Steamでヒット作連発ゲーム会社Gamera Gamesに、好調の秘訣と日本市場に熱心な理由、そして『ダイソンスフィアプログラム(Dyson Sphere Program)』日本語対応を訊いた
『ダイソンスフィアプログラム』の大ヒットに始まり、今年に入ってからは『火山の娘』『将軍 対決』などのヒット作も手がけてきた新進気鋭のパブリッシャーであるGamera Games。2023年9月21日より開催されていた東京ゲームショウ2023では、同パブリッシャーによる10タイトル以上の出展が行われた(関連記事)。
Gamera Gamesは、中国と日本に拠点を構えるパブリッシャーだ。去年弊誌は同パブリッシャーに対してインタビューを行い、その“正体”について訊いていた(該当記事)。そして、そこからさらなる躍進を遂げたGamera Gamesに対し、弊誌は今年もインタビューを実施。上海本部CEOであるソン氏ならびに日本支部の社長であるセン氏に向けて、『ダイソンスフィアプログラム』の日本語対応予定など、気になることを訊いた。なお、本インタビューは両名に対して行ったものの、主にセン氏によって通訳および返答がなされた。
――まずは自己紹介をお願いします。
ソン:
私は中国語名でソン、日本語名でカエデといいます。Gamera Games上海本部のCEOです。
セン:
私はセンといいます。Gamera Games日本支部の社長です。去年のインタビューでもお世話になりました。
――ありがとうございます。今回多くのタイトルが発表になりました。去年もインタビューさせていただいたのですが、今年は去年よりさらに調子がよさそうですね。
ソン:
そうですね(笑)ありがたいことに。忙しかったですが、いい1年になりました。
セン:
実はまだ準備中の作品がたくさんあるんですが、一本一本より良いゲームを皆さんに届けることを最優先に活動しています。
――去年の9月から今年の9月までに多数のゲームがリリースされましたが、特に調子が良かった作品を教えてください。
ソン:
『火山の娘』ですね。これは80万本ほどの売り上げがありました。具体的な数字はあまり言えないんですが、そのほかにも何本か10万本以上の売り上げが出ています。ありがたいです。
――かなり好調ですね。今Gamera Gamesには勢いがあると思うのですが、好調の秘訣はなんだと思いますか。
ソン:
私たちはパブリッシャーとしてゲームを売るために、そのジャンルのことをよくわかっている者がタイトルをプロデュースします。そのためユーザーが何を求めているのかを理解し、正確なPRができているというのが秘訣だと考えています。
――なるほど。とはいえ、ただゲームが好きで詳しいから、というだけではないと見ています。もう少しヒット作を生み出す秘密を教えてください。
ソン:
もうひとつ挙げるとすれば、効率でしょうか。私たちは上海のチームが20名、日本のチームが5名ほどの少人数のチームで編成されています。そして、それぞれがマーケティングやPRといった役割を担っているのではなく、選んだタイトルを販売するまでの工程の全般を担当します。PRが必要ならPRチームのリソースを使えるし、メディアと連絡したければメディア担当に指示を出せるといった具合で、一人一人が高い権限を持っているため、効率的に動けるんです。だから、フットワークが軽い。
タイトルを販売するために、どうすればこのタイトルを興味のない人にもプッシュできるのか、ということをしっかりと議論する文化が社内に存在していることも大きいかもしれません。ひとりひとりがゲーマーで、ひとりひとりがゲームの理解者である、という努力です。
――Gamera Gamesは特にSteamおいて、F2P(基本プレイ無料)に頼らない運営を行っていると感じています。
ソン:
F2Pに関しては絶対に手を出さないというわけではないんです。チームのメンバーがPCやコンソールを中心に遊んでおり、それほど興味がない。しかも、F2Pゲームやモバイルゲームについてのビジネスとしてのノウハウがあまりないため、手を出せていないというのが近いですね(笑)
――あくまで好き、がベースにあるのですね。ちなみにSteamの日本のマーケットの規模は決して大きくはないと思うのですが、BitSummitに出展したりTGSに出たりと、日本向けのローカライズなどを積極的に行っています。そのモチベーションはなんですか。
ソン:
実は、日本ではSteamだけにフォーカスしているというわけではありません。私たちはコンソールゲームが好きなのですが、中国ではコンソールゲームをプレイするハードルが高く、皆Steamのゲームをプレイすることが多いんです。そういう背景があってSteamから展開していくことを選択したのですが、日本では今後コンソール向けのゲームをリリースしていきたいと考えています。Steamでユーザーを獲得しつつ、コンソール展開へと繋げていくイメージですね。
現に、Nintendo Switchで『火山の娘』を発売予定です。すでにプラットフォームホルダーの方ともいろいろと話し合って準備はしていますし、コンソールでもっとGamera Gamesの名前を見ることは多くなると思います。
『火山の娘』
――コンソール展開、期待しています。今回新しく発表されたゲームのなかで、日本で人気の出そうなタイトルを教えてください。
ソン:
日本で特に人気が出そうなタイトルは4つあります。まずは『文字化化』です。日本の開発者八名木氏の作品で、Gamera Gamesがパブリッシングする前から日本で話題になっていました。特別なアイデアで作られた作品で、体験版『文字化化:序章』もあるのでぜひプレイしてみてください。
次は、『ガーラント:冒険物語』です。『Stardew Valley』や『牧場物語』のように、農業や建築クラフトといった要素のある作品です。難易度も高くないため幅広いプレイヤーに楽しんでいただけると思っています。
そして『アビス・ファンタジア』です。「メイド・イン・アビス」の影響を受けた作品で、同作を連想された方も多いのではないでしょうか。ユーザーが予想できないようなさまざまなランダムイベントが用意されており、とても面白いゲームになっています。きっと楽しんでいただけるはずです。
最後に『ザ・アウェイクナー:忘れ去られた誓い』です。2025年リリース予定で、『ドラゴンズドグマ』のようなシステムに、ローグライク要素を組み込んだような作品です。ユニークなプレイ感に仕上がっていますよ。
――弊誌で扱ったなかで一番反響が大きかったのは『アビス・ファンタジア』ですね。インスパイア元である「メイド・イン・アビス」の知名度の高さもありますが、方向性として面白いと思いました。こうした作品をパブリッシングするにあたってポリシーのようなものはあるのでしょうか。
セン:
簡単にいうと、そのゲームを5分プレイしてみて「面白い」と感じるかどうかという感覚を大事にしています。スタッフはそれぞれ、そのゲームが面白いかどうかを感じるというセンスを持ち合わせているんです。
たとえば私はメトロイドヴァニアが大好きなので、新しいメトロイドヴァニアを見つけたらプレイし、面白いと感じたらみんなを説得できるかどうか試すといった具合です。それぞれのオタクがいて、オタク同士でちゃんと説得しあえるか。それが上で話したような議論でもあります。
――みんなそれぞれのジャンルのオタクなんですね(笑)
ソン・セン:
そうですね(笑)
――ちなみに、Gamera Gamesパブリッシングの人気タイトルといえば、『ダイソンスフィアプログラム』があります。同作の日本語サポートの予定について聞いてもよいでしょうか。
セン:
そのことについては、実ははっきりお答えすることができます。今着手しているのが、12月に行われる予定のバトルシステムの変更を含むメジャーアップデートについてです。そしてそのあと来年には、日本語を含む主な言語のローカライズに集中して取り組む予定です。
――ついに!きっと日本のユーザーも喜ぶと思います。来年もこの勢いのまま、ユーザーの期待に応えていけそうでしょうか。また、今後も日本語のサポートをはじめ、日本向けのパブリッシングを続けてくれるのでしょうか。
ソン:
頑張ります(笑)正直なところ、プレッシャーは感じています。しかし、そのプレッシャーをバネに、みなさんにより良い素晴らしいゲームをお届けしたいと考えています。
私たちはそもそも日本のゲームが大好きですし、これからも日本語サポートを含め、たくさんの素晴らしいゲームをリリースしていきたいと考えています。
――ありがとうございました。
本稿で紹介されたGamera Gamesがパブリッシングを務める作品は以下のとおりだ。
・『ダイソンスフィアプログラム(Dyson Sphere Program)』
PC(Steam/Microsoft Store)向けに早期アクセス配信中。PC Game Pass向けにも提供されている。
・『将軍 対決』
PC(Steam)向けに配信中。
・『火山の娘』
PC(Steam)向けに配信中。Nintendo Switch向けにも発売予定。
・『ザ アウェイクナー:忘れ去られた誓い』
PC(Steam)向けに11月7日発売。
・『ガーラント:冒険物語』
PC(Steam)/Nintendo Switch向けに2023年第4四半期に配信予定。
・『アビス・ファンタジア』
PC(Steam)向けに2024年配信予定。
・『文字化化』
PC(Steam)/スマートフォン向けに配信予定。体験版「文字化化:序章」がPC(Steam)向けに配信中。