ハピネットはいま「ゲーム販売」でも勢いあるらしい。『ブリガンダイン ルーナジア戦記』Steam版から『ミュータント タートルズ』新作パケ版の調子を聞いた

近年、国内の企業ハピネットがゲーム関連で積極的な活動を見せている。オリジナルタイトルとインディーパブリッシャーの両輪で駆動する彼らは、どこを目指しているのだろうか。このたび弊誌はハピネットの行く先を伺ってきたので、その内容をお届けしよう。

近年、国内の企業ハピネットがゲーム関連で積極的な活動を見せている。2022年5月にはSteam版『ブリガンダイン ルーナジア戦記』をリリース。またインディーゲームのパブリッシングも多数手がけており、2021年9月にはゲームレーベル「ハピネットインディーコレクション」を設立するなど、活動の幅と勢いを増してきた。

ハピネットといえば、流通事業に強みをもつがゲーム販売の方でも存在感を見せている。オリジナルタイトルとインディーパブリッシャーの両輪で駆動する彼らは、どこを目指しているのだろうか。2022年8月6日と7日に開催された「BitSummit X-Roads」の会場で、 タイトルの状況も含めてハピネットの行く先を伺ってきたので、その内容をお届けしよう。


──まずは自己紹介をお願いします。

齋藤勝氏:
ハピネットの齋藤勝と申します。ゲームパブリッシング部の運用・宣伝チームに所属しておりまして、基本的にパブリッシングタイトルの宣伝を担当しています。

──ゲーム会社としてのハピネットさんについて、改めて紹介をお願いします。

齋藤勝氏:
ハピネットは、過去にもゲームのパブリッシング事業を行っておりました。再びゲームパブリッシング事業を立ち上げ、女児向けタイトルをニンテンドー3DS向けに展開し、その後Nintendo SwitchやSteam向けのゲームを取り扱いはじめました。最近になってオリジナルタイトルの『ブリガンダイン ルーナジア戦記』やインディゲームブランド「ハピネットインディコレクション」を立ち上げ、日本を含めてインディーゲームを世界中のプレイヤーさんに向けてパブリッシングさせていただいています。


根強いパッケージ需要

──まずは各タイトルの状況など伺わせてください。『ブリガンダイン ルーナジア戦記』(*1)では最近Steam版が発売されました。コンソール版から時間を置いてのリリースとなりましたが、リリースしてみてどういった印象を受けましたか。

*1:
『ブリガンダイン ルーナジア戦記』。公称ジャンルは国取りシミュレーションゲーム。大陸を舞台にした拠点への進軍と、ヘックス制を採用したSRPG風の戦闘を繰り返し、大陸の統一を目指す。

齋藤勝氏:
『ブリガンダイン ルーナジア戦記』は、Nintendo Switch向けに2020年6月、PlayStation 4向けに2020年12月に発売したタイトルです。Steam版はそこから間を開けて、2022年5月のリリースとなりました。追加要素は用意していたものの、コンソール版から2年間をあけていたわけですが、思った以上にSteam版のセールスは伸びています。本当にご好評いただいていて、予想以上に売れましたね。ウォーシミュレーションゲームのユーザーは、PCの方が多かったのかなとは思いました。おかげ様でSteamでの5月トップリリースにも入らせて頂きました、ユーザーの皆様有難う御座います!

それと海外のユーザーからは「ファンタジーを題材にしたウォーシミュレーションを出してくれてありがとう」とコメントをいただけて、そうした反応は非常に嬉しかったですね。ウォーシミュレーションでは、『ファイアーエムブレム』シリーズのようないわゆるSRPGが主流なイメージがありますが、そのあたりを考えると確かに物珍しい側面があったのかなと思っています。

『ブリガンダイン ルーナジア戦記』のスクリーンショット。記事執筆時点で、Steamのユーザーレビューでは533件中87%の好評を得てステータス「非常に好評」となっている。
『AWAY』のスクリーンショット


──『AWAY(AWAY: The Survival Series)』(*2)では延期が重なっています。改めて状況を伺わせていただけますか。

*2:
『AWAY』。フクロモモンガを主人公にした、ストーリー主導型のアクション・アドベンチャーゲーム。プレイヤーは小さなフクロモモンガを操作し、滑空したり、食料を探したりしながら、さらわれた家族を探して広大な自然の中を冒険する。カナダのインディースタジオBreaking Wallsが開発している。

齋藤勝氏:
『AWAY』は、すでにSteam版は配信されているものの、国内向けのPlayStation 4/PlayStation 5版は現在2022年夏発売予定となっています。当初は国内向けにも2021年11月にリリース予定だったのですが、延期が重なってしまっていますね。ハピネットでは、インディーパブリッシャーとして作品をユーザーの方へ展開するにあたって、こだわりをもっています。『AWAY』では、バグやテキストの不親切な部分などをきっちり修正したいと考え、開発元と協議を重ねながら、修正して頂いている最中です。我々の方でこれなら満足できるという状態まで、クオリティが向上してからリリースしようと考えております。満足していただけるクオリティになるように頑張っておりますので、今しばらくお待ち下さい。

『ミュータント タートルズ:シュレッダーの復讐 スペシャルエディション』のスクリーンショット


──『ミュータント タートルズ:シュレッダーの復讐(Teenage Mutant Ninja Turtles: Shredder’s Revenge )』(*3)はすでに海外では好評ですが、国内向けにはどうでしょうか。

*3:
『ミュータント タートルズ:シュレッダーの復讐』。80年代に放送されたTVアニメシリーズ「Teenage Mutant Ninja Turtles」をベースにしたベルトスクロール型のアクションゲーム。ピクセルアートやクラシックなゲームプレイによって、プレイヤーを80年代に連れ戻すと歌われている。国内では2022年6月16日にダウンロード版が発売。Steamのユーザーレビューでは、記事執筆時点で6600件中93%の好評を得てステータス「非常に好評」となっている。

齋藤勝氏:
『ミュータント タートルズ:シュレッダーの復讐 』は、ダウンロード版が6月にリリースされていて、我々の方では国内向けのパッケージ版である『ミュータント タートルズ:シュレッダーの復讐 スペシャルエディション』を8月25日にリリースさせて頂きます。。同梱特典はタートルズのアクリルジオラマスタンドとオリジナルサウンドトラックです。パッケージ版はダウンロード版がすでに発売済みなので、予約数はそんなによくないのかなと思っていたんです。しかし、正直意外だったのですが、現在国内パッケージ版の予約は好評となっています。実はほかのインディータイトルでも、追加要素を足したパッケージ版は好調となっておりまして、モノとして欲しい方が日本にはまだまだいて、パッケージ版には根強い需要があるんだと感じています。

『Apopia(アポーピア):スイート・ナイトメア』のスクリーンショット


──先日『Apopia(アポーピア):スイート・ナイトメア』(*4)が発表されました。手応えや反響などいかがでしょうか。

*4:
『Apopia(アポーピア):スイート・ナイトメア』。Quillo Entertainmentが開発中のアドベンチャーゲーム。主人公の少女マイ、口が悪く自分勝手なネコのニコ、ヨーグルト王国のお姫様モリーなどが登場。謎解きやパズル、ミニゲームでのバトルなどを交えながら、マイの家族に秘められた真実が明かされていくという。Steamでは体験版相当の『Apopia: Prologue』が無料配信中。

齋藤勝氏:
『Apopia(アポーピア):スイート・ナイトメア』は、主人公の女の子マイが、いろんな動物の友達と協力して、迷い込んだ世界から家に帰る事が目的のアドベンチャーゲームです。タイトルの「Apopia(アポーピア)」は、終末を意味するアポカリプスと、理想郷を意味するユートピアを組み合わせた言葉なのですが、『Apopia(アポーピア):スイート・ナイトメアではマイが絶望から理想を求めて這い上がる姿が描かれていきます。ゲーム中には、ミニゲームや謎解きも登場しますし、物語だけでなくアクション要素もあるので、どなたでも楽しめるようなゲームだと思っています。

『Apopia(アポーピア):スイート・ナイトメア』は、2023年夏にリリース予定なのでまだまだこれからといった状態なのですが、今回開発元のQuillo Entertainmentさんとパートナーシップを組ませていただきました。まずはSteamでの発売を目指して、これから1年間ゆっくりQuillo Entertainmentさんと開発を進めて、良いADVに仕上げていきたいと考えています。


インディーパブリッシングにおけるこだわり

──インディーゲームのパブリッシングを本格的に初めてしばらく経ちますが、そちらの状況や手応え、印象的なことなどはありましたか。

齋藤勝氏:
今後も積極的に日本や世界中のインディーゲームを我々の方で展開していきたいと思い、いろんな会社さんやクリエイターさんと交渉中です。活動はインディーに限らず、より多くのゲームを日本のユーザーのみなさまに展開していければと考えています。日本語のテキストやローカライズに対しても、こだわりをもってやっています。テキストのクオリティについても、開発者さん協力してしっかりゲームの内容にあわせ、日本の目の肥えたゲームユーザーさまの合格点にたどり着けるように頑張って進めているところです。まさに、そうやってこだわっている例が『AWAY』になります(笑)

印象的だったのは、今まで組ませていただいてきたタイトルでは、とても真面目でゲームに対する情熱のある方がばかりだったことですね。国内のクリエイターさんがそうではないという話ではありませんが。たとえば1つ何かを依頼すると、5個6個提案が返ってくるんですよ。自分のゲームをアピールしたいという情熱をすごく感じるので、我々も仕事をやりやすいですし、一緒に仕事をしていて楽しいです。

──最後に読者向けにメッセージをお願いします。

齋藤勝氏:
ハピネットでは、ゲームレーベル「インディーコレクション」より、皆様に楽しんでいただけるゲームを数多く展開していきたいなと思っています。これまで以上に多く展開していきますので、どうぞよろしくお願いします。

──ありがとうございました。

ハピネットからは、「ハピネットインディーコレクション」の作品など、多数の作品が展開予定だ。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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