいいロボット」というテーマにロボットのパーツで「かっこいい」という文字列を作って応募してきたユーザーさんがいたのは個人的に面白かったです。

あと「その発想はなかった」と思わされたのが、大きいロボットの中に小さいロボットを配置して、小さいロボがコックピットに乗っているようなロボを作っていたユーザーさんですね。私が「そういうのもできるんだ」なんて言うのもおかしな話なんですが、正直その発想はまったくなかったので、今回コンテストをやって改めてこんなやり方もあるんだというのが分かって嬉しかったですね。

──ありがとうございます。最後にこのゲームに興味をもっている方に向けてメッセージをお願いします。

内田氏:
まず、12月14日の発売までにいただいているユーザーさんのリクエストや、ご要望には真摯に向き合い、改善できるところは改善しています。それに加えて、発売後も応えられる限りは、修正等含めてやっていきたいと思っております。ディースリー・パブリッシャーとしては本当に久しぶりの『地球防衛軍』や美少女系タイトル以外の新規IPなので、なんとか1作目を成功させて、2作目3作目と続けられるような作品にしたいと思っております。ユーザーさんとの二人三脚で良い作品にしたいと思っておりますので、ぜひご協力いただけたらありがたいです。

『カスタムメックウォーズ』は、PS5/PC(Steam)向けに12月14日発売予定だ。

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[執筆・編集:Yusuke Oizumi]
[聞き手・編集・写真:Ayuo Kawase]