非対称対戦ゲーム『グーニャモンスター』はなぜローンチにつまずき、どのように立て直しているのか。開発者に訊いた

MUTANは、『グーニャモンスター』PS5/Nintendo Switch向けパッケージ版を7月13日に発売する。メジャーアップデートでは、今までの『グーニャモンスター』のシステムを大幅に見直したリビルドが施されているという。なぜそうしたリビルドがおこなわれたのか。

国内のゲーム開発会社MUTANは、『グーニャモンスター』PS5/Nintendo Switch向けパッケージ版を7月13日に発売する。パッケージ版の価格は通常版が税込3850円、限定版が税込7678円となっている。ダウンロード版については、PS5/Nintendo Switch/Steam向けに昨年12月より発売中だ。

また、パッケージ版に先駆け、6月16日にメジャーアップデートが配信されている。そのメジャーアップデートでは、今までの『グーニャモンスター』のシステムを大幅に見直したリビルドが施されているという。なぜそうしたリビルドがおこなわれるのか。メジャーアップデートを経てどのように生まれ変わるのか。開発者にインタビューをおこなった。

──まずは自己紹介をお願いします。

渡邊弘之氏(以下、渡邊氏):
株式会社MUTANの代表取締役の渡邊です。『グーニャモンスター』ではプロデューサーを担当しております。


大澤規角氏(以下、大澤氏):
MUTANのプランナーをやっている大澤です。『グーニャファイター』および『グーニャモンスター』では、ディレクションとプランニングを兼任しています。


木村修平氏(以下、木村氏):
株式会社アイ・ティー・エルという会社に所属しているプランナーの木村です。『グーニャモンスター』では、主にゲーム設計と調整で参加しました。というか、発売後のテコ入れ要員として参加しました。詳細はのちに述べさせていただければと。

──ありがとうございました。まずは、メジャーアップデートとパッケージ版発売の決定おめでとうございます。リリースから約半年ほど経過いたしましたが、反響はいかがでしょうか?

渡邊氏:
そうですね、発売の時点ではSteamで「話題の新作」に掲載されたり、多くのレビューをいただくなど、大きな反響がありましたが、開発陣が想定していたような反響はまだ得ることができておらず、アップデートをしているところです。ユーザーさんの遊び方とか反応は、我々から見える範囲でいる限り、僕らが想定していたような盛り上がり方がうまく届いていなくて、そこから盛り返しを図っているところです。

──なるほど。想定していなかった反響を得られていなかったということについて、詳しく教えてください。

大澤氏 :
『グーニャモンスター』は、オンラインのパーティーアクションゲームを作りたいというところから開発が始まったんです。オンラインで知らない人同士、知っている人同士が楽しめるようなタイトルがあったらいいなと思い、『グーニャモンスター』が作られました。

本作には、モードが2つあります。ひとつは「プライベートマッチ」という、知っている人同士で集まって遊ぶパーティー色の強いモード。もうひとつは「エピソードマッチ」という、オンラインで知らない人とマッチングして遊ぶモード。「プライベートマッチ」は、イベントでもたくさん試遊とかしていただいたりとか、社内でも遊ぶ中で、最初に考えていたオンラインでワイワイ楽しむところが実現できていたと思います。みんなでワーキャー言いながら笑顔があふれるような場面が多かったからですね。

それを見ていたので、発売してもユーザーにはワイワイ楽しんでもらえる自信があって。実際に発売後にはどんな反応をしてもらえるか楽しみにしていたんですけども、いざリリースしてみると、知らない人同士で遊ぶ「エピソードマッチ」が、メインのモードになってしまいまして、「プライベートマッチ」がおまけ的な存在となってしまったんですよ。

その「エピソードマッチ」が、僕らが想定していた以上にユーザーさんにとって、ガチのアクションゲームに捉えられていて、結構ギスギスとしたものになってしまいました。言い訳のように聞こえてしまうかもしれませんが、「エピソードマッチ」は不特定多数で遊ぶので、社内でも「プライベートマッチ」と比べるとあまり施工回数が取れなかったんですよ。

なので、いざ蓋を開けてみると、ユーザーさんにとっては楽しいというよりはシビアなゲームと映ってしまったところが、想定外の部分でした。


──なるほど。とはいえ、本作ではSteam含めてリリースされています。ゲーマーも遊ぶゲームと宣伝されていた認識です。エピソードマッチに行く人が多いのは普通では。そもそもとして、発売前のターゲット層はどのような所を想定していたのでしょうか?

渡邊氏 :
いろいろと試行錯誤し、マーケティング的には発売前はSteamユーザーをメインターゲットとしてウィッシュリストを増やすことを目標としていました。ただ、寺田てらさんのかわいいキャラクタービジュアルを起点にNintendo Switchを中心とした家庭用プラットフォームでも大きく広がっていけるようにプロモーションをやっていました。

──発売後、今現在までどのプラットフォームのユーザーが多いのでしょうか?

渡邊氏 :
発売日に動きがあったのはSteamユーザーさんですが、実際発売した後、プレイしているのは、Nintendo Switchをはじめとした家庭用ゲーム機のユーザーさんですね。

──なるほど。「ガチのアクションゲーム」として遊ばれたことによる弊害はどのように出たのでしょうか。

大澤氏 :
当初は、アップデートでの調整にしても、シビアで細かい調整というよりは、楽しくて笑えるような調整をしていきたいなとは思っていました。しかし、ガチガチのシビアな対戦ゲームを期待されてしまった結果、どのスキルが一番強いかなど精査されてしまい、パラメータ1つの調整から求められていて。そうなってしまうと調整するのもしんどいし、どこに調整しても答えがないうえに、コア層の人に向けた調整をせざるを得なくなってしまって、そこにばかり注力してしまうのは違うのかなと思っていて……。

なので、ゲーム自体の捉え方を変えれないかなと、アップデートしながら工夫していました。が、どうしてもそこを求められていたので、そこに応えつつ、施策を考えるかたちでした。なかなか苦しかったです。

渡邊氏 :
「プライベートマッチ」は、モンスターや、武器などが、毎回ランダムで決まるモードなんですよ。なので、キャラクターとか、武器の性能差も含めてゲームサイクルの中に組み込まれてバランスはよく取れていたんです。

しかし、「エピソードマッチ」は、ランダム要素が少ないので、ユーザーさんも勝つことを目標に、本気で考えた構成や立ち回りを追い求め始めるという、我々が狙っていたところよりもシビアな遊び方をされるようになっていたし、そこに対する施策が弱かったのが反省点です。


──そうした評価を受けて、テコ入れのために木村さんを招聘した、と。

渡邊氏 :
そうですね。発売してユーザーさんの声を目の当たりにして、僕も開発もユーザーさんの言ってることはとてもよく理解できました。それと同時に、積み上げてきたものや、目指していたもののバランスを少しでも組み替えるとゲームが崩れていくかもしれないみたいな恐怖感もあって……。

何とかしなくてはいけないんだけど、下手にいじると壊れてしまうかもしれない。この躊躇を打ち払うには、本来『グーニャモンスター』と関係ない人の言葉がとても重要になってくるんじゃないかなと思って、僕が信頼するゲームデザイナーである木村さんをチームに招き入れました。

──木村さんは何者なんでしょうか。

渡邊氏 :
木村さんと僕との出会いは、およそ18年前、僕がMUTANを立ち上げる直前、フリーランスで活動しているときに遡ります。ある格闘ゲームのプロジェクトで、僕がメインプログラマーを担当することになりまして、その時のディレクターが木村さんでした。僕は木村さんの、ゲームへの向き合い方や、ゲーム作りに対する姿勢とか、真摯さみたいなところをすごく尊敬していたんです。

『グーニャモンスター』のリリース後、先程言った現状を目の当たりにし、何とかしないといけないなとは思いつつも、アップデートの計画もあったため、社内でゲームの修正に時間を割ける人員が不足していたんですね。なので、なかば僕のごり押しで「木村さんといういいゲームデザイナーがいるからうちに招いてみよう」と開発チームにもお話をして、「社長がそう言うんだったらやってみようか」というかたちで木村さんを迎えることになりました。

──木村さんはオファー当時『グーニャモンスター』をご存知でしたか。

木村氏 :
非対称型のゲームであるというふわっとした知識だけ……(笑)非対称型対戦ゲームの開発経験がないので、僕のセオリーが通じず、先が見えない状態でのスタートだったので、なかなかハードルが高いプロジェクトではありました。

──実際に『グーニャモンスター』を触ってみてどう感じました?

木村氏 :
よく作られてるゲームだなと思いました。ゲームとしてのロジックがしっかりしていて、破綻している場所もなく、いいイメージでした。でも、ファーストインパクトから受けるイラストのイメージとか、持っていきたい世界観とかを見たときに、マッチしてないシステムがちょっと多いなというのが最初の印象でした。ライトユーザーが入るには、最初の印象とゲーム内容との乖離を解消すべきだなというのが今回、最初に思ったことでした。

最初はどの要素がゲームの入口を狭くしているのかを一つ一つ検証して潰して。試しては壊してを繰り返して……。完成しているものを壊すのはなかなか大変なことなんですけど、そういうのを繰り返して、間口を広げるような改善をしていきました。


──一度完成したゲームを大幅にリビルドするのは過酷ですね。

木村氏 :
懸念と不安が盛りだくさんで……。そもそも渡邊さんとは年に1回ぐらいしか飲まないのに、仕事に誘っていただいた時点で非常に恐縮でした。また、元のゲームがしっかりできてたので、ちょっと変えるだけで壊れちゃう危険性があって非常に怖かったし、これ本当に壊していいの?という不安はありました。

私がリビルドの提案をしたときに、「一生懸命作ってきたもの変えたくない」と言われちゃたら、どうすればいいのかという不安もありました。でも、皆さんがリビルドを承諾してくださり、みんなで良くしようという方向で動いた。なので、最初は不安でしたが、途中から不安は一切なかったです。チーム一丸となって進める見通しがついてからは開発チームも潤滑にうまく回りました。なので、現状は非常にいい感じに動いてるんじゃないかと。

大澤氏 :
そうですねおかげさまで、だいぶ変わったと思っております。

──渡邊さんや大澤さんは、リビルドする中で不安や懸念はありませんでしたか?

渡邊氏 :
発売直後の反響を受けて、プロデューサーである僕とディレクターの大澤で今後どうしていくか話し合ったんですが、自分も元々開発者でありながらも、無責任にいるべきなんだろうなと思っていて、リビルドする方向で押していきたいと思いました。

ただ、大澤は、細部までこだわって作ってきたものなので、ちょっとしたことでも変えると全部崩れてしまうこともわかっている。すべて見えているのもあって、大澤には懸念はあったのではないかなと思っています。

大澤氏 :
そうですね。僕はゲームの核にはそこまで手を入れずに、調整などの外側の改修で、収めた方がいいんじゃないかと言った気がします。

渡邊氏 :
長い年月をかけて積み上げてきたものなので、数ヶ月で建て直しなんて本当にできるんだろうか。できるかもしれないけど本当にその手段をとっていいのだろうかという悩みはありました。ただ、最終的にはやってよかったと思っています。

──なるほど。ちなみに、リビルドされた『グーニャモンスター』は具体的にどのように変わったのか教えてください。

大澤氏
まずは、発売直後どういう状況だったかという具体的な状況説明からさせてください。

発売直後は、普段非対称ゲームをやられている方が多く参入してきていました。モンスター側は1人なので、自分のプレイングがうまければ強く立ち回れます。3人で動くバスター側は、協力する立ち回りが必要なので、ゲームを理解し、協力している人が増えれば増えるほど、バスター側の環境が育って、モンスター側と対等に遊べる状況になるように設計されていました。

でも実際は、特に発売直後は、バスター側の環境があまり育たず、モンスター側にあっさり倒されてしまう状況がかなり顕著に起きていて。非対称ゲームの宿命なんですけども、協力をさせようとすればするほど、環境が育つことに時間を要してしまう。

元々、ワイワイ楽しく協力プレイができるというコンセプト自体が、非対称ゲームと相反する難しい課題だったと感じまして。でもそこをクリアしなきゃいけないし、クリアにしないと大きく生まれ変わらないと悩みました。協力の楽しさを担保しながらも、非対称ゲームとして成立する方法はなにかを、木村さんもすごく真剣に考えていました。

その問題を解決する施策として、ちょっとしたテコ入れをしています。例のひとつとしては、これまでバスター側は一度モンスターで食べられて、オバケ状態になってしまうと、味方に助けてもらわない限りは復活できない仕様だったんです。それを変更して、味方が助けなくても、時間が経てば自動で復活できるようにしました。最初に食べられたときは数秒で復活するんですが、食べられる回数が増えれば増えるほど復活するまでの時間が長くなっていって、終盤になると復活するまでの時間がすごく長くなり、ほかのバスターに復活させてもらった方が、早くなっていくように改修しました。

このように今までは、何事も協力しないとモンスター側に勝てなかった部分を、マイルドにしていって、1人でも戦えるけど、協力したらより有効に戦えるような仕様にしました。そこが自分的には一番大きい変化だと思います。


──ありがとうございます。木村さんが思う、一番変化したポイントをお願いします。

木村氏 :
「バスター側が仲間と協力して遊べるようになる」というところを目指していたものの、発売当初は考えることが多くて協力することまでになかなか到達できなかった。そこを改修していきました。

たとえば、仲間を助ける場面では、これまではボタンを押さないと助けられなかったのを、触れるだけで助けられるようにしたり。銃も細かく狙わなくても当たるようにしたり。落ちてるソウルを拾うにしても、これまではかなり近くまで行かなければいけなかったのを、割と遠くから拾えるようににしたり。いろんな修正を加えて、バスター側があまり考えないで遊べるようにしました。

その結果、あまりユーザーさんに負荷をかけないようなゲームになったと思います。そのために切った仕様もあって、たとえば、これまでは小石を踏むと転んでしまう仕様がバスターにも、モンスターにもありました。しかしモンスターが転んじゃうとバスターを追い切れないので、アップデート後はモンスター側は小石で転ばないようにしました。

モンスター側に関しても、「バスターを食ったらどんどんデカくなるとか面白いよね」という案が出て、試してみたら面白かったんで入れてみたりとか。そういう大きな改修をおこないました。それに合わせていろいろと仕様を組み込んで調整して、割と考えなくても遊べるようなゲームにしていきました。

──渡邊さんが思う、一番変化したポイントをお願いします。

渡邊氏 :
『グーニャモンスター』が発売された直後は、さっき大澤も言っていたようにバスター側の間口が狭く、敷居が高かった。立ち回り込みで、チームワークを出していかないとバスター側がなかなか勝てない状況が起きていました。これまでは、細かい調整をずっと今まで続けてきたのですが、その結果環境がどうなったかというと、発売当時と逆転して、バスターが強すぎてモンスターがなかなか勝てないみたいな状況になっています。

なぜそうなったかと言うと、粘り強く遊んでくれたバスターが立ち回りを理解してプレイスキルが上がってきた。モンスターがそのバスター勢に対抗できなくなってきているんです。それが今現在の『グーニャモンスター』の状況かなと思っています。

これが6月のメジャーアップデートで大きく改善されるかなと思っています。モンスター側は、バスターを捕食すると巨大化してだんだん強くなっていくし、以前よりも操作しやすく、立ち回りやすい修正がたくさん入っています。

逆にバスター側に対しては、立ち回りに対する評価を結構細かく入れて、それをリザルトで見せるようにしています。チェイスの時間であったりとか、バスターがチームにどれだけ貢献したかわかる内容の評価を結構たくさん入れました。これによって、チームでは負けたけど、自分がやったことがチームに貢献していることを理解でき、ゲームプレイを重ねるごとに、早い段階でユーザーさんに立ち回りを理解してもらえる仕組みになっているんじゃないかなと思ってます。


──リビルドされた結果、遊びやすくなった自信がある、と。

木村氏 :
入り口がかなり広がって非常に遊びやすくなったので、皆さん気持ちよく遊べると思います。元々あった『グーニャモンスター』の面白い挙動もちゃんと楽しめますし、豊富な武器とかそういう部分は全部活かしながらも、楽しく遊べるような仕掛けも増やしていて、より非対称型ゲームとしてのレベルが引き上がったと思います。

──今後『グーニャモンスター』をどういうゲームにしていきたいでしょうか。

渡邊氏 :
『グーニャモンスター』を去年の12月に発売してから、我々が想定していたような遊ばれ方がされなかったり、ユーザーさんの感想をいただけなかった。そこは自分たちの落ち度だったので真摯に受け止め、今回しっかりとリビルドしました。

今回、メジャーアップデートを迎えて、僕たちとしてはここからさらにもう一段階ギアを上げていく予定です。今後は、よりたくさんの人たちに遊んでもらうために、いろいろな施策を打っていきます。

大澤氏 :
私は、最初に『グーニャモンスター』を作る段階で思い描いてた形になってきたことが一番嬉しいです。ゲームに対してライトな人も、めちゃくちゃゲームをやり込むコアな人も、一緒になってみんなでワイワイ楽しめるオンラインゲームにしていきたいなと思っております。

今回は木村さんにも協力していただいて、かなりテコ入れできたんじゃないかなと思っています。それをまた、今まで遊んでくれた人も、新規に入ってくれる人も一緒に、もう一度同じスタートラインに立って、盛り上がるゲームにしていければいいかなと思っています。そこで盛り上がると、引き続き運営も続けられますし、楽しいイベントやアップデートもいっぱい計画していけるので、そういったお祭りみたいなタイトルに育っていってくれたらいいなと思っております。

木村氏 :
私は、外部から呼んでいただいて、できる限りのことはやりました。なので、リビルドした『グーニャモンスター』をより楽しくみんなに遊んでもらいたいと思ってます。今までの『グーニャモンスター』にはなかった、面白くてライトな要素がエッセンスとして入っていると思うので、今後もそのアップデートでエッセンスをしっかり引き継ぎつつ、別の解釈なども入れていってもっと育てていっていただけたらいいなとは思ってます。

ベースはしっかりしているゲームなので、そういったいろんな色をゲームにも入れていけるように運営していっていただけたら、と切に願っている次第です。

渡邊氏 :
大きなチャレンジにはつまずきはつきものなので、失敗を恐れずこれからもチャレンジしていきたい。チャレンジを続けるMUTANにご期待ください!

──ありがとうございました。


『グーニャモンスター』は、PS5/Nintendo Switch/Steam向けに配信中。PS5/Nintendo Switch向けパッケージ版は7月13日発売予定だ。メジャーアップデートは本日より配信されている。

Tamio Kimura
Tamio Kimura

エンタメ大好き系ゲーマー。COOPゲームが大好き、クライム系だったらなおよし。

記事本文: 181