『ライザのアトリエ3』プロデューサーインタビュー。「アトリエ」シリーズとして一つ上の次元を目指した、大人になる少女たちの最後の夏

コーエーテクモゲームスから、『ライザのアトリエ3 〜終わりの錬金術士と秘密の鍵〜』が2023年2月22日(Steam版は2月24日)に発売予定となっている。弊誌は本作や「アトリエ」シリーズについて、ガストブランド長の細井順三氏に話を訊いた。

コーエーテクモゲームスから、『ライザのアトリエ3 〜終わりの錬金術士と秘密の鍵〜(以下、ライザのアトリエ3)』が2023年2月22日(Steam版は2月24日)に発売予定となっている。対応プラットフォームは、PlayStation 4/PlayStation 5/Nintendo Swtich/PC(Steam)。各店舗では、現在パッケージ版が予約受付中だ。

『ライザのアトリエ3』においては、1作目『ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜(以下、ライザのアトリエ)』でシナリオを担当していた高橋弥七郎氏が、再びシナリオを担当。ライザの最後の夏の冒険が、広大なオープンフィールドや11人のパーティメンバーと共に描かれていくという。ボオスが満を持して仲間になることや、調合やゲームシステムの変化を含めて、シリーズファンにとっては気になる点が多いことだろう。今回弊誌では機会をいただき、ガストブランド長の細井順三氏に本作や「アトリエ」シリーズについて話を伺ってきた。本稿ではその内容をお届けしよう。まず、つい先日公開となったプロモーションムービー第2弾をお届けする。


一つ上の作品を目指して

──まずは自己紹介をお願いします。

細井順三氏(以下、細井氏):
ガストブランド長の細井と申します。プロデューサーを担当していまして、現在は『ライザのアトリエ3』の開発を進めつつ、「BLUE REFLECTION」シリーズも担当しています。ガストブランドで開発しているタイトルには、基本的にはすべて関わっておりますので、ガストブランドタイトルの品質やブランド全体の進捗も管理しています。

──『ライザのアトリエ3』について、改めて紹介をお願いします。

細井氏:
ライザが主人公を務める最後の作品となります。「秘密」シリーズでは、夏をテーマにした錬金術RPGとして、1作目『ライザのアトリエ』を2019年に発売いたしました。続いて2020年には『ライザのアトリエ2 〜失われた伝承と秘密の妖精〜(以下、ライザのアトリエ2)』で、「アトリエ」シリーズでは初の同一主人公の続編として、主人公ライザの視点から再び夏の物語を描きました。そして3作目となる今作『ライザのアトリエ3』は、2作目同様に同一主人公で夏をテーマにしたRPGとなっています。

内容としては、「秘密」シリーズに残されている一連の謎や、登場してきたキャラクターたちが未来に向かってどういうふうに生きるのかが、テーマになっています。ライザは1作目で錬金術に出会いました。そして錬金術によって、自分がこれまで日常的に接してきたものに、コンテクストがあることに気が付きました。2作目ではクーケン島を飛び出し王都に出て、新しい価値観に触れることによって、人物的な成長を描いています。そして本作『ライザのアトリエ3』では、これまでの物語を経て、ライザが錬金術で何を成し遂げたいのかを含めて、自分を見つけるような物語を描きます。人生の目標を決めるというか、我々の世界でたとえるなら就職活動の最終面接に近いようなイメージですね。

──2作目『ライザのアトリエ2』および、「アトリエ」シリーズとしての前作『ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~(以下、ソフィーのアトリエ2)』について聞かせてください。両作について、開発チームではユーザーからの反応をどのように受け止めておられるでしょうか。

細井氏:
まずは発表時について、我々が期待していた以上の反応をしていただき、非常に嬉しく思っています。『ソフィーのアトリエ2』の発表時、皆さんは『ライザのアトリエ3』が発表されると予想していたと思いますが、「アトリエ」シリーズ25周年記念のオープニング作品としては、ユーザーさんのご意見を汲み取ったタイトルにしたいと考えていました。そこで、当時人気投票で一番人気だったソフィーたちの冒険譚を描く『ソフィーのアトリエ2』を発表しました。「アトリエ」シリーズで、過去作と同一主人公の続編を描くような展開があるんだという驚きをユーザーさんに与えたいと思っていたのですが、狙い通りの反応をいただけたと思っています。「アトリエ」シリーズでの新しい展開をお見せできたこと、またユーザーさんに非常に好意的に捉えていただけたことが、よかったなと思いました。

『ライザのアトリエ2』と『ソフィーのアトリエ2』は、発売後も非常に良い反応をいただいています。特に『ソフィーのアトリエ2』に関しては、ユーザーさんからもメディアの皆さんからも好評価で、我々としてはとても安心しました。『ソフィーのアトリエ2』では、「不思議」シリーズ1作目と2作目の間を描くという作り方をしましたので、正直なところ我々としては発売後どちらに転ぶか不安な部分もありました。結果として基本的に非常に多くの皆さんに好意的に捉えていただいたので、ゲームとして楽しんでいただけたのかなと受けとめています。

──そうした反響も受けつつの開発だったと思うのですが、『ライザのアトリエ3』の開発はいつ頃から始まったのでしょうか?また『ライザのアトリエ3』のコンセプトなどについても、教えてください

細井氏:
2020年の年末から2021年の頭のほうぐらい、『ライザのアトリエ2』の開発終盤から発売直後くらいでしょうか。だいたい開発の最終盤に差し掛かると、セールス初動を含めてユーザーさんの反応が見えてきます。そうした反応を踏まえて、『ライザのアトリエ』は「3」に進むべきかなと判断して、実際に動き始めた感じですね。

ただ正直、主人公をどうするか含めて、いろいろ悩んでいた部分はあります。実際、ほかのプランも含めて話し合いのテーブルには挙げていました。最初に1作目『ライザのアトリエ』を立ち上げた時点から、同一主人公のシリーズにしたいなと考えてはいたんです。ただ人の気持ちは結構揺れるもので、3作目を作り始める時には、2作続けてきて3作目も同じ主人公はどうなのだろうという迷いも、頭の中にはありました。それで、ダブル主人公のプランなども含めていろいろ検討しましたが、最終的には、当初から考えていたとおり、『ライザのアトリエ3』も主人公はライザだけにしました。

コンセプトとしては、『ライザのアトリエ3』のゲームシステムでは、今までの「アトリエ」シリーズよりも一つ上を目指しています。ベースとなる基礎部分でチャレンジをしていて、オープンフィールドな仕組みや、さまざまな要素を横断する鍵システムを取り入れるなど、ゲームシステムとしても表現としても一段階上を目指すことが、プロダクトコンセプトとしてありますね。また物語のコンセプトとしては、ライザたちが一緒に成し遂げたいことを見つける物語にしたいと思って立ち上げました。テーマとしては、主人公ライザや仲間たちの青春を終わらせること。1作目と2作目でも描いてきた彼女たちの夏、彼女たちの少年時代や青年期の青春を終わらせる物語にしたいなと思って、開発を進めてきました。

──「アトリエ」シリーズでは、1作目『ライザのアトリエ』の時にも、グラフィックの表現力が大きく上がった印象がありました。『ソフィーのアトリエ2』でもシームレスな戦闘が導入されたりなど、システム的には改良を続けられていたように思うのですが、今作ではさらにグレードアップするのでしょうか?

細井氏:
『ライザのアトリエ』は、実は『リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜』からグラフィック面は、さほど変えていないんです。なぜ違ったように見えるかというと、ライティングを大幅に変えたからなんですよ。

「秘密」シリーズ立ち上げ当時、『ライザのアトリエ』は新しく大きくコストをかけることは出来ない状態でした。それでもユーザーさんにはなにか新しい印象を与えたい。どうしようか考えていたところ、私が初めてプロデューサーを担当した2017年の作品『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣(以下、BLUE REFLECTION)』のことを思い出しました。『BLUE REFLECTION』では、青春や夏の学校みたいなものもテーマにしていて、当時すごく陰影を工夫しました。夏の学校では校内に入ると、暗いところと明るいところの明暗がすごくはっきりしています。そうした影と光の描写を取っ掛かりにしてはどうだろう。ファンタジーのゲームに入れてみたらどうだろう、というのが『ライザのアトリエ』の始まりの一つでした。

新しいシェーダーとか技術を使わずに、ユーザーさんに新しい表現を見せるにはどうすればいいか。『ライザのアトリエ』では、陰影をきつくしてコントラストをきちんと見せることによって、今までの「アトリエ」シリーズとは違った見え方にしているわけです。テーマについてはもっと複合的な要因で決まっていますが、夏をテーマとしている理由の1つに陰影の描写もあります。

──「不思議」シリーズと「秘密」シリーズではグラフィックから受ける印象がまったく違ったので、実は変わっていないのは意外でした。では『ライザのアトリエ3』では、基礎の部分がついにパワーアップするのですね。

細井氏:
我々がタイトルを作る時には、意味や意義がないとだめだと思っています。『ソフィーのアトリエ2』では、「アトリエ」シリーズ25周年記念作品として送り出すにあたって、新しい「アトリエ」シリーズの広がりをお見せしました。完結した作品であっても、ユーザーさんの応援があればこういった広がりも可能性としてありえると、ユーザーさんにきちんとお見せしたかったんです。『ライザのアトリエ3』では、たとえば次の30周年や35周年になって振り返った時、「アトリエ」シリーズが作品としてゲームシステムとして一つ上に立ったと言われるような作品にしたい。そういう次元を目指しています。



ライザの最後の夏

──『ライザのアトリエ3』では、シナリオを再び高橋弥七郎先生が担当されています。再登板の理由や経緯を伺わせてください。

細井氏:
実は『ライザのアトリエ2』でも、高橋さんにお声がけしたいなと思っていました。残念ながらスケジュールの都合上厳しく、ガストブランド内での制作になったというのが本当のところです。『ライザのアトリエ3』では、すぐにお声がけしてOKしていただいたので、再登板していただきました。

また『ライザのアトリエ2』のシナリオは、『ライザのアトリエ』での高橋さんの書かれた一連のシームレスな流れ、シナリオの流れとは別の造りとして、キャラクターシナリオでキャラクターを掘り下げ、遺跡の探索システムではフレーバーテキストをきちんと用意するなど、メインシナリオとあわせて3つの軸でシナリオを見せようとしていました。キャラクターシナリオに価値を持たせたくて、キャラクターシナリオをメインシナリオとドッキングしようとしていたのですが、上手くドッキングしきれなかった部分が正直あったと思います。評価してくださっている方もいらっしゃるものの、やはり見せ方の問題でユーザーさんに満足いただけなかった部分があったのではないかと思っています。

──シナリオの執筆やストーリーを考えるにあたって、高橋先生とはどういったことを相談されましたか?

細井氏:
ライザの物語をこれで終わりにしたいと伝えました。1作目、2作目で消化しきれていない部分をきちんと解決させたいこと、ライザたちとしては最後の物語となり、この夏の終わりと共にライザたちが成長して大人になるとお伝えしました。本作では、ライザが錬金術をどうしたいのか、人生を賭して成し遂げるものを見つける冒険を作りたいと思っていて、高橋さんにも是非とおっしゃっていただいたので、シナリオを作っていただいています。またここまで作り上げてみると、やはり3作同じ主人公だからこそ味わえる寂しさみたいなのは非常に感じられて、楽しい物語になっていると思います。1作目のようなストーリーを期待しているユーザーさんにも、きっとご期待に応えられる内容になっていると思います。

──「秘密」シリーズでは、シナリオの比重がこれまでと違うような印象も受けるのですが、そもそも「アトリエ」シリーズにおけるそのシナリオに対する考え方や位置づけについて伺わせてください。

細井氏:
各シリーズやタイトルのディレクターやプロデューサーが判断している部分があります。たとえば「アーランド」シリーズですと、当時ディレクターを務めた岡村さん*1が古くから親しまれてきた小説・童話のような雰囲気を「アトリエ」に取り入れたいといったところから、企画が始まっています。また「黄昏」シリーズは、当時私と岡村さんが荒廃した地球を舞台にしたような終末世界を「アトリエ」に取り入れたいといって作り始めました。「不思議」シリーズは、「黄昏」が終末世界でしたので、今度は日常を描いた作品、平穏な世界に戻そうと、地に足をつけてキャラクターたちが活躍する物語を目指していました。「秘密」シリーズでは、往年のハリウッド映画や日本の青春劇のような、少年少女たちの人知れぬ戦いを描く作品を作りたいと思っていました。自分たちの信じたものを貫いた結果、自分の日常や人生が豊かになった感じがするような、少年少女の一歩の物語を作ってみたかったのです。

*1:
岡村佳人氏。かつてガストに所属していたクリエイター。さまざまな作品に携わっており、『ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜』から『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~ 』までは、ディレクターやプロデューサーとして「アトリエ」シリーズに関わっていた。

──ということは、「アトリエ」シリーズは各シリーズのコンセプトによって、どういうシナリオを描いていくかというところが変わっているわけですね。

細井氏:
シナリオは、シリーズごとのやりたいことによって、変わっています。ただ、「アトリエ」シリーズとして意識していることもあります。例としては、とにかく人が死なないことです。「アトリエ」シリーズでも死の描写はありますが、我々のポリシーとして、あまり直接的な死を描きたくないというのがあります。あと明確に我々が意識しているのは、「アトリエ」らしさの部分です。明文化は難しいのですが脈々と受け継がれてきたものがあり、これは「アトリエ」らしくないなとか、これは「アトリエ」でも許されるだろうみたいな境界線を意識して作っています。ユーザーさんは今こういうご意見なのかなとか、これだとちょっと刺激が足りないのかもしれないなとか、「アトリエ」としてやりすぎなのかなとか、時代によって変遷してきた「アトリエ」らしさを大事にしています。



フィールドを巡る冒険の楽しさ

──本作での錬金術士としてのライザについて伺わせてください。錬金レベルやレシピなど、どういった状態でゲームが始まるのでしょうか。

細井氏:
本作では、成長している過程をきちんと描きたいなと思ったので、『ライザのアトリエ』の錬金レベルの代わりに『ライザのアトリエ2』でも実装したスキルツリーを引き続き採用しました。スキルツリーを開くことで、新しいレシピや能力などが解放できます。ライザが経験によってポイントを獲得するので、どういう方向にライザを育てるか、ユーザーさんに決めてもらえるようになっています。またレシピについてはフラムや中和剤など、一定以上覚えた形からスタートします。戦闘のレベルについてもそうなのですが、1作目、2作目の経験がすべて無になっているわけではありません。

──本作の調合については、新しい要素として超特性も発表されました。超特性について、改めて紹介をお願いします。

細井氏:
超特性は、従来の特性よりも能力の高い特性です。一度しか引き継げないのですが、材料から超特性を引き継ぐことで、より高性能なアイテムが調合可能となっています。実装した狙いとしては、恩恵がわかりやすく使いやすいものを実装したかったことがありますね。「アトリエ」シリーズは調合メインのゲームではあるものの、1作目の延長線にあってしかるべきものっていうところを目指して開発しています。マテリアル環に材料を入れるリンケージ調合のシステムを大幅に変えるようなことは考えていなくて、やり込んだ延長線上にあるようなシステムの追加というイメージをもっていただければと思います。

──本作では、広大かつシームレスなフィールドを冒険できると伺っています。フィールドの仕組みについて改めて紹介をお願いします。

細井氏:
本作には4つの地方があります。基本的にはその地方内であれば、ロードなしでフィールドを闊歩することが可能です。たとえばクーケン島なら、旅人の道からメイプルデルタや火山まで全部つながっています。いわゆるファストトラベルを利用するとロードを挟んでしまいますが、地方内はすべて地続きになっていますので、基本的にはロードなしで歩いていけるようになっています。

──想像していたよりずっと大きな範囲で驚いたのですが、本作ではどういった狙いから大きなフィールドが冒険できることになったのでしょうか。

細井氏:
語弊があるかもしれないのですが、まず我々としては、オープンワールドというものは360度いろいろな角度から楽しんでもらえるものだと思っています。一方「アトリエ」シリーズは、オープンワールドにはあまり向いていないのではないかとも思っています。「アトリエ」シリーズは採取などがメインですので、基本は起点になる要素を中心にゲームを作りたいと考えました。それと同時に、ライザが冒険している感覚を味わってもらおうと、今回はアリの巣のようなマップ構造をオープンフィールドとして採用しました。この先に何があるのかなとフィールドを進んでいって、新しいマップで新たなアイテムや敵が出てくるとワクワクしますよね。そういったRPGならではの冒険の魅力、歩いていった先の感動をすごく意識しています。最終的にはみなさんファストトラベルを使うと思いますが、最初の歩いていった時の感動や、マップがしっかり地続きでつながっていることで、ユーザーさんの頭の中で地図がイメージできるような形を作りたかったのです。また、ロードを挟んで新しいフィールドに辿り着くより、ロードがない方が明らかにストレスは少ないですので、オープンフィールドにすることで体験として一段上を目指せるのではないかと開発チームと考えて、今回はこういう仕組みを採用しました。ちなみにフィールド内には、障壁などもあるので最初からすべての場所に行けるわけではないのですが、最初から奥の方へ行くなど、ある程度は自由に冒険できるようになっています。


仲間は多いほうが楽しい

──本作では、満を持してボオスのパーティーインが発表されました。ユーザーからの反響をどのように受け止めておられますか。

細井氏:
もう本当に期待通りの反応をいただいていて嬉しいです。ユーザーさんからもですが、同じゲーム業界で『ライザのアトリエ』を遊んでいただいた方からも、「次の『ライザのアトリエ3』ではボオスも仲間になりますよね?」とよく聞かれていました。そうした皆さんのご意見もありましたし、ストーリー的にも彼が加わってこそのお話でありましたので、今回はパーティメンバーの一員としてライザたちの冒険に加わりました。

──仲間としては、1作目以来のアンペルとリラ、2作目から継続してパトリツィア(パティ)が発表されました。それぞれ本作で仲間になる理由を伺わせてください。

細井氏:
アンペルとリラは、ライザの物語が始まるきっかけでした。ただ、2人の物語は1作目、2作目を通してまだ完結していませんので、今回再び仲間になることとなりました。アンペルとリラは大人ですが、彼らも本作では壁に当たることになります。自分たちのやってきたことの意義が問われるような、アンペルとリラが壁にぶつかる姿が描かれています。2人についてもきちんと終幕を迎えるというか、結論に至るわけです。パトリツィアついては、タオと彼女の関係をきちんと描きたいなと思い、本作でも登場となりました。また『ライザのアトリエ2』で仲間だったクリフォードとセリは、前作の作中である程度物語が決着しているため、今回は仲間にはなりません。2人の故郷について描かれる部分があるので、彼らのバックボーンはなんとなく感じていただけると思います。

──率直に、本作はかなり仲間が多いように思います。プレイヤーとしては嬉しい反面、11人もいたら制作も大変なのではないでしょうか。

細井氏:
多いですし、大変ですね。でもキャラクターは多いほうが楽しいと思いますので、その楽しさを優先しました。また、本作のパーティメンバーはいずれもきちんと描きたいキャラクターたちでしたので、メンバーを削るわけにはいかなかった部分もあります。結果的に、シナリオを担当された高橋さんが大変な思いをされたと思います。そして高橋さんはやはりすばらしくて、ストーリーの中でもみんなしっかり活躍していますので、そこは安心してください。

──ちなみに、「アトリエ」シリーズのパーティメンバーは、どのように決められているのでしょうか。

細井氏:
いろいろありますが、基本的には物語的に描きたい面とビジネス的な面があります。たとえば、新キャラクターと既存キャラクターのバランスは、シナリオとビジネスの両面にまたがっています。描きたい物語を優先して、1作目、2作目からキャラクター全員を引っ張ってきてしまうと、新キャラクターが入れられずに新鮮さが落ちてしまうと思うのです。ですので、まずは新キャラクターを何人にするかを決めて、そのあと、描きたい既存キャラクターをどれだけ入れられるか。シナリオやさまざまなバランスを考慮した上で、最終的な人数とか誰が仲間になるかを決めていく感じです。

──キャラクターデザインの話になります。本作ではまたライザのふとももが成長しているように見えます。トリダモノさんとなにか相談をされましたか?

細井氏:
キャラクターデザインは、基本的に私とCGディレクターとトリダモノさんで相談していますが、じつは我々はふとももの話は一切しないんですよ。1作目の際は体型の話も出ましたが、2作目や3作目でふとももの話はまったくしてないです。我々は、ライザはふともものキャラクターだからふとももを太くしようなどとは思っていないのです。
それはそれで問題な気もしますが(笑)



RPGに軸足を置いた進化

──本作でライザたちの夏の冒険は最後になります。一方「アトリエ」シリーズとしては今後も続いていくと思いますが、異色作だった「秘密」シリーズのあとは、どんな「アトリエ」が展開されていくのでしょうか。今後の「アトリエ」シリーズにおける目標や作ってみたい「アトリエ」など、少し先の展望を伺わせてください。

細井氏:
今回「秘密」シリーズでは、同一主人公で3作継続となりました。しかし次回作でも同一主人公で3作展開するかというと、おそらく同一主人公路線の継続はしないと思います。現状、次の「アトリエ」がほかのシリーズのように3部作でそれぞれ違う主人公なのか、そもそも3部作になるのかも何も決まっていませんが、同じ展開は基本的にはあまりしたくないと考えています。

「秘密」シリーズは「アトリエ」シリーズの中でも結構異色なシリーズだったと思います。ライザの同一主人公を3作続けたことが影響しているのかもしれませんが、同一シリーズの3作目を発表した時に、今回みたいに1作目、2作目の本数が大きく伸びるシリーズは、私自身あまり見たことがありません。また『ソフィーのアトリエ2』でも、発表時に『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~ DX』の本数が伸びました。そうした結果も踏まえて、やはりそれだけユーザーさんは、キャラクターに対して思い入れを持ってくださっているのだなと個人的に感じています。かつての主人公が師匠になって別の作品に登場しても、もうその子の物語ではなく下の弟子世代のキャラクターの物語となってしまいます。同一シリーズでも主人公が変わることによって、そのうちの1作だけを遊ぶユーザーさんがいらっしゃるのは事実ですし、単品のタイトルとしては、主人公を毎作変えたほうが都合がいい部分もあるのは確かです。ただ、主人公を変えても同一シリーズの続編・2作目であり、注目度はどうしても落ちてしまいます。ただ同じことを繰り返しても面白みに欠けてしまいますので、次はまた新しいことを考えて、新しい主人公で新シリーズを作りたいと考えていますね。

また個人的には、今クラフトに興味があるので、クラフト要素を「アトリエ」に入れてみたら面白そうと思っています。今、キャンプとかDIYがブームになっていますよね。ああいったテイストのものを入れてみたいなと考えているところです。「アトリエ」シリーズでは、調合がクエストや戦闘でも使われますが、もっと要素を拡張することで、「アトリエ」シリーズとして発展できる部分があるのではないかなと。現在の「アトリエ」はRPGであることを重視しているので、クラフトを本当に採用するか、どういったもので拡張するかはまったく別の話となりますが、「アトリエ」シリーズは、RPGとして常に進歩した作品をお届けしたいと思っていますので、RPGに軸足を置いた進化を常に模索しています。

──最後に、読者にむけてメッセージをお願いします。

『ライザのアトリエ3』は、1作目2作目と続けてきた主人公ライザの冒険を描く最後の作品です。「アトリエ」シリーズ25周年記念作品として、シナリオ・システムの両面に非常に力を入れています。1作目、2作目を遊んでいない方に向けても、あらすじをダイジェストでまとめたムービーをゲーム内に用意しています。ムービーをご覧いただければすんなり世界観に入れるようになっていますので、RPGが好きな方は是非手にとっていただければと思います。

──ありがとうございました。


ライザのアトリエ3』は、PlayStation 4/PlayStation 5/Nintendo Swtich版が2023年2月22日、PC(Steam)版が2月24日に発売予定だ。価格は通常版が税込8580円。ゲーム本体に加えて、多数のグッズが付属するプレミアムボックスや、スペシャルコレクションボックスも予約受付中となっている。


※掲載している画面写真はPlayStation 4で開発中のものです。
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Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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