ヘヴィメタルバンド「メガデス(Megadeth)」のデイヴ・ムステイン氏インタビュー。『World of Tanks』『World of Warships』シリーズとのコラボやバンドについて訊いた
「メガデス(Megadeth)」は、ヘヴィメタル好きなら知らない者はいないであろう、ビッグネームだ。80年代よりスラッシュメタルジャンルに燦然と君臨し続けるバンド・メガデスが、ウォーゲーミングとコラボする。ウォーゲーミングは、戦車対戦アクション『World of Tanks』や戦艦対戦アクション『World of Warships』シリーズなどを展開している。陸に、海に展開される戦いの世界に、メガデスが乱入する。
このたび弊誌は、ウォーゲーミングの図らいにより、メガデスのフロントマンであり同バンドの象徴であるデイヴ・ムステイン氏にインタビューする機会をいただいた。メタルファンを2名動員し、今回のコラボについて、そしてメガデスについて詳しく話を訊いた。
まず、今回のウォーゲーミングxメガデスコラボはPS/Xbox向けに展開中の『World of Tanks Modern Armor』『World of Warships Legends』および、PC/モバイル向けの『World of Tanks Blitz』、そしてPC向けの『World of Warships』にて、8月29日(『World of Warships Legends』は28日)から開幕予定。メガデスとのコラボ車両・艦・スキンや、乗員としてメンバーらが実装されるなど多くのコンテンツが登場する。詳細は「メタルフェスト」特設ページを確認してほしい。
──普段からゲームはプレイされますか。
ムステイン氏:
ゲーム自体は好きだ、本当のゲーマーみたいに沢山は遊べないけど。ギタープレイの影響で関節炎が痛くて、なかなかゲームを遊ぶのが難しいんだ。ギターをやめるか、ゲームを遊ぶかってくらいに。だから、おとなしい操作で俺にも楽しめるゲームを探しているよ。ドライブゲームやスノーボードゲームなんかが好きだね。ゲームを始めたての時は沢山プレイしたもんさ。当初はベーシックなゲームばかり遊んでいてね、俺が子供の頃のアーケードはそんなゲームばかりだった。最近の進歩したゲームは本当にすごいね。
──『World of Tanks』や『World of Warships』で操縦をマスターするのと、「Holy Wars」を弾くのとはどちらが難しいでしょうか。
ムステイン氏:
いじわるな質問だな(笑)そうだね、俺が思うにゲームを「マスターする」というのはとてもむずかしいと思う。もちろん、ギターソロをマスターするのもとてもむずかしい。ただ、楽譜をなぞってひとつのソロを学習することはやればできる。ゲームも同じだと思うが、ギターソロ単体よりははるかに奥深くて時間もかかるだろう。ギターも、「ギター演奏自体」をマスターするのは同じく奥が深い。でも、1曲をマスターするのは比較的簡単だろう、終わりがあるからね。ワカル(Wakaru)?
──そうですね。そして「Holy Wars」のような曲で演奏に加えて6分ほども歌い続けるのは、あなたならではの離れ業ではないでしょうか。
ムステイン氏:
ありがとう、たしかにそれはちょいと難しいね。
──今回のコラボでは、 メガデスをテーマにしたコラボスキンなどが登場します。これらはどのようにデザインされたのでしょう、ムステイン氏やメンバーの意見もデザインなどに反映されていたりするのでしょうか。
ムステイン氏:
正直にいうけど、制作にはメンバーみんな可能な限り参加していたよ。ウォーゲーミングのみんなは、単なる音楽・バンドビジネスの垣根を超えて俺たちを親切に受け入れてくれた。俺たちは戦車や戦艦のデザインもしたし、Vicが着ている制服のデザインも手伝ったから、個人的な趣味も入っているよ。そして重要なのは、俺たち4人が「戦車に乗ったアメリカ人たち」じゃないってところだ。たとえば、Dirkはベルギー出身だし、Kikoはブラジル出身さ。それがいいんだ。“お国柄”みたいなのを出したくないし、ノリを大事にしてるんだ。わかるかな?
──よくわかります。デザインの仕上がりはどんな印象ですか?
ムステイン氏:
すごく良いと思うよ。実は、ものすごく奇妙な偶然があったんだ。俺たちのマスコットであるVic Rattleheadのデザインは、中国ではそのまま出せないことがわかったんだ。顔が骸骨だから駄目だったらしい。それで、俺たちはVicの顔を鋼鉄(Metal)製にしたんだ、そしたらめちゃくちゃカッコよくてさ!だからこう言いたいね、「中国、規制に厳しくいてくれてありがとうよ、おかげでうちのマスコットがもっとカッコよくなったぜ!」って。Vicを規制しようとしたやつがしっぺ返しを食らったかは知らないが、とにかく鋼鉄製のVicはカッコいいんだ。
──Vicがゲーム中に登場して、しかも今回初めて喋るそうですね。今回の彼の登場についてどう感じていますか?
ムステイン氏:
ちょっと待って、水を取ってくるから……、いい声で答えたいからね。それで、Vicの声についてだっけ?
もちろん興奮してるよ。Vicは俺のベイビーだからね。そもそもかつてVicが誕生した瞬間から俺はワクワクしてたし、あいつが世界で有名なマスコットになるなんて……みんなVicを知ってるんだぜ。みんなIron MaidenのマスコットEddieを知ってて、MegadethのマスコットVicも知ってるわけさ、最高だね。そしてVicをゲームに登場させるってのは……Iron MaidenもEddieのゲームを出してるけど、あれとはぜんぜん、まったく、完全に違う。
そしてVicがついに喋るなんて最高だ。いっとくが彼の声は「エルム街の悪夢」のフレディとも、「Saw」のジグソーとも違う。Vicの声はまるで痛めつけられた動物みたいな……声自体は人間の声だ、誰が声を吹き込んだかは教えないけど。「これが俺たちのマスコットの声だ」と思える仕上がりになってるよ。そして俺たちは「Vicは“ゲームの中なら”どう喋るかな?」なんて考えなかった。考えたのは「Vicはどう喋る?」だけさ、あいつの声さえキマってしまえば、ゲームの中でVicがどんな風に喋るかも自然とわかるはずだからね。
セリフも「やった!当たったぞー!」とか「お誕生日オメデト、花束をどうぞ!」みたいな感じじゃ駄目なんだ。だから、誰しもがVicの声としてマジで納得する完璧な声を探り当てる必要があった。もしもゲームの曲の出来がイマイチだったら、何度も聞くうちに少しずつ楽しさが奪われてくだろ。でもマジでイケてる曲なら、気持ちも上がるし勝ちたい気分になる。もしくは、このヤバいゲームをやろうと友達を誘いたくなるだろ。
── 今回のコラボでは「Soldier On!」「Peace Sells」「Tornado of Souls」の3曲が作中で聞けます。ほかに思い浮かぶ、今回のコラボに合いそうな曲はありますか?
ムステイン氏:
ないね。っていうのも、俺たちはそんな風に曲を作ってないからだ。俺たちが曲を書く時は1曲ずつ、俺たちの魂のなかの情動を引き起こすような音の動きをベースにしてる。たとえば俺の中には、戦闘態勢に入る戦士や、平和を願う人物も居たりね。というのは、すべての戦士は心の中に平和を愛する気持ちをもっているはずなんだ。戦士としての側面と同じくらいね。音楽はそうして感情的なレスポンスを引き出してくれるし、それで一番嬉しいのはファンたちに一歩歩み寄れたと感じられることさ。演奏してファンから喜ばれることが、俺にとって本当に嬉しいんだ。
──そういうことなら、ここ1年ほど通勤中はほぼ毎日Megadethを聴かせていただいてます。
ムステイン氏:
ありがとう……、ありがとう。
──コラボ車輌のひとつ「The Sick, The Dying, The Dead」は、「The Right to Go Insane」のMVを彷彿とさせます。あんな風に大暴れしてみたいと思いますか?
ムステイン氏:
つまり、戦車を盗んだことがあるかって訊きたいのか?(笑)ないよ!でも、イカれた事をやる想像はしたことがあるね。そのうちのひとつで、小さい本物の飛行機に乗り込んで、Laser Tag(レーザーと検出器を使い、撃ち合いをする遊び)でドッグファイトを繰り広げる遊びを雑誌で見たのが忘れられなかったんだ。それで息子のJustisと一緒にカリフォルニアまで行って、実際に飛行機に乗って戦ったよ。3対2で息子に負けかけた時、本当は5発しか撃てないところ、6発目をスタッフがおまけしてくれたんだ。おかげで負けずに済んだよ、最高だった。
──40年以上のキャリアを経たバンドのなかには、大きく変化したり“丸くなった”バンドもあります。なぜMegadethは軸をぶらさず、最高の楽曲を出しつづけることができるのでしょうか。
ムステイン氏:
それはわからない。大きな理由のひとつは、俺たちがファンをとてもリスペクトし、愛しているということかな。ファンに声をかけてもらったら、たとえ一言でも俺たちは耳を傾ける。そしてコンサートでファンと向き合う時は、曲を耳にしてどのように反応しているかが重要だ。ある国のある都市では、ある1曲がほかの曲よりも反応がよかったりする。そういうのが、ファンと理解しあう方法なんだよ。
たとえばカリフォルニア沿岸部では海とサーファーの精神性が培われていて、それはテキサスでのカウボーイの精神性とは別物だ、もしくはニューヨークのビジネスマンとかね。その土地ごとで、演奏する音楽も変わってくる。セットリストもカリフォルニアとニューヨークで変わるんだ。
そして東京武道館でのショーは、俺たちにとてもっとも重要な公演だった。公演の前には完全に武道館に集中して準備してたよ、ファンと向き合う方法として、とてもおもしろいやり方だった。俺たちが精力的でいられる理由としては、たとえば東京ではすごく沢山のバンドがショーをするだろう。だから東京のオーディエンスは時に喜ばせるのがすごく難しい。バンドによっては難題だろう。そんなオーディエンスの前でクソみたいな演奏をしたら、拍手は絶対に得られないだろうからさ。
── 過去に『Duke Nukem』のテーマ曲を提供していたと思います。今後ゲーム向けにまた曲を作りたいと思いますか。
ムステイン氏:
作ってみたいね、でもゲームに向けて曲を作るには、そのゲームのことを知らなきゃいけないだろう。そのゲームがあるタイプの曲を……たとえば「Holy Wars」みたいな曲を必要としているとして、俺たちが「Architecture of Aggression」みたいな曲を渡したらどうなる。どちらもいい曲だけど、どっちもまったくテンポが違うし、印象もまったく違う。「Five Magics」と「Hanger 18」も、同じアルバムに収録されているのに別物だ。
だから、もしゲーム会社から作曲の依頼を受けたら、ゲーム自体についてちょいと教えてほしいね。まあ、俺たちに声をかけてくるゲームは元から俺たちも知ってるような有名作品かも知れないが。あと、後悔するような仕事はしたくないな。「ゲームの開発者が実はシリアルキラーだった!」とか……な。ちなみに冗談だぜ。
──MegadethはWargamingタイトルのファンのなかでも人気が高いそうです。また、日本にも私たちを含め、多くのMegadethファンがいます。そうした人々に向けてメッセージをお願いします。
ムステイン氏:
まずはウォーゲーミングや、今回のコラボに携わってくれた沢山の関係者たちにお礼をいいたい。そして技術やゲームの世界の新しい仲間たちよ、ありがとう。新たに友だちができるのはいいもんだ。かつては交わらなかった人たちかもしれないが、今はお互いを知っている、素晴らしいことだ。そして、Megadethにはゲームでの新曲も期待されているが、今はそれが必要かわからない。まずはウォーゲーミングに求められることを尊重してやり遂げるよ。その後は……今後も是非とも何かやりたいね。
──ありがとうございました。
メガデスとのコラボイベントは、8月28/29日より『World of Tanks Modern Armor』『World of Tanks Blitz』および『World of Warships』『World of Warships Legends』にて開幕予定。さらなる詳細は「メタルフェスト」特設ページを確認してほしい。
[聞き手・通訳・書き起こし: Satoshi Onishi]
[聞き手・執筆・和訳・編集: Seiji Narita]