『ファイナルファンタジーVII リバース』開発者インタビュー。前作とはまったく違ったゲーム体験になる、新しいリメイクの形について訊いてきた

スクウェア・エニックスは2024年2月29日、『ファイナルファンタジーVII リバース』を発売する。今回、弊誌ではその開発について北瀬佳範氏、野村哲也氏、浜口直樹氏へのインタビューの場をいただいた。

スクウェア・エニックスは2024年2月29日、『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、『FFVIIリバース』)を発売する。2020年に発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、『FFVIIリメイク』)の続編であり、原作『FFVII』の「忘らるる都」までのシナリオをもとにオリジナル要素を加えた作品だ。

今回、弊誌ではその開発についてインタビューの場をいただいた。インタビュイーは、スクウェア・エニックス第一開発事業本部長で本作のプロデューサーを務める北瀬佳範氏、本作のクリエイティブ・ディレクターを務める野村哲也氏、本作のディレクターを務める浜口直樹氏の3名だ。開発も佳境であろうなか、『FFVIIリバース』への意気込みを尋ねてきた。


―― まずは自己紹介をお願いします。本作でのポジションほか、本作に具体的にどのように関わっているか教えていただけますと幸いです。

北瀬氏:
プロデューサーの北瀬です。自分は直接の開発からは少し離れておりまして、プロジェクト全体のパックアップをする立場でいます。また、野村やライターの野島さんが作成したストーリーや世界観に対してフィードバックをしています。

浜口氏:
浜口と申します。基本的には開発のディレクションとして、進行管理からゲームの仕様までの全般を見つつ、クオリティコントロールをする立場です。

野村氏:
野村です。自分は今回リメイクプロジェクト全般のクリエイティビティセクションを担当しています。横断的に全体を見つつ『エバークライシス(※)』など他のゲームとの連携も取っています。主にビジュアル面や世界観、キャラクターやシナリオ周りを見ています。

※『ファイナルファンタジーVII エバークライシス』。9月7日に配信開始された、『FFVII』シリーズ最新スマートフォン向けタイトル。

―― まずは前作についてのお話から聞かせてください。『FFVIIリメイク』は多くのアワードに選ばれるなど、大きな成功を収めた印象です。しかし、オリジナルの『FFVII』が伝説的な作品であったことや、分作での開発が発表されていたことから、ユーザーからの印象は好意的なものばかりではなかった印象があります。発売前にはどの程度ユーザーに受け入れられると想定していたのでしょうか。

野村氏:
分作に関しては、心苦しいところですが、ネガティブなご意見もあるだろうとは思っていました。しかし、前作と今作を見ていただければわかると思うのですが、このボリュームとクオリティを1作で収めることは物理的に不可能でした。前作、今作と個別のプロジェクトと言うより、初期から全体構想は固まっていたので、それを実現させるには不安というよりは、やり方としてそれしかありませんでした。

―― そのボリュームをプレイヤーも感じ取ることができたのか、発売されてからは分作であることに不満を持つ声はなくなっていったように思います。

北瀬氏:
そうですね、浜口たちが原作ファンのみなさんにとって印象に残っているであろう部分を大事にして、新しさを感じる部分も入れつつ、うまくバランスを取って仕上げてくれました。そこがちゃんとファンの皆さんに届いたのではないかと思っています。

「リメイクとしての新しい形」というのを社内でも言われるのですが、「リメイク」というタイトルからくる、みなさんが想像する「リメイクの形」とは違う、新しいリメイクの概念を打ち出すことができました。それが良かったのではないかと思っています。


―― こういったリメイクの形は前代未聞だったと思います。前例のないリメイク作品を作っていくなか、内容や方針決定はどのようにおこなわれていたのでしょうか。

野村氏:
常に前例がないものを作らなければいけないと思って作っています。ほかと同じものを作っていても、それはクリエイティブではありませんから。

浜口氏:
本作は初めから3部作で制作することになっていましたが、1作ごとが独立したタイトルとなるように作ることも決まっていました。1本のタイトルで原作のエンディングまでいかないことに、一定数不満を持つ方が出るのは理解していました。しかし、1本1本がちゃんと起承転結のしっかりした物語になっており、1つのタイトルとして遊んだときに満足感さえ得られれば、我々の目指すものはユーザーに伝わるだろうという思いで制作していました。

―― 『FFVIIリバース』への期待は大きなものがあると感じています。プレッシャーも大きいかと思いますが、皆さんはそれにどう向き合われていますか。

北瀬氏:
『FFVIIリメイク』の発売までは、初期の頃はチーム編成が違ったのもあって、確かにプレッシャーや不安も若干ながらありました。ですが、FFシリーズの開発経験のある浜口を中心としたチームが走り出したところからゲームのコアとなる部分が見えてきたので安心感がありました。開発が軌道に乗って見えてきたら、そこからはもうしっかりとユーザーに届くという思いがあったので、プレッシャーは無くなりました。

―― 『FFVIIリメイク』の成功が、『FFVIIリバース』にもたらした影響はありましたか。

浜口氏:
前作の成功があるから、というのとは少しずれた回答となってしまうかもしれませんが、『FFVII』のリメイクというのを何もない状態から作るのは、多くの人が意見を言うこともあってコントロールが難しいところがありました。『FFVIIリメイク』でこういうかたちのリメイクをすると定義できたので、今作っている『FFVIIリバース』ではどういう風に新しい要素を拡張していけばいいかの話をチーム全体に浸透させやすかったですね。

―― 前作があるからこそ、それを見せながら説明できることも多くなったと。

浜口氏:
そうですね。どういう風にリメイクしたかや、どれくらい原作のオマージュを入れるかなどはやはり人の頭の中にしかないものなので、なかなか温度感が伝わりにくいこともあります。しかし、すでに1つの作品を制作してきたチームがさらに良い作品と作るとなれば、「このくらい作り込まないとユーザーには受け入れられないね」だとか「こういうことをやるとユーザーは喜ぶよね」といった、経験値のようなものがすでにチームに溜まっています。それもあって、今作はよりよいものとしてお客さんに届けられるのではないかという手応えはあります。

―― 前作で課題に感じていた部分が、今作で解消されているといったことはあるのでしょうか。

浜口氏:
よく「『ファイナルファンタジー』とはどんなゲームか」というところで言われるのが、世界観やストーリーの部分です。『FFVIIリメイク』も、基本ストーリー主体としてのゲーム設計をしていましたが、今の時代のユーザーには「ストーリーももちろん追いかけたいけれど、いつストーリーを楽しむかや自分が何をプレイしたいかは比較的自由に選択したい」という傾向もあります。前作において、その部分を指摘するユーザーがいたことは開発側も認識していました。

『FFVIIリバース』では広いワールドマップに出て、ゲームの目的としても世界を探索しながらセフィロスの幻影を追いかけていくのが鍵となります。今作ではそのときに、メイン進行とは関係のない脇道に行くことができるようにしています。探索の自由度という部分では、『FFVIIリメイク』とは真逆で、多くの物量のサイドコンテンツがある状態で作っていますし、実はそれらが世界観を深堀してくれたりもします。前作とはまったく違ったゲーム体験になっているとお約束できるんじゃないかと思っています。

―― UIやQoLの部分など、細かな部分で変わった点はありますか。

浜口氏:
メニュー画面を刷新しました。前作では2Dで構成していたものを3Dにして、カメラをつけるようなかたちにしています。前作よりもよりリッチになったのではないかと思っています。

『FFVIIリバース』の開発中メニュー画面


野村氏:
今作ではワールドマップで世界中を回るので、さまざまなフィールドアクションを実装しています。前作ではある程度決まったルートの移動でしたが、今作では崖を登ったり、飛び降りたり、泳げたりといった点で、ユーザーの皆さんに、よりワールドマップを旅している感じを体験できるのかなと。

浜口氏:
『FFVIIリバース』はパーティメンバーが多いので、泳いだり登ったりを実装するにあたって、キャラクターの数だけ工数がかかるんです。その点についてはデザイン側のスタッフに少し怒られました(笑)

―― ありがとうございます。ワールドマップやフィールドについてのお話も深掘りさせてください。現在公開されているトレーラーには、コンパスに1万メートル超の目的地の表示がありました。それほど広い大きさのマップなのでしょうか。

浜口氏:
『FFVIIリバース』では、ひとつの大きなワールドマップがあり、そこに描く大陸や街、ダンジョンがすべて内包されています。本当に大きなワールドマップをシームレスに冒険しながら物語が展開していくので、場合によってはコンパスの目的地が1万メートルを超えるような状況も起こるかもしれませんね……。

『FINAL FANTASY VII REBIRTH』Summer Game Fest 2023 トレーラーより。コンパスの数字に注目。

―― いわゆるオープンワールド的な構造であると。

浜口氏:
オープンワールドの定義もユーザーによってまちまちだと思うのですが、見えているところに行って、全部のエリアがシームレスに繋がっていて、どこまでも歩いていきながらゲーム展開を進めていく、というゲーム体系にはなっています。

―― トレーラー等の映像を見る限り、フィールドは広大かつ密度の高そうな様子に思えました。設計面でテーマなどはあったのでしょうか。

浜口氏:
原作の雰囲気をそのまま現代の表現で、よりリアルに表現したほうがユーザーも喜ぶだろうという思いがあったので、「原作にあった大陸はこうだったよね」「だから植物はこういう風になるよね」という風に地形の設計をしていきました。そうした設計のうえで、ワールドマップや大陸内部の空間デザインを始めました。

―― プレイステーション時代にできなかったような詳細なデザインがかなり作り込まれていて、ファンが思い描いているであろうものを発展させて作っていったということでしょうか。

浜口氏:
そうですね、我々としてはそういう観点でワールドマップをデザインしているので、ユーザーの皆さんにも届いてくれると嬉しいなと思っています。

―― 前作はスラム街など比較的狭いエリアがメインでしたが、『FFVIIリバース』はエリアが非常に広く、別のゲームのよう感じます。マップの作り方に違いはありましたか。

浜口氏:
前作はストーリーがジェットコースターのような展開だったので、脇道に逸れてしまうとユーザーの感情に訴えかけるのが難しかったので、行くところがある程度わかっている、狭めのマップ設計となりました。

『FFVIIリバース』では世界を移動しながら謎を解いていこうという感じになっているので、どのように冒険するかをユーザーに委ねることができます。メイン進行に関係のない要素もたくさん取り入れて、ワールドマップをあちこち冒険して歩いていけるようなゲーム設計にしています。

―― なるほど。前作では狭いマップだったからこそ届けられたリニアな没入体験もあったかと思うのですが、今作のスタイルでストーリーを届けるうえで、没入感を損なわないように何か工夫などはしているのでしょうか。

浜口氏:
もちろん今作にも、前作のようなドラマチックなゲーム体験部分も残してあります。他のゲームでも見かける手法ではあるのですが、物語が急展開を迎える場面では、ワールドマップのファストトラベルを一時的に使えなくするといった仕組みにしています。最低限お話が進んだときに、ある程度ストーリーを進めないとクラウドたちの感情がおかしくなってしまう場面などでも、一時的にストーリー進行にゲームプレイが寄るタイミングがあります。

そのタイミングが終わればファストトラベルはまた使えるようになりますし、自由な探索も可能になります。探索するタイミングとストーリーを進めるタイミングが、交互にやってくるような感じですね。

―― 広いフィールドを探索する動機づけについては主にどのようなものが設定されているのでしょうか。

浜口氏:
わかりやすいところでいうと「何でも屋クエスト」ですね。前作同様に、街に困っている人がいて依頼を受けたり、メインストーリーに出てきたネームドキャラクターが登場して、そのキャラクターについて深掘りしたりといった感じです。

大きなストーリーラインの軸とは別にワールドマップを探索するストーリーも用意されていて、そのストーリーを動線に各地を巡ったり依頼を受けたりといった軸もあります。

―― 広いフィールドとはいえ、ゲームの中心にはキャラクターがいるわけですね。

野村氏:
はい。基本的にはストーリーが主軸にあって、そのストーリーを進めるためにサイドにいろいろ展開していくといった流れになっています。何の目的もなく敵を倒して素材を取る、という感じではなく、すべて世界観に収まっていて、膨大なテキストも用意してあります。メインに行かずにサイドばかりやっていると本当にゲームが進まないので、人によって遊び方が変わるゲームだろうと思っています。

―― ありがとうございました。発売を楽しみにしております。

『FFVIIリバース』はPS5向けに、2024年2月29日に発売予定だ。

[聞き手・執筆・編集:Aki Nogishi]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

© SQUARE ENIX
CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI
LOGO ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO

Aki Nogishi
Aki Nogishi

ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。

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